Vol.1072 映画監督・番組プロデューサー 酒井祐輔(ドキュメンタリー映画『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』について)

映画監督・番組プロデューサー 酒井祐輔(ドキュメンタリー映画『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』について)

OKWAVE Stars Vol.1072は「TBSドキュメンタリー映画際 2022」で上映される『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』酒井祐輔監督へのインタビューをお送りします。

Q ももいろクローバーZをドキュメンタリー作品として取り上げようと思ったきっかけをお聞かせください。

Aドキュメンタリー映画『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』酒井祐輔僕はずっとバラエティ番組の分野でプロデューサーを務めてきたので、その目線でももいろクローバーZ(以下、ももクロ)が登場した時から面白そうな子たちが出てきたと注目してきました。彼女たちは2008年結成、2010年メジャーデビューですが、見ているうちに僕自身もファンになってしまったんです。そんなプロデューサーとしての目線と一個人としての目線で見ていたある時から、彼女たちは今後どうなっていくのだろうという興味が芽生えてきました。ひょっとしたら、日本の芸能界にはこれまでいなかった存在、それこそ女性版のSMAPや嵐のような存在にもなるのかなと思っていたこともありました。それで今回のテーマである「ずっとアイドルを貫き通す女性たち」という視点を彼女たちに持つようになりました。
この「TBSドキュメンタリー映画際 2022」の開催にあたって、報道戦略室からバラエティやドラマの部門にも企画募集がかけられたのでこの企画を出して、自分の目で確かめる機会を得られました。

Q ご自身ではももクロの魅力は何だと思いますか。

A酒井祐輔ファン目線で言えば、当初はももクロのライブ映像を家で観ていたんです。はじめはファンの方たちの盛り上がり方に目がいったのですが、段々とステージの彼女たちのパフォーマンスに引き込まれていきました。当時の彼女たちはペース配分なんて一切考えていないような常に全力を出し切るステージを行なっていて、そこに心を摑まれたんです。「全力」というのは彼女たちに対してよく言われるキーワードでもありますが、やはり際立って感じられました。
実際に対面したのは8〜9年前です。その時に印象的だったのは人との距離感です。挨拶してから10分後には「ねえねえ酒井さん〜」と、こちらが戸惑うくらいの人懐っこさで接してくるんです。気立ての良さがオンとオフで変わらないのも特徴的で、そこが何よりの魅力だと感じました。

Q 企画を立てられた時点でどんなところを大事にしようと思いましたか。

A酒井祐輔「彼女たちはこの先どうなっていくのだろう」が出発点だったので、その地続きの視点として「女性アイドルはいつまでアイドルでいられるのだろうか」という問いが自分の中にありました。男性アイドルは40歳を過ぎてもアイドルとして振る舞えるのが今や当たり前に受け入れられるようになっています。彼女たちもそこまでいくのではないかという思いがありました。それで30歳が近づく年齢となった彼女たちがそれこそ結婚には興味はあるのか、とか…アイドルとしての自分たちをどう思っているのか、そういったところを柱にしようと思っていました。「ステージの裏側ではこんなに努力をしている」といったものを今さら描くのも違うだろう、という思いもありましたし、今回のTBS DOCSという報道ドキュメンタリーの一つとして取り上げるのなら、そういう視点が作品にする意味があるのだろうなと思いました。
企画を立てた時点で僕の中ではきっと彼女たちはこういう取材も受けてくれるだろうと思っていましたが、報道戦略室からは「ももクロが本当にこういう企画を受け入れてくれるのか内々に聞いてみてください」と言われたんです。それでまだ選定される前の段階で、映画の中にも出てくる川上アキラチーフマネージャーに打診しました。すると「彼女たちが目指している方向性とズレた企画ではありませんので受けますよ」と言ってもらえました。そうして成立した企画です。

