OKStars Vol.493 映画監督 朝倉加葉子

OKStars Vol.493は女性6人組ニューウェーブアイドルグループ“ゆるめるモ!”主演の映画『女の子よ死体と踊れ』の朝倉加葉子監督へのインタビューをお送りします。

Q 『女の子よ死体と踊れ』の映画化の経緯をお聞かせください。

A朝倉加葉子「TRASH-UP!!」という雑誌の方々と以前から知り合いで、彼らからゆるめるモ!主演でホラー映画を撮りませんかと声をかけられたのが最初のきっかけです。ゆるめるモ!のライヴなどを観て面白い人たちだなと思って、彼女たちの面白いホラー、彼女たちだからできる映画は何だろうなと考えながら映画化を進めていきました。

Q アイドルとしてのゆるめるモ!の印象などお聞かせください。

Aゆるめるモ!『女の子よ死体と踊れ』朝倉加葉子みんなかわいらしいし、ひとりひとりの個性も強くて、それでいて地に足が着いていて、普通の女の子たちでもある、という印象です。 いろんなミュージシャンと共演したり、アイドルとしてもちょっと変わった活動をしているので、みんなが想像するよりもちょっと先を行っているような面白いグループだと思います。普通の女の子が持っているであろう明るさや朗らかさ、複雑さ、不安みたいなものも各々が抱えていて、表舞台に立つからといってそこを見ないことにするわけでもなく、いつまでも自分たちのままでいる、というのが素敵だなと思いました。

Q ゆるめるモ!のメンバーの演じた役柄は当て書きのように進めたのでしょうか。

A朝倉加葉子ゆるめるモ!の最初の映画になるので、役名が本人たち自身の、彼女たちが出ることを明白にした映画にしようと思いました。彼女たちが魅力的に見えるようにしたくて、おまかな話を考えた後に彼女たちひとりひとりに会わせてもらって、彼女たちの人柄をキャラクターを作りこんでいく上での参考にし、役柄を変化させたり、強調したりしながら脚本を作っていきました。
彼女たちは役柄のことをよく理解してくれて、自分たちの役でもあり、ちょっと違うということも楽しんでやってくれたと思います。

Q どんな映画にしようと思いましたか。

A朝倉加葉子ちょっとおとぎ話のような、かわいらしい映画にしたいと思いました。死体が出てきますが、それをマネキンや人形みたいなフィクションの存在にしたいと思いました。彼女たちも「死体いいじゃん」と言えるような(笑)。死体とともに冒険をする、おとぎ話的な話や画作りを常に心がけて、彼女たちの敵となるヤクザ役の方たちにも「この話はおとぎ話で、彼女たちは子どもで、ヤクザは悪い大人です。圧倒的に大きい敵にしたいです」という話をして、彼女たちとは全く違う存在感を注入してもらいました。

Q 撮影で一番苦労したことは?

A『女の子よ死体と踊れ』朝倉加葉子合成や仕掛けが多い中で5日間の撮影で、途中で雨が降ったり、日々、時間との戦いだったのが大変だったところですね。大雨が降ったので雨宿りをしている設定にしたり、屋上で踊るシーンは天気の都合で別の日に撮影したのでいい浮遊感を生んだり、状況に応じて多少変更しつつ進めたのがいい方向に作用したと思います。雨については当初別のシーンで降らせたかったのを時間とお金の面で諦めていたので、実際に雨が撮影できてラッキーではあったんですが、私のiPhoneはその雨のせいで水没して、そこだけはアンラッキーでした(苦笑)。

Q では、撮影でこだわったシーンはいかがでしょう。

A朝倉加葉子“儀式”を行うシーンです。ちょっと幻想的なものにしたかったので、カメラマンと相談して暗さに強いカメラを使うことにしました。野外での撮影だったので、普通なら照明を使って撮りますが、そのカメラを使って美術のろうそくと月明かりだけを使った雰囲気のよい画を撮ることができました。天気も良くなければ撮れなかったので、そこは狙い通りに撮ることができて良かったです。

Q 女性のかわいらしさが出ていましたが、何か意識されたところはありますか。

A朝倉加葉子女の子は複雑なものだと思っています。かわいい時も小憎らしい時もある集合体であることが魅力的で、そういうものを撮りたいと思っています。そしていろんなタイプの子がいて、たとえば何も考えていない子も、考え過ぎちゃう子も、それぞれを魅力的に撮りたいと思っています。

Q ホラーを撮る時のこだわりは何かありますか。

A『女の子よ死体と踊れ』朝倉加葉子私は最近になってからホラー映画を好んで観ることができるようになったので、そんなに詳しくはないんですが、ホラー映画のいいところは、頭で考えるよりも、怖いとか悲しいとかの感情や感覚が一気に膨らまされるところだと思っています。自分が映画を作る時はそういう瞬間をどこに入れられるかをいつも考えています。
今回は死体が出てきますが、どちらかと言えば青春映画色が強い作品になったと思います。

