早川千絵監督と磯村勇斗が登壇の『PLAN 75』大ヒット記念舞台挨拶レポート

早川千絵監督と磯村勇斗が登壇の『PLAN 75』大ヒット記念舞台挨拶レポート

7月7日に東京・ユーロスペースにて、映画『PLAN 75』の大ヒット記念舞台挨拶が行われ、<プラン75>の申請窓口で働く市役所職員・岡部ヒロム役を演じた磯村勇斗と早川千絵監督が出席しました。

『PLAN 75』は、超高齢化社会に対応すべく75歳以上が自ら生死を選択できる制度<プラン75>が施行された近未来の日本を舞台に、その制度に大きく翻弄される人々の姿を描き出しています。
脚本・監督を、本作が長編初監督作品ながら、2022年カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門への正式出品、カメラドール特別表彰授与という快挙を成し遂げた早川千絵。主人公・角谷ミチを演じるのは倍賞千恵子。<プラン75>に携わる側には磯村勇斗、河合優実を配し、たかお鷹やステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美らが顔を揃えています。

『PLAN 75』は2022年6月17日の公開以来、各地で満席の回が続出し、公開から19日間で興収2億円を突破する大ヒットを記録中。
大ヒット記念舞台挨拶での磯村勇斗と早川千絵監督のトークをレポートします。

Q ご挨拶をお願いします。

A早川千絵お暑い中お越しくださり本当にありがとうございます。今回は上映後のトークということで話せることも多くて楽しみにしていました。

磯村勇斗マスコミの皆さんが会場に入りきらないくらいお集まりになられたと聞きしました。そのくらい注目していただけているとのことで嬉しいです。

Q 興行収入2億円を超え、世界各国でも公開される本作、反響は届いていますか。

A磯村勇斗俳優仲間からも「観たよ」と言われます。地方に住んでいる自分と同い年の29歳の友人が観に行った映画館はご年配の方が多かったそうですが、近くの席のご年配の方から「若いのに何で観に来たの?」と話しかけられたそうです。この作品をきっかけに交流が生まれていることが素敵だと思いました。離れた世代の人たちがお互いに観に来た理由に興味を持って話をするというのは、これからの未来に向けて大切な瞬間が生まれたんじゃないかと思いました。

早川千絵映画館を出た後「日常の風景が違って見えた」と言っていただいたり、「観に来られた他の世代の方たちはどういう風にこの映画を感じられたのか話してみたくなった」というような声をいただきました。

Q 近未来の日本という設定ですが、未来的な描写があるわけではありません。その理由はいかがでしょう。

A早川千絵今の世界とパラレルの世界として描きました。何十年後の未来といった作り方ではなく、今の時代と地続きに感じてもらえるように、あえて未来的な描写を入れるようなことはしませんでした。

Q ヒロムは真面目に仕事をしていますが、それが高齢者に死を進める仕事であることが考えさせられました。役柄についてどんな感想を抱きましたか。

A磯村勇斗どう構成していくかを台本を読みながら考えていました。機械的に<プラン75>を勧める仕事をしている前半と、より人間的になっていく後半のヒロムの感情の変化を一気に見せるのではなく、どう自然に見せるかを監督とも相談しながらひとつひとつ作っていきました。台本で読んでいる以上に現場で生まれるものが多かったと思います。

Q 伯父役のたかお鷹さんとはどんなやりとりをしましたか。

A磯村勇斗たかおさんには事前に「俺たちはあんまり話さないようにしよう」と提案していただきました。2人は久しぶりに再会するという設定だったので、オフの時に話さないことで、しっかり2人の空白期間や居心地の悪い距離感というものを表現できたと思います。たかおさんにリードしていただき、俳優の先輩としてのすごさを感じました。

Q 公園のベンチの手すり工事のシーンもヒロムのキャラクターがよく表れています。

A早川千絵お芝居が上手だなと見させていただいていました(笑)。ベンチのシーンは磯村さんの撮影初日だったんです。あのシーンのお芝居でヒロムがどんな人物かはっきり見えました。“排除ベンチ”をどんなものにするか業者さんと話し合っているシーンですが、ヒロムには悪気がなく、一生懸命仕事をしている感じがしっかり伝わってきました。

磯村勇斗ある程度の大筋はありましたが、手すりのパーツ候補がどんなものかは僕自身当日まで分からなかったので、決まったセリフがあったわけではないんです。実際に説明を受けたことをしっかり受け止めて、寝そべって感想を言うなど、その場で起きることに反応していったので緊張もしました。

早川千絵ヒロムが高齢者に説明するシーンも私からは特に演出していないんです。お伝えしたのは「ヒロムは意地悪な気持ちで接していない」「真面目に仕事をしているけれど、<プラン75>には罪悪感も抱いていない」ということだけでした。

Q 短編から長編にする際に意識したことはいかがでしょう。

A早川千絵短編から長編にする際にはもっと人間の感情の機微を丁寧に描きたいと思いました。単に問題提起するだけではなく、希望のようなものを提示する必要があると感じて、脚本作りには4年ほどかけて作っていきました。

Q 最後にメッセージをお願いします。

A磯村勇斗本当にたくさんの方に観ていただいて、ヒット御礼舞台挨拶をさせていただくのは本当に光栄です。ご年配の方を中心に観ていただけているとのことですが、自分たちのような若い人たちにもこの作品をもっと知ってもらいたいですし、日本の社会で起きていることに関心を持ってもらえるようにしていきたいとも思っています。若い人たちにも「いい映画だよ」と広めていただけると嬉しいです。

早川千絵この映画を作っているときは受け入れてもらえるだろうかという不安もありました。それが自分が思っている以上に届いているなという思いがあります。映画は人に届いて初めて完成するものだと思いましたので、観ていただいた方に本当に感謝しています。ありがとうございました。


■Information

『PLAN 75』

映画『PLAN 75』大ヒット公開中

少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチは78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリアは幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に臨む日々を送る。果たして、<プラン75>に翻弄される人々が行く着く先で見出した答えとは。

倍賞千恵子
磯村勇斗 たかお鷹 河合優実 ステファニー・アリアン 大方斐紗子 串田和美

脚本・監督: 早川千絵
配給・宣伝: ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト: https://happinet-phantom.com/plan75/
Twitter: @PLAN75movie #PLAN75

©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee


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