OKWAVE Stars Vol.1040は映画『彼女はひとり』(2021年10月23日公開)中川奈月監督と主演の福永朱梨さんへのツーショットインタビューをお送りします。
Q 本作は立教大学大学院の修了制作として撮影されたとのことですが、撮影に至るまでの経緯をお聞かせください。
A中川奈月大学院の修士課程として映画を1本撮り終えるということで、1年くらいかけて脚本を書きました。ホラーを撮りたいということが最初にあって、サスペンスも好きで、復讐モノもいいなと思っていました。そして幽霊も出したいと思って、そんな“全部載せ”で脚本を書いていきました。
脚本が完成して、キャストを選ぶにあたってオーディションにて福永さんを選ばせていただきました。
福永さんはオーディションの部屋に入ってきたときからすごいオーラをまとっていたんです。まったく明るくない、禍々しい感じで、福永さんの人柄を知らなかったので、何だか怖い子が来たぞと(笑)。シーンを演じていただいたらすごく上手だったので、この人なら澄子にぴったりだと思って選びました。
Q オーディションにはどんな気持ちで臨んでいたのでしょう。
A福永朱梨オーディションを受ける前に脚本を読ませていただいて、主人公の澄子は自分に近いというか、この役は自分が演じるんだ、という気持ちになりました。オーディションでは自己紹介は素のままで、演じる際に役に入る、ということが多いと思いますが、家を出るときから澄子の気持ちになりきっていました。控室でも相当怖がられていたと思います(笑)。オーディションが終わって帰るときにスタッフの方がチョコを配っていらしたのですが、澄子の気持ちのままそっけないお礼の返事をして受け取ってしまったのが申し訳なかったです。
決まったときは嬉しかったですし、もしも自分以外の人が演じることになっていたら、とても苦しい気持ちになっただろうなと思います。
中川奈月福永さんに決まってから改めてお会いしたら明るく挨拶をされて「あのときと違う!」と驚かされました(笑)。
Q 澄子の役柄についてはどんな話し合いをされましたか。
A中川奈月澄子は優等生でうまくやってきたけど、自分の内側に溜まったものを吐き出してしまうキャラクターだと説明をしましたが、福永さんは「はい、分かりました」とすごくスムーズに澄子になりきっていました。
福永朱梨自分がイメージしていた澄子とズレがなかったのでスッと入っていけたんです。私自身は暗い性格ではないですが、人に明るく接している分、澄子のように自分の内側に溜まっているものはあるので、そんなに離れているキャラクターではないなという印象でした。
Q どのような演出を心がけたのでしょう。
A中川奈月初めての撮影だったので自分のスタイルというものはまだなかったです。福永さんと秀明役の金井浩人くんが芝居で想像以上に面白くしてくれているので、2人が最大限に力を発揮できるようにして、それをカメラに収めていくということを心がけました。
Q 澄子と幼馴染の秀明の関係性がこの作品の見どころですが、お芝居はいかがでしたか。
A中川奈月澄子と波多野先生役のキャストが決まって、秀明役にはこの2人の間にいたら嫌だなと思う組み合わせを考えていました。金井くんはとても上手で、秀明を演じたら心に響くことができそうだと思って決めました。
福永朱梨現場で金井くんとは和気藹々としていました。映画の中で澄子と秀明が仲良くしているシーンはありませんが、幼馴染の関係性なので、撮影の合間に過去の楽しかった時間を作っている感覚でした。芝居の中身について話し合うことはほとんどなかったです。
演じているときは、秀明を責めれば責めるほど、金井くんがどんどん反応してくれるので、自然と澄子の強い部分をグッと出すことができました。
中川奈月澄子の言葉の背後には哀しみがあるということを福永さんが表情で見せてくれていたので、秀明を責める気持ちと甘えたい気持ちもあることが伝わってきます。一見、責められている秀明がかわいそうな気もしますが、責めている澄子もせつないなと自分でも感じました。そういう意味では、あれだけエスカレートしていても、途中で澄子のことをもう見たくないという気持ちにはならないし、むしろ、この先が見たいと思わせるものを福永さんが出してくれたと思います。
Q 秀明と、澄子のお父さんの共通点についていかがでしょう。
A中川奈月お父さんと秀明がそれぞれ好きな相手を選ぶ理由を同じにしようと指導教官の篠崎誠さんがおっしゃられて、それで考えましたが、自分でも同時にそれを言われたら辛いなと思います(笑)。相手を選ぶ理由は言葉を尽くすよりもポッと出てくるようなものだと思いますが、それが全く同じであること自体が最悪な気持ちになりますし、その理由も含め、その後の澄子の行動も、そうせざるをえないなと思います。
Q 映像的なこだわりはありましたか。
A中川奈月学校の校舎にせよ外にせよ、良いロケーションがたくさんあったのと、それをさらに良い形で撮っていただいた芦澤明子さんの力量が大きかったと思います。私自身、使えるところは使い倒したいという気持ちでいました。澄子が毎回よきせぬところから出てくることや、禍々しい雰囲気で人に近づく距離感を、平面ではなく、階段の上下で表現できたのは効果的だったと思います。
福永朱梨澄子と秀明が階段で会うシーンは、必ず澄子が上段にいるんです。これが澄子が階下から上がってくるのだと何かが違うのだろうなと思いました。
