Vol.1022[後半]渡辺えり、高畑淳子(『喜劇 老後の資金がありません』について)

『喜劇 老後の資金がありません』

OKWAVE Stars Vol.1022後半は『喜劇 老後の資金がありません』渡辺えりさんと高畑淳子さんへのツーショットインタビューをお送りします。

■ツーショットインタビュー

登壇(敬称略):渡辺えり、高畑淳子

※『喜劇 老後の資金がありません』製作発表記者会見の模様はこちら

Q 共演者についてお聞かせください。

A渡辺えり宇梶剛士くんとは長い付き合いです。20年前にオーディションで「歌も踊りも得意です」と言うから信じて選んだら両方とも下手で(笑)。初井言栄さんが怒ってしまったので、居残り稽古を毎日したら段々と良くなって、初井さんもこれならいいと認めてくれて。時間はかかったけど誠実に役に向かう方なので、それからもよく共演していて、自分でも劇団をやっていて演出もやっているので、それを観に行ったりもしてずっと交流が続いています。羽場裕一くんは夢の遊眠社での芝居を観ていました。羽場くんの奥さんがうちの劇団員なので結婚式にも行きました。明星真由美さんも小劇場中心にずっと活躍してきて、『喜劇 有頂天団地』でも共演しています。一色采子さんとも松竹の舞台で共演しています。他の方とは初めてですね。

高畑淳子明星さんとはテレビドラマで共演していて、舞台もよく拝見していて面白い女優さんだと思っています。氣志團のマネージャーをやっていたことがあって彼らをトップに育てたという不思議な経歴の方なんです。宇梶さんとは、加藤健一さんが『キング・リチャードIII』をされたときに背の低い傴僂男のような王を演じるために背の高いイケメン俳優たちを集めたんです。その稽古を見に行って中でも印象的だったのが宇梶さんです。今回夫婦役なのでとてもうれしいです。長谷川稀世さんは演舞場で何度か観ていて演技にキレがありますし、今回の芝居では年金詐欺のくだりがとても面白いので楽しみにしています。

Q 見どころと舞台ならではの演じる心がけについてお聞かせください。

A渡辺えり、高畑淳子『喜劇 老後の資金がありません』渡辺えり心がけについては毎回先が分からないように演じたいですね。今回の役は自分に無い部分がとても多いです。篤子さんは全体的には幼児性というか子どもっぽいところがあって、でも大人の部分もあるし、周りから縛られているところもあります。人に言われてついつい聞いてしまう優柔不断なところは私も少し似ていますが、私は火山のように何かを決めますが、篤子さんはゆっくりと決めていきます。そんな他人に縛られているような感覚をリアルに出していくことを、共演者の芝居を見ながら作っていけたらと思います。高畑さんの演じる神田サツキのことを篤子さんは自分と好対照だと思っていて、救いにもなっています。私も高畑さんとは同じ様に感じていてそのまま役として演じたいと、今日話していても思いました。世代も同じで苦労も同じようにしているので、役を演じる上でもすごく役に立つなと思っているんです。
見どころは、相手に対して思い込んでいたことが、実はそうでもなかった、ということを、セリフの説明があまりない形で見せていくところがこの芝居の見どころだと思います。それと突然歌ったり踊ったりするシュールな変化も見どころですね。

高畑淳子お話として面白いのは、年金詐欺をしてしまいそうになるところが劇として楽しいと思います。えりさんとは共通点が結構多いので、その2人を両方観られるというのは“おいしい”と思うんです。役は台本に書かれている役柄がありますが、舞台に私やえりさんがいて、その時間が愛おしいという素の部分が出れば、あの2人がいてよかったと思ってもらえるような芝居になると思います。人と人がセリフを喋っているのはいいなと思ってもらえるような舞台になればと思います。

Q “老後の資金”について思うところはいかがでしょうか。

A渡辺えり老後の資金は2,000万円必要という話があってすぐに取り消されましたけれど、私の周りの演劇人で2,000万円持っている人は誰もいなかったんです。「一般の人はすごいね」「2,000万円でも足りない」という人もいて、自分はすごく悩みました。その後にコロナが来て、どんどんマイナスになっていくので、そんな時期にこの『喜劇 老後の資金がありません』の話が来たので、責任は重いです(笑)。老後の資金がないのだから、無くても暮らせるアイディアは何かを考える方向に持っていきたいと思っています。

高畑淳子老後のためにお金を貯め込むこととは別に、それだけではない何かが必要なのかなと思っています。お金はあっても、年齢を重ねることは、老け込むとか死が近づくといった、想像しても耐えられないようなことなので、若い頃と同じお金の額でも意味合いが違うと思います。それを味わっていただきたい作品ですね。

Q ご自分では“老後”はいつからだと思いますか。

A渡辺えりドキュメンタリー番組で見るような、お祝いの席で親戚100人くらいが集まるような老後が理想ですが、私にとっては“幸せな老後”はないなと思っています(笑)。「演劇おばあさん」なんてあだ名で呼ばれるようになって最後はなけなしのお金で劇場に行って客席で死んじゃったりなんかしたらつまらない作品だったのに「渡辺が最後に観た作品」とよほど好きなのかと間違われると困ります(笑)。私は断捨離が苦手なので、介護施設に身一つで行くことになるのも不安です。100箱分の舞台台本の生原稿などを寄贈する予定で、その整理を10年かけてやるつもりですが、いま死んだらみんな困ってしまうのでまだまだ死ねないです(笑)。
でも、そもそも老後って“老いた後”なので本当はいつからなのでしょう。引退してからということであれば、森光子さんには老後があったのかなと。だからクリアなまま亡くなれば老後はないなと思います。

