Vol.1052 俳優 尚玄(映画『GENSAN PUNCH 義足のボクサー』について)

尚玄(映画『GENSAN PUNCH 義足のボクサー』)

OKWAVE Stars Vol.1052は第34回東京国際映画祭「ガラ・セレクション」部門にてジャパン・プレミア上映された映画『GENSAN PUNCH 義足のボクサー』主演の尚玄さんへのインタビューをお送りします。

Q 本作企画の経緯についてお聞かせください。

A映画『GENSAN PUNCH 義足のボクサー』尚玄10年ほど前にこの映画のモデルになっているボクサーの土山直純君に会いました。当初は義足ということを知らなくて、話している中で、日本ではそれが理由でプロボクサーになれなくてフィリピンに渡ったという話を聞き、感銘を受けました。その後も度々会う中で、2014年頃に「映画にしてもいいですか」と聞いたら快諾してくれました。そこから映画化に向けて動き始めました。
まず、僕のデビュー作で2007年の東京国際映画祭にも出品された『ハブと拳骨』でご一緒したプロデューサーの山下貴裕さんにお声がけさせていただき、そこから二人三脚で、いろいろなボクシング映画を観ながら、監督のリサーチを始めました。

Q ブリランテ・メンドーサ監督に決められた理由はいかがでしょう。

A尚玄メンドーサ監督はフィリピンで最も知られた監督で、ドキュメンタリータッチな世界観も好きでした。この映画はチャンピオンになる話ではないですし、義足のボクサーが挫折も経験しながら挑戦していく話ですので、主人公の心の機微を描きたいと思っていました。その点でもメンドーサ監督は打ってつけでした。普通だったらお願いできる相手ではないですし、外部からの持ち込み企画で監督を務めるのも初めてとのことでしたが、こうして引き受けていただけて本当に良かったです。

Q 鍛え抜かれた肉体を披露されていますが、ボクサー役としての準備についてお聞かせください。

A尚玄身体は地道にボクシングを続けた結果ですね。それこそ週に5〜6日のペースでトレーニングしていました。この映画の撮影後もボクシングのトレーニングを続けているので、今見るとスキルの点では反省点も多いですが、当時できる全てを出し切っています。やはり、ボクサー役を演じる上では、見た目だけでなくそのメンタリティを近づけることがボクサーへのリスペクトでもあると思って臨みました。

Q ボクシングの試合のシーンは非常に迫力がありますが、撮影はどのように行なったのでしょう。

A尚玄僕は結構アクション映画にも出演しているので、こういったアクションでは実際には当てないという鉄則や、カメラの対角線上で攻撃をすることで当てているように見せるといったテクニックを学んできました。今回もそうするのかなと思っていたら、監督からは「当ててくれ」と。映像で見ると短く感じるシーンもあるかもしれませんが、どの試合シーンもかなり時間をかけて撮っているので、汗や疲労も全て本物です。

Q フィリピンでの撮影全般としてはいかがでしたか。

A映画『GENSAN PUNCH 義足のボクサー』尚玄メンドーサ監督はキャストに芝居を委ねてくれるタイプで、僕自身そういった自由なスタイルが肌に合っていると思っています。撮影地のGenSan(ジェンサン/ジェネラル・サントス)に撮影前に数週間滞在して、現地のジムでもトレーニングをしました。また、主人公ナオのコーチ役を務めたロニー・ラザロと交流する時間も前もって持つことができました。ナオにとってはコーチとしてだけではなく、父親の不在を埋めてくれる重要な存在でもあるので、事前にそういった交流や準備ができたのはとても良かったです。
僕はこれまでアジア各地を巡ったこともありますが、フィリピンとの関わりはこの映画が初めてでした。メンドーサ監督とは2018年の釜山国際映画祭で初めてお会いして、東京国際映画祭で再会。その直後に監督のスタジオに口説きに行ったのがフィリピンへの初訪問でした。
フィリピンでの撮影は、現場ではみんなが踊っていることもあれば、ロケ地の近くの屋台で買い食いしたり、撮影が押していてもイライラしている人もいなくて、みんなハッピーな人たちでした。監督は「日本人の目には不真面目に映るかもしれないが、私たちは楽しく映画を作ることを大事にしているんだ」と話していました。もちろん、シリアスなシーンでは緊張感もありましたので、ピリピリせずに年齢差関係なくフレンドリーに接していられる現場は素敵だなと思いました。ただ、ナオは孤立している役なのと、僕はフィリピンでの撮影後に日本での撮影も控えていたので、打ち上げで一緒にお酒を飲んだりということはできなかったです。

Q 本作を通じて新しい発見などはありましたか。

A映画『GENSAN PUNCH 義足のボクサー』尚玄役を演じるにあたっては時間をかけて向き合うことの大切さを感じました。映画1本を撮るには時間をかけて体もメンタルも作り上げていくものだと再確認できました。そこまでできれば僕らは不安もないですし、監督とチームを信頼してカメラの前に立てばいいんだと、役者としてとても大事なことを感じました。

Q尚玄さんからOKWAVEユーザーに質問!

尚玄皆さんはフィリピンの映画を観たことはありますか。印象に残っている映画をお聞かせください。
まだ観たことがないという方はいい映画が多いのでぜひこの機会にご覧になってください。

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■Information

第34回東京国際映画祭「ガラ・セレクション」部門『GENSAN PUNCH 義足のボクサー(仮)』

映画『GENSAN PUNCH 義足のボクサー』義足のため日本でのプロボクサーへの道が閉ざされた津山尚生はフィリピンへ渡って挑戦を続ける。くじけず目標に向かう実在のボクサーをモデルに、彼を支える異国のコーチ、仲間たちの姿を描くヒューマンドラマ。

監督: ブリランテ・メンドーサ
出演: 尚玄、ロニー・ラザロ、南 果歩

https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3403GLS04

©2021 GENSAN PUNCH Production Committee


■Profile

尚玄

尚玄(映画『GENSAN PUNCH 義足のボクサー』)1978年6月20日、沖縄県出身。
大学卒業後、バックパックで世界中を旅しながらヨーロッパでモデルとして活動。2004年帰国、俳優としての活動を始める。2005年戦後の沖縄を描いた映画『ハブと拳骨』でデビュー。三線弾きの主役を演じ、第20回東京国際映画祭コンペティション部門にノミネートされる。その後も映画を中心に活動するが、2008年NYで出逢ったリアリズム演劇に感銘を受け、本格的にNYで芝居を学ぶことを決意しその年の末に渡米。Blacknexxus(現 Susan Batson Studio)にて演技を学ぶ。現在は日本と海外を行き来しながら邦画だけではなく海外の作品にも多数に出演している。映画『Come and GO』(監督:リム・カーワイ)、『Joint』(監督:小島央大)が劇場公開中。その他にも『親密な他人』(監督:中村真夕)、『Sexual Drive』(監督:吉田浩太)等が公開を控えている。

http://www.instagram.com/shogenism
https://twitter.com/shogenism


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