Vol.1075 映画監督・木村聡志、女優・植田雅(映画『階段の先には踊り場がある』について)

映画監督・木村聡志、女優・植田雅(映画『階段の先には踊り場がある』)

OKWAVE Stars Vol.1075は映画『階段の先には踊り場がある』(公開中)木村聡志監督と主演の植田雅さんへのツーショットインタビューをお送りします。

Q 映画化の経緯についてお聞かせください。

A木村聡志この映画の原点となる企画と脚本があって、いつか映画を撮れないかと思っていたところ、レプロエンタテインメントが「感動シネマアワード」という映画の企画募集をしているのを知りました。当初考えていた企画はそのアワードの趣旨とは合ってはいなかったので、レプロエンタテインメントの方にその脚本を見てもらいながら相談させていただいたんです。その際に植田さんともお会いして、植田さんが主演であるということをお聞きして、脚本を手直しして応募しました。事前に相談なんて本当はダメだと思うんですが、どうしてそんな無礼なことできたのか(笑)、その熱意で企画が通ったのかなと思います。

Q では植田さんは脚本の印象はいかがでしたか。

A映画『階段の先には踊り場がある』植田雅私はその最初の脚本を見ていないので読んでみたいです!この映画の脚本は、いろいろな個性を持ったキャラクターが出てくるなあという印象でした。いろいろな個性があるから価値観が噛み合わなかったりぶつかったりしますが、それが暗くなくて、笑えるエピソードの多い面白い物語だと思いました。

Q キャスティングについてはどのように進められたのでしょう。

A木村聡志脚本執筆段階では誰かをイメージはしていなくて、完成した脚本を基に、誰がこの台詞を言ったら面白いかなと考えるのが普段からの進め方です。今回は植田さんが主演ということが決まっていましたので、植田さんとのバランスを見ながらキャストティングしました。

Q 撮影前にはどんな準備をされたのでしょう。

A木村聡志コロナの影響で何度も撮影が延期になってしまったんです。その間、僕と植田さんとで何回も本読みをしていました。植田さんに渡していた脚本から、植田さんがもっと生きる台詞に書き直す時間があったので、ゆっこの台詞はどんどん変えていきました。

Q ゆっこのキャラクターをどう受け止めましたか。

A植田雅先輩とは別れたのに一緒に暮らしているというゆっこの価値観が最初は理解できなくて、共感できないところもたくさんあったんです。でも、現場に入って、先輩役の平井亜門さんを前にして台詞を受けてみると、ゆっこの気持ちに共感できたんです。先輩が目の前にいて、同じ部屋にいると居心地がよくて、私もここにいたいなと思えたので、ゆっこの気持ちを作る、という作業はいらなかったです。

Q このちょっと特殊な状況のふたりを描こうと思ったのはなぜでしょう。

A木村聡志僕の友達が別れた彼女と一緒に住んでいて、最近新しい彼女ができて揉めているらしいんです(笑)。その彼が自分の話だと思って観てくれるといいなと思っています。もともと、そういう人たちがいるという話を聞いていたり、付き合ってはいない男女の友達が一緒に住んでいたり、恋愛感情とは関係なく相手の部屋に泊まったりしていると聞いていたので、それを物語にできないかなというのが出発点でした。自分の中でそれが何なのかを解釈していくと、最終的にどちらかに恋愛感情がないと続かないだろうし、どこかでそういう気持ちは生まれてくるだろうという結論になりました。それでこの映画の中では別れたふたりのままではなく、片方は恋愛感情を持っているという描き方にしました。ただ、好きか嫌いかだけでは言い表せないけれども一緒にいたい、という感情を持っているということも理解して、その両方の感情をゆっこと先輩に託しました。

植田雅ゆっこを演じている間は「はっきりしてよ」と思っていましたが、男女が一緒にいるのは好きか嫌いかだけじゃないんだと、最近になって理解できました。

Q 会話劇がとてもリアルで、とくに女性の心理はどのように理解して描かれたのでしょう。

A木村聡志僕自身、女性が好きなんですよ。

植田雅え、女好きなんですか!

