Vol.1068 映画監督 永井和男(映画『この街と私』について)

映画監督 永井和男(映画『この街と私』)

OKWAVE Stars Vol.1068は映画『この街は私』(2022年3月4日公開)永井和男監督へのインタビューをお送りします。

Q 映画製作の経緯をお聞かせください。

A映画『この街と私』永井和男今回併映される僕の短編『霞立つ』が上映された映画祭で本作のプロデューサーから声をかけていただきました。「よしもとの製作で撮影が決まっている地域発信型映画の監督をやりませんか」と言われて、「ぜひやりたいです」とお受けしたのがきっかけです。
葛飾区さんやよしもとさんと最初にお話しした際に「監督の自由にやってください」と言われたので自分が温めていた企画を出したら、「もう少し葛飾やよしもとのPRになる映画にし要素を入れてほしいです」と言われてしまいました(笑)。確かに今回は地域発信型映画という条件があるので、自分のやりたい番組ことはあるけれど別の番組のAD雑用ばかりをやっていたADの頃のモヤモヤに似ているなと思って、今まさに自分が直面している問題をそのまま映画にしようと思いました。それで主人公の美希も本当はお笑い番組をやりたいと思いながら、地域を紹介する「この街と私」というTV番組を制作しているADという設定にしました。その企画には「いいですね」と言ってもらえて進められることになりました。

Q 本人役の芸人さん以外の主要キャストはオーディションで選ばれたそうですね。

A映画『この街と私』永井和男上原実矩さんは「放課後グルーヴ」(13)という深夜ドラマに鴨志田という中学生役で出演していたのが印象的で、主人公の村田美希役を考えたときに真っ先に思い浮かんだんです。目の前でお芝居を見たことはなかったので、オーディションに逆オファーのような形で来ていただきました。自分の中でキャステイングで大事にしているのは、人としてその場にいて自然かどうか、役としてそこにいられるか、そして役として感情を出せるか、という3つの段階があるんです。上原さんは全く問題がなくて、さらに、脚本の続きをアドリブで演じてもらうと村田美希としての説得力のある演技をして、一番いいなと思って決めました。他の方も先ほどの基準で選びました。彼氏・翔也役の佐野弘樹さんも上原さんと同じように脚本の続きを演じてもらったら、やはりとても自然体だと思って決めました。

Q 監督自身は葛飾とのご縁はありましたか。

A永井和男僕の父が『男はつらいよ』が大好きでDVD全巻ボックスを持っていて週末にずっと観ていたんです。僕の葛飾とのつながりの根底にはそれがあると思います。
葛飾には「こち亀」(こちら葛飾区亀有公園前派出所)などの有名作品があるので葛飾のイメージというものはすでにあると思うんです。帝釈天なども有名な観光スポットとして確立していると思いましたので、夜の帝釈天を映し出したり、他の場所もロケハンをして自分なりの葛飾を探し出せたと思います。
それと、ロケハンした際に自分が体験したことをそのまま映画に取り込んでいるんです。例えば、ある施設ではインターホン越しに対応されたことがあったのが自分的には面白くて、それをそのまま取り入れてもいるんでいます。

Q 上原さんへの演出面では何か意識したことはありますか。

A永井和男上原さんの役者としての力量は信頼していたので演技に関しては特に何も言いませんでした。AD役としては僕の実話を基にしていますが、上原さんなりのADになればいいと思っていました。上原さんは村田美希という役を掴むのに苦労していたようですが、僕は役の軸やテーマを言葉で言ってしまったり、癖や特徴のようなものを決めるよりも、衣装や脚本から立ち現れる方がいいと思っているんです。上原さん的には役と自分の違いをどう出すかもやもやしているところが当初はあって、現場では脚本の話をよくしました。その時シーンの感情について上原さんからも質問や意見がどんどん出てきたので、役を掴もうとしているたし最終的には掴めていたのかなと思います。

