OKWAVE Stars Vol.509は映画『海難1890』(公開中)に出演の大東駿介さんへのインタビューを送りします。
Q 『海難1890』本作への出演についてどう受け止めましたか。
A大東駿介僕はたまたま5年くらい前にトルコに旅をしていて、その後も2度行きました。この映画で扱われている和歌山とテヘランの両方の歴史も現地の方から聞いて知りました。トルコに訪れた時には現地の方たちから本当に良くしていただいたので、トルコのことはよく薦めてもいました。トルコの方たちとは、旅をして訪れても、友達になったような感覚で、その裏にはこういう歴史があって、素敵だなと思っていましたが、まさか映画になるとは思っていませんでした。映画化の話はオファーをいただく前からちらっと聞いていて絶対に出たいなと思っていたので、沈んでいく船の乗員を一番に助けに行った村人の役でオファーをいただいたことには縁を感じました。トルコでお世話になって、その裏にはこういう歴史があって、その歴史の始まりのきっかけのところを作品の中で演じられるのは感慨深いものがありましたね。
Q 演じる上ではどんなところを大事にしようと思いましたか。
A大東駿介和歌山県東牟婁郡串本町(※旧・大島村樫野)という、実際にトルコ軍艦エルトゥールル号の事故が遭った場所で撮影を行ったのですが、慰霊碑もあって、そんな場所で撮影させてもらえるのは贅沢なことだと思いました。今回、トルコと日本政府の協力ですごく力が入っていたので、オープンセットで村が再現されていましたし、現場に行くだけで自然と気持ちが入る環境だったので、演じる上で助かりました。
僕は東京で暮らしているからとくにそう感じるのかもしれませんが、今は物事をシンプルに考えるのが難しい時代だと思います。人と人の距離感や気持ちの伝え方も複雑になっていて、素直に物事を発信するのが難しいなと感じています。だから、台本を読んだ時には、現代とは自分の気持ちの伝え方が違うことを意識して、もっとシンプルに目の前にいる人と自分のことを考えるようにしました。怒り、哀しみ、喜びといった感情を、普段の生活では心の扉をいくつも開けてコミュニケーションを取るところを、常に扉を開けっ放しにすることを意識しました。
和歌山でトルコの人たちを助けた時のトルコ人への接し方もそうですし、シンプルで人らしい人が描かれていることがこの作品の魅力だと思います。こういうことで歴史が作られて、人と人がつながっていくのが、フィクションではないのが魅力的です。物語としては実際にあったことを基にしながら、CGかと思うくらい美しい和歌山の朝焼けの風景が映し出されたり、田中光敏監督の演出はさすがだと思いました。監督は晴れた朝にそれを撮ろうと狙って撮っていたので、そういう嘘のない本当の日本の美しさが収められています。人の美しさ、日本の美しさが入っていて、すごく良かったです。
撮影は真冬で、いま思うとすごく寒かったはずですけど、あまり寒かった気がしないのは、気持ちがすごく温まっていたからだと思います。
Q 一方でその撮影は台風の設定で豪雨の中だったり、かなり過酷だったのでは?
A大東駿介本当は夏に撮る予定が真冬に延びて1月、2月の撮影でした。実際に海辺でも撮っていますが、崖のシーンなどは京都の太秦で撮っていて、巨大な扇風機を使って雨の量もすごく多かったです。それを真冬の寒い中、1日中撮影していました。撮影を終えてバスで京都市街に戻る時に、市街の入口には「今日の京都市街:マイナス2℃」という表示が出ていたんです。その過酷さは、大嵐の中でトルコ船が沈没したという鬼気迫る状況を描く緊張感にもつながったと思います。裸足ですし、衣装も薄着なので生命の危機を感じるくらいの苛酷さでしたが、もちろん文句を言う人は誰もいなかったので、本当に素敵な現場だと思いました。それぞれが想いを馳せていたところがあると思います。
Q トルコ人キャストの方々との共演はいかがでしたか。
A大東駿介僕はあまり接する機会が多くなかったですけど、異国の方とお芝居をするのは初めてだったので面白かったです。やり方も文化も違うので、刺激的でした。120年以上前の人物を演じる上では、漂着した船員たちを見て「日本人じゃないぞ」というセリフも出てきますが、海外の人たちとの距離感がありますし、僕自身、合作映画は初めての経験で、そういう微妙なズレのようなものが新鮮でした。
Q 串本町でのロケはいかがでしたか。現地の方がエキストラで参加もされているそうですが。
A大東駿介現地の方々はとても協力的でした。合間には一緒にご飯を食べながら話す機会もありました。串本町では学校でもこの歴史を学ぶそうですし、僕らが泊まっていたホテルでも、この歴史を絵本で描いたものが1ページずつ額で飾られていて、そういうものも見ることができて良かったです。串本町でこの歴史とともに暮らす中で、この映画を作ることにも協力していただいたので、串本町の皆さんがどうこの映画を観てくれるのかも楽しみです。
