Vol.1026 女優 舞木ひと美(映画『あらののはて』について)

女優 舞木ひと美(映画『あらののはて』について)

OKWAVE Stars Vol.1026は映画『あらののはて』(公開中)主演の舞木ひと美さんへのインタビューをお送りします。

Q プロデュースと主演を務められた経緯をお聞かせください。

A舞木ひと美主演もプロデュースも両方務めたのは初めてです。長谷川朋史監督がルネシネマという自主映画制作ユニットを立ち上げていて、私が女優業だけでなく映画の裏方の仕事もしていることもあって、最初は裏方として手伝ってもらえないかと声をかけられたんです。「でもその前に1本主演として出てほしい」とも言っていただいて、この『あらののはて』のプロットを見せていただきました。そのプロットがすごく面白かったので「出演します」と即答しました。

Q ではストーリーについてはどう受け止めましたか。

A舞木ひと美デッサンのモデルをすることを引き受けた女の子が、そのとき感じた絶頂感を8年間も忘れられない、という設定を見ただけで、何て面白いのだろうと思いました。学校を舞台にした映画はたくさんありますが、こんな設定は見たことがないのでそれだけで面白そうだと感じました。

Q 風子の役柄をどう受け止めましたか。

A女優 舞木ひと美(映画『あらののはて』について)舞木ひと美風子は私の当て書きだと言われて台本を渡されたんです。ですので「これが私なのかな」というのが第一印象でした(笑)。風子は掴みどころがなくて、自由奔放ですし、興味があるものとないものへの差が結構あります。何より物事へのアプローチが上手ではないです。素直だから自分の気持ちをポロッと言ったり相談もするけれど、その先の行動が計算高くないので、もう少し考えて行動すればいいのにと思いました。
当て書きの役だからといって、自分自身ではないので演じる難しさもあります。台本を読んで「自分はこう見られているんだ」と学んだ部分があるので、私からにじみ出ているものが誇張されているのかなと受け止めて、私の性格と重なる部分を探していきました。従来は役に対して自分が近づいていくことが多いですが、自分の方に役を引っ張ってくるという感覚だったので、そういう役作りは初めてでした。

Q そんな風子役を演じる上で、監督から言われていたことはありましたか。

A舞木ひと美私自身は人が好きで、相手の懐に入ることも、相手が自分に近づいてくれるようにすることも普段から心がけていますし、会話のキャッチボールをちゃんとしようとしています。でも、監督からは風子を演じる上で「そういうことはしないように」とずっと言われていました。それを象徴することがカットされたシーンにあったんです。風子が荒野に頼まれて教室でデッサンのモデルをする際に、教室にやってきた風子はヌードモデルだと勘違いして制服を脱ごうとして、それを荒野が止める、という会話のやり取りがありました。でも、ずっとすれ違っている二人の話なのに、そこはお芝居的に会話が噛み合ってしまっていたので、その一連はカットされたのだろうなと思います。

Q カメラ位置が固定で長回しのシーンがとても特徴的ですが演じる分にはいかがでしたか。

A舞木ひと美画面から登場人物がフレームアウトすることもあってびっくりもしました。監督からは「舞台で演じていると思って」と言われました。「舞台の袖に一旦捌けてまた出てくるような構図だよ」と。そう言われて理解できましたが、主演なのに画面の外に捌けてしまうのは斬新でした。公園で風子とマリアが喧嘩するシーンでは、ふたりともフレームアウトしてしまいますが、マリア役の眞嶋優さんも役の感情を途切れさせたくないという気持ちでいたので、画面の外でもそのまま取っ組み合いを続けていてそのまま画面上に戻ってきているんです。冒頭の成瀬美希さんとの取っ組み合いでの映像はカット割りされていますが、ここも気持ちを途切れさせずに演じたので、まさに演劇で舞台袖で気持ちを作ってから出る、というような感覚でした。

Q 現場の雰囲気全般についてはいかがでしたか。

A舞木ひと美大人数の現場ではなくて、違う部署のスタッフ同士でも助け合っていました。スタッフだけではなく、成瀬美希さんは学校での自分の出演シーンを終えた後も、夜の公園のシーンでスタッフさんたちに温かい飲み物を配ってくれたり、教師役の藤田健彦さんも周りをケアされていたり、お互いに助け合う、ギスギスすることのないとてもありがたい現場でした。

Q 荒野役の髙橋雄祐さんとの“通じ合わない”役どころの共演はいかがでしたか。

A舞木ひと美髙橋くんとは共演歴も長いので、彼の独特の話し方やニヤッと笑うところも分かっているのですが、荒野役はそんな彼自身が注入されていて、髙橋くんの高校時代はこんな感じだったのかなと想像できました。荒野役はオーディションで選ばれたので髙橋くんへの当て書きではなかったのですが、荒野は髙橋くんなのではと思うくらいしっくりきました。

