OKWAVE Stars Vol.1034はアニメーション映画『神在月のこども』(公開中)白井孝奈アニメーション監督へのインタビューをお送りします。
Q 原案から携われていた本作立ち上げの経緯をお聞かせください。
A白井孝奈この映画はかなり特殊なケースなんです。この作品を企画したクリティカ・ユニバーサルはこれまで映画の広告に携わって、その作品を使ってどう観客とコミュニケーションをとっていくのかを提案していく、広告の一歩先を行くようなことをずっとやってきました。これまではお預かりした作品をどう伝えるかに注力してきましたが、10年目を迎えて、自分たちの想いを乗せた作品を使って、観客にダイレクトにコミュニケーションしていきたいと代表の四戸俊成と副代表の三島鉄兵の2人がこの企画を立ち上げました。アニメーション映画で思いを伝えていきたい、という段になって、私は四戸さんとご縁があったことから、映画の内容そのものが決まる前にお声がけいただきました。その時点では私が監督を務めることは決まっていませんでしたが、企画の立ち上げやお話づくりから参加できるということに魅力を感じて参加しました。
Q 本作のストーリー立てやアニメーション表現としてはどのように企画していったのでしょう。
A白井孝奈私が参加した時点では、実際にその場所に行きたくなるような、日本の風土や文化を描きたい、ということは決まっていました。五輪や万博など、日本国内だけではなく海外の方も日本に目を向けているタイミングで、この作品を観ていただければ日本のことが伝わればいいなという思いがありました。それで、日本の神様や文化、実在する場所が出てくる作品にしようと。走る少女というコンセプトは私が入ってから作っていったものです。三島の故郷が島根ということで、島根をモチーフとして取り込みたいということと、各地域に祀られている神様という世界観と人間ドラマが組み合わさった作品にしていこうと、積み上げていきました。
作品を通したルックとしては、ロケハンで出雲大社などを訪れる中で感じた、日本特有の湿度感を出したいと思いました。出雲大社の鳥居は赤ではなく木の色ですし、きらびやかさよりもそんな湿度感に日本らしさを感じました。韋駄天の使命を受け継ぐことになった主人公カンナの、最初は暗い気持ちからむしゃらにがんばっていくという作品の持っている泥くささや、秋という雨のシーンなどの季節感などを映し出せるといいなと思いました。
Q 主人公カンナの声に蒔田彩珠さん、鬼の少年・夜叉に入野自由さんを起用した狙いは。
A白井孝奈カンナの頑ななところと筋が通ったところが声の質感からも感じられたらと思いました。蒔田さんの声はそんなカンナを表現するのにぴったりだと思いました。
夜叉に関しては、粗野なキャラクターをイメージしていましたが、それだけではない多面的な雰囲気を入野さんは足していただいて、夜叉の声にぴったりだと思いました。
Q 制作の過程で大変だったことはいかがでしょう。
A白井孝奈アニメーション監督を務めるのは初めてで、日々起こることも初めてのことばかりでした。作り手のみんなは私が初監督であることを承知して参加していただいていたので、完成に向かってずっと支えていただけました。また、制作の真っ只中でコロナ感染拡大があり、出社して作業をするということができない時期もありました。みんな日々の生活も大変な中でこの作品の完成に向けて注力していただいたので、ひとりひとりが大変だったと思います。とにかく前に進んで作るしかないという思いでいました。
Q 白井孝奈監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!
A白井孝奈この作品は日本の文化や場所をご覧いただけると同様に、そこで起きるカンナたちのドラマにも思いを込めました。カンナが走る使命に立ち向かう気持ちや乗り越えていく過程には、年齢や性別に関わりなく、何かを感じていただけると思います。いまはトライすることも難しい状況が続いていますが、この映画を観ていただいて、カンナのように一歩を踏み出そうと思っていただけたらうれしいです。
Q白井孝奈監督からOKWAVEユーザーに質問!
白井孝奈カンナは自分が好きなことについて悩んでしまいますが、旅を通して一歩を踏み出していきます。
皆さんへの質問ですが、自分の中で一番大切にしたい好きなことは何ですか。
■Information
『神在月のこども』
少女の名は、カンナ。
母を亡くし、大好きだった”走ること”と向き合えなくなったこども。
そんな少女が、在る月、絶望の淵に母の形見に触れたことで、歯車が廻りはじめる。
現れたのは神の使いの、うさぎ。
出雲までの旅にカンナを誘う。
少女は問う
「本当に、お母さんに会えるの?」
白兎は答える
「ご縁が、あれば。」
行く手を阻むのは、鬼の子孫、夜叉。
行く先で出あうのは、大小様々な八百万の神々。
神無月と書き、全国から神々が姿を消す月を神在月と呼び、神々を迎えてまつる神話の地。
島根・出雲、この島国の根と読む場所へ、自分を信じて駆ける少女のものがたり。
原作・コミュニケーション監督: 四戸俊成
アニメーション監督: 白井孝奈
脚本: 三宅隆太/瀧田哲郎/四戸俊成
企画: クリティカ・ユニバーサル
配給: イオンエンターテイメント
©「神在月のこども」製作御縁会
■Profile
白井孝奈
1988年生まれ。
クリティカ・ユニバーサルが企画し9年前に実施した産学連携企画『STUDIO4℃×京都精華大』に学生として参加、 グランプリを獲得し、卒業後、同スタジオのアニメーターとして活躍。『おおかみこどもの雨と雪』『かぐや姫の物語』『ハーモニー』他の作画や『海獣の子供』では作画監督助手を担当。 8年を経てクリティカ・ユニバーサルに加入。島根に祖母を持ち『神在月のこども』には原案から参加し、アニメーションを監督。