OKWAVE Stars Vol.1021は映画『ベイビーわるきゅーれ』(公開中)W主演の伊澤彩織さんへのインタビューをお送りします。
Q ご主演の経緯をお聞かせください。
A伊澤彩織今年の1月に公開された阪元裕吾監督の『ある用務員』という映画がきっかけです。殺し屋がたくさん出てくる映画の中で、髙石あかりさんと一緒にシホとリカという女子高校生殺し屋コンビとして共演していました。『ある用務員』の撮影した2ヶ月後くらいに監督から連絡が来たんです。「スタッフでラッシュ上映を3回実施したら、いずれの回もシホとリカの人気がすごいです。好評すぎてスピンオフの話も出ています」と言われたので「やりたいです」と即答しました。そこから私たち2人が主役の映画の企画が始まりました。金髪と黒髪の女の子2人組の殺し屋というベースは同じです。阪元監督、あかりちゃんと2回目の現場だったので安心して現場に立つことができました。
Q ちなみに『ある用務員』の撮影のときは撮影の様子はいかがだったのでしょう。
A伊澤彩織『ある用務員』の撮影は2020年の6月で、初めての緊急事態宣言が明けた後だったので、現場にいられることがうれしかったです。私自身も、自粛期間に仕事がいくつか無くなってしまいましたし、制限や我慢を乗り越えた分、他の皆さんも良い作品を残そうというモチベーションが高いように感じました。限られたスケジュールの中で激しいアクションの撮影もありましたが、和やかで、一致団結した現場でした。
Q そんな『ある用務員』の現場を経て、今回の『ベイビーわるきゅーれ』の台本の印象はいかがでしたか。
A伊澤彩織台本をいただく前から監督からは「日常に溶け込んでいる殺し屋の話にしたい」「公共料金の払い方も知らないような日常生活に不慣れな人の話を書きたい」という話をお聞きしていて、その設定から面白いと感じていました。殺し屋と言うと幼い頃から戦闘訓練を受けていたり、普通の人が実は裏の顔で殺し屋という話が多いと思いますが、彼女たちは本業の殺し屋としては一流だけれど、日常生活をうまく過ごせていないという人間らしさがあるので共感されやすいなと。自分の共通点も多かったですし、まひろの考えることを理解しやすかったです。
Q まひろのキャラクターとご自身の似ているところは。
A伊澤彩織自分に甘いところと、気持ちの整理の仕方が似ていました。家の中に、劇用の銃やナイフが日常的に転がっているところも似ているなと。まひろが上手く人間関係を作れなくて、ひとりで自己解決する様子は、かつての自分のことを思い出すようでした。あかりちゃんもちさとと似ているところが多いと話していたので、まひろとちさとの中に伊澤彩織と髙石あかりが同居している瞬間もあって、生活しているシーンを素で演じている感覚になることもありました。
まひろと唯一似てないところは料理ができること!私は料理が苦手なので、まひろが1人でおでんを作ったり、煮物を作ったりできているのが「偉いな、私よりちゃんと生活できてるじゃん!」と思っていました。
Q 髙石あかりさんとの共演についてはいかがでしたか。
A伊澤彩織あかりちゃんは天真爛漫な方で、現場にいるだけで周りが明るくなるんです。現場のどこにいるのかすぐに見つけられるくらいなので、一人だけ光り輝いているようにも見えました。私とは9歳離れているのですが、きっと普段からまわりのことを考えていて、芯が強く、年齢差を感じませんでした。私はセリフを覚えるのが苦手で、衣装合わせのときに「どうやってセリフを覚えているの」と聞いたんです。あかりちゃんは「セリフを覚えようとすると覚えられないから、セリフを言っている役がどういう気持ちでいるのか考えながら演じていると、言葉を覚えていなくてもその時のセリフが出てくるんですよ」と、役作りについて気づかせてくれることもありました。劇中の長回しのシーンのセリフが覚えられなかった時も、挿入歌を一緒に歌った時も引っ張ってくれて、あかりちゃんがいたからがんばれました。
Q まひろは心の声をぼそっと言うのが面白いですね。
A伊澤彩織まひろは人のことをちょっとバカにすることがある割に自分にはとても甘いんです。まひろは人と上手に関われなくて、アルバイトもなかなか決まらないし、日常生活が本当にうまく送れない、一見すると社会不適合者だけど、サンドバッグを叩いたりネコの動画を眺めたりして、自分でそのストレスから上手く逃げることができてるんですよね。まひろはストレスを溜め込みたくないから、思ったことを素直にぽそぽそと出しちゃうんだと思います。
Q アクションシーンは迫力があって、動きも複雑かつキレキレでしたが、どのような準備をされたのでしょう。