木村聡志そういう意味ではなくて(笑)、「海が好き」という感じで「女性が好き」なんです。

植田雅その言い方、先輩みたい!私は今すぐには理解できないです。多分、来週くらいになってから理解できると思うんです。

木村聡志自分が女性から言われた実体験もあれば、普段から他人が話していることをよく聞いて研究していました。喫茶店で隣の席の会話に面白いやりとりがあればふせんにメモしたり。さすがにそれはやりすぎだと思って今はもうやめました(笑)。

Q 長台詞の会話劇はどのように挑んだのでしょう。

A映画『階段の先には踊り場がある』植田雅手島実優さんが演じた多部ちゃんと先輩、私の3人のシーンは手島さん、平井さんに委ねていて、多部ちゃんと先輩がやることに合わせるようにしていました。監督からの演出はありましたが、キャスト同士で事前にどう演じるか話し合ったりはしなかったです。

木村聡志鮮度を重視していたので、台詞をその場で初めて聞いたようにしたいと思っていました。相手が何を言うか分かっていると面白くないですし、何度も重ねて上手くなりすぎても面白くないので、俳優さんたちは不安だと思いましたがライブ感のある演出でした。空き時間に台詞合わせの練習をしているのを見かけましたが、内心上手くならないでと思っていました。でも、家で映画を見ながら先輩とゆっこが話すシーンに関しては、読み合わせの時に僕が先輩役で植田さんとかなり練習をしました。

植田雅現場で台詞の確認はしていましたが、平井さんはその台詞合わせをしている時とは全く違う表現を入れてくるんです。でもそこが演じていて面白かったです。

Q 現場の様子はいかがだったのでしょう。

A木村聡志コロナの影響で、あまりスタッフを多くできなかったので、逆に少人数だったのが良かった面もあります。アットホームな雰囲気でした。

植田雅完成した映画と同じ雰囲気の現場で、誰が監督、主演、といった感じではなくて、みんなが平等で、とてもフランクな現場でした。それと、共演のみんなに個性があるなあと。最初はびっくりしましたが、それでみんな個性的なキャラクターになったのかなと思います。

木村聡志ほっこりエピソードばかりで、困った事件は何もなかったですね。

Q 本作を通じての学びや気づきなどはありましたか。

A植田雅ゆっこがダンスで海外留学するか日本に残るかについて先輩がいろいろアドバイスをしてくれます。けれども、ゆっこは後先考えずに先輩の話も聞かずに自分の意思を貫こうとします。客観的にそのシーンを見ると、周りの人の意見には耳を傾けるべきだなあと感じました。私も今を大事にしようとしてしまうタイプなので、ゆっこと同じ状況になった時は気をつけようと思いました。

木村聡志先輩は偉いと思うんだよね。もし自分が先輩だったら、相手が決めてくれるのを待ってしまうと思うので。
そういえば、カットしたエピソードがあって。先輩がバイト先に決まったお店で、面接の後に客としてコーヒーを飲もうとするやりとりの後です。そのお店で先輩を待っていたゆっこが飲んでいたのは抹茶ラテで、それを一口飲んだ先輩が「おいしいね」と言って、後日、先輩がバイト帰りに「これ好きだったよね」とゆっこに買ってきてくれるというのがあったんです。

植田雅それ、削っていて良かったです!そんなエピソードがあったらゆっこは先輩への想いがあふれちゃいますよ。きっと先輩は良い両親に育てられたんだと思います(笑)。

Q 細川岳さんと朝木ちひろさんの演じた少し大人のカップルについてはどうご覧になりましたか。

A映画『階段の先には踊り場がある』植田雅見ていてすごくリアルだなと感じました。港が滝に妊娠を伝えるシーンがありますが、私は結婚も妊娠も経験していませんが、そういう時の滝の態度に港が火がついてしまうところにも共感できました。

