OKWAVE Stars Vol.1044は映画『CHAIN/チェイン』(2021年11月26日公開)主演の上川周作さんへのインタビューをお送りします。
Q 京都芸術大学映画学科で教える映画監督の作品をプロの映画人と映画学科の学生とで制作する北白川派の最新作にて映画初主演となりましたが、まずはご感想をお聞かせください。
A上川周作北白川派第五弾作品として福岡芳穂監督が手掛けた『正しく生きる』でご一緒させていただいて、監督の作品に出演させていただくのは今回2回目になります。京都芸術大学映画学科の卒業生としてまた声をかけていただけたのはすごく嬉しかったです。自分の活動を応援してもらえている気もしましたし、北白川派作品はその後の『嵐電』『のさりの島』も注目を集めていますので、自分が主演をさせていただくのはプレッシャーもありましたが、それ以上に頑張ろうという気持ちになりました。
Q 新選組と御陵衛士の抗争“油小路の変”を題材にした幕末を舞台にした作品ですが、その時代への関心はいかがでしたか。
A上川周作幕末に関しては、三谷幸喜さんの「新選組!」を観たくらいで、後は学校の授業で学んだ知識程度なんです。京都に住んでいた割にはあまり関心がなくて、もっと縁の地を巡っておけばよかったなと今となっては後悔していますね(笑)。でも、時代劇への出演は喜びの気持ちが大きいです。見た目からして特殊ですし、現代と違うからこその芝居ですし、時代劇を観た後は刀を振りたくなる、僕にとっては重たいものというよりはエンタテインメントの要素が強いです。
Q 本作は重厚な作品となっていますが台本を読んだ印象はいかがでしたか。
A上川周作ここまで死について迫られると、台本を読んでいる時は苦しくもなりました。一方で、登場人物にとっての希望や救いは何だろうかと考えもしました。僕の演じた山川桜七郎は架空の人物ですが、歴史書には載っていないその時代の人々の声を大事にしているんだと感じました。こういう人たちがいたかもしれないという視点と、伊東甲子太郎のような実在の人物が同じ時代に生きていて、それらが積み重なって今につながっていると認識しました。歴史は決して他人事ではないんだなと思いました。
Q ところどころで現代の京都が映し出される映像についてはどう受け止めましたか。
A上川周作それについては台本にも書かれていました。監督は「観客にとっては『ここでは入らないだろう』と不意をつくタイミングになっている」と言っていました。「京都の町を歩いていて、ふとしたところに幕末の跡地があって、ここで当時は切り合いがあったんだと感じさせられるのはある種のホラーだ」と。「自分たちは刀を振り回さない平和な時代に生きているけれど、その場所に行くと当時のことを感じる瞬間がある」と仰っていて、僕も映画を観てドキッとしました。
Q 山川桜七郎の役どころをどう受け止めましたか。
A上川周作台本を読んだ時は無骨で不器用な人間だと感じました。過去に仲間を切ってしまった葛藤と、会津藩を脱藩して自分は生きていていいのか、どう生きていくのかを考えているということを常に頭に置いていました。ただ、台本を読んで感じた無骨な男という印象は演じてみると段々と変わっていきました。会津藩は厳しい教えの中、幕末のエリートを育てていく藩だったので、桜七郎もまた責任感が強く、周りとの連携も大切にしながら幕府のために生きてきた、というベースがあります。だからこそ、会津藩を裏切ってしまった葛藤があって、これからどう生きていけばいいのか悩む中で、伊東甲子太郎ら御陵衛士と近藤勇ら新選組の“油小路の変”に巻き込まれていくことになります。いろんな思いに囲まれながら自分がどう生きていくかを考えている役どころですが、会津藩の教えというものを大切に演じました。
Q 時代劇の現場の雰囲気についてお聞かせください。
