OKWAVE Stars Vol.1011は劇場版『僕が君の耳になる』(2021年6月25日公開)主演の織部典成さんへのインタビューをお送りします。
Q ろう者(聴覚障害のある方)とのラブストーリーである本作の題材についてはどう感じましたか。
A織部典成これまで耳の聞こえない方と出会う機会がなかったので、何もかもが初めてのことばかりでした。この作品と出会って、考える機会になりましたし、僕自身が真剣に向き合わないと映画にも全部出てしまうと感じました。主演ということでもちろん嬉しい気持ちもありましたが、プレッシャーも大きかったです。お話をいただいて、正式に決まる前から自分が演じるんだという気持ちで手話の勉強も始めました。
Q 手話でのお芝居が多い役柄でしたが、手話はどのように勉強されましたか。
A織部典成何から始めたらいいのか分からなかったので、手話の本を読んだり、動画を見るところから始めました。手話の本の著者の鈴木隆子さんの教室が都内にあることを知って、ご訪問させていただいたんです。鈴木さんは「ぜひ協力したいです」と言ってくださって、手話の基礎から教えていただきました。
手話は覚えようとしても頭に入ってこなくて、むしろ“伝える”という気持ちが正しいのだろうなと気づきました。覚えられない時期に、手話という会話の楽しさを忘れかけていたんです。伝える楽しさを意識したら、基礎の動きが自分の中に入ってきて、そこからは応用もできるようになりました。やはり基礎がある程度入っていかないと、それ以上には進めないなと思いました。この映画では手話と同じように初めてギターの練習もしましたが、ギターも基礎の押さえ方ができないと弾けるようにならないので、やはりどれも基礎が大事なんだと感じました。
皆さんに助けられて準備を始められたので、感謝の気持ちを忘れずに、手話の練習をしたり、ギターの練習をしたり、台本を読み返して、この作品のことを毎日考えながらクランクインまでの日々を過ごしていました。
Q 純平役の印象はいかがでしたか。
A織部典成純平は純粋で正直な性格で、芯をしっかり持っています。起きていることに対して考えるよりも思ったことをする、ということを意識して、飾らずに演じるようにしました。
Q 美咲役の梶本瑞希さんはろう者とのことですが、共演についてはいかがでしたか。
A織部典成梶本さんとはクランクインでほぼ初顔合わせでした。撮影初日の梶本さんはずっと台本を読んでいたので、すごくストイックで努力家だという第一印象でした。
僕としてはできるかぎり文字ではなく手話で会話することを心がけていました。最初はこの映画の共演者で手話指導もされている三浦剛さんの助けも借りていましたが、撮影の最後の方には梶本さんと二人だけで手話で会話ができるようになっていました。それができたということに僕自身嬉しかったですし、梶本さんも嬉しかったそうで「ありがとう」と言ってくれて、その言葉が心に沁みました。やってきて良かったと、努力が実ったなと感動もしました。
純平と美咲のシーンでは演じようとは思わずに、自然なやりとりがそのまま映像に出るような感じが良いと思いました。今回はお芝居でのコミュニケーションを大事にしていたので、「純平はこういう感情だから美咲はこんな感じでどうだろう」といった事前に相談をするのは違うなと思っていて、撮影の合間は演技の話ではなく世間話をして交流していました。
Q 撮影現場で何か印象的な出来事などありましたか。
A織部典成自分が撮影をしていないときも他の方のシーンを見させていただきました。その中でも美咲のお母さん役の森口瑤子さんが素晴らしかったです。控え室ではおひとりで上の方をじっと見ていらして、きっと頭の中で何かを合わせていたのだろうと、その頭の中を見てみたいと思っていました。撮影期間中にお聞きすることはできなかったので、舞台挨拶でお会いしたときにどのようなことを考えながら演じていたのか聞けたらいいなと思っています。
親友役の松井健太くんとは趣味の話をしたり、役柄についてもお互いのより深いところまで知っていないと関係性が見えてこないだろうと思ってよく話して合っていました。
Q 歌についてはいかがでしたか。
A織部典成僕はダンスヴォーカルグループ「銀河団」のメンバーでもありますが、ダンスをメインにやっているので、実は歌にも不安があったんです。終盤に歌う大切なシーンでは、上手に歌うことよりも純平が美咲に伝えようとしているという気持ちを大事にして歌いました。
Q この映画への主演を通して、ろう者への見方など、ご自身に変化はありましたか。
A織部典成僕らは普段日本語を第一言語として話していて、たとえばアメリカに行って英語で会話をして、それが間違っていたとしても、相手は寄り添って、読み取ってくれると思うんです。ろう者の方にとって、手話が第一言語で、日本語が第二言語です。にもかかわらず、日本人なのに日本語が使えないと思われて、ろう者への理解がまだまだ足りていないなと感じます。この映画に携わるまで僕もそこまで考える機会はなかったので、僕自身がこの映画を通じて手話という言語で新しい扉を開くことができたので、今後も手を差し伸べられたらと思います。多くの方にこの映画を観ていただいて、いい方向に考え方が向けばいいなと思います。
Q 織部典成さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A織部典成いろいろな方に支えていただきながら、僕自身100%万全の状態で準備をさせていただいて、手話にギターと初めての挑戦しながら、撮影させていただきました。
この映画は真っ直ぐなラブストーリーですが、その中に葛藤や障害があり、それを乗り越えたところに本当の愛があるのだと、作品に携わりながら実感しました。もっとろう者の方々への理解が深まればいいなという気持ちもあります。ぜひ劇場でご覧いただけたらなと思います。
■Information
劇場版『僕が君の耳になる』
2021年6月25日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
大学生・純平は街角で弾き語りをするが、そのギターと歌声に耳を傾ける人はほとんどいない。そんな中、初めて足を止めてくれたのは、同じ大学に通う美咲だった。後日純平は、大学で彼女に話しかけるがそこで彼女がろう者であることを知り、美咲と話すために手話の勉強を始める。
実話を基に描かれる感動ラブストーリー。
監督: 榎本次郎
出演: 織部典成、梶本瑞希、三浦剛、忍足亜希子、木村祐一、岡田結実、阿部祐二、森口瑤子
主題歌: 「僕が君の耳になる」HANDSIGN
劇中歌: 「Blue Dreamer」山岸純平
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©僕が君の耳になる製作委員会
■Profile
織部典成
2000年8月18日生まれ、大阪府出身。
ソニーミュージックが手掛ける個性派演劇集団「劇団番町ボーイズ☆」ならびにダンスヴォーカルユニット「銀河団」、さらにはスペシャルユニットNight Ravensのメンバーとして活動中。また個人としても舞台などに出演を重ねている。
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