Q ドキュメンタリー撮影へのメンバーの反応はいかがだったのでしょう。

Aドキュメンタリー映画『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』酒井祐輔テーマについては話さずに、単にドキュメンタリーとして撮らせていただきますよという話をしました。その時は「私たちを撮って、撮れ高あるのかなあ」という反応でした。ドキュメンタリーというと、やはりステージの裏側でお互いが意見をぶつけ合っているような熱いところを見せていかなければいけないようなイメージでもあったのでしょう。「私たち、楽屋でもおしゃべりしているだけだから」とそんな反応の中で撮り始めました。

Q アイドルという存在について、監督自身はどのように考えていらっしゃいますか。

A酒井祐輔アイドルを日本の文化の一つとして面白いなと思っています。子どもの頃から、松本隆さんや筒美京平さんらが手掛けてこられたいわゆるアイドルポップスが好きで、日本のポピュラーソングの中で独特の魅力を放っていると思っていました。時代が進むにつれ、アイドルという存在にはいろいろな革命的な変化が起きてきました。個人的にはモーニング娘。が現代アイドルの転機だと思っているのですが、アイドルだけど顔立ちが全てではないという革命があったり、アーティストのような人たちがアイドルというカテゴリーで勝負をしようとしていたり、アイドルの定義が幅広くなってきているなと感じています。とは言え、突き詰めれば、アイドルとは元気をもらえる存在だとか日々の生活を送る活力になるとか、生きる力を与えてくれる存在なのかなと思います。その一方で、男性にしても女性にしても疑似恋愛の対象という性格があることも否めないと思います。そんな中で、ももクロのファンの中でメンバーのことを疑似恋愛の対象としている人は少ないのかなと思うんです。「〜さんと付き合えるなら付き合いたいと思いますか」と聞いても「恐れ多くて無理です」というファンの方が多いのではないかなと思っていて、そういう面からもももクロは特殊なアイドルのようにも感じているんです。

Q 今回ドキュメンタリー撮影を通じてメンバーへの新しい発見はありましたか。

A酒井祐輔メンバー個々にそれぞれ発見がありました。
玉井詩織さんは才能の塊のような人だと思っていますが、本編のインタビューで芸能界のいろんな才能を目の当たりにして何度もやめようかと思ったことがあると話していたのが印象的でした。それは10代の頃の話かと思ったら20代になってからもあると聞いて、そんなことを考えていたのかと思いました。
高城れにさんはメンバーの中でも応援してくれるファンへの感謝の気持ちを人一倍強く持っていると感じていましたが、インタビューの中でファンが応援してくれることで自分の人生が救われているとまで話していたのが驚きでした。
百田夏菜子さんは新しい発見というよりは確認できたことに近いですが、普段からみんなに笑顔を届ける存在でありたいと話していて、今回、その覚悟の深さに触れられました。
佐々木彩夏さんはクレバーでメンバーや自分のことを俯瞰で見ながら自分たちがどうしていくかを考えている聡明さがあります。それが同様に今回の撮影を通じて再確認できました。
総合してみると、彼女たち一人一人も、ももクロというグループとしても将来はやはり楽しそうだと感じられたのが発見ですね。

Q 監督自身の新しい発見ということではいかがでしょう。

A酒井祐輔このドキュメンタリーの中ではメンバー4人の座談会が出てきます。トークテーマを玉井さんが「次!」と言いながらフリップを出して4人が会話を繰り広げていきますが、「バラエティ的な手法だからドキュメンタリーとしてはいかがなものか」という意見が報道局の中にあったそうです。確かにバラエティ番組の手法ですが僕としては4人だけの座談会をやる際にそうやってトークテーマを振るのが一番いい方法だと思ったんです。それがドキュメンタリーではないという視点があるのが驚きで、そういう意味ではちょっと新しいドキュメンタリーの形になったのかもしれません。企画を通してもらった時から、バラエティでやってきた人間が作るのだから、いわゆるドキュメンタリーの手法よりも、バラエティで培った感覚を生かしていきたいという考えがありました。そういう意味では座談会のやり取りは確かにドキュメンタリーのテンポではないと思います。僕は「A-Studio+」のプロデューサーやディレクターを務めてきましたので、そのバラエティトークのテンポで編集している座談会のブロックは、いわゆるドキュメンタリー的ではないのかなと思います。