A上川周作京都に入ってから撮影前の1週間ほどで殺陣や着付けを習いました。学生たちが東映撮影所で学んできたことを教わったんです。北白川派はプロと学生が一緒に映画を作るプロジェクトですので、学生の熱量をそこで感じました。
撮影はカメラ3台を使っていて、役者はどこをカメラで抜かれているのか分からないんです。「ここは寄りだから足元は映らない」といったことはないので、常に気が抜けないという気持ちでした。現場では登場人物になって入っていかないと嘘だと思われてしまうので、そういった意味では自分自身に近い形でもあると思います。
Q 印象的だった撮影エピソードをお聞かせください。
A上川周作“油小路の変”のシーンで、新選組が御陵衛士に切りかかっていく前に、新選組の隊士は蕎麦屋に隠れて待機していました。新選組の隊士役を学生と卒業生が演じていましたが、これから御陵衛士を暗殺するという緊張感を出すために、自主的に何度も練習をしていました。隊士が座る位置などについてもずっと話し合いながら練習をしていて緊張感がすごいなと感じました。そんな風に自主的に話し合いながらストイックに作っていったものが映画の中の空気として感じられます。それを目の当たりにして良い現場だなと思いました。
Q 印象的なシーンに関してはいかがでしょう。
A上川周作映画の冒頭で、藤堂平助が「国を思う心が同じであれば用心棒でも菓子屋の倅でも誰でも私たちの味方です」と言っているセリフが印象的でした。当時の人たちは皆そういう考え方を持っていて、同じ気持ちでいても、ちょっとしたボタンの掛け違いからなのか、争いになってしまうという切なさを感じました。映画の撮影中、このシーンのセリフがずっと僕の頭の中にありました。
Q 本作主演を通じて、新しい発見などはありましたか。
A上川周作刀を持った役を演じて「殺せ。切ってくれ」というセリフを発してみて、当時の人は怖かっただろうなと感じました。この映画の撮影前は自分がそのセリフを言っても嘘になると思っていて、どう演じようか悩みました。どんなときに相手にそんなことを言える精神状態になるのかと。当時は切腹というものがあったから、死は怖くなかったのではないかと思っていました。いざ演じてみると、そんなことは全く無くて、やはり怖かっただろうと思い至りました。いつ命を落としてもおかしくないからこそ、命と向き合う覚悟や命の失い方をいま以上に大事にしていたのだろうなと思いました。刀を抜いて切り合う、いつ死ぬか分からない緊張感がある中で、僕自身の中でも命の大切さや重さというものが更新されました。
Q 本作主演を経ての、今後は抱負などお聞かせください。
A上川周作役者として演じている時間以外の方が人生は長いです。僕は役者という生き方を選んでからは、役以外で自分が経験したことや体験したこと、考えたり感じたことが役にもにじみ出るから、これからも成長していくしかないと思っています。ひとつ演じた役のことを通じて、人として成長し、次の作品で与えられた役でも、嘘ではない自分の中から出てくるセリフを言うことができるように、生活していければと心がけています。
Q 上川周作さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A上川周作『CHAIN/チェイン』は“油小路の変”を題材にしていますので、時代劇が好きな人に楽しんでもらえる部分はもちろんありますが、その時代を経て今につながっているということを映画を通して体感できると思います。時代劇に現代が映り込む不思議な映画になっていますので、何回も観ていただいて、当時はこうだったのかなと自分の中で答え合わせをしながら、純粋にこの映画を楽しんでいただけたらと思います。
Q上川周作さんからOKWAVEユーザーに質問!
