Vol.1008 音楽家 宮川彬良(「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト2022」CD発売について)

宮川彬良(「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト2022」)

OKWAVE Stars Vol.1008は音楽家・宮川彬良さんへの「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト2202」CD発売についてのインタビューをお送りします。

Q 「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト2202」の製作のきっかけについてお聞かせください。

A『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』宮川彬良直接的には2019年10月14日のコンサートで「作ります」と宣言したのが一番のきっかけです。自分で自分を後押ししなければならないくらいチャレンジングなことだとずっと思っていたので、“言わせた自分”と“言われた自分”の二人がいる感覚です。
原点まで遡れば、父の『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』を初めて聴いた、クラシックの勉強を始めたばかりの頃です。歌謡曲は1曲3分の世界ですし、劇伴も長くても4分、だいたいが1分半くらいです。一方で、クラシックの交響曲は1曲40分くらいありますが、その勉強を始めた頃に『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』を聴いてピンとくるものがありました。現代的でかつ格好いいアニメから交響曲の作品が新たに生まれたのがいいなと、こういう作品を目指したいと思ったものです。また、当時のピンク・フロイドにしろ、EL&Pにしろ、レコード1枚で1曲、トータルで聴くものだというプログレッシブ・ロックのコンセプトとも合致していました。こういう作品を作らなければいけないなと、誰かに言われたものではなく、僕自身が感じていたことです。
作曲家になってからは「彬良さんバージョンの交響組曲を聴きたい」と日本コロムビアの方から会うたびに言われていましたが、その時はおいそれとできるものではないと感じていました。その後、『宇宙戦艦ヤマト2199』に携わることになりますが、この作品が始まる時には次もあると思いましたし、むしろシリーズを継続させていかなければならないと感じていました。そうなれば、その先にはきっと交響組曲の話も出てくるだろうなと、気持ちの上ではずっと意識するようになっていました。

Q 製作に向けて準備はどのように進められたのでしょう。

A宮川彬良コンサートで宣言してから、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』オリジナル・サウンドトラック VOL.2をバンダイナムコアーツの方と聴きながら構成についての具体的な会話が始まりました。さらに『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』の製作が決まったという話も聞いて、まずはこの交響組曲を2020年6月にレコーディングしようと考えていました。それがコロナ禍によってスケジュールは変わってしまいました。ちょうど僕は2021年に行われるミュージカルの楽曲制作を終えて、「天保十二年のシェイクスピア」公演も終えて一段落していた時期です。だから自分の書きたい曲を作る時間はありました。そこから『2202』全七章を観直すところから始めて、自問自答しながら丸100日かけて曲作りを行いました。逆に、コロナが無かったら全く別の作品になっていたと思います。

Q 交響組曲とポップスを作る作業は異なるものですか。

A宮川彬良例えるならエッセイしか書いたことがない人が長編小説を書くような仕事なので、手順から全然違います。全体を考えながらも断片に浮かんでくるものを大事にして、パズルのようにつないでいきます。つまり、交響組曲は“つながりの妙”なんです。1曲の中にもいろんな要素がありますし、そのつながりが大切なので、劇伴とオペラが全く違うものであるように、むしろミュージカルやオペラを作ることと似ています。劇伴は映像に寄り添いますが、交響組曲では音楽そのものが物語るんです。
父が作った『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』も改めて聴きましたが、ヤンチャなチャレンジが多いんです。演歌のギターがメロディを弾いていたり、「真っ赤なスカーフ」がサンバになっていたり、劇中にない曲が出てきたり。かなり自由にやっていたのだろうけど、それでも9曲目の「ISKANDALL」まで聴くと「やっとたどり着いたんだ」という気持ちにさせられます。組曲はストーリーの順番通りではないですし、いろんな音楽の要素が詰まっているのに達成感を感じるんです。しかもそこで終わりではないですし。本編26話とは違うのに同じ気持ちにさせられるんですね。
今回も交響組曲でしかできない何かがあるはずだということが僕のチャレンジでしたし、父に対する敬意もあります。劇伴を並べて交響組曲とする作品とは違うものを作りたいという思いもありました。

