OKStars Vol.489は2015年10月16日(金)公開の映画『探検隊の栄光』の山本透監督へのインタビューをお送りします。
Q 『探検隊の栄光』の映画化について、監督はどのような経緯で参加しましたか?
A山本透プロデューサーから原作本を薦められたのがきっかけです。原作はわりとビターなストーリーなんですが、プロデューサーからは「そこは一旦忘れていいから」と言われたので、僕が撮るなら楽しい映画にしたいと思って脚本を書き始めました。
Q 「川口浩探検隊」などを彷彿させる設定で、探検ロケの裏側を描いていますが、監督ご自身はこの「探検シリーズ」を観ていましたか?
A山本透放送当時は子どもでしたので普通にドキドキしながら観ていました。バラエティ扱いされるようになってきたのは最近ですよね。
改めて観直すと、子どもの頃の記憶とは違うなぁと思いました。真剣にやっている部分もあるし、ツッコミどころも見つかりますし。今ではヤラセ番組の代名詞のように言われてしまっていますが、DVDのコメンタリーで当時のプロデューサーさんは、「ドキュメンタリーではなく娯楽番組を作っていました」ということを強調されていて、なるほどなと思いました。
Q 主演の藤原竜也さんの演じた杉崎は、何となくの藤原さんのイメージと重なりますが、キャスティングはいかがだったのでしょう。
A山本透藤原さんの名前は早くから上がっていましたので、かなり当て書きに近いですね。だまされたわけではないけれど、ちゃらんぽらんな現場に連れてこられて、そこからみんなを引っ張っていく、杉崎という隊長の熱い面が最終的にしっかり見えるような話にしようと。藤原さんに決まった時点で、杉崎の暑苦しいくらいの長セリフは絶対に言わせたいなと思っていました。
Q ユースケ・サンタマリアさんと小澤征悦さんの演じたプロデューサーとディレクターも妙にリアリティを感じますが、このふたりのキャラクターはいかがだったでしょう。
A山本透ユースケさんはある意味、井坂プロデューサー役そのままなので、ああいう人物は抜群にうまいですよね。そうすると、相方である瀬川ディレクターとのバランスが大事。キャスティングが決まる前は、悪ガキ兄弟のような似た者同士で、杉崎には悪ふざけしてるようにしか見えないキャラクターを書いていたんですが、プロデューサー役にユースケさんが決まったので、もうひとりは違う側面があった方がいいなと考え。小澤さんはどんな役をやっても説得力があるので、芯に熱いものを持っているキャラクターも演じてくれると思い、お願いしました。杉崎を含めた、3人のバランスが良いですよね。撮影前に本読みを2回させてもらって、おふたりの芝居を見ながらプロデューサーとディレクターのキャラクターを区別しつつ最終的に書き直せたのが、とても良かったと思っています。
Q 撮影の様子はいかがだったでしょうか。かなり大変だった、とキャストの方々は仰っていたようですが…。
A山本透実際、大変でしたね。沼での杉崎とワニの格闘シーンも、台本に書いてあるのでもちろん藤原さんはやる気で現場に来ていたと思いますが、実際の沼と作り物のワニを見て「え、ここで…これやるんですか?」って。役の杉崎と全く同じ気持ちだったと思いますよ。それでも覚悟を決めた藤原さんは、4月のまだ冷たい水の中に入って、服も脱いじゃって、ワニと大暴れ!それを僕はモニターで見ながら「脱いだ、脱いだ」って笑ってるという(笑)。スタッフも「バカな映像を撮っているよなあ」と思いながら心底楽しんで作ってたと思います。
Q 杉崎がクライマックスで熱く語るシーンはどんな狙いがあったでしょうか。
A山本透杉崎が最後に覚醒するというか、暴走する場面が絶対にほしいと思っていました。戦争中の反政府ゲリラを説得して番組に出演させる設定なんで、最初は「戦争なんかしてる場合か?」って真面目な台詞書いてたんですけど。藤原さんに決まった時点で、セリフの意味とかではなく、彼の熱い思いが内面から放出すれば、言葉が通じなくても、その熱さは届くんじゃないかと。実際、藤原さんはとても上手でした。違うアングルから10回以上撮っているんですが、毎回すさまじいテンションで暴走しまくっているので、ぜひ劇場で彼の熱さを体感してほしいです。
Q 改めて、監督が本作に込めた気持ちや見どころをお聞かせください。
A山本透難しい映画だとか怖い映画だと思われてしまっていないかが心配で、とにかく気楽に楽しんでほしいです。明るい、楽しい気持ちで映画館を出てもらいたいという思いだけで作りましたから。映画館でみんなでツッコミを入れながら観てほしいですね。映画の現場は、端から見ると遊んでいるようにしか見えないかもしれませんが、いい年した大人たちが、お客さんたちに笑ってもらいたい一心で一生懸命作ってます。その裏側を見せた作品なので、作り手の人たちは「バカみたいに熱いんだ」ということを感じながら、笑い飛ばしてもらえたら最高です!!
Q山本透監督からOKWaveユーザーに質問!
山本透もしこのクルーの番組「本格骨太バラエティ『探検隊サバイバル』」の続編があったとしたら、彼らにはどこに行ってほしいですか?
…ピラミッド?ですかね?!どうやって撮影するのか分かんないけど、楽しそう。
■Information
『探検隊の栄光』
落ち目の俳優となった杉崎が、俳優人生を賭けて新境地に挑むべく、伝説の未確認生物(UMA)「ヤーガ」を求め秘境の地を探検するTV番組の隊長に挑戦。番組がオモシロければ何でもありのプロデューサー、大雑把に進めていくディレクター、職人気質のカメラマン、UMAオタクの音声・照明、バラエティ番組をバカにするAD、テキトーな現地通訳で構成される番組スタッフ。チームワークもバラバラで、行き当たりばったりの撮影に振り回される杉崎だが、いつしか隊長の自覚も芽生え“真剣”に番組作りに挑んでいく。
出演:藤原竜也、ユースケ・サンタマリア、小澤征悦、田中要次、川村陽介、佐野ひなこ、岡安章介(ななめ45°)
原作:荒木源「探検隊の栄光」(小学館刊)
脚本:徳尾浩司、金沢達也、山本透
監督:山本透
配給:東宝映像事業部
公式サイト:tanken-movie.com
©2015「探検隊の栄光」製作委員会 ©荒木源/小学館
■Profile
山本透
1969年東京生まれ。
大学卒業後、助監督として数多くの監督の元で演出を学ぶ。
監督・脚本作品として、『キズモモ。』(2008)、『グッモーエビアン!』(2012)など。最新作に『猫なんかよんでもこない。』(2016年1月30日公開予定)を控える。その他、演劇集団「UNCHANGED」旗揚げ公演で、原作監督・脚本も手掛ける。