OKStars Vol.477 声優 羽佐間道夫

OKStars Vol.477は『第8回したまちコメディ映画祭in台東』にて大好評企画「声優口演ライブ」に出演・プロデュースする羽佐間道夫さんへのインタビューをお送りします。

Q 「声優口演ライブ」の魅力についてお聞かせください。

A羽佐間道夫無声映画を活弁ではない方法で、声優がリップシンクロで登場人物たちを喋らせたらどうなるかという試みです。文楽やパペットの裏側を前面で見せながらやっていくようなものですね。無声映画の役者たちが私たちの声で動いていると思われればいいなと思います。この『したまちコメディ映画祭in台東』の中ではちょっと異質なジャンルかもしれませんね。

Q 「声優口演ライブ」を思い立ったきっかけは何だったのでしょう。

A羽佐間道夫映画が好きというのはもちろんですが、無声映画に触れる機会がよくあって、昔の人はすごい芝居をしていたんだなぁと思うと同時に、活弁士以外の方法で、もうちょっとみんなと一緒にやっていける方法はないかと考えて、登場している人が本当に喋ったらどうなるのだろうと思ったのがきっかけですね。この俳優にはこの声優を、とキャスティングも含めてやり始めました。最初は邦画が中心で、だんだんと認知されて注目されてきました。この『したまちコメディ映画祭in台東』は、いとうせいこうさんが総合プロデューサーとして育ててきましたが、僕らの「声優口演ライブ」も一緒に育てられてきました。無声映画をそういう三重構造で楽しんでいただくという試みですね。

Q 今回の2作品(『キートンの探偵学入門』と『犬の生活』)を選んだ狙いは何でしょう。

A羽佐間道夫チャップリンの作品は、いまだに監視が厳しいんですよ。日本チャップリン協会という団体があって、最初は反対されたんです。「一度観に来てください」と言って観てもらったら「これは面白いね」と、お墨付きをもらえました。日本チャップリン協会の名誉会長は黒柳徹子さんで「私も出たい」と言うほど面白がってもらっています。それでさらにのめり込んでいきました。人気脚本家の方々がこの試みを面白がって台本を書いてくれたらさらに文化として広がるのではと思っています。
『キートンの探偵学入門』は以前に取り上げたこともありますが今回はその時とはまったく違うキャストなので、全然違う映画に見えると思います。
それに今回の『犬の生活』では山寺宏一がチャップリンをはじめ、40数人の役をひとりでやってしまいます。全部声を変えて演じますので神業だと思いますよ。

Q 「声優口演ライブ」は声優の方たちの反響はいかがでしょうか。

A羽佐間道夫今の録音の現場はほとんどが単独なんです。昔はみんなそろっての生放送があったくらいなので、いまは録音の仕方がまったく違います。それが声優口演ライブでは一同に介して舞台でライブでトチり無しでやるわけですから、一種の冒険ですよね。それがみんなを刺激して、やりたがる人が増えてきています。アンサンブル芸術のようなものですね。

Q ゲスト出演される「とり・みきの吹替“凄ワザ”講義」についてお聞かせください。

A羽佐間道夫とり・みきさんが吹替えをしたら面白いだろうと監修されたドイツのマペットと人間の共演するコメディ映画『スサミ・ストリート全員集合 ~または“パペット・フィクション”ともいう~』を上映します。その作品に私たちが吹替え出演した経緯があったので、今回はその作品を基にトークをする予定ですね。とり・みきさんは吹替えの凄さをずっと見てきた方なので、彼の立場から見た声優の吹替えの仕事を紹介してくれると思います。吹替えにも50数年の歴史がありますし、吹替え技術も少しずつ向上していますので、そういう裏話を話し始めたら際限なく出てくると思います。

Q 何か吹替えにまつわる逸話などありますか?

A羽佐間道夫生放送で吹替えていた時代があって、放送に合わせてスタジオの扉を閉め切ってやる仕組みでした。ある時、海賊役とお姫様役の男女ふたりの声優が演じる予定になっていて、お姫様役の女性の声優さんが本番前に一度スタジオから出たら中に戻れなくなるアクシデントが起きたんです。残された海賊役の男性声優の方が結局両方の声を演じることになったわけですが、それをTVでみんな違和感なく見ていましたが、そういうエピソードはたくさんありますよ。
僕は大嵐の翌日に録音することがあって、スタジオに行ったらスタジオの中も水浸し。支給された長靴に履き替えて録音したことがあります。『砂漠の鬼将軍』という有名なタイトルですが、足元は水がジャブジャブしてました。

