OKWAVE Stars Vol.1054は映画『なん・なんだ』(2022年1月15日公開)山嵜晋平監督へのインタビューをお送りします。
Q 助監督時代にご高齢の方の自殺を止めた経験が本作のきっかけになったとのことですが、映画化に向けてどのように進めたのでしょう。
A山嵜晋平その出来事があってから、制作部、助監督としての仕事を10年以上忙しくこなしていく中、形に残したいと脚本化を試みてはいましたが、その当時は監督経験がなかったのでなかなか形になりませんでした。その後、監督をするようになってからは断続的に何回か脚本を作っていました。そして、コロナ禍の前に『テイクオーバーゾーン』を撮った際に、これまで監督した作品は自分以外の人が企画したものだったので、ふと、自分が作りたい作品は何だったのかと振り返る機会がありました。その時にこの出来事を思い出して、改めてこの企画で映画を撮りたいなと思いました。それでプロデューサーの寺脇研さんに企画を話したのが2020年です。映画監督というと何でも自分の思い通りに作っているイメージがありますが、僕は助監督経験が長かったので、しっかり基礎を学んで、それで与えられた企画の中で自分なりの表現をしていくものだと思っていました。そうやって何本か撮ってきて、いよいよ自分が本当に撮りたいものを考えられるようになった、それがこの映画です。
Q キャスティングについていかがだったのでしょう。
A山嵜晋平寺脇さんと話す中で下元史朗さんが候補として名前が上がって、他の出演作を観させていただいていいなと思ってお願いしました。佐野和宏さんは、僕が佐野さんの助監督を務めた経験もあって、佇まいも独特で面白いので、役柄も佐野さんに合わせる形にして、お願いしました。
Q 京都や監督の故郷の奈良での撮影に関してはいかがでしたか。
A山嵜晋平自分なりに撮りたいものがありますので相談させていただくことも譲れないことももちろんありますが、今までで一番俳優さんに託した部分が多いです。
撮影全般では、主人公・三郎が妻の美智子の過去を追いかけていくので、美智子の目線を意識したいと思っていました。とくに坂を上がる、下がるという表現と、美智子の人生での立ち位置の表現を目線で合わせることを、ロケハンの時から意識的に取り組みました。
ロケハンということでは、三郎と美智子の二人が現在住んでいる横須賀の団地を見つけるのが大変でした。僕の出身地の奈良は盆地なので、地元にいる頃は山の向こうに未来が見えると思っていたんです。それがあってか、海が見える団地だったら、ずっと明日が見えるからいいなと思って探していたのですが。海沿いの団地はあるようでなかなかなくて、それでも友人の友人のような方の部屋をお借りすることができて撮影できました。
それと京都では鴨川が出てきますが、ロケハンの時に誰かが「鴨川は三途の川に例えられていますよね」と話していて、いいなと思って、象徴するようなロケーションとして鴨川でのシーンを入れました。
Q この映画を撮って新しい発見などはありましたか。
A山嵜晋平この映画のきっかけとなった、自殺しようとしていたおじいさんを止めた際に、その方は離婚をされて、親兄弟も亡くされて身近な人がおらず、しかも脳を手術して痛みが残っている、という話を聞いて、真っ暗だと感じたんです。その真っ暗を映画にしようと思って始めたのですが、作っているうちに、それだけではないのかなと思えてきました。この映画を通じて、そんな方にちょっとでも寄り添えられればとも思いますし、たとえ何もかも無くなってしまったとしても、真っ暗ではなく、それでもまだ何かがあるのだと、自分でも思えるようになりました。
Q 山嵜晋平監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!
A山嵜晋平タイトルやあらすじだけ見ると難しいと感じるかもしれませんが、純粋にエンターテインメントとして楽しんでいただきたいです。この映画は世代問わず多くの方に観ていただいて、人がよりよく生きるためにどうすればいいのか、みんなで考えていただけたら嬉しいです。
Q山嵜晋平監督からOKWAVEユーザーに質問!
山嵜晋平身体の健康については関心が高まってきて、ご高齢でも元気な方が増えています。ただ、年齢を重ねるとどうしても頭が働くなってくると思います。脳の老化を抑えることや、あるいはそんな老いというものとどう向き合って生きればいいと思いますか。
■Information
『なん・なんだ』
2022年1月15日(金)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開中
結婚してもうすぐ40年になる三郎と美智子。ある日、文学講座に行くと出かけた美智子が何故か遠い京都で交通事故に遭い昏睡状態に。途方に暮れる中、美智子の趣味だった残されたカメラを現像してみると見知らぬ男の姿が映っていた。困惑した三郎は娘の知美とともに、浮気相手探しの旅を始める。
下元史朗 烏丸せつこ
佐野和弘 和田光沙 吉岡睦雄 外波山文明
三島ゆり子
企画・監督: 山嵜晋平
配給: 太秦
©なん・なんだ製作運動体
■Profile
山嵜晋平
1980年生まれ、奈良県出身。
日本映画学校在学時に卒業制作「魚の味」監督。卒業後、(有)楽映舎にて制作部としてキャリアをスタート。『十三人の刺客』『一命』『藁の楯』『土竜の唄』など三池崇史監督のもとで鍛えられる。その他、『東京オアシス』『ヘヴンズ ストーリー』『アントキノイノチ』『繕い裁つ人』など多くの監督、プロダクション作品で活躍後、2015年からBSジャパンにてドラマを監督する。
長編映画初監督作である『ヴァンパイアナイト』が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017」正式出品。2019年『テイクオーバーゾーン』が「第32回東京国際映画祭」日本映画スプラッシュ部門に出品され主役の吉名莉瑠がジェムストーン賞を受賞。その他の監督作に『DIVOC-12「YEN」』(2021/ソニー・ピクチャーズ)。