OKStars Vol.458は2015年6月27日(土)公開の映画『ストレイヤーズ・クロニクル』の瀬々敬久監督へのインタビューをお送りします。
Q 『ストレイヤーズ・クロニクル』映画化のきっかけについてお聞かせください。
A瀬々敬久もともと、特殊な能力を持った人の物語を映画にしようと佐藤貴博プロデューサー達と話していまして、いろいろな題材を集めている中でこの原作を映画化しようということになりました。原作は、能力者の物語ではあるのですが、彼らの日常も描かれていて、青春物語のような一面もあって、そういうところが興味深かったです。能力者だけど彼らが普通の若者である感じが面白いなと思いました。
Q 能力バトルなど、アクションシーンも豊富ですが、どのように映像化しようとしましたか。
A瀬々敬久能力バトルではあるけれど、戦っている場所は家の庭先など、特殊な場所ではありません。「隣人がもし能力者だったら?」というようなザワザワしたものをやりたかったので、アクションも東京の街なかを舞台にしています。普通の青年が能力を持つようになる映画は最近のハリウッド作品にも出てきましたが、ヒーローというものが完全無欠な人間というよりも、どこかみんな悩みを抱えているヒーロー像が増えています。『ストレイヤーズ・クロニクル』でも、主人公たちはただ戦っているばかりではなく、悩みや友情なども描いています。
Q キャスティングについてお聞かせください。
A瀬々敬久佐藤プロデューサーは『桐島、部活やめるってよ』を手がけた時にオーディションを大々的にやったそうです。その経験があったからか本作でもオーディションを行って選びました。黒島結菜さん、高月彩良さん、瀬戸利樹くんなど半分くらいはオーディションで決めました。映画の芯になる岡田将生くん、染谷将太くんに、そういったフレッシュなキャストを組み合わせて新しい作品を作りたいという思いがあったんです。
Q そんな若手キャストたちの現場の雰囲気はいかがでしたか。
A瀬々敬久岡田くんは<チームスバル>の“長男”として、メンバーをまとめようとご飯に連れて行ったりもしていて、仲の良い感じでしたね。白石隼也くん、清水尋也くん、成海璃子さん、瀬戸くんとみんな優しげな子たちが集まっているので、温かいムードの中でやっていました。一方、染谷くんの<チームアゲハ>の方は個性派揃いで、言葉もあまり交わすこと無くプロの集団のように黙々とやっていました。岡田くんが染谷くんに「もうちょっとまとめた方がいいんじゃないの?」と言ったそうですが、「いや、俺できないよ」みたいな感じで(笑)、それぞれのチームカラーがありました。
Q 撮影中、印象的だったエピソードをお聞かせください。
A瀬々敬久終盤の、白石くんが岡田くんの首を絞めるシーンで岡田くんが「本気でやっていいから」と言ってやっていたら、実は岡田くんは何回か落ちていた、というのが印象的でした(笑)。鈴木伸之くんがナイフで向かってくる場面でも岡田くんは「本気でやっていいよ」と言っていて、実はステンレス製の硬いナイフを使っている時もあって、何回かは本当に当たってしまっていたようです。岡田くんは普段わりと次男のような立ち位置が多い中で、今回のキャストの中では先輩格なので、長男の意識を持って頑張っていたのが印象的です。座長としてみんなをまとめようとしていました。
Q 岡田さん、染谷さんの印象についてお聞かせください。
A瀬々敬久豊原功補さんが岡田くんのことを「芝居を受けてくれるからやりやすい」と言っていました。若手は自分の想いややりたいことを芝居にアウトプットしがちですが、岡田くんは相手の芝居にコールアンドレスポンスのように返していけるので、そこには彼の人間性もあるでしょうし、そういう化学反応の中で演じることが出来ます。そこが岡田くんの素晴らしいところです。染谷くんは子役時代からのキャリアがある分、芝居の作り方も分かっているので、違うことを発見したり新しいものを見つけたいというチャレンジ精神で取り組んでいました。そこが染谷くんの魅力でもあり面白さでもあると思います。僕も染谷くんのシーンでは彼のそういう姿勢がうまく出るように考えながら撮っていました。染谷くんは自分自身のことよりも作品の中で自分がどう居るとより面白くなるかという冷静な目線をいつも持っていたように思います。