Q TBSドキュメンタリー映画祭でこの作品を取り上げる意義をお聞かせください。

Aドキュメンタリー映画『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』酒井祐輔映画祭の企画の中にももクロのドキュメンタリーを入れてもらえたのはありがたいことですし、かつ意義深いことだとも思っています。「少女たちが汗をかいて頑張っています」という裏話ではなく、女性の生き方が多様化した現代にあって、彼女たちの存在自体が女性たちにとっての希望や力を与えてくれる存在になるのではないかと思って、その生き様を見せようという視線で作りました。日々、いろいろな取材に追われている報道局の中からはひょっとすると出て来づらい企画なのかなとも思います。TBSにはいろいろなディレクターがいますから、これからもバラエティやドラマ、情報番組、スポーツ、さらには舞台や展覧会を作っている人からもドキュメンタリーの企画が出てくるといいなとTBSの社員の一人として思っています。

Q 酒井祐輔監督からOKWAVEユーザーにメッセージ

A酒井祐輔今回、ももクロのメンバー個別にじっくり時間をとってインタビューもしましたので、ファンの方にとっても新鮮な驚きや発見がある内容になっていると思います。ファンではない方にも、なぜ彼女たちが多くの人たちの心を掴むのかが浮かび上がってくる場面がたくさんあると思います。ももクロが大好きな方もそんなに興味がない方もぜひご覧いただいて、そこから何かを感じていただければと思います。映画祭自体も興味深い作品がたくさんありますのでぜひ足を運んでいただけたらと思います。

Q酒井祐輔監督からOKWAVEユーザーに質問!

酒井祐輔皆さんにとって、アイドルとはどういう存在ですか。具体的な名前を挙げていただいてもいいですし、アイドルについて思ういろいろな哲学をお聞きしたいです。

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■Information

『ももいろクローバーZ ~アイドルの向こう側~』

映画監督・番組プロデューサー 酒井祐輔(ドキュメンタリー映画『ももいろクローバーZ~アイドルの向こう側~』について)TBSドキュメンタリー映画祭 2022にて上映

女性アイドルの最前線を走り続けている「ももいろクローバーZ」。そんな彼女たちも最年少が25歳、最年長は28歳を迎え、30代が目前に…。男性は何歳になってもアイドルを続けられるが女性は…? これまでもアイドルの常識を覆し続け、日本の芸能界で前人未到の境地を切り拓こうとしている「ももクロ」はどこに向かい、私たちに何をみせてくれようとしているのか? メンバーや関係者たちへのインタビューを通じて、その可能性と未来をみつめる。

監督: 酒井祐輔

「TBSドキュメンタリー映画祭 2022」

2022年3月18日(金)〜24日(木)ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催、以降全国順次開催

昨今、WEBやSNSで簡単にニュースを見られる便利な時代となった。しかし、数分、数百字の“事実を伝えるだけの情報”は、時間軸の中で簡単に埋もれ、風化してしまっていないだろうか?それだけでは伝えきれない真実があるのではないか?
TBSは1955年の開局以来、ドキュメンタリーを制作・放送し続けてきた。『もっと深く、じっくり時間をかけて、ニュースのさらに奥にある真実を伝えたい!』
記者やディレクターたちは世界の感動を、不条理を記録し続けている。見たことがない映像を、生き様を、真実を、ドキュメンタリー作品に。
テレビにも、SNSにもない、「TBSドキュメンタリー映画祭 2022」でしか出会えない珠玉のドキュメンタリー11作品。
固定観念を揺さぶる作品たちは、あなたの人生を変えるきっかけになるかもしれない。

チケット情報、オンライン上映については映画祭公式HPをご覧ください。
https://www.tbs.co.jp/TBSDOCS_eigasai/

主催:TBSテレビ

©TBSテレビ


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