OKStars Vol.457 映画監督 SABU

OKStars Vol.457はSABU監督への最新作『天の茶助』(2015年6月27日公開)についてのインタビューをお送りします!

Q 天界の脚本家たちが下界の人たちのシナリオを書いている、というアイディアが斬新で映像も美しいですが、これはどこから思いついたのでしょう。

ASABU偶然が重なることを皆さん経験したことがあると思いますが、何かに導かれているんじゃないかと考えたこともあると思います。そんなところから人生のシナリオをどこかで誰かが書いているとしたら面白いなと思ったのがきっかけです。

Q 沖縄の要素がふんだんに盛り込まれています。

ASABU沖縄に住んでから知った祭りや伝統芸能の要素を使いたいなと思いました。原作は沖縄に住む前に書き上げていたので、映画にしようと思った時に、沖縄の風景や伝統行事が使えるなと、これも不思議とつながっていて、まさに誰かのおかげなのかなと思います(笑)。

Q 『うさぎドロップ』に続いての松山ケンイチさんを主演に迎えられました。

A『天の茶助』SABU松山くんは『うさぎドロップ』のクランクイン直後の、お葬式のシーンの撮影の時にすごくヤクザっぽく見えたので、ヤクザ役をやったら面白いだろうなと思っていました。一方で松山くんは色白だし、すごくピュアなところがあって、天使のようなところもあると思いました。それで今回、両方をいっぺんにやってもらいました。

Q 商店街での撮影や、エイサーなど、賑やかな祭りの中での撮影はいかがだったでしょうか。

ASABU暑かったですし、大掛かりな撮影だったので大変でした。あまり時間もかけられずにとにかく撮らなければならないようなスケジュールでしたが、スタッフもこちらの意図をよく理解して、エキストラの方たちにもきちんと説明をしてくれたので、狙い通りに撮ることができました。こちらの本気度合いで、エキストラの方たちも乗ってくれたので、すごくいい現場でした。

Q 大野いとさんの演じたヒロインのユリについてはいかがだったでしょう。

A『店の茶助』SABU大野さんは初めて会った時、声が独特で、いま初めて喋ったかのような感じや透明感があって、見ていて惹かれるような存在感もありました。喋れないユリ役というものをすごく理解していて、現場でもリアクションの仕方など完璧でした。なので、結構ほったらかしでした(笑)。

Q 一番撮り応えのあったシーンは?

A『天の茶助』SABUラストのユリが叫ぶシーンです。あのシーン全体が長いので2日間に分けて撮らなくてはならなくて、まず、エキストラの方たちが翌日も来てくれるかという心配がありました。その点はちゃんと来てくれて問題はなかったですが、次に最後まで撮りきれるかという心配がありました。この作品の前に撮った『Miss ZOMBIE』でも一番大事なシーンの撮影が夜になってしまったのですが、今回もユリのシーンの撮影は夜に差し掛かってしまったので、若干周囲が暗くなってしまいました。でもそれが逆に照明のとばし方なども含め、いい効果になったかなと思います。
そのシーン以外も、お祭りで演舞してもらうシーンは全部大変でした。演舞する周りで芝居をするのは時間もかかりました。でも、映像としても効果音としても祭りがあるのは良かったです。

Q 人生のシナリオをはじめ運命のようなものについて、監督ご自身はどのようにお考えでしょうか。

A『天の茶助』SABUとくにマイナスのイメージに対しては、それを変えていってやろう、という意識はあります。思いが強いほど変えていけるとも思っています。願いは叶うという人間の力は本当はすごいですし、出し切れていない部分がまだまだあると思います。環境のせいにしたり無理だとあきらめたりせずに、変えていけるんだと思うことが大事だと考えています。