高畑淳子私はもう老いているなと実感しています。自分が写った写真やテレビを観て「老いたんだ」と感じることが多いです。でも、こうしていまも作品に呼んでもらって稽古場に行けるような幸せが自分に来るとは若い頃には思っていなかったです。30代はいまよりもきれいで知力も体力もあったけれど仕事は全く無くて、それに陰りが出てきてからお仕事が増えてきたので、いまのままであれば悔いがないです。

渡辺えり高畑さんは『欲望という名の電車』のブランチ役を演じましたけど、ああいう誰が見ても二の線、たとえばシンデレラとか伊豆の踊子とか、そういう役をやってから死にたい、という思いはありますよ。

高畑淳子おやりになったらいいと思いますよ。

渡辺えり誰も頼んでくれないし、自分でやりたいから企画したと思われるのも嫌だし(笑)。

高畑淳子でも私もブランチを演じて散々叩かれましたよ。「女優さんが企画したものでいいものはない」って。でもやって悔いはなかったですよ。

Q 節約生活についての経験や一方でこれは譲れないというものに着いてお聞かせください。

A渡辺えり私が節約できないのは演劇と映画のチケット代ですね。歌舞伎なんて朝から晩まで観ると数万円しますし、観劇のお金だけで一月で15万円くらいかかってしまいますが、それは節約できないです。その分、自分の生活はいろんなアイディアで節約しています。

高畑淳子私は若い頃本当に貧乏だったので節約することが当たり前になっていて、いまでもスーパーでの買い物は20%オフとか夕方に安くなるものを買ったりしています。お腹も丈夫なので、少しくらい古いものを食べても平気ですし(笑)食べ物に関しては我慢強いです。今日の衣装も布を買ってきて自分で縫っているんですよ。

渡辺えり劇団員は我慢強いですよね。私もお金がない頃はキャベツ炒めばっかり食べてましたよ。でも最近も同じで、コロナでお店が早くに閉まってしまうから食べられなくて泣きながら帰ったことがあるんです(笑)。

Q 渡辺えりさん、高畑淳子さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A渡辺えりこのお芝居を通じて、お金だけでは得られない、生きていくための勇気のような贈り物を届けたい気持ちでいます。

高畑淳子「今日1日芝居見物に来てよかった」と思ってもらえるように頑張るのみです。森光子さんの『放浪記』を初めて観た時、あまりに良くて今日の日を忘れないようにしようと、お金もないのに真珠を買ったんです。そういう劇にというのはおこがましいですが、とにかく観てよかったなと思ってもらえるようにしたいです。

Q渡辺えりさん、高畑淳子さんからOKWAVEユーザーに質問!

渡辺えり老後の資金はズバリ、いくらあればいいと思いますか。

高畑淳子皆さんはどんな芝居を観たいですか。

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『喜劇 老後の資金がありません』製作発表記者会見の模様はこちら


■Information

『喜劇 老後の資金がありません』

2021年8月13日(金)~26日(木)新橋演舞場
2021年9月1日(水)~15日(水)大阪松竹座

渡辺えり・高畑淳子 舞台初共演!! 平凡な主婦に次々と降りかかる“老後の資金”問題!
娘の派手婚、姑への仕送り、舅の葬儀費用、夫が無職に!?
この夏、最も笑って泣けて共感できる喜劇の幕が開く!!

主婦の後藤篤子(渡辺えり)は、家計に無頓着な夫の章(羽場裕一)、大人しい長女・さやか(多岐川華子)、優秀な長男・勇人(原嘉孝)と4人家族。契約社員として働きながらコツコツと老後の資金を貯めていました。
篤子の楽しみは生花教室。先生の城ケ崎(松本幸大)は皆の憧れの的で、生徒の関根(明星真由美)も彼に夢中です。その教室で一番仲の良い友達・神田サツキ(高畑淳子)とのおしゃべりはストレス解消の大事な時間。サツキは夫・克也(宇梶剛士)と小さなベーカリーを営んでいました。
そんな中、次々と篤子の“老後の資金”が減っていく事態が起こります。長女の派手婚資金、姑・芳子(長谷川稀世)への仕送り資金、義妹の志々子(一色采子)に約束させられた舅の葬式資金、さらには夫の会社が倒産!?
一方サツキは、姑の年金を当てにしていました。しかし認知症の姑は失踪しており、役所訪問の際に、篤子の姑に身代わりになってほしいと頼みます。でもこれって年金詐欺になるのでは!?
篤子とサツキ、ふたりの行く末は? 果たして幸せな老後を過ごすことができるのか!?
私たち、「老後の資金がありません」!!

原作: 垣谷美雨(中公文庫)
脚色・演出: マギー

後藤篤子: 渡辺えり
後藤章: 羽場裕一

後藤芳子: 長谷川稀世
後藤さやか: 多岐川華子
後藤勇人: 原嘉孝

城ケ崎快斗: 松本幸大(ジャニーズ Jr.)
関根文乃: 明星真由美
櫻堂志々子: 一色采子

神田克也: 宇梶剛士
神田サツキ: 高畑 淳子

新橋演舞場・観劇料(税込)
1等席12,000円、2等席8,500円、3階A席4,500円、3階B席3,000円、桟敷席13,000円

大阪松竹座・観劇料(税込)
1等席12,000円、2等席7,000円、3等席4,000円

https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2108_enbujyo/


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