Q コロナ禍の中で、レコーディングはどのように進められたのでしょうか。

A『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』宮川彬良自粛期間には僕は「どうやってコンサートホールを再開するのか」ということを考えていました。舞台上はどうしても過密になりますのでオーケストラは難しいと、6月末くらいにスタジオをコーディネートするインスペクターの方と話をして、分けて録るしかないという結論になりました。けれども完全に分けて録ってしまうと「宇宙戦艦ヤマト」の音にはならないんです。「宇宙戦艦ヤマト」という作品にはミュージシャンが集って一斉に音を出すことが望まれます。そこで回線を経由しても指揮者の動きを時差なく見られるということで、スタジオを2つ用意し密集を避けて、スタジオの使用時間も極力減らして小刻みに録音をすることで何とかやりきりました。この取り組みができたことで、その後には大掛かりな録音もできるようになったので音楽業界としては良かったと思います。ただ、スタジオを2つ押さえるのですからお金もかかっています。この経験を10年後にはいい思い出話としてできるといいです。

Q 『宇宙戦艦ヤマト2199』に携わった時のことを改めてお聞かせください。

A宮川彬良西﨑義展さんが『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』を作る際に指揮者の大友直人さんから連絡が来て「一緒にやろうよ」と声をかけられました。僕は最初の「宇宙戦艦ヤマト」が好きで続編のような作品に携わることには抵抗感があってお断りしたんです。それがあって『宇宙戦艦ヤマト2199』の話をいただいて出渕裕さんと会った際もまず僕の方からその思いを喋りました。すると出渕さんは「僕がやりたいのはその最初の26話のリメイクなんです」と言われ「それならやります」と、まるでマンガのようなやり取りで引き受けました。出渕さんから「訓練学校の校歌やガミラス帝国の国歌を作りましょう」と、いい横道から誘ってくれたのも一因です。ここで僕が引き受けずに違う作曲家の名前があったら自分でも納得できないという思いもありました。そうして引き受けたことで段々と考え方が変化してきたところはあります。

Q宮川彬良さんからOKWAVEユーザーに質問!

宮川彬良皆さんはアナログレコード(ヴァイナル)の音を聴いたことがありますか。聴いた時にCDや配信の音との違いを感じられましたか。
それとコンサートホールでスピーカーを経由していない楽器の生音を聴いたことはありますか。その時に何か違いを感じましたか。

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■Information

「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト2022」

「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト2022」CD(品番:LACA-15855)
発売中
『2199』『2202』の音楽を担当し、親子二代にわたりヤマト音楽を創造してきた宮川彬良が、これまでの集大成として、劇中で使用されたBGMを再構成し、新たに「交響組曲」としてアルバムを発売します。1977年に発売され、父・宮川泰が手掛けた「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」を志向しつつ、BGMをともに作ってきたスタジオミュージシャンたちと令和の「ヤマトサウンド」をお届けします!
価格:3,300円(税抜)
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
●収録内容:約60分、第一章〜第七章+ボーナストラック(全8トラック)
●仕様
・新規描き下ろしジャケット
・高音質 CD「UHQCD」

『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』

『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』劇場上映・Blu-ray特別限定版・デジタルセル
2021年6月11日(金)同時スタート!

西暦1969年アポロ月面着陸から始まる宇宙開拓、2199年イスカンダルへの大航海、2202年ガトランティス戦役に至るまで、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を中心に再構成した、人類史・宇宙史に刻まれる歴戦の全記録。新作カット・新録ナレーションを織り交ぜた慟哭の120分!!

https://yamato2202.net/


■Profile

宮川彬良

宮川彬良(「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト2022」)1961年生まれ、東京都出身。
作曲家・舞台音楽家として活躍中。『コンサートはショーである』を信条に、さまざまな企画のコンサートを日本全国で行っている。
近年では、2017年NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の音楽担当、「第68回紅白歌合戦」のオープニングテーマ作曲、2018年ミュージカル「ナイン・テイルズ」上演、2020年祝祭音楽劇「天保十二年のシェイクスピア」など、その活躍の場は多岐にわたる。

https://akiramiyagawa-official.com/
https://twitter.com/AkiraMiyagawa


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