Vol.1053 映画監督 アレッサンドロ・カッシゴリ、ケイシー・カウフマン(映画『カリフォルニエ』について)

映画監督 アレッサンドロ・カッシゴリ、ケイシー・カウフマン(映画『カリフォルニエ』)

OKWAVE Stars Vol.1053は第34回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品の『カリフォルニエ』アレッサンドロ・カッシゴリ監督、ケイシー・カウフマン監督へのインタビューをお送りします。

Q 少女の9歳〜14歳を長期間追ったドキュメンタリータッチなフィクション映画を手掛けられましたが、本映画を企画した経緯をお聞かせください。

A映画監督 アレッサンドロ・カッシゴリ、ケイシー・カウフマン(映画『カリフォルニエ』)アレッサンドロ・カッシゴリ通常の劇映画では脚本を書いてから映画を撮りますが、私たちのアプローチは異なっています。この映画には3年半ほどの時間をかけています。私たちはもともと、ドキュメンタリースタイル、言い換えるとオブザベーション・スタイル(観察型スタイル)で撮り始めていました。ですので、年齢で章を区切った本作では主人公の少女ジャミーラの11歳の章まではそのような観察型スタイルなんです。そこから、これを劇映画として脚本化しようと、段々と構想を練って、ジャミーラの人生や、彼女のお姉さんの人生を加味しながら物語を作っていきました。このプロセスはドキュメンタリーを撮る時と似ています。今回、一緒に脚本を作ったヴァネッサ・ピッチエッリと相談しながら、少女の人生の一部を撮影し編集をし、さらにその先も見てみようと何度か繰り返してこの映画の形にしていきました。

Q 主人公のジャミーラの一家はモロッコからイタリアに移住してきた設定です。彼女に焦点を当てた狙いをお聞かせください。

A映画監督 アレッサンドロ・カッシゴリ、ケイシー・カウフマン(映画『カリフォルニエ』)ケイシー・カウフマン私たちは東京五輪2020で銅メダルを獲得したイタリアの女性ボクサー、イルマ・テスタのドキュメンタリー映画『バタフライ』を撮っていた時に、同じボクシングジムに当時9歳だったジャミーラ役となるハディージャ・ジャアファリがいて、彼女をワンシーン撮っていたんです。それがイルマ・テスタと一言会話を交わす、重要なシーンだったのですが、いざ上映をすると、観客からこのハディージャのことをたくさん質問されたんです。それで私たちも改めてハディージャともう一度会って、彼女の家族とも会って、彼女たちが社会の中でどのように過ごしているのかを知ろうとしました。それがこの映画を作る直接のきっかけになりました。アレッサンドロも私も、普段映画を作るときは事前に構想を練るのですが、今回はそうではありませんでした。「ティーンエイジャーの女の子の映画にしよう」とか「北アフリカからのヨーロッパ移民を描こう」といったことではなく、単純にハディージャを撮ろうと思っただけだったんです。

Q ハディージャがジャミーラを演じているのか、単に自然に振る舞っているのか、その境界が分からなくなるくらいリアルでした。ハディージャの様子や撮影はいかがでしたか。

A映画監督 アレッサンドロ・カッシゴリ、ケイシー・カウフマン(映画『カリフォルニエ』)アレッサンドロ・カッシゴリ今でこそハディージャは女優として歩み出していますが、当時は演技経験はありませんでした。私たちはドキュメンタリー出身ですので、リアルに描きたいという思いはもちろんありました。リアルさがこの映画の特徴でもあります。そこで、本格的な撮影の前に、彼女の芝居のレベルを知るためにスマートフォンで撮影したんです。彼女はうまく演じられるし、カメラの前でも自然に振る舞えました。それを踏まえて、シーンごとにリハーサルをしながら撮影をしました。他の出演者も役者ではない人たちが多いので、同様にリハーサルをしました。また、ハディージャに対して脚本を見せた際に、言動が自分とは違うという部分は、彼女が脚本に合わせるのではなく、私たちが脚本を書き換えて、彼女がより自然に演じられるようにしました。そのようにした結果ハディージャ自身が滲み出ている部分もありますし、ジャミーラを演じる上でも、リラックスして演じられたのかなと思います。私たちは撮影しながら素晴らしいなと思いました。

Q 特に新しいチャレンジだったことは何でしょう。

Aケイシー・カウフマンチャレンジすることばかりでしたよ。特に二種類あります。
一つ目は、この映画のフォーマット特有のチャレンジです。長期間の撮影をしなければならない作品は相当リスクが大きいです。スタッフや役者のスケジュールの確保もそうですし、数年かけた撮影の場合、ロケーションが維持されているとも限りません。また、11歳の少女を撮影しているので、この年齢の子どもは1年どころか1日で思考にも大きな変化が出てくるものです。私たちと彼女の関係は良好でしたが、今日は撮影に付き合ってくれているハディージャが映画に興味を持ち続けてその先も協力してくれるかどうかは分からないわけです。そんなロジスティック的なリスクと継続性のリスクを感じていました。
二つ目は、こういった独創的な映画作りをしていると、より自由な発想の作品を作ることができますが、映画の資金を集めるのは難しくなっていきます。ドキュメンタリーの世界では、どんな結末になるのかは分からなくても追いかけているテーマに共感してもらえれば出資してもらえることはあります。けれども劇映画でどんな結末になるか分からないというプレゼンテーションをすると、投資してもらえないどころか奇異な目で見られてしまうこともありました。それでも私たちは、エンディングが自分たちにも分からない、という作品に強い興味を持って作り上げました。

Qアレッサンドロ・カッシゴリ監督、ケイシー・カウフマン監督からOKWAVEユーザーに質問!

アレッサンドロ・カッシゴリこの映画はドキュメンタリーとフィクションのハイブリッドな作品です。皆さんはそのような作風の映画を観たことがありますか。ぜひタイトルや感想を挙げていただきたいです。

ケイシー・カウフマン私たちの映画は実際の俳優ではない人たちを起用しました。皆さんへの質問ですが、日本の映画で、逆に有名俳優が街中の清掃員や販売員を演じている作品はリアルに感じますか、それともフィクションだと割り切りますか。

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■Information

第34回東京国際映画祭コンペティション部門アジアン・プレミア『カリフォルニエ』

映画監督 アレッサンドロ・カッシゴリ、ケイシー・カウフマン(映画『カリフォルニエ』)イタリアの小さな町に暮らすモロッコ人少女の9歳から14歳までに至る5年間をドキュメンタリー・タッチの映像で描く。ドキュメンタリー監督カッシゴリ&カウフマン初の劇映画。

監督: アレッサンドロ・カッシゴリ、ケイシー・カウフマン
出演: ハディージャ・ジャアファリ、イクラム・ジャアファリ、マリレーナ・アマート

https://2021.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3401CMP02

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