Vol.1078 映画監督 永岡俊幸(映画『クレマチスの窓辺』について)

映画監督 永岡俊幸(映画『クレマチスの窓辺』

OKWAVE Stars Vol.1078は映画『クレマチスの窓辺』(公開中)永岡俊幸監督へのインタビューをお送りします。

Q 企画の経緯についてお聞かせください。

A映画『クレマチスの窓辺』永岡俊幸2018年に前作の『オーロラ・グローリー』という映画を映画祭でかけてもらっていて、それを観にきてくれた脚本家志望の当時大学院生だった木島悠翔くんが声をかけてくれました。彼も同じ島根出身ということで、島根で映画を撮ろうかという軽い気持ちで意気投合して始まりました。もともと、海辺の町で1週間の休暇を過ごす、というテーマの映画を撮りたいと思っていたので、松江であれば、海ではなく穴道湖の湖畔ですけれど、このテーマの映画が撮れると思って企画を進めました。
台本作りの前には実際に松江でシナリオハンティングをして、そこで見つけたことをシナリオに入れていこうと思いました。もともと、テーマとして「発見」ということも掲げていましたので、3日間のシナハンで昼間は街を歩いて、夜は飲み屋で人のつながりを作りながら情報収集して、それをもとに台本にしました。

Q セリフがとてもきれいな印象です。

A映画『クレマチスの窓辺』永岡俊幸共同脚本の形で、僕のプロットをもとに木島くんが初稿を書いています。その後は僕がキャラクターとセリフのイメージが違うところを変更していって仕上げました。僕はセリフのやりとりを一気に書いていくので、もしそんな印象があれば僕自身の持ち味だといいですね(笑)。
唯一悩んだのが、滞在6日目に主人公の絵里が従兄弟の婚約者と庭で話すシーンでのセリフです。1週間近く過ごした絵里がそれをあっという間に感じたのか長く感じたのか。ぜひ観ていただければと思いますが、きっと濃密な時間だっただろうなと思ってそのシーンのセリフを決めました。

Q キャスティングについてはいかがだったのでしょう。

A永岡俊幸台本を書く前からキャスティングをしていました。瀬戸かほさんと小山梨奈さんは僕の前の映画に出てもらっていましたので、台本を書く前からお二人にはお声がけしていました。他の方も、映画祭などで出会った方を想定して決めました。ただ、当て書きではないんです。サトウヒロキさんや小山梨奈さん、しじみさん、星能豊さんらはむしろ演じたことがないような役柄にしようと。たとえば、里内さんと小山さんは撮影当時も20代でしたが高校生役を演じることが多かったそうで、そうではない役柄にしたり、星能さんも学者の役は初めてだろうと、そんなところを意識して組み立てていきました。

Q タイトルの「クレマチス」は映画の内容にぴったりですね。

A永岡俊幸植物には詳しくないのですが、たまたま見た園芸の本でクレマチスの特集が載っていて、花言葉(「美しい精神」「旅人の喜び」「策略」)もいいなと思っていつか使おうと覚えていました。
今回の映画の仮タイトルは「窓」だったんです。窓辺での出来事、芝居というものがぼんやりと頭の中にありました。そこにふとクレマチスのことが降りてきて、そのふたつの要素を台本に落とし込みました。
撮影が10月だったのでクレマチスの入手が難しい時期に差し掛かっていて、もしも手に入らなかったらタイトルを変えようと思っていました(笑)。結果としては岐阜にあるクレマチスの専門店から取り寄せることができて、庭に埋めて撮影しましたが数日で枯れてしまって。本当にギリギリでした。

Q 島根ロケについてはいかがでしたか。

A映画『クレマチスの窓辺』永岡俊幸古墳が出てくるシーンがありますが、そこは自分でもいいところを見つけたと思いました。松江には学生時代の3年住んでいたので他のロケ地はおおよそ想定できていました。古墳に関しては松江市内だけでもかなりの数があって、シナハンで真夏の35度の炎天下の中を歩いて辿り着いたのが撮影に使った山代二子塚古墳なんです。

Q 撮影スタイルについてお聞かせください。

A永岡俊幸お芝居は役者の皆さんにお任せで、考えてきていただいたものをほとんどそのまま演じてもらっています。カメラは全部フィックスでもいいと考えていました。でもカメラマンは動かしたかったようで、たまにレールを組み始めると「仕方ないな」という気持ちでいました(笑)。

Q 本作を通じて新しい発見などはありましたか。

A永岡俊幸お芝居について、僕は台本のままでは面白くないし、即興的に演じてもらって、むしろセリフが変わってもいいと思っているんです。ですので、先ほどセリフを褒めていただきましたが、演じてもらうことで変わっているところも結構あるんです。映画が完成してだいぶ経ってから決定稿を読み直してみると、あるシーンではセリフが無くなっていたり、逆にあるシーンでは増えていることに改めて気づいて。カットをほとんど割らずに1シーン1ショットの感覚で、その役者、その場所でその時にしか起きないことを発見しようという感覚でした。そんな撮影方法でしたが、撮影期間を通じて一体感ができたからこそなのかなと思います。

Q 永岡俊幸監督からOKWAVEユーザーにメッセージ!

A永岡俊幸コロナ禍が2年以上続いて、遠くにはなかなか行けない状況です。もともとスクリーンの向こうにはここではない遠い世界がある、というように撮りたいと思ってこの映画を作りました。今いる場所から離れて水辺の街で一緒に過ごしているように感じてもらえればと思います。やはりそれはスクリーンでないと味わえないと思いますので、ぜひ映画館に観にきていただければと思います。

Q永岡俊幸監督からOKWAVEユーザーに質問!

永岡俊幸皆さんはどこでヴァカンスしたいですか。

回答する


■Information

『クレマチスの窓辺』

映画『クレマチスの窓辺』ヒューマントラストシネマ渋谷にて4月14日(木)まで連日21:00〜公開中、全国順次公開

東京生まれ東京育ちの絵里は、ストレスが溜まる都会での生活を抜け出して、地方の水辺の街でヴァカンスを過ごすことに。亡くなった祖母の古民家で暮らす1週間の中で、絵里はその街で生きている人々と交流する。建築家の従兄、そのフィアンセ、大学生の従妹、靴職人、古墳研究者、バックパッカーなど、一癖ある人ばかり。そんな出会いと祖母の遺したものたちが絵里を少しだけ変えていく。

瀬戸かほ
里内伽奈 福場俊策 小山梨奈 ミネオショウ 星能豊 サトウヒロキ 牛丸亮 宇乃うめの しじみ 西條裕美 小川節子

監督・編集: 永岡俊幸
脚本: 永岡俊幸、木島悠翔
配給・宣伝: アルミ―ド

https://clematis.space/

Twitter: https://twitter.com/clematis_madobe
Facebook: https://www.facebook.com/clematismadobe
Instagram: https://www.instagram.com/clematis_madobe

(c) Route 9


■Profile

永岡俊幸

映画監督 永岡俊幸(映画『クレマチスの窓辺』1989年4月27日生まれ、島根県出身。
日本映画学校(現:日本映画大学)卒業後、映画やTVドラマなどでフリーの助監督として活動。2015年から短編映画を制作。2018年制作の『オーロラ・グローリー』は、きりゅう映画祭、日本芸術センター映像グランプリなどで入選。地元島根で撮影した『クレマチスの窓辺』で劇場デビュー。


関連インタビューとQ&A