Vol.1046 小島央大、山本一賢(映画『JOINT』について)

映画監督 小島央大、俳優 山本一賢(映画『JOINT』)

OKWAVE Stars Vol.1046は映画『JOINT』(公開中)小島央大監督と主演の山本一賢さんへのインタビューをお送りします。

Q 現在進行形の裏社会を描き出した本作ですが、この題材で映画製作を企画した経緯をお聞かせください。

A映画『JOINT』小島央大僕がもともとスコセッシ、タランティーノなどのクライム映画が好きだったというところからです。僕らが日常触れることのない世界や人々が窮地に追い込まれたとき、その人間性や本性があらわになるのが興味深かったです。それで僕が映画を作るとしたらこの題材にしようと。映画化を考え始めた同時期には映画的な群像劇の構造にも興味があって、その2つの要素を合わせてこの映画になりました。

山本一賢僕も企画の最初から入っていましたので、とくにこの題材は中途半端な形ではなく、やりきることが大事だと感じました。

Q “裏社会”をどのようにリサーチしていったのでしょう。

A映画『JOINT』小島央大僕らは直接的には関わっていなくても、普段からヤクザの抗争や振り込め詐欺などをニュースで見聞きしています。それらの情報について詳しく知っている情報源をたどって一つ一つの要素をリサーチしていきました。それこそ、いまのヤクザはどんな話し方をするのか、半グレはどうお金を動かして資金洗浄していくのか、そういった一つ一つの要素について、いろいろな情報源から集めてきて、物語にまとめていきました。ですので、時間は結構かかっています。
そのようなリサーチを基に、いざ日本の新しいクライム映画を作ろうとしたときに、人間ドラマとクライム映画としてのスケール感のバランスは難しかったですね。

Q 主人公・石神武司のキャラクターをどのように作っていきましたか。

A小島央大この映画では半グレを主人公にしようと決めていました。日本の裏社会にはヤクザがいて、全く違う世界の僕らカタギがいて、その中間のグレーゾーンに半グレたちがいます。今までの日本のクライム映画ではヤクザが中心にいて、それこそ昔のヤクザ映画の印象が強いと思います。それを更新して、新しいクライム映画にしたいと思って石神武司という半グレを主人公にしました。武司を取り巻く群像劇を描きながら、武司がどう生きていくかを発見するというストーリーとしてキャラクターを作っていきました。

山本一賢監督とは企画を進めている間、毎日一緒にいたので、武司のキャラクターについても監督とよく話し合って決めていきました。
僕は演じること自体が初めてでしたので、撮影が始まるまでには役になりきることを意識して過ごしていて、実際に演じる際にはとにかく集中するということを大事にしていました。

小島央大山本さんのいろいろな側面の中から石神武司というキャラクターに近い部分を抽出してそれを伸ばしていってもらいました。武司のキャラクターに合わせて演じたのではないと思います。そのように演じたことで、結果的にとてもナチュラルに見えていると思います。

Q 潜入ドキュメンタリーのような映像に仕上がっていますね。

A映画『JOINT』小島央大ドキュメンタリー風に撮りたいという意図があったので、映画の前半はとくに手持ちのカメラでの撮影を多く取り入れました。後半にいくにつれ、キャラクターを見せる方向になっていくように、カメラワークや構図、照明などを考えていきました。
演出面では、それぞれのキャストによってやり方が違いますし、半分くらいは俳優ではない方が演じています。キャスティングも、友人の友人にイメージにぴったりな人がいるからオファーする、といったやり方だったので、その人の本来持っているものをキャラクターに反映する方法をとりました。リサーチした際にイメージした半グレの独特の話し方やヤクザの佇まいをその人の個性に一捻りすれば演じられるようにして、なるべく自然体で演じられるようにしました。

Q 演じる側はいかがでしたか。

A山本一賢なかなか難しくてスムーズではなかったですね。

小島央大うまくいくときもあれば時間がかかるときもありましたが、それはどの作品でもあることなので演出する側としてはそこまで心配はしていませんでした。

山本一賢投資家としてベンチャー企業の人たちとプレゼンするシーンが難しかったですね。2日おきに撮影していて、できあがった脚本を撮影の合間に覚えるというやり方でした。プレゼンのシーンはセリフが多くて徹夜で覚えてそのまま現場に行ったんです。ところが現場に着いたら、脚本が大幅に変わっていて。ここで「できません」とは言えないので必死でした。ほかにも、精神的なタフさが求められるシーンもありました。

Q 撮影で印象的だったシーンやエピソードをお聞かせください。

A山本一賢スタッフがみんな頑張っていた印象が強いです。毎日ではないですが8ヶ月に渡る撮影でしたので、青春を感じました。

小島央大脚本が完成した状態で撮ってはいなかったので、途中で再構成をしたり、追加シーンが出てくるなど手探りでしたし、綱渡りのような撮影でした。
撮影していて印象的だったのは武司と親友・ヤスのシーンです。ヤスといるときの武司は素の状態でいられるけれど、ヤスはすでにカタギになっていて、武司はそうではない。このふたりの距離感には寂しさがあって、武司とヤスのシーンは全部印象深かったです。

