OKWAVE Stars Vol.1041は映画『ミュジコフィリア』(2021年11月19日公開)に出演の川添野愛さんへのインタビューをお送りします。
Q 本作の小夜役の出演オファーをどう受け止めましたか。
A川添野愛現代音楽を題材とした音大生たちの物語で、小夜はコンサートマスターを務めるようなバイオリニストだとお聞きしたので、プレッシャーしかなかったです。お声がけいただいて嬉しかったですが、バイオリンの経験は全くなかったですし、小夜の気品と私にはギャップがある、というのが率直な感想でした。
Q 脚本を読んでどう感じましたか。
A川添野愛この映画化では原作を意識しなくても良いと言われていました。そういう意味でまっさらな気持ちで脚本を読むと、ト書きにもシーンで流れる音楽のことや周囲から聞こえてくる音の描写がかなり細かく入っていて、どのように完成するのか想像するのが難しかったです。その分、このお話に肉付けされていく音楽がどれだけ大切かということが伝わってきましたし、私たち役者が中途半端に演じて観客に違和感を持たれてしまうとこの作品の良さが伝わらなくなるなと、更に一段階、責任やプレッシャーを感じました。
Q 小夜役をどのように捉えましたか。
A川添野愛劇中の小夜は悩んでばかりなんです。演じる上では幸せそうなシーンが多くなかったのですが(笑)、小夜の人生全体を捉えると、一見、控え目に見えますが、個性的な仲間たちと居ても一目置かれていますし、その仲間たちが外に発散しているのに対して、小夜は内側に芯の強さのようなものがあるのだと感じました。谷口正晃監督と小夜のキャラクターについて話した際には「聖母マリアのような感じなんじゃないかな」と言われ、さらにプレッシャーを感じました(笑)。とはいえ、強さを秘めているところとみんなが癒やされる女性像という意味では、私の感じた印象と監督の仰っていることは同じかなと思って小夜像を作っていきました。
Q 川添さんご自身は映像演劇学科出身とのことですが、芸術系学科ということでの共通点などはありましたか。
A川添野愛大学に入る前は芸術系大学には華やかなイメージを持っていたんです。いざ自分が入ってみると学科によって随分イメージが違いました。ただ、共通点としては、変わっている人がいても、驚かなくなるところです。『ミュジコフィリア』では青田が冒頭の鴨川沿いのシーンで突拍子もないことを言い出しますが、私自身もそういう環境にいて面白いと感じられるようになったので、実際にあっても楽しめると思います。
Q バイオリンについてはいかがでしたか。
A川添野愛小夜役に決まってから一刻も早く練習を始めたかったのですが、使用するバイオリンによっても弾き方が変わってくるとのことで、練習のうちから撮影する時と同じバイオリンがいいと先生から言われました。結果的に、私の母が子どもの頃に使っていたバイオリンを直して使いました。その直す期間もあったため、きちんと練習できたのは3ヶ月ほどでした。既存の曲は事前に練習できましたが、映画オリジナルの現代音楽は譜面のない状態で順次できあがってきて、先生がバイオリンパートの譜面を起こしてくださって、撮影期間中も練習していました。音楽は差し替えられてはいますが、同じ旋律を弾けるように教えていただいて、撮影でも演奏をしています。これまでにクラリネットと和太鼓は演奏経験がありましたが、弦楽器自体が初めてで、バイオリンはその中でも一番難しいと聞いていましたし、バイオリンを構えるところから難しかったです。
Q 現場の雰囲気はいかがでしたか。
A川添野愛撮影初日が入学式後の鴨川沿いでの現代音楽サークルのシーンで、その時が出演者同士の初顔合わせでした。結構みんな人見知りで探り探りでしたし演奏もあったので独特の緊張感があったんです。しかも川沿いはすごく寒くて、途中には雨も降ってしまって過酷な初日でした。そんな初日を乗り越えたことでみんな一気に同志のようになって、とくに青田役の阿部進之介さんがムードメーカーになって、青田と同じ様に大きな声でお話されていたので、現場はすっかり和みました。
Q 朔役の井之脇海さん、大成役の山崎育三郎さんとの共演はいかがでしたか。
A川添野愛井之脇さんは自分から話すタイプではないですが、お芝居はもちろん、いるだけで安心感のあるような座長でした。普段は静かな方ですけれど、納得がいかないところはとことん話し合いますし、お芝居に熱い方でした。
山崎育三郎さんは本当に優しくて、皆さんが抱かれているような王子様のイメージそのままでした。気品高いイメージがあったのですが、とても気さくで、少年のようなキラキラした目で話しをされるんです。山崎さんは基本、好きなことの話になると饒舌で、山崎さんと阿部さんが一緒にいると二人のお喋りが止まりませんでした(笑)。山崎さんの撮影期間は私たちよりも短かったのですが、強烈な印象を残していかれました。
Q 小夜は朔と大成の間にいる存在ですが、そこでのお芝居はいかがでしたか。
A川添野愛小夜は朔の前では本音で話せるし、大学でみんなから見られている小夜像とは違って、肩肘張らずにいられる安心感のようなものを感じました。大成に対しては期待に応えたいし自分のせいで大成の才能を壊したくないと思っているし、大成の才能も小夜の好きな部分なのだと思います。だから小夜は悩んでしまうので、私も緊張感がありました。大成として辛辣な言葉をかけられた後に、山﨑さん自身は気さくに話をしてくださる方だったので、ほっとしましたし、役での豹変ぶりに驚かされもしました。
Q 撮影エピソードをお聞かせください。
