Vol.1085 松本幸四郎、藤間直三、花柳笹公(第5回日本舞踊 未来座 =才(SAI)= 日本舞踊『銀河鉄道999』について)

松本幸四郎、藤間直三、花柳笹公(第5回日本舞踊 未来座 =才(SAI)= 日本舞踊『銀河鉄道999』

OKWAVE Stars Vol.1085は第5回日本舞踊 未来座 =才(SAI)= 日本舞踊『銀河鉄道999』(2022年6月3日〜5日)について松本幸四郎さん、藤間直三さん、花柳笹公さんへのインタビューをお送りします。

Q 未来座=SAI=では、2022年は「才」の文字を当てられましたが、コンセプトなどお聞かせください。

A松本幸四郎「SAI」には継承と革新という意味を込めていて、5回目となる今回は才智や才能を表す「才」の字を当てました。主人公の少年・星野鉄郎が自身の「才智」で苦難を乗り越えて成長していく物語ですのでこの文字を当てています。日本舞踊の可能性を伝えるため、みなさんがよく知っている作品を題材に、公演の形態も含めて、新たな作品を生み出していこうと、新たな可能性とおもてなしのあり方を日本舞踊協会で提示する取り組みです。

Q 今回は『銀河鉄道999』とのことで、この作品を選ばれた理由はいかがでしょう。

A松本幸四郎私は担当理事として毎年関わらせていただいていますが、理事に加えて毎年、担当委員と企画を検討しています。その委員の方たちから『銀河鉄道999』の提案がありました。まず、銀河が舞台というこの作品は日本舞踊で表現するのが最適だと感じました。自分自身、思いもつかなかった題材ですが、驚きというよりは、これがあったという納得感が大きかったです。演劇では言葉があって物語が語られますが、日本舞踊では、人を演じるだけではなく、物体、さらには光や風、時には暑さや寒さも踊りで表現します。銀河の世界を描くには、日本舞踊の表現をふんだんに使えるのではないかと思いました。今回のテーマは「受け継がれる想い」ということで、星野鉄郎の成長が描かれます。そこに日本舞踊の世界での受け継がれる想いや人としての成長も重ね合わせています。今はこの作品を上演するのは必然だと日を追うごとに感じています。

Q 『銀河鉄道999』が題材ということをどのように受け止めましたか。

A藤間直三作品は知ってはいましたが、世代的にも内容は知らなかったんです。このお話をいただいてから、映画やアニメを観たり、自分は漫画が取り掛かりやすかったので、かなりの巻数ですが大人買いして(笑)読みました。機械化人間や宇宙を旅するといった要素は原作が描かれた当時よりも、今の方がむしろリアリティを持って見られる作品なのではと感じました。今、日本舞踊で演じることもそうですし、今の時代だからこそ、舞台にかける意味のある作品だとも感じました。

花柳笹公この作品に決定したと聞いた時は、どのように作っていくのか想像がつきませんでした。ですが、作品の世界をすべて踊りで伝えられると素敵だなと感じています。「受け継がれる想い」というテーマは日本舞踊にも共通することですので、身体を通して少しでも皆さまに伝えられたらいいなと思いました。

Q 活劇でもある本作を日本舞踊ではどのような表現となるのか、ぜひヒントを教えてください。

A松本幸四郎非常に戦いの多い作品ですが、魅力的な存在でもある機械化人間をどのように設定するかがポイントだと感じています。人間が永遠の命というものに憧れて、機械化人間というものを生み出したものの、それを手に入れた機械化人間は、生きるということを軽く扱ってしまうようになります。人間の命をもて遊ぶ機械化人間を倒さなければならないと鉄郎が立ち向かっていく話ですが、善と悪がぶつかるだけの話ではありません。憧れて、夢を実現したものが機械化人間だったのに、それが違う方向にいってしまった世界です。機械化人間も複雑な思いを抱えていますので、単なる善悪の話ではなく、彼らの立場をどう描くかが大事です。そして、様々な人との出会いと別れを経て鉄郎が成長していくことが最大のポイントで、そこに戦いという要素が加わります。戦いに向かっていく姿勢の変化も見どころになると思います。
また、舞台上では、琵琶が語りとして作品の世界観と調和して入ります。それも日本舞踊版の特徴になるのではないかと思います。
メーテルという存在は、これまでも謎の女性として描かれてきましたが、この日本舞踊版でも、謎を謎として見せることが大事だと思います。作る上でもあまりはっきりとした立ち位置やイメージを決めつけない方がいいと感じています。一番俯瞰的に見ている人物かもしれませんし、一番内側にいる人物かもしれません。観ている方がいろいろな受け取り方ができる、幅の広い表現ができるといいなと思います。

Q 日本舞踊の表現でどのように鉄郎、メーテルという役を作り上げていくのでしょう。

A藤間直三自分たちが日頃積み重ねてきた古典舞踊の表現をベースにしていきますが、『銀河鉄道999』の日本舞踊はもちろん前例がありません。各役がアニメや漫画を通じて、かなり確立していますので、いかに古典技法を用いながら、役に転換していくかが自分自身、重要なことだと思っています。

花柳笹公原作のファンの方はメーテルのイメージをそれぞれにたくさんお持ちだと思うので、ひとつでもメーテルだと感じてもらえるように準備をしていきたいです。

Q 稽古ではどのようなことに留意されるのでしょう。

A松本幸四郎まずは振りからですが、そこにどういう心情が加わるかによって踊り方は変わっていきます。今回、60名以上の出演者がいますが、場面ごとに工夫をこらした群舞をご覧いただくこともこの作品の大きな魅力です。