Q ちなみに監督が影響を受けたホラー映画は何でしょう。

A朝倉加葉子『悪魔のいけにえ』という作品です。いつ観てもすごい、特別な映画だと思っています。怖いですけど型破りな所もあり、これこそがホラー映画とは言い切れない部分もあるかもしれませんが、確実にいろいろな感覚を刺激されるし、生々しいところがいつ観ても面白いなと思います。

Q 本作を経て、今後に向けて思うところはいかがでしょう。

A朝倉加葉子この作品を作ってみて、改めて自分はエモーショナルな映画を作りたいんだと思いました。それが怖い方向に転がるとホラー映画だし、それが若者の生活であれば青春映画になりますが、そういう“エモい”映画をどんどん作りたいと思います。そういう意味ではジャンルは何でもよくて、サスペンス映画ならサスペンスならではのクライマックスをやはりエモーショナルに作れたらいいなと思います。

Q 最近エモいと思った映画はありますか?

A朝倉加葉子砂田麻美監督の『夢と狂気の王国』です。スタジオジブリを題材にしたドキュメンタリーで、宮﨑駿監督が引退会見の直前に、控室の窓から見える景色を見ながら「あの屋根から屋根に飛び移ったり、配管をよじ上って、電線を伝って駆け抜けるのをアニメーションでやったら面白いですよ。遥か向こうまで行けそうな気がする」みたいなことを言うんですけど、その言葉に合わせて、宮﨑駿監督が作ってきたアニメのルパンがビルからビルに飛び移るとか、ナウシカやパズーが走るとか、猫バスが電線の上を進む画を重ねるんです。宮崎監督の発言というより、彼の人生丸ごとが宮崎アニメを創作してきたことや、その情熱の火がこの瞬間もなお消えないことをその構成と編集で表していることにめちゃくちゃ感動しました。

Q ではOKWaveユーザーにメッセージをお願いします。

A朝倉加葉子ゆるめるモ!だからできる女の子像を撮ることができた映画です。かわいくて、ダルそうで、ちょっとアナーキーで残酷で。でも普通の女の子たちを描いてもいるので、ゆるめるモ!のファンの方たちも、これからゆるめるモ!を知る方たちも楽しめて心に残るような映画になればいいなと思います。

Q朝倉加葉子監督からOKWaveユーザーに質問!

朝倉加葉子皆さんがエモいと思う映画は何でしょうか?

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■Information

『女の子よ死体と踊れ』

『女の子よ死体と踊れ』2015年10月31日(土)よりシネマート新宿、11月14日(土)よりシネマート心斎橋、名古屋シネマスコーレ、12月5日(土)より仙台・桜井薬局セントラルホール、12月12日(土)より広島・横川シネマ、12月19日(土)より福岡・中洲大洋映画劇場ほか全国順次公開

清掃会社YMMクリーニングでバイトをする、“もね”、“けちょん”、“しふぉん”、“ようなぴ”、“ちーぼう”の何処にでもいる5人の女の子たち。鬼の様なブラック女社長に恫喝されながら、嫌々だけど他にやりたいこともないから何となくつまらない毎日を過ごす日々…。そんなある日、森の中の清掃現場で彼女たちが発見したのは透き通るように美しい少女の“死体”。ノルウェーのブラックメタルバンドの儀式を使って“死体”を蘇らせることに成功した5人だったが、その死体“あの”には知ってはならないヤバすぎる秘密が隠されていた。

監督・脚本:朝倉加葉子
主演:ゆるめるモ!〈もね、けちょん、しふぉん、ようなぴ、あの、ちーぼう〉
出演:松田優、原扶貴子、尾本卓也、国分崇、川連廣明、信國輝彦、古内啓子
製作:「ゆるめるモ!」映画製作委員会(キングレコード+日販+アソブロック)
企画・制作:TRASH-UP!!
配給:日本出版販売
公式サイト:http://ymm-film.com/

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映画スペシャルCD『女の子よ死体と踊れ』

『女の子よ死体と踊れ』(KICS-3296)2,000円+税 発売中
■収録曲:
1.あさだ(Movie Version)
2.アーメン(Movie Version)
3.その他のみなさん
4.OO(ラブ)(Movie Version)
5.人間は少し不真面目
※新曲[3、5]、リミックス[1、2、4]


■Profile

朝倉加葉子

朝倉加葉子東京造形大学卒業後、TV制作会社勤務を経て映画美学校を修了。2010年、TVドラマ『怪談新耳袋 百物語』の一篇『空き家』で商業デビュー。2013年に初長編となる全編アメリカ撮影のスラッシャーホラー『クソすばらしいこの世界』が全国各地で公開された。また同年の短編『HIDE and SEEK』が現在も各国の映画祭で上映中。2014年にドラマ『スマホラー劇場 悪魔召喚』、また2015年にドラマ『リアル鬼ごっこライジング 佐藤さんの正体』などを監督。
https://twitter.com/asskrash