Q オールロケでの撮影だったそうですが、その狙いは何でしょうか。
A瀬々敬久夏の撮影だったのでセミの声がうるさくて同時録音は大変でしたが、そういうことも映画作りの面白さだと思います。セットよりもロケの空気感が好きなので、一軒家の中での撮影だとしても、セットよりも、実際に外に風景があり、どこかにつながっている中で撮影した方が生々しいものが撮れる気がしています。今回もロケーションにこだわって作りました。
Q 本作を撮ってあらためて気づいたことはありますか。
A瀬々敬久自分が年を取ったことです(笑)。体力的な意味ではないですよ。岡田くんたちは自分が仕事を始めた頃以降に生まれているので、お父さんと息子が仕事をしているようなものです。こういう若い俳優たちと仕事をすると、年齢的にあと何年撮り続けられるのだろうと考えてしまいます(苦笑)。ですが、作っている内容は昔から変わっていないです。大人が作ったある既成の概念を若者が壊していくというのが青春のあり方だと思っているので、今回も大人たちが作った世界観を青年たちが壊していく物語となっています。それが若い頃から好きでしたし、本作は若者向けの作りにはなっていますが、僕ら初老と呼ばれる世代の男性が観ても面白い作品になっていると思いますので、ぜひ、僕と同世代の方たちにも観ていただきたいですね。
Q OKWaveユーザーにメッセージをお願いします。
A瀬々敬久『ストレイヤーズ・クロニクル』には、特殊な能力はあるけれど不幸を抱えている青年たちがどう生きていけばいいか、というテーマを含んでいます。僕らが子供の頃の高度成長期の時代と比べると、今は生きにくい時代だと思いますし、当時のように前進することや未来に向かうことを信じられない若者が多いと思います。この瞬間をどう生きるかが問われる時代ですが、今だからこそ観てほしい映画です。能力者たちが主人公ですけれど僕たちと近しい存在として描いています。アクションシーンもたくさんありますが、観終わって良かったなと思ってもらえる映画にしましたので、ぜひ楽しんでほしいです。
■Information
『ストレイヤーズ・クロニクル』
1990年代初め、ある極秘機関の実験によって、2組の“進化した”子供たちが誕生した。全く違う方法で生み出された彼らの共通点は、通常の人間にはない特殊能力を持つこと。だが、成長した彼らが選択したのは、正反対の道だった。希望を信じた1組は、自分たちの能力を未来のために使おうとし、絶望に満ちたもう1組は、未来を破壊しようと決意した。仲間との絆だけを頼りに生きてきた彼らが今、宿命によって引き合わされる。彼らを利用しようとする権力者たちが暗躍する中、人類の未来を決する、切なくも壮絶なバトルが始まる!
監督:瀬々敬久(『ヘヴンズ ストーリー』、『アントキノイノチ』など)
原作:本多孝好「ストレイヤーズ・クロニクル」集英社刊
出演:岡田将生 染谷将太 成海璃子
松岡茉優 白石隼也 高月彩良 清水尋也
鈴木伸之 栁俊太郎 瀬戸利樹 / 黒島結菜
豊原功補 石橋蓮司 伊原剛志
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:www.strayers-chronicle.jp
(C) 本多孝好/集英社 (C) 2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会
■Profile
瀬々敬久
1960年生まれ。大分県出身。
『ヘヴンズ ストーリー』(10)でベルリン国際映画祭批評家連盟賞を受賞する。
主な監督映画に『HYSTERIC』(00)、『RUSH!』(01)、『DOG STAR/ドッグ・スター』(02)、『MOON CHILD』(03)、『ユダ』(04)、『サンクチュアリ』(05)、『泪壺』『フライング☆ラビッツ』(共に08)、『感染列島』『ドキュメンタリー 頭脳警察』(共に09)、『愛するとき、愛されるとき』(10)、『アントキノイノチ』(11)、『マリアの乳房』(14)など。