Q SABU監督からOKWaveユーザーにメッセージをお願いします。

ASABU最近は自分が観たい映画を作りたいと思っています。『天の茶助』は周りにはない映画です。コメディもアクションもあり、ラブストーリーも、最後まで泣けるようなところもある、自分が一番観たかった作品ですし、同年代の方たちにも満足してもらえる映画だと思います。しかも、コメディなのにベルリン国際映画祭のコンペティション部門に選ばれていますので、その力を信じてほしいです。

Q そのベルリン国際映画祭、現地に行かれていかがでしたか。

ASABUコンペティション部門でしか入れない劇場で上映されることは嬉しかったです。しかもソールドアウトで大きな劇場で満席の中、ものすごく盛り上がりました。茶助が長髪の男をうっかり天然パーマ頭にしてしまうシーンではむせるくらいの大爆笑になっていて、すごく嬉しかったですし、これで賞を逃してしまった悔しさとが同時に湧き起こりました。人間を描いているというところでは笑えるところは世界共通ですし、あらためて自信にもなりました。エンタテインメントであり、かつ沖縄の伝統芸能も入っていて、天界で脚本を書くのは巻物に墨という美しさもある作品なので、いろいろな映画祭にも呼ばれていますし、トルコ、ハンガリー、イタリア、台湾など15ヵ国以上での公開も決まっていて、すごく嬉しいです。映画祭に行くたびに、自分の作品の現地版DVDを買う楽しみがまた増えました。

QSABU監督からOKWaveユーザーに質問!

SABU自分の人生のシナリオはハッピーエンドだと思いますか?

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■Information
『天の茶助』

『天の茶助』

2015年6月27日(土)より全国ロードショー!

天界。白い霧が漂い、どこまでも続くような広間。そこでは数えきれぬほど多くの脚本家が白装束で巻紙に向かい、下界の人間たちの「シナリオ」を書いていた。人間たちは彼らが書くシナリオどおりに人生を生き、それぞれの運命を全うしているのである。茶番頭の茶助は脚本家たちに茶を配りながら、そんなシナリオの中で生きている人間たちの姿を興味深く眺めていた。中でも、口のきけない可憐で清純な女性・新城ユリへの関心には恋心にも似た感情があった。そのユリが車に跳ねられて、死ぬ運命に陥ってしまったことを知る茶助。ユリを救う道はただひとつ、シナリオに影響のない天界の住人・茶助が自ら下界に降り、彼女を事故から回避させるしかなかった…。

監督・脚本・原作:SABU
出演:松山ケンイチ、大野いと、大杉 漣、伊勢谷友介、田口浩正、玉城ティナ、寺島進
配給:松竹メディア事業部/オフィス北野

chasuke-movie.com

©2015『天の茶助』製作委員会


■Profile

SABU

SABU1964年11月18日生まれ。和歌山県出身。
大阪のデザイン専門学校でファッション・デザインを学ぶ傍ら、パンク・バンドでの音楽活動を行う。卒業後、ミュージシャンを目指して東京へ上京するも、所属事務所の意向もあって俳優の道へ転身。オーディションを重ねていく中、1986年に『そろばんずく』(森田芳光監督)で俳優デビュー。『ワールド・アパートメント・ホラー』(1991/大友克洋監督)では初の映画主演を果たすだけでなく、第13回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞に輝いた。その活躍の一方で、乱作される低予算作品への内容的不満が徐々に募り、試しに自ら脚本を書いてみたところ、知り合いのプロデューサーに評価され、同作品での監督デビューを打診される。そして生まれた初監督映画『弾丸ランナー』(1996)はベルリン映画祭パノラマ部門への出品、及び第18回ヨコハマ映画祭での新人監督賞受賞という快挙を成し遂げ、気鋭の映像作家「SABU」の存在を国内外に一躍アピールすることになった。
以後も、笑いを絶妙に織り交ぜたエンタテインメント作品を中心に、映像分野でのたゆまぬ創作活動を続けている。最新作『天の茶助』では映画化企画に先駆けて原作を執筆し、小説家デビューも飾った。