映画監督ルキノ・ヴィスコンティ没後45年を数える本年、“封印された幻の名作”が本邦初公開となるイタリア語バージョンで復活する。アルベール・カミュ原作、マルチェロ・マストロヤンニ主演の『異邦人 デジタル復元版』の本年3月の“緊急公開”が決定した。
ノーベル賞作家カミュの大ベストセラー「異邦人」は、現代人の生活感情の中に潜む不条理の意識を巧みに描いて大反響を巻き起こした。イタリア映画界の至宝ルキノ・ヴィスコンティ監督は早くからこの20世紀文学の傑作の映画化を志し、長年の構想の末に1967年に完成した。主演は名優マルチェロ・マストロヤンニ、ヒロインは2019年12月に急逝したアンナ・カリーナ。
ヴィスコンティの作品群は世代を超え映画ファンに愛され、日本国内においてもリヴァイバル上映され続け、ミニシアターの人気作品として定番化している。長編8作目となる本作の日本初公開は1968年9月の英語版。キネマ旬報ベストテン第8位、スクリーン誌ベストテン第9位に選出されるなど、反響を呼んだものの、それ以降は1970年代に短縮日本語吹き替え版がTV放映されたが、以降は様々な理由でソフト化されることもなく、ヴィスコンティ特集等の限定上映以外は長期に渡り鑑賞する機会がなくなっていた。
今回、各映像素材を最新技術によってデジタル復元化し、上映実現に至ったという。
カミュの原作が発表された年は奇しくもヴィスコンティ監督デビュー作『郵便配達は二度ベルを鳴らす』と同じ1942年であり、早くから映画化の希望をカミュに直接伝えていたという。本作の主人公の不条理な言動は、クイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」の歌詞とも類似しており、元ネタではないかと楽曲発表直後から言われている。また、伝染病の恐ろしさを描いたカミュのもう一つの代表作「ペスト」は、コロナ禍が続く現在も日本をはじめ全世界で特大ベストセラーを記録している。
3月5日(金)より新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサにて公開。
■Information
『異邦人 デジタル復元版』
2021年3月5日(金)より新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサにて公開
監督: ルキノ・ヴィスコンティ(『ベニスに死す』『家族の肖像』『山猫』)
原作: アルベール・カミュ(「ペスト」1957年ノーベル文学賞受賞)
出演: マルチェロ・マストロヤンニ(『ひまわり』『昨日今日明日』『ひきしお』)、アンナ・カリーナ(『気狂いピエロ』『女と男のいる舗道』『アンナ』)、ベルナール・ブリエ(『北ホテル』『レ・ミゼラブル』『女たちのテーブル』)、ブルーノ・クレメル(「メグレ警視(テレビシリーズ)」『ゴダールのマリア』『白い婚礼』)
配給: ジェットリンク
配給協力: ラビットハウス
(C) Films Sans Frontieres