OKWAVE Stars Vol.1038は映画『ある家族』(公開中)主演の野村真美さんへのインタビューをお送りします。
Q ファミリーホームという題材をどの様に受け止めましたか。
A野村真美もともと児童養護の分野への関心が高かったので「ついにこういう作品が来たか」と感じました。23歳のときに主役を務めたドラマで、戦災孤児を引き取ったり、戦争未亡人の方たちの自立を支援する役を演じて、それが私自身の大きな指針になっています。それに高校生の頃から尊敬する人はマザー・テレサだったので、この映画のような考え方は自分のベースにあるんです。困っている人がいたら手を差し出すのが自然な考え方になっているので、この映画でファミリーホームの母を演じさせていただくのは光栄でした。
Q 擬似的な家族を形成するファミリーホームという仕組みそのものについてはどう感じましたか。
A野村真美ファミリーホームは児童福祉法改正によって平成21年度から始まった制度です。全国には約46000人の子どもの養護が求められています。子どもは愛情とともに育まれることが大切ですし、それによってその後の人生も変わっていくと思います。それには必ずしも血がつながっていなくても、縁として結ばれていくことができればいいと思うので、ファミリーホームの仕組みは良いことだと思います。さまざまな事情で傷ついている子どもたちが、人を信頼したり、自分も愛されていいんだと感じられる場が大切だと思います。養護施設は一箇所に大人数で暮らしますが、ファミリーホームは6人までということですので、ちょっとした大家族での生活なので、すごくいい制度だと思います。
Q 台本についてはどう感じましたか。
A野村真美あるファミリーホームの要となる人物に生じた出来事を通じて、子どもたち一人ひとりが成長していくストーリーです。子どもと接する上で大切なのは時間ではなく密度だと思いますので、短くてもその密度が本物で温かいものであれば子どもに伝わるし、血がつながっていなくても、ファミリーホームの父母の温かさで包まれている、そんなところがうまく書かれている台本だと思いました。
Q 現場の様子についてお聞かせください。
A野村真美私はもともと子どもが好きなので、子役で参加したどの子も本当にかわいかったんです。その中で私はまさに母の立場で時には「マスクしなさい」「いつまでも騒いでないで」と言うこともありましたが、母親役は身構えるものではなくごく普通のことでした。私自身は子どもがいませんが人生のプランの中でこの映画の中にも出てくる里親のようなことを考えたこともありますので、映画を通してそれを体験させてもらったのかなと思います。とにかく現場は楽しく温かい雰囲気でした。
川﨑麻世さんとも芝居を交わすのは初めてでした。川﨑麻世さんは撮影初日の控室で、そんなこと言っていいのと思ってしまうようなことも私に話してきて、最初から心を開かれていたので、ナチュラルに撮影できました。とても包容力のある方でした。
Q 終盤の野村さんの迫真のお芝居に、子どもたちの反応はいかがだったのでしょう。
A野村真美子どもたちの間でも「お母さんすごい」と話題になっていたそうです。子どもたちとはそれまでに心のコミュニケーションが取れていたので、とてもナチュラルに演じられました。子どもたち一人ひとりを見ると自然とセリフが出てきて、お芝居を通り越したように感じられたのが幸せなことだと思いました。何より子どもたちがとてもかわいかったから、そういう空気感になったので、非常に幸せなシーンでした。
Q 聴覚障害のある子との手話での会話もありますね。
A野村真美私には聴覚障害のある友人がいて、手話も少し教わっていました。障害のある方と初めて接するときは戸惑ってしまうかもしれませんが、私も何度か会ううちに普通でいいんだと気づきました。それがベースにあったので、障害のある人とのコミュニケーションも普通だと思って演じました。映画の中では口の動きと手話とで表現したので少しオーバーかなとも思いましたが、友人は口の動きを読んで理解するので、そんな普段の手話の仕方が出てしまいました。
Q この映画に携わって何か新しい気づきなどはありましたか。
A野村真美ファミリーホームという制度ができたことをこの映画で知ったので、養護施設や里親ではなく、普通の家庭に子どもたちを迎えられるということに新鮮な驚きがありましたし、いい制度だとも感じました。いまこの瞬間も癒やしやぬくもりを求めている子どもたちがいます。誰だってありがとうと言われたら嬉しいし、怒ってくれる人がいたら嬉しいと思います。ひとりでも多くの子どもたちの心が癒やされるような家族が増えたらいいなと感じました。この映画がそのきっかけとして広がっていけばいいなと思います。
Q 野村真美さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A野村真美心身の浄化には、ぜひこの『ある家族』を観てください。
■Information
『ある家族』
全国順次公開中
ファミリーホームを舞台にした感動物語。日本でも数件しかない家族(夫婦と娘)一軒家で生活している児童養護施設での感動物語。
何かと問題がある施設で切り盛りしていた気丈な母が余命を宣告される。
はたして、その後の生活は。
川﨑麻世
野村真美
寺田もか
監督・脚本・編集: ながせきいさむ
■Profile
野村真美
1964年10月19日生まれ、神奈川県出身。
1985年、『ママたちが戦争を始めた!』(NTV)でデビュー。
『吉原炎上』(87)『花園の迷宮』(88)『寒桜』(92)では体当りの演技が話題となる。
1988年、朝の連続ドラマシリーズ『花らんまん』(YTV)で初主演、宇野巴役を好演。
1989年度NHK大河ドラマ『春日局』では秀頼の正室・千姫役で出演。
1990年より橋田壽賀子ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS)四女・葉子役で出演、2010年まで続く人気シリーズとなる。
以降、舞台・映画・ドラマにと精力的に活躍。座右の銘は、『行き当たり、ばっちり!』
https://www.toho-ent.co.jp/actor/1083