山本一賢ヤスとのシーンは僕も好きです。武司と同じように苦しい気持ちにもなりましたし、グッとくるシーンになったとも思います。

Q 音楽の使い方をはじめ、編集やポストプロダクションで工夫されたことはいかがでしょう。

A小島央大編集に関してはペース感が大事だと思っていました。群像劇だけど、石神武司が中心にいて、その周りにいろんな人の生き様があって、武司が自分の生き方を見つけていくという焦点がぶれないようにしました。ドキュメンタリー風の生々しさはありながら、効果音についても臨場感があるようにして、音楽はモダンらしさを意識しました。犯罪映画の古くさい感じではなく、現在進行系の社会を描き出す上で、どういった音楽がいいのかを考えましたし、色味で新しさを出すことにもこだわりました。

山本一賢完成した映画を観た時は、素直に「こうなったのか」ということと、撮影初期の映像には懐かしさも感じました。

Q 本作を通じて新しい発見などはありましたか。

A映画『JOINT』小島央大MVや短編は撮ってきましたが、長編映画は初めてでしたので、映画は人間関係の中で作られていくのだと気づかされました。ライティングや構図、演出といった要素はもちろんありますが、その前に関わっている人たちとの人間関係があってのものなのだと。MVのような短期間の撮影では気づきにくい、映画のような長期の撮影を通じた学びでした。

山本一賢僕は撮影の現場が初めてでしたので、すべて新鮮でした。カチンコが本当にあることも、それを監督が鳴らすのではないということも現場で知りました。照明の作り方ひとつとっても発見ばかりでした。

Q OKWAVEのユーザーにメッセージ!

A小島央大日本のクライム映画としての新しさや臨場感をぜひ劇場で体験していただきたいです。普段見ない世界のようで、わりと近い世界でもあるという距離感を感じていただけたらいいなと思います。

山本一賢この映画をそれぞれ自由に感じてもらって、くれぐれも詐欺には気をつけてください(笑)。新しい手口がたくさん出てきますから、劇場でぜひ観ていただきたいです。

Q小島央大監督、山本一賢さんからOKWAVEユーザーに質問!

小島央大皆さんは自分の個人情報をどのくらい大事にしていますか。

山本一賢100億円積まれたら皆さんは詐欺をしますか。

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■Information

『JOINT』

映画『JOINT』2021年11月20日(土)より渋谷・ユーロスペース他全国順次公開中

刑務所から出所して東京に戻ってきた半グレの石神武司は、以前から得意だった個人情報の「名簿」を元手に、詐欺用の名簿ビジネスを再開する。広告代理店から引き出した顧客情報や韓国人の友人・ジュンギからもらった中古スマホの個人情報を合わせて精密な名簿を作り上げ、後輩の暴力団構成員の広野に売ってビジネスを成功させた。
その後、カタギの親友・ヤスから投資を勧められ、真っ当に生きたいと望む石神はベンチャービジネスに介入し投資家へと転身を図る。資金不足の若手クリエイターに出資し、やがて事業は軌道に乗り出す。いよいよ裏社会から足を洗おうとする石神だったが、その矢先に、大手取引先から彼の過去が問題視され「石神を外すように」と条件が出されてしまう。
一方、石神の後輩・広野が所属する関東最大の暴力団・大島会は、組を破門された武闘派たちが決起した壱川組から一大抗争を仕掛けられる。かつて大島会とつながりのあった石神も壱川組から<警告>を受け、カタギかヤクザか、大島会か壱川組か、自分自身の行く先に苦悩を募らせる。
やがて抗争は激化し、国際社会で暗躍する外国人組織「リュード」もジュンギらを通して接近しはじめる。石神の周りで数多の思惑が大きく動き出す。そして、石神はとりかえしのつかない事件と対峙することになる。曖昧で歪んだ現代社会の中、自分自身を模索する石神が辿り着く先とは?

山本一賢
キム・ジンチョル キム・チャンバ
三井啓資 樋口想現 伊藤祐樹 櫻木綾 鐘ヶ江佳太 林田隆志 宇田川かをり 平山久能 二神光 伊藤慶徳 片岸佑太 南部映次 尚玄 渡辺万美

監督: 小島央大
配給: イーチタイム

公式サイト: joint-movie.com
公式Twitter: @JOINT2020
公式Instagram: jointmovie


■Profile
映画監督 小島央大、俳優 山本一賢(映画『JOINT』)

小島央大

1994年生まれ、兵庫県神戸市出身。
幼少からニューヨークで育ち、中学より帰国し、東京大学建築学部卒業後、映像の世界に飛び込む。映像作家の山田智和の下でアシスタントディレクターを1年半経て、独立。以後、MVやCM、企業VPやVJ、LIVEなど、ジャンルや形態に囚われず、アイデア豊かな様々な映像作品を監督。情緒的な演出と、映画的で上質な色使いを得意とする。
これまで主に手がけてきた作品は、「Superbeaver – 自慢になりたい MV」「中納良恵 – 街空 feat. 折坂悠太 MV」「Daiki Tsuneta x Pasha de Cartier」など。
本作『JOINT』が長編映画監督デビュー作となる。

山本一賢

1986年生まれ、東京都出身。
2018年から俳優を始める。本作『JOINT』がデビュー作。

@yamamotoshit


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