Q 撮影中の印象的な出来事についてお聞かせください。
A中川奈月撮影以外のところでは大変だと思うこともありましたが、撮影中は本当に楽しいなという気持ちでした。福永さんと金井くんの芝居を見ていてワクワクもさせられましたし、衝撃的も受けました。
福永朱梨撮影のことはすべて鮮明に覚えていて、とくに映画の終盤、階段で秀明と言い合うシーンが印象深いです。その直前まで金井くんとはすごく楽しく話していて、「本番始まります」と言われて、2人で「はーい」と返事をしてあのシーンでした。楽しく話していたからこそ澄子の怒りの気持ちもグッと出てきて、忘れられないシーンになりました。
中川奈月呼ばれた後、2人はすごい表情をして出てきたんです。撮影前にはシーンの始め方について打ち合わせた方がいいなと思っていましたが、2人の様子を見て、何も言わない方がいいなと。じゃまをしない方がいいと思ってそっとしておきました(笑)。
Q 映画祭などでの反響をどう受け止めましたか。
A中川奈月海外でも上映をさせていただいて、女の子がここまで強く相手に当たる作品はあまりないと言われることが多かったです。海外でもそう言われたことで、この映画の特殊性が改めて分かりました。自分が観たいものを作ろうと思っていて、それがみんなの観たいものだったんだと実感もできました。
福永朱梨2018年に作られてから毎年どこかの映画祭で観ていただく機会がありました。観ていただいた方からの声も届いていますし、毎回観てくださる方もいて、もっとたくさんの人に観ていただきたいなという気持ちになりました。
自分自身は、完成した映画を初めて観たときは俯瞰では見られず、自分の初主演、初長編映画ということで自分の演技が気になっていましたけれど、段々と一つの作品として澄子のことも観ることができるようになりました。
Q 今後の抱負などお聞かせください。
A中川奈月今後も監督として映画を作っていきたいので、そのためにもこの作品を皆さんに観ていただいて、私のことをこういう物語を作る監督だと知っていただきたいです。それと、キャストさん、スタッフさんの素晴らしいところがたくさん出ていると思いますので、この作品に関わっていただいた方々の良い部分も知っていただきたいなと思います。
福永朱梨あのときの自分と中川監督でなければ作れなかった映画だと思っています。この最高傑作をさらに超えられるような作品をまた中川さんと一緒に作りたいな、共犯者になりたいなという気持ちがすごく強いです。
Q 中川奈月監督、福永朱梨さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A中川奈月力強くおすすめできる映画です。一度観ていただけたら伝わるものがきっとあると思いますのでぜひ映画館に観に来てください。
福永朱梨新宿Kʼs cinemaでは2週間の公開になりますが、何回観ても新しい発見がある映画になっていますので、ぜひ何度も観ていただけたら嬉しいです。
Q中川奈月監督、福永朱梨さんからOKWAVEユーザーに質問!
中川奈月新宿Kʼs cinemaの近くのおいしいごはん処を教えてください。ぜひ食事と合わせて映画を観に来てください。
福永朱梨映画館でもテレビでもいいですが、初めて触れた映画は何ですか。私はホラーが苦手なんですが『仄暗い水の底から』をテレビでやっていて、家族で見始めたら、みんなは寝てしまって、自分は怖くてテレビも消せないまま最後まで観てしまって、エレベーターやお風呂のような空間がしばらくの間怖かったです(笑)。
中川奈月何かは覚えてないですが、印象に残ってるのは『フィフス・エレメント』です。
■Information
『彼女はひとり』
2021年10月23日(土)より新宿Kʼs cinemaほか全国順次公開
高校生の澄子はある日橋から身を投げた。しかし、死ねずに生還してしまった。数ヶ月ぶりに学校に戻ってきた澄子は、幼馴染の秀明を執拗に脅迫し始める。身を投げる原因を作ったのは秀明であり、秀明が教師である波多野と密かに交際していると言う秘密を握っていたのだった。その行為は日々エスカレートしていくが、そこには秀明との過去、そして澄子の家族に関わる、ある少女の幻影があった…。
脚本・編集・監督: 中川奈月
福永朱梨
金井浩人 美知枝 中村優里 三坂知絵子 櫻井保幸 榮林桃伽 堀春菜 田中一平 山中アラタ
配給宣伝: ムービー・アクト・プロジェクト
https://mikata-ent.com/movie/884/
©2018「彼女はひとり」
■Profile
中川奈月
立教大学を卒業後、NCWにて映画制作を開始。その後立教大学大学院映像身体学科にて『彼女はひとり』を制作。その後、東京藝術大学大学院映画専攻に進学し、「昼の迷子」「夜のそと」を制作した。
福永朱梨
1994年12月7日生まれ、広島県出身。
主な出演作に、TVドラマ「ただいま会議中」(Eテレ/14)、「撃てない警官」(WOWOW/17)、「本気のしるし」(メ〜テレ/19)、映画に『恋とさよならとハワイ』(17)、『君の膵臓をたべたい』(17)、『となりの怪物くん』(19)、『君は月夜に光り輝く』(19)、 舞台「別れても好きな人 2014」、「⻑井古種 日月」などほか多数。
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