上川周作皆さんは水分をいつ摂っていますか。夏が過ぎると水分を摂る量が減りますし、コーヒーやお茶だけで喉を潤してしまうと逆に全部出てしまいますし、翌朝の体調にも影響が出てしまいます。アラームを掛けて時間を決めて飲もうとした時期もあるのですが、そうすると時間に縛られているようでそれも辛いです。良いタイミングなどを知りたいです。
■Information
『CHAIN/チェイン』
2021年11月26日(金)よりテアトル新宿、12月10日(金)より京都シネマほか全国順次ロードショー
幕末・京都。会津を脱藩した浪人・山川桜七郎は、賭場の用心棒として雇われていた。賭場の胴元、侠客・水野弥三郎に御陵衛士の篠原泰之進、藤堂平助が資金繰りの相談をしている時、九州の菓子屋の息子・松之助が賭け金の持ち逃げで引っ立てられてくる。同郷と知った篠原が松之助を救い藤堂らと出ていこうとした時、陰間乞食・惣吉が襲い掛かり、咄嗟に篠原は惣吉の脇腹を斬るが、同時に用心棒の桜七郎が藤堂の前に立ちはだかった。藤堂は刀を交える中で桜七郎に対し侍としての共感を抱き、御陵衛士への合流を誘う。しかし桜七郎は無言で去る。
片や松之助は屯所の下男として御陵衛士盟主・伊東甲子太郎始め仲間たちから快く迎え入れられる。そんな様子を、斎藤一がじっと見つめていた。
新撰組局長・近藤勇と副長・土方歳三は、新撰組を脱退せんとする伊東、藤堂、斎藤らに対し、新撰組が武士として出世を認められたことを伝えるが、伊東は立場の違いを鮮明にし、両者の遺恨が深まっていく。そんな中、新撰組の大石鍬次郎は近藤の命により、組を抜け討幕派に傾いた武田観柳斎を斬殺しようとする…が、その場に現れ武田を手にかけたのは御陵衛士であるはずの斎藤だった。
一方、賭場を追われ食いつめた桜七郎は金の無心で訪れた会津藩邸で御陵衛士の不義理な行いを知り、伊東のもとに乗り込む…。
伊東の恋人、島原輪違屋の花香太夫、惣吉を救う病持ちの夜鷹・お鈴、侍に阿片を売り「男など皆死んでしまえ」と嘯くお染らを巻き込みながら新撰組と御陵衛士の対立は激化し、やがて油小路の変という惨劇へと繋がっていく…。
監督: 福岡芳穂
主演: 上川周作
出演: 塩顕治 池内祥人 村井崇記 佐々木詩音 延岡圭悟 松本薫 和田光沙 辻凪子 土居志央梨
渡辺謙作 鈴木卓爾 高尾悠希 駒野侃 宮本伊織 東山龍平 山本真莉 鈴川法子 水上竜士 福本清三 大西信満 山本浩司 渋川清彦 高岡蒼佑
企画・製作: 北白川派
配給:マジックアワー
*北白川派とは
京都芸術大学と映画学科が推進してプロと学生が協働で一年をかけ一本の映画を完成させ、劇場公開を目指すプロジェクト。2009年から現在まで8作品を制作・劇場公開。俳優の大西礼芳、土村芳らを輩出してきた。2021年は藤原季節主演『のさりの島』、上川周作主演『CHAIN/チェイン』の2本が劇場公開。
Ⓒ北白川派
■Profile
上川周作
1993年2月18日生まれ、大分県出身。
京都芸術大学映画学科5期生・俳優コース在学中に『正しく生きる』(15/福岡芳穂監督)、『赤い玉、』(15/高橋伴明監督)に出演。卒業後、「妻と飛んだ特攻兵」(15/EX)でドラマデビュー。近年の主な出演作は、映画『止められるか、俺たちを』(18/白石和彌監督)、『劇場』(20/行定勲監督)、『あのこは貴族』(21/岨手由貴子監督)、『彼女来来』(21/山西竜矢監督)、NHK大河ドラマ「西郷どん」(18)、NHK連続テレビ小説「まんぷく」(18)、アニメ「大家さんと僕」(20〜/主人公の声)など。現在木曜ドラマ「ドクターX ~外科医・大門未知子~」(EX)にレギュラー出演中。
https://otonakeikaku.net/artist/419/