Q 本作のプロデューサーとしての役割についてお聞かせください。

A舞木ひと美普段からキャスティングの仕事をしているので、もちろん事務所とのやり取りは私がやりました。制作部と呼ばれる部門がこの映画ではなかったので、スタッフィングだけでなく、ロケ地探し、お弁当の発注、宿泊先の手配まで、仕事は幅広かったです。長谷川監督もサポートしてくれましたが、やはり監督業に専念していただきたかったので、撮影に入るまでのことを私が手配しました。

Q 完成した映画を観てどう感じましたか。

A舞木ひと美私はプロデューサー、主演という立場なので俯瞰しては観られなかったんですが、この映画は全体を俯瞰して計算して作られているんです。『画面から見えるものだけが全てではない』という構造もそうです。監督は、「青春時代は誰の心にもあるものだから、それを重ね合わせられるようにした」とおっしゃっていて、とくに監督と同年代の40代以上の男性にはどストレートな作品なんだそうです。門真国際映画祭2020で三部門受賞しましたが、審査員の方たちがその世代で、監督にしてみれば狙い通りだったそうです。

Q ご自身はどの役に近いですか。

A舞木ひと美私自身は風子にまったく共感できないです(笑)。どちらかという成瀬美希さん演じるクラスメートの前田のように風子の振る舞いに苛立ったり、しゅはまはるみさん演じる絵画教室の先生の珠美のようにアドバイスする立場の方に近いです。

Q 本作に携わっての学びや気づきをお聞かせください。

A女優 舞木ひと美(映画『あらののはて』について)舞木ひと美主演としては表に立つ人間であるということが俳優部の役目ですが、それだけでもいけないということを今回の映画で学びました。プロデューサーとして、お金の管理から劇場公開に至るまで映画製作の内部に一貫して関わったのは初めての経験でした。いろんな人にお聞きしながら進めていくことで、部署にとらわれずにやっていくということもありだと思いました。各部門のスタッフさんはみんなその道のプロフェッショナルです。でもこの映画ではたとえばスタイリストさんがレフ板を持ってくれたり、他の方も何かしら手伝ってくれていたので、自分の仕事だけに執着せずにみんなで作ればそれだけ楽しいということも分かりました。もともと一つの作品での出演と振付をやる機会はありましたが、プロデューサーという責任のある立ち位置を経験できたことで、これからもプロデュースできる作品があればやっていきたいです。

Q 舞木ひと美さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A舞木ひと美ぜひ劇場で、スクリーンで観ていただきたいです。私自身が信頼できるとオーディションに呼んだ俳優たちの芝居も見ていただきたいですが、長谷川監督の画作りのこだわりも感じていただきたいからです。外でのシーンの空の見せ方や色味もそうですし、公園のシーンで背景にあるジャングルジムもただ映っているのではなく、ライティングに工夫をこらしているんです。そんな色彩に関する監督のこだわりがあちこちにあるので、美術の個展を見る感じで観ていただきたいです。長回しもたくさんあるので、メインキャストの動き以外の映り込んでいるものも、捜し物をする感覚で観ていただきたいです。それにはぜひ大きなスクリーンがいいと思います。

Q舞木ひと美さんからOKWAVEユーザーに質問!

舞木ひと美皆さんの今でも忘れられない高校時代の出来事をお聞かせください。

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■Information

『あらののはて』

映画『あらののはて』2021年8月21日(土)~9月10日(金)池袋シネマ・ロサにてレイトショーほか全国順次公開

25歳フリーターの野々宮風子は、高校2年の冬にクラスメートで美術部の大谷荒野に頼まれ、絵画モデルをした時に感じた理由のわからない絶頂感が今も忘れられない。絶頂の末に失神した風子を見つけた担任教師の誤解により荒野は退学となり、以来、風子は荒野と会っていない。
8年の月日が流れた。
あの日以来感じたことがない風子は、友人の珠美にそそのかされ、マリアと同棲している荒野を訪ね、もう一度自分をモデルに絵を描けと迫るが…

門真国際映画祭2020にて最優秀作品賞、優秀助演男優賞、優秀助演女優賞の三冠
うえだ城下町映画祭 第18回自主映画コンテストにて審査員特別賞(古廐智之賞)受賞

出演: 舞木ひと美 髙橋雄祐
眞嶋優 成瀬美希
藤田健彦 しゅはまはるみ
監督・脚本: 長谷川朋史
配給: Cinemago

公式サイト: https://runecinema.com/aranonohate/
Twitter: https://twitter.com/aranonohate
Facebook: https://www.facebook.com/rune.aranonohate

(c)ルネシネマ


■Profile

舞木ひと美

女優 舞木ひと美(映画『あらののはて』について)1989年9月13日生まれ、宮城県出身。
女優として活動するとともに普段はダンサーとしても活躍している。近年では、映画『ヤクザと家族The Family』の主題歌「FAMILIA」に振付師として参加。他にも舞台、ドラマ、CM等の振付を数多く手掛けている。

https://twitter.com/maki_sindy


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