Q 声優の仕事での大きな変化は何でしょう。

A羽佐間道夫やはり録音の仕方ですね。以前は全員集まってリハーサルをして翌日本番でした。今はひとりひとり集合時間が違っていて、順番に録っていくので、機械文明が人間のアンサンブルを壊している面もあると思います。洋画の吹替えでは何人か集まることもありますけどアニメーションではほぼ無いので、相手の台詞を受けて返すという考え方にはなりにくいです。昔の映画の吹替えを見るとそこがやっぱり違っていて、緩急自在にやっていますよね。今のやり方で「あ、うん」の呼吸みたいなのをやるのは逆に難しいんじゃないかと思います。そこにいくと、「声優口演ライブ」はみんな一緒になってやるので全然違うと思います。そういうところをぜひ見てもらいたいと思います。

Q 「OKWave」にも声優になりたい方からの質問が寄せられていますが、声優を目指す人にぜひアドバイスをお願いします。

A羽佐間道夫学んだからといって誰でもなれるものではないです。声優になれる人となれない人の違いを観察していると、見たり聞いたり試したりというのを貪欲にやっている人が伸びていきます。人の芸を見て、人の音楽を聴き、人の描いた絵を見る、さらに小説なども読んで自分の引き出しを増やしている人は、きれいな声ではなくても伸びていると思います。山寺宏一なんかも、例えばアヒルの声を演じる時にはアヒルを実際に見てすごく研究をしています。野沢雅子も動物の声を演じる時には、実際にその動物のいるところに行ってその声がどういうものなのか盗んできます。それで役柄の中にそれを入れていくわけです。どの職業も同じだとは思いますが、その道に一心になってやることが大切だと思います。

Q OKWaveユーザーにメッセージをお願いします。

A羽佐間道夫今の時代の人たちはスマホがあるからか、友だちと1日中喋ってるという人は昔ほど多くはないと思います。お笑い番組が人気なのはお笑いコンビがずっと喋っていることへの憧れがあるのだと思います。声優に憧れる人が多いのも、自分も表現したいという表れなのかなと思います。今回の「声優口演ライブ」もまた喋るということを学ぶいい機会になると思います。

Q羽佐間道夫さんからOKWaveユーザーに質問!

羽佐間道夫もし見ている方で声優になりたいという方がいたら、その理由をぜひ答えてください。そういう自問自答が大事です。それで自分の個性も見つけてくれたらいいと思います。

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■Information

『第8回したまちコメディ映画祭in台東』

『第8回したまちコメディ映画祭in台東』2015年9月18日(金)~22日(火・祝)

http://www.shitacome.jp/2015/index.shtml

「声優口演ライブ」
9月18日(金)開場18:00、開演18:30、終了20:30(予定)
会場:浅草公会堂
チケット情報:【料金】前売り4,000 円、当日4,500 円(全席指定)
出演:羽佐間道夫、野沢雅子、山寺宏一、岩田光央、草尾毅、内田夕夜、恒松あゆみ

①『キートンの探偵学入門』 口演:羽佐間道夫、野沢雅子、岩田光央、草尾毅、内田夕夜、恒松あゆみ
②羽佐間道夫の声優“楽”入門~声優トークショー~
出演:羽佐間道夫 野沢雅子 等
新人時代のエピソードなどを中心に、声優の魅力・素晴らしさを声優界のレジェンドたちが楽しくご紹介します。
③『犬の生活』 口演:山寺宏一

※内容、ゲスト及びトーク、終了時間は予告なく変更になる場合がございますので、ご了承ください。

映画講義「とり・みきの吹替“凄ワザ”講義」
9月20日(日)開場14:00、開演14:30
会場:東京国立博物館 平成館
チケット情報:【料金】前売り1,500円、当日1,800円
講師:とり・みき
ゲスト:羽佐間道夫 他


■Profile

羽佐間道夫

羽佐間道夫ムーブマン代表取締役。「ロッキー」シルヴェスター・スタローンを務める他、『スーパーテレビ情報最前線』『皇室特集』『エブリィ特集』『ズームインサタデー』『全国警察追跡24時』などの番組ナレーションなどで活躍中。
最近の出演作として『ホビット』ガンダルフ役、『テッド』サム・ジョーンズ役など多数吹替えを担当。吹き替え本数は6,000本を超える声優界の大御所。
声優口演総合プロデューサーとしても活動している。
第18回ATP賞2001ナレーター部門 個人賞、2008年第2回声優アワード「功労賞」など。

http://mouvement.jp/actors/hazama/