木村聡志カップルが全員100%の好き同士ではないだろうし、そういう温度差を描きたいなと思っていました。彼氏の煮え切らない態度、興味のなさそうな態度に彼女側は腹を立ててしまいますが、そんな男性にも隠れた「好き」があるので、分かってもらえたらいいなとは思いました。
それと、滝と港は、ゆっこたちがもしもずっと一緒に暮らしていたら、という対比としてこのふたりの関係を描いているんです。そういう意味では、先輩が多部ちゃんと結婚する未来を考えたこともありますけれど、今は考え直し中です。今回が長編2作目になりますが前作『恋愛依存症の女』から同じ役柄のキャストとして松森モヘーさんと安楽涼さんが出ていて、それを僕の映画の中で踏襲していこうと思っているんです。次回作で何らかの形で先輩たちを出せたらいいなと考え中です。

植田雅私は先輩は一人の女性に執着しないと思っているんです!ショックが大きいので、監督、あとで話しましょう!(笑)

Q OKWAVEユーザーにメッセージ!

A映画『階段の先には踊り場がある』植田雅この映画は、いろんな個性を持った人たちが会話していく中で噛み合わなかったりぶつかることもありますが、噛み合わないからこそ面白かったり言いたいことを言っているので、そこにクスッと笑ってもらったり、こんなことあるなと共感してもらえればと思います。ぜひゆっくり映画館で観てください。

木村聡志日常を切り取った映画で、出てくるのは20代の若い男女ですが、どの世代の人が観ても自分たちの話だと思ってもらえるし、こんなことあった、こんな人いたな、と思ってもらえると思います。この映画を観終わった後、他人にちょっと優しくしてあげようとか、電車の中で喋っている人をうるさいと思わずに耳を傾けてみると意外と面白いこと喋っているなとか、そんな些細な発見をしていただけたらすごく嬉しいです。

Q木村聡志監督、植田雅さんからOKWAVEユーザーに質問!

木村聡志次回作を構想中で皆さんにリサーチしたいです。自分が既婚者だとして、パートナーが浮気をしてしまった場合と、浮気はしないけれどずっとその気持ちを秘めたままでいたことに気づいてしまった場合、どちらをより悪いと思いますか。

植田雅今の私には浮気した人しか悪く思えないです!(笑)
私からは、ゆっこはダンスの特待生としてアメリカ留学の機会が得ますが、居心地の良い先輩との生活を続けたいと思っています。皆さんは今の幸せな状況と未来の幸せのチャンスを選ばなければならないとしたらどちらを選びますか。

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■Information

『階段の先には踊り場がある』

映画『階段の先には踊り場がある』公開中

ダンサーを目指し芸大の舞踊科に通うゆっこは、同じ大学の演劇科に通う元カレの先輩と別れた後も同棲を続けている。お互いを応援する“いいパートナー”だと呼び合うが、最近は夢をかけた留学、そして先輩と急接近する友人・多部ちゃんの存在が気に掛かる。
一方、社会人の滝は平穏な日々を送っているが、長年交際している港から結婚を意識させられ困惑していた。将来が見えない滝は、大学生のときに味わったある挫折を今も引きずっていたのだ。望まない方向に動き出す日々の先で、彼らは何を語り合うのか。

植田雅
平井亜門 手島実優 細川岳 朝木ちひろ

脚本・監督・編集: 木村聡志
製作・配給: レプロエンタテインメント

https://kaidan.lespros.co.jp/

©LesPros entertainment


■Profile
映画監督・木村聡志、女優・植田雅(映画『階段の先には踊り場がある』)

植田雅

2000年6月11日生まれ、大分県出身。
特技はダンスとテニス。某有名ダンススクールにてパフォーマーとしての経験有。2020年、八重樫風雅監督作品の映画『別に、友達とかじゃない』で映画初主演。
2021年、柴山智隆監督作品の常滑市ショートムービー『泣きたいのに泣けない私』に出演。

https://www.lespros.co.jp/artists/miyabi-ueda/

木村聡志

1988年6月29日、東京都新宿区生まれ。
2013年ENBUゼミナール・映画監督コース終了。その後、自主で短編を監督しつつ、フリーランスで撮影や録音のスタッフとして映画の現場に携わる。2018年『恋愛依存症の女』で初長編監督作品で劇場デビュー、同年の池袋シネマ・ロサのレイトショー動員記録を樹立。翌19年凱旋アンコール上映にも多くの恋愛依存ファンが詰めかけた。長編監督二作目となる本作『階段の先には踊り場がある』が2022年に公開。


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