藤間直三お客さまは鉄郎を通して物語を観ていくことが多いと思いますので、鉄郎が出した答えをちゃんと身体を通して伝えることが大事だと考えています。それを伝え切れるかに全力をかけていきます。

花柳笹公日本舞踊ですので、身体を使って心情を伝えることになります。場面ごとにメーテルの心情が変化していきますので、それを身体を通して表現できればと考えています。

Q 古さを感じさせない物語という印象です。改めて2022年にこの題材を上演する意義をお聞かせください。

A松本幸四郎それぞれのキャラクターがしっかり描かれているということが大きいと思います。人を描くということは普遍的だと感じました。それが今回の作品のテーマである「受け継がれる想い」のベースにあり、今の時代にも通じるものだと思います。継承と革新というコンセプトの新作舞踊公演ですので、先人を敬って、さらに今の時代に受け入れていただく挑戦をしていくことになります。この『銀河鉄道999』に込められた鉄郎の想いと、それを生で演じ踊る日本舞踊家の方々の情熱を感じていただければ、それが2022年の日本舞踊『銀河鉄道999』になり、意義が生まれると感じております。

藤間直三宇宙が物語のベースになっていることからも、原作の描かれた時代よりも身近だったりリアリティを持って見ることができます。戦争が起きてしまっている今の時代に、命をどう捉えるかということもそうですし、永遠の命とは何なのか、自分さえ生きていればいいのか、自分が良ければいいのか、ということへの答えをこの作品は出しています。それを観ている方に伝えていくことが大切なことなので、今だからこそ意義がすごくあると思います。

花柳笹公戦いの場面がたくさんありますし、地球では流行り病が起きた、という場面もあります。今回の上演台本を作り始めた時期はウクライナとロシアの戦争が始まる前だったと思います。この作品で起きていることが現実でも起きていて、それを止めてほしいという希望を日本舞踊家たちも持っています。それを少しでも発信することで、平和がどんなに素晴らしいことか、皆さんが少しでも感じていただければ、平和な世界に近づくのではないかと思います。いい世界になってほしいという希望も込めて作品を作っていきたいと思います。

Q 鉄郎の声の出演についてお聞かせください。

A松本幸四郎自分が声の出演で、その役を他の方が演じるというのは初めての経験です。その分、鉄郎の気持ちを丁寧に伝えることを意識して取り組ませていただきました。

Q OKWAVEユーザーにメッセージ!

A松本幸四郎受け継ぐ想い、伝えていく想いをもって取り組まれている日本舞踊家の方たちがたくさんこの舞台に立ちます。熱い思いを感じに劇場にお越しいただければと思います。そしてその情熱というものを皆さまに勇気として伝わるように舞台を作っていくつもりです。ぜひいらしてください。

藤間直三この『銀河鉄道999』という作品に対する想い、また『銀河鉄道999』という作品自体の想いを伝えられるように、全力で取り組ませていただきます。観ていただいた方々が熱量を受け取って、日々生きる活力にしていただければ嬉しいなと思います。そのためにも全力で踊らせていただきます。

花柳笹公今回は日本舞踊での『銀河鉄道999』となりますので、見た目もお着物が基本になります。そういった意味でも楽しんでもらえると思います。ぜひ皆さんお越しいただけたらと思います。

QOKWAVEユーザーに質問!

松本幸四郎銀河鉄道のようなものがあって、銀河に旅をできたら何をしたいですか。

藤間直三永遠の生命というものについて皆さんはどう思いますか。皆さんだったら永遠の生命は欲しいですか。

花柳笹公何をもって、梅雨はいつから始まると思いますか。

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松本幸四郎、藤間直三、花柳笹公(第5回日本舞踊 未来座 =才(SAI)= 日本舞踊『銀河鉄道999』)

■Information

第5回日本舞踊 未来座 =才(SAI)= 日本舞踊『銀河鉄道999』

第5回日本舞踊 未来座 =才(SAI)= 日本舞踊『銀河鉄道999』2022年6月3日 (金)〜5日(日)国立劇場小劇場(全8回公演)

宇宙を自由に旅することができる時代、永遠の命を持つ機械化人間になることが人々の憧れであった。だが一部の機械化人間は、「人間狩り」と称し貧しい人々を狩る残虐な行為を楽しんでいた。人々は「人間狩り」の恐怖におびえながらも、永遠の命を持つ機械の体への憧れを捨てきれずにいた。
星野鉄郎もその一人である。鉄郎は母を殺され、仲間も殺され、自身も命の危険にさらされながらも懸命に生きていた。謎の美女メーテルと出会った鉄郎は、メーテルから機械の体がただで手に入る惑星へと向かう「銀河鉄道999」のパスをもらう。メーテルもまた壮絶な過去があった。二人を乗せた「銀河鉄道999」の汽笛が鳴り、旅が始まる。
二人を待ち受ける運命とは……、
そして人間にとって本当の〈永遠の命〉とは……。

声の出演: 松本幸四郎、吾妻徳陽(中村壱太郎)
出演: 藤間直三、花柳笹公、西川扇衛仁、水木佑歌、西川扇与一、尾上菊之丞、花柳寿太一郎、藤間恵都子、若柳吉優、市川翠扇、中村梅、若柳佑輝子、花柳寿美藏、西川扇左衛門 ほか

原作: 松本零士
脚本: 藤間仁凰

アフタートーク開催決定
対象回: 6月3日(金)19:00、4日(土)18:00、5日(日)12:00の回

料金:
前売り8,000円(税込)
当日8,500円(税込)
各種割引:25歳以下割引・障害者割引、当日会場受付にてお一人様1,000円キャッシュバック

https://nihonbuyou.or.jp/performances/detail/416

©松本零士・東映アニメーション


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