A川添野愛普段のロケでの撮影は、ホテルからロケバスで撮影場所まで移動しますが、今回の撮影では、京都のタクシー会社さんが担ってくださって、タクシー車輌での移動だったんです。さすが観光地の運転手さんだけあって、京都の知識が豊富でした。毎日いろんなお話を聞きながら移動していたので、癒やされる不思議な時間を過ごせました。
ロケ地はどこも素晴らしくて印象的でした。とくに印象的だったのは、クランクアップの日に撮った広沢池で小夜がバイオリンを弾いているところに朔が来るシーンです。広沢池自体、市街地からそんなに離れているわけではないのにすごくいい場所で、夕暮れを狙って撮影をしていたので素敵な映像になっています。私たちも現地でその光景の美しさに黙って見入ってしまう瞬間もありました。今回の撮影では京都のスタッフさんも多くて、そんな地元の方でも「こんな場所があったんだ」と感動されていました。この映画は観光地ではなくても素敵な場所がたくさん出てきますので、ぜひこの映画を観て気になったところに行ってみるのもオススメです。
Q 本作出演を通じて新しい学びや発見はありましたか。
A川添野愛お芝居プラス音楽という映画は初めてで、演奏シーンがお芝居にどう影響するのかという不安はありました。現場には音楽プロデューサーの方が監督と一緒に見ていただいていましたが、あらためて振り返ってみると、音楽に意識を取られすぎずにお芝居に集中できる環境だったと思います。私たちがお芝居に集中できるようにと、監督がそういう雰囲気を作ってくださっていたので、私たち俳優部がやらなければならないことはお芝居に集中することで、それはどの現場でも同じなんだと感じました。
Q 川添野愛さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A川添野愛現代音楽と聞くと身近ではないと感じてしまう方もいらっしゃると思います。この映画は音楽を楽しんでいただける映画に仕上がっていますが、朔と大成の兄弟の物語が主軸ですし、何か大切な、素敵なものができる瞬間というものは身近にあるんだという可能性を感じられる作品です。今の時代、大きな出来事に心を持っていかれがちですが、この映画を観て、自分の身の回りの当たり前だと思っていたことに目を向けられる映画になったと思います。人間ドラマが楽しめる映画ですので気軽に映画館に足を運んでいただけたらと思います。
Q川添野愛さんからOKWAVEユーザーに質問!
川添野愛私はこれまで役者として新しいことにチャレンジする時、今回の映画のロケ地でもある“京都で”ということが多く特別なご縁を感じています。
みなさんは縁を感じたり、なぜか惹かれたりする土地やスポットはありますか?少し理由も添えてお聞かせいただけると嬉しいです!
■Information
『ミュジコフィリア』
2021年11月19日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
京都の芸術大学に入学した朔は、ひょんなことで「現代音楽研究会」に引き込まれる。
クセの強い教授や学生たちが集まるそのサークルには、朔が憧れてきた幼なじみでバイオリニストの小夜、そして若き天才作曲家として将来を期待される大成がいた。実は、大成は朔の異母兄で、朔は天性の音楽の才能を持ちながらも、父と兄へのコンプレックスから音楽を憎んできたのだ。
だが同じように天性の音感と歌声を持ち朔に想いを寄せるピアノ科の凪が現われ、朔の秘めた才能が開花しはじめる。
井之脇海 松本穂香
川添野愛 阿部進之介
縄田カノン 多井一晃 喜多乃愛 中島ボイル 佐藤都輝子
石丸幹二
辰巳琢郎 茂山逸平 大塚まさじ 杉本彩/きたやまおさむ 栗塚旭
濱田マリ 神野三鈴
山崎育三郎
原作: さそうあきら「ミュジコフィリア」(双葉社刊)
監督: 谷口正晃
配給: アーク・フィルムズ
公式ホームページ: https://musicophilia-film.com/
公式Twitter: @musicophilia_21
公式Instagram: @musicophilia_21
(C)2021 musicophilia film partners (C)さそうあきら/双葉社
■Profile
川添野愛
1995年2月5日生まれ、東京都出身。
幼少期より杉並児童合唱団に12年間在籍。
2015年多摩美術大学在学中に、WOWOW「贖罪の奏鳴曲」(青山真治監督)で女優デビュー。
主な出演作に、映画『ジョニーの休日』(新谷寛行監督)、日本・ミャンマー合作映画『My Country My Home』(チー・ピュー・シン監督)、『パパはわるものチャンピオン』(藤村亨平監督)、『パーフェクトワールド 君といる奇跡』(柴山健次監督)、『蒲田前奏曲』第2番「呑川ラプソディ」(監督: 穐山茉由)、ドラマ「恋愛時代」(YTV・NTV)、「パフェちっく!」(FOD)、「限界団地」(THK・CX)、「his~恋するつもりなんてなかったのに」(メ―テレ)、舞台「セールスマンの死」(演出:長塚圭史)、「春のめざめ」(演出:白井晃)、「タイトル、拒絶」(演出:山田佳奈)。
2019年より始動した東京芸術劇場芸術監督の野田秀樹氏が次世代演劇人を育成するプロジェクト「東京演劇道場」に参加。
現在、第一生命保険「幸せの道~行ってきます」篇と丸源ラーメン「感動肉そば!」篇のCMに出演中。
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https://www.instagram.com/25_noah/?hl=ja
ヘアメイク: 鈴木真帆
撮影協力: DADA integrate 株式会社