原作・平野啓一郎『ある男』が妻夫木聡主演で映画化

映画『ある男』

第70回読売文学賞を受賞し、累計19万部を超える平野啓一郎のベストセラー小説「ある男」が映画化されることが発表されました。妻夫木聡が主演を務め、安藤サクラ、窪田正孝らキャスト陣や製作陣、原作者・平野啓一郎からのコメントも届いています。

本作は、映画化もされた「マチネの終わりに」(2016年刊行)に続く平野啓一郎の作品として2018年に刊行された文学作品が原作。平野啓一郎の小説家デビュー20年目となる作品です。

監督を務めるのは、『愚行録』(17)でベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に選出され、『蜜蜂と遠雷』(19)では毎日映画コンクール日本映画大賞、日本アカデミー賞優秀作品賞など多くの賞を受賞した石川慶。
脚本は、『リアリズムの宿』(03)、『リンダリンダリンダ』(05)、『マイ・バック・ページ』(11)、『聖の青春』(16)などを手掛けてきた向井康介。石川監督とは『愚行録』に続き2本目のタッグとなります。

物語は、弁護士・城戸章良(きど・あきら)が、別人として生きていた“ある男”の真実に迫っていくヒューマンミステリー。
主人公の弁護士・城戸を演じるのは、シリアスからコメディまで多種多様な役を演じる妻夫木聡。石川監督とは『愚行録』「イノセント・デイズ」(18/WOWOW)に続き、本作で3度目のタッグとなり、今回は初の弁護士役に挑みます。城戸に夫の身元調査を依頼する谷口里枝(たにぐち・りえ)役に、『0.5ミリ』(14)『百円の恋』(14)『万引き家族』(18)など数々の作品で異彩を放ち、海外でも高い評価を得ている安藤サクラ。映画への本格出演は、『万引き家族』以来、4年ぶりとのこと。そして、里枝の夫となる谷口大祐(たにぐち・だいすけ)役には、NHK連続テレビ小説「エール」(20)の主演を務めるなど幅広く活躍する俳優・窪田正孝。さらに、清野菜名、眞島秀和、小籔千豊、仲野太賀、真木よう子、柄本明といった俳優陣が顔を揃えています。

映画『ある男』は、海外映画賞も視野に入れ、2022年を代表する良質な映画作品としてすべての人に届けたいと願う、「愛」と「過去」をめぐるヒューマンミステリーとして全国公開予定。

主要キャスト、原作者らからのコメント

妻夫木聡【城戸章良(きど・あきら)/主人公・弁護士】人間のアイデンティティとは何かを問い詰めるこの作品との出会いは、自分の人生を見つめ直す良いきっかけとなりました。人生に正解はない。かといって間違いもない。どんな答えであってもいいと思う。だから恐れずに向き合って欲しい。観てくださった方にとって、この作品が人生の道標のような存在になるのであれば僕は幸せです。

安藤サクラ【谷口里枝(たにぐち・りえ)/谷口大祐を名乗っていた“ある男”の妻】 わたし自身がこの作品がどんな映画なのか、なかなか想像ができません。ミステリーと一括りにしてしまうのは勿体ないなと思いつつラブストーリーなのかサスペンスなのか、、と問われるとこれまたわかりません。
でも現場では、ジャンルにとらわれず人間模様をやさしく繊細に、且つ淡々とシンプルに描いていたように思います。
久しぶりの映画、石川監督のもと、たくさん笑ってたくさん泣いて、苦しみながらも楽しく撮影させていただき、あ~わたしは現場が好きだ!と再確認しました。この作品だったからそう感じられたのだと思います。公開が楽しみです。

窪田正孝【谷口大祐(たにぐち・だいすけ)/谷口大祐を名乗っていた男。里枝の夫】ある男の静寂な心の中に蠢く「悍ましいナニカ」をずっと感じながら演じてました。
人の皮を被った怪物が身体の中からずっと自分だけをみている。そんな支配されて壊れきった空っぽの心を里枝が少しずつ溶かしていく。里枝役のサクラさんはやはりとても刺激的で芝居の面白さ、やりがい、その答えをどこまでも追求していきたい衝動に駆られました。ある男が観て頂く方々にどんな感情を残すのか今から楽しみでなりません。

石川慶【監督】シンプルなタイトルに惹かれて手に取った『ある男』。 「これは誰もが映画化したがるに違いない」という思いと同時に「こんなに映画化が難しい小説もそうそうない」という、相反する感想を持ちました。でも、すでに『ある男』に強烈に共鳴してしまっていた自分には、手を挙げないという選択肢はありませんでした。
この大きな挑戦に、妻夫木聡という役者が一緒に戦ってくれたことは、とても大きな意味を持っています。常に変わらず、そして常に新しく、底が見えずとも物語の深層へ、躊躇なく一緒に潜ってくれる、自分にとって唯一無二の存在です。
そこに、安藤サクラさん、窪田正孝さん、清野菜名さん、眞島秀和さん、小籔千豊さん、仲野太賀さん、真木よう子さん、柄本明さんといった、日本映画界の最前線にいる俳優たちが集結してくれました。カメラの後ろで日々目撃した、あの奇跡のような瞬間の数々を、早くみなさんに届けたくてうずうずしています。

平野啓一郎【原作者】『ある男』は、私の小説家生活20年目のタイミングで刊行された長篇です。
前作『マチネの終わりに』で描いた「未来は過去を変える」という主題を、分人主義的に更に発展させ、「愛にとって過去は必要なのか」という切実な問いを追求しました。
重層的に入り組んだ複雑な構成美が持ち味の小説なので、映像化はなかなか難しいだろうと思っていましたが、素晴らしい監督と俳優陣に恵まれ、強く胸を打つ映画となったことに感動し、また感謝の気持ちを抱いています。
原作と映画、両方の世界を是非お楽しみください。


■Information

『ある男』

2022年全国ロードショー

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から奇妙な相談を受ける。里枝の亡くなった夫「大祐」の身元調査を頼みたいと言うのだ。里枝は離婚を経験後、子供を連れて故郷に戻り、やがて出会う「大祐」と再婚。新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日突然夫が不慮の事故で命を落としてしまう。悲しみに暮れる中、大祐の法要の日、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が訪れ、遺影を見て「これ、大祐じゃないです」と言い放つ。愛したはずの夫「大祐」は、まったくの別人だったのだ…。城戸は、“ある男”の正体を追う中で様々な人物と出会い、衝撃の事実に近づいていくと、いつしか城戸の中にも他人として生きた男への複雑な思いが生まれていく。

出演: 妻夫木聡 安藤サクラ 窪田正孝
清野菜名 眞島秀和 小籔千豊 仲野太賀 真木よう子 柄本明
原作: 平野啓一郎「ある男」 9月1日文庫版(文春文庫)発売
監督: 石川慶(『愚行録』『蜜蜂と遠雷』『Arcアーク』)
脚本: 向井康介(『マイ・バック・ページ』『聖の青春』『愚行録』)
企画・配給: 松竹  

https://movies.shochiku.co.jp/a-man/

©2022「ある男」製作委員会


関連インタビューとQ&A