Q 本人役で出演された芸人さんたちについてはいかがでしたか。

A映画『この街と私』永井和男よしもとの芸人さんの起用に関しては、ADが主役の映画なので、芸人さんに何らかの役を演じてもらうよりは本人役で出てもらって、ADが出会う方がいいなと思いました。そうすると、いい意味でどなたに出てもらっても成立すると思いました。それで最初に思い浮かんだのが天竺鼠の川原克己さんです。美希と川原さんが出会う場面は僕の実話が基になっています。僕自身、川原さんが好きな芸人さんだったので、僕が川原さんと偶然お会いした際のシチュエーションを取り入れました。僕自身はご挨拶もできて自分の中で結構満たされたんです。そのことを思い出して絶対出てほしいと思ってオファーさせていただきました。
バッドボーイズの清人さんとですよ。さんは葛飾に縁のある芸人さんだとよしもとさんから紹介してもらって出演していただきました。バッドボーイズの清人さんは「もつ焼きのんき」というお店のロケハンに行った際に壁にサインが飾ってあって、この店の常連さんだということを知って、その店のシーンで常連さんとして出ていただきました。大西ライオンさんは「水曜日のダウンタウン」で芸人さんがゴルフクラブを作る企画の言動が面白くて、オファーさせていただきました。

Q 本作を通じて新しい発見などはありましたか。

A永井和男企画や映画に真剣に向き合わないと結果には結びつかないということを改めて感じました。元々温めていた企画を出しただけでは絶対うまくいかなかっただろうし、無理に押し通そうとしてもうまくいかなかったと思います。与えられた条件のもと、試行錯誤して向き合ったことでこの作品が成り立ったので、良い経験になりました。
次回作は企画ありきではない自分発信のものを作ろうと考えていますが、ずっとオリジナルでやっているだけでもは見えてこないものを今回経験できたので、どのように作品と向き合うかはどんな時も試されているのだろうなと思います。

Q 永井和男監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A永井和男仕事というものはそれぞれの捉え方があると思います。やりたいことができている人もいれば、やりたいことがない人もいると思いますし、やりたくないことをお金のためにやっている人もいると思います。仕事の悩みの中でもそんなやりたい仕事、やりたくない仕事でぐるぐる悩んでいる人にぜひ観ていただきたいです。

Q永井和男監督からOKWAVEユーザーに質問!

永井和男最近一歩踏み出せた瞬間はどんな時ですか。皆さんのエピソードをお聞かせください。

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■Information

『この街と私』

映画『この街と私』2022年3月4日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開

ADをしている23歳の村田美希は、お笑いの番組が作りたくて制作会社に入ったが、深夜に街の良さを紹介する関東のローカル番組『この街と私』の担当として休みなく働いている。彼氏の翔也と同棲している部屋には寝に帰っている状況で、彼氏の話もろくに聞けていない。ある日、お笑いの特番に企画を出したものの、一蹴されてしまった美希だが、『この街と私』の街頭インタビューを初めて一人で任せられる。撮ってきた素材を見たディレクターに、「使えない」と言われた美希は…

上原実矩
佐野弘樹 宮田佳典 伊藤慶徳
LiLiCo 川原克己(天竺鼠) ですよ 大西ライオン 大溝清人(バッドボーイズ)

監督・脚本・編集: 永井和男

制作: よしもとクリエイティブ・エージェンシー
配給: アルミード

公式サイト: http://konomachitowatashi.com/
Twitter: https://twitter.com/thiscityandme
Facebook: https://www.facebook.com/thiscityandme

(c)2019地域発信型映画「この街と私」製作委員会


■Profile

永井和男

映画監督 永井和男(映画『この街と私』)1990年9月22日生まれ、大阪府出身。
テレビ制作会社を経てフリーに。初監督作『くさいけど「愛してる」』は、国内外20以上の映画祭にて上映され、したまちコメディ大賞2015勝手にサポーター&観客賞、京都国際映画祭2015クリエイターズファクトリー劇映画部門優秀賞等を受賞。2018年、『霞立つ』が第1回滋賀国際映画祭グランプリ等を受賞。磯部鉄平監督作品では『予定は未定』『ミは未来のミ』等で脚本を担当している。


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