A伊澤彩織アクション監督が園村健介さんに決まってすぐに、園村さんに「練習を見てください」と連絡しました。私がアクションを始めた頃から園村さんにはお世話になっていて、他のアクション監督とは身体の使い方が違うことを知っていました。園村さんはパンチひとつ打つ行為だけでも、背骨、腸腰筋、前鋸筋など、身体の構造からどう動けばいいのかを考えるので、園村さんの真似をしようとしても簡単には真似できないんです。ジャブの練習だけでも2時間打ち続けたことがあります。でも、飽きるどころか、身体をどう使っていけば、重たいパンチが打てるのか、動きの説得力が増すのかと考えていくと2時間ではとても足りないんです。5時間パンチの基礎練習をしていられるくらい綿密な身体の動かし方を園村さんに教えていただいて、自分の中に落とし込むという作業をずっとやっていました。
少しでも相手に遠慮して動くと、後で映像を見返したときに、加減したのが画に見えるんです。三元雅芸さんが相手だったからこそできたことですが、多少当たってしまっても動じないことがわかっていたので、遠慮を捨てて本気で挑みました。園村さんは暴力と格闘技の間のような緊張感を作るのが天才的で、練習の段階から少しでも気を抜いたら危ないという圧迫感の狭間に身を置いていました。
Q 一方で、女子高校生やアキバのメイド姿のようなかわいらしい衣装はいかがでしたか。
A伊澤彩織とくにアキバのメイド姿は、私は衣装合わせのときに着た自分自身のメイド姿に心配してしまった気持ちのまま本番を迎えたので、逆に、まひろの恥ずかしさや居心地の悪い気持ちを表すにはちょうど良かったと思います。高校生の制服は、撮影で着させていただく機会が結構多くて、その度に「大丈夫ですか?」と確認していますね。もう27歳なので、そろそろ大人の衣装でアクションしたいです(笑)。
あかりちゃんはどの衣装を着ていても、可愛くて、似合ってました。ポンチョ姿もはんてん姿も可愛かったし、多分何着させても様になっちゃうんだろうな。
Q 伊澤彩織さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A伊澤彩織『ベイビーわるきゅーれ』は両極端な性格の殺し屋2人が日常の中で起きる些細なことに対処しながら生活していく映画です。共感できるところが多いと思うので、ぜひ自分と重ねて観ていただければ嬉しいです。ここ最近は、SNSに何かしらアップしなきゃとか、自分のやりたいことに前向きに生きようみたいな風潮がありますが、そういうものが一切頑張れなくても大丈夫だということを感じられると思います。私たち以外にも強烈なキャラクターがたくさん出てきますので、ぜひ楽しんで観ていただけたらと思います。
■Information
『ベイビーわるきゅーれ』
女子高生殺し屋2人組のちさととまひろは、高校卒業を前に途方に暮れていた・・・。
明日から“オモテの顔”としての“社会人”をしなければならない。組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たち。
突然社会に適合しなければならなくなり、公共料金の支払い、年金、税金、バイトなど社会の公的業務や人間関係や理不尽に日々を揉まれていく。
さらに2人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、2人の仲も徐々に険悪に。
そんな中でも殺し屋の仕事は忙しく、さらにはヤクザから恨みを買って面倒なことに巻き込まれちゃってさあ大変。
そんな日々を送る2人が、「ああ大人になるって、こういうことなのかなあ」とか思ったり、思わなかったりする、成長したり、成長しなかったりする物語である。
髙石あかり 伊澤彩織
三元雅芸 秋谷百音 うえきやサトシ 福島雪菜/本宮泰風
水石亜飛夢 辻凪子 飛永翼(ラバーガール) 大水洋介(ラバーガール) 仁科貴
監督・脚本: 阪元裕吾
アクション監督: 園村健介
配給: 渋谷プロダクション
公式サイト: https://babywalkure.com/
公式ツイッター: https://twitter.com/babywalkure2021
©2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会
■Profile
伊澤彩織
2月16日生まれ。
現役のスタントウーマン。
映画『RE:BORN』の研修生オーディションに合格し、アクショントレーニングを開始。映画『キングダム』、『るろうに剣心最終章The Final / The Beginning』、『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』などで、メインキャストのスタントダブルを担当した。映画『ある用務員』で現役スタントウーマンが女優として出演し話題に。日本テレビ「行列のできる法律相談所」で『いま気になる人』としてコーナーゲスト出演し、現在その知名度が爆上がり中の存在。