作品は歴史を美化していないですし、子どもにも伝わるようにちゃんと紡ぎとっている印象なので、きっと田中監督は年齢関係なく観ることができる映画を作ろうとしたんだろうなと思います。トルコや歴史に対する敬意も感じました。監督と話をする機会も多くあって、構想10年という監督の想いからいただくものは多かったです。
Q 田中監督から言われたことで印象的だったことは何でしょう。
A大東駿介田中監督と田島勝正・串本町長が大学時代の友人という縁もあって、10年間、構想を練って台本を作るという期間があるのですが、僕ら役者は昨年、撮影前に台本をいただいてから作品に関わるのでどうしても短い期間になってしまいます。だから、製作側の想いや歴史を聞くことが演じる上での起爆剤になります。それと、僕が演じた信太郎がムスタファを救出するシーンの撮影の時に、オールアップして現地にいらっしゃらなかった内野聖陽さんからは「君が日本を代表してこのシーンをしっかりやり遂げてください」というメッセージをいただいて、内野さんのこの作品を背負っている気持ちも感じられましたし、日本って粋だなと感じました。
Q そんな信太郎のセリフも感動的です。
A大東駿介信太郎が漁村の青年を代表して言う「どこの者でも海で遭難した人は助けなきゃらん」というセリフはすごくシンプルなセリフです。これは僕が日本人として発した言葉ですけど、トルコに行くとトルコ人の方からも同じことを言われるんです。道に迷って助けてもらってなぜかその後1日エスコートしてもらったことがあります。その帰り際に、現地で会った誰かにあげようと持ってきた日本のお土産を「ぜひ受け取ってください」と渡そうとしたら断られてしまいました。「俺は見返りのためにやったんじゃないよ。君と出会えて、君からいろいろいなものをもらえたからいいよ」と。僕が日本人として発したあのセリフは、こちら側の言葉だけではなくてトルコ側からも発信されている言葉で、すごくグッときました。
トルコでは日本から2週間後の映画公開とのことですが、国際的に難しい状況もありますが文化や芸術には何も罪はありませんのでしっかり届いてほしいなと願っています。
Q 本作は出演された[1890年エルトゥールル号海難事故編]と[1985年テヘラン邦人救出劇編]に分かれますが、後者をご覧になられていかがでしたか。
A大東駿介全く違う映画のようでした。キャストの方々も違うし、自分たちの撮影が終わってからの撮影とのことで、内容は聞かされていませんでしたので新鮮な気持ちで観ました。鬼気迫る映像ですし、トルコ側の協力あっての大規模な撮影だと感じました。2つの歴史が重なって2つの国をつないでいくのがすごく美しいですし、いい映画だと思いました。
Q 大東駿介さんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。
A大東駿介歴史を基にした日本とトルコの絆と、日本の美しさが描かれた盛り沢山な映画です。歴史というと大げさなもののように聞こえますけれど、身近にある自分の国の美しさを発見できますし、大切なものを見つけられると思います。この作品自体が歴史として残っていくと思っています。最近は観る人を選ぶ作品が多いと思いますが、子どもと一緒だったり、おじいちゃんと一緒にでもいいですし、恋人同士でもいいですし、男女問わずどの世代の方々も観ていただけると、胸を張って言える作品です。
Q大東駿介さんからOKWaveユーザーに質問!
大東駿介国内外関わらず今まで旅した中でグッときた出会い、エピソードを聞かせてください。僕はトルコでもらった思い出や感謝の気持ちが、この作品と出会った時に廻りまわってつながっていく縁なんだと感じましたので、皆さんの旅でつながる縁を聞きたいです。それと旅をするのにおすすめの国も教えてください。
■Information
『海難1890』
1890年の和歌山県紀伊大島樫野(現:串本町)。この地に暮らす医師・田村は、貧しい者を親身になって診察することから村民の信頼を集めていた。彼の傍には許婚を海難事故で亡くしたショックから口がきけなくなったハルが助手として就き従っている。同年9月、日本への親善使節団としての使命を終え、帰路についたトルコのエルトゥールル号は台風に遭遇。暴風雨の中、船は樫野崎沖で沈没。島中に響き渡る船の爆発音を聞いた住民たちは、総出で救出活動を行い、田村とハルは救護所でけが人の手当てに追われる。救護所に運び込まれた海軍機関大尉のムスタファは呼吸が止まっていたが、ハルの懸命な心臓マッサージで息を吹き返した。生き残った乗組員は69名。500名以上が犠牲になった大惨事だった。自分が生き残ったことに罪悪感を覚えて苦悩するムスタファに田村は漂着物を綺麗に磨いて、母国の遺族に返そうとする村人たちの姿をムスタファに見せる。ムスタファの胸には、人を想う日本人の深い真心が刻まれた。
1985年のイラン・テヘラン。空爆が続く地下避難壕でトルコ大使館の職員ムラトと日本人学校の教師・春海は出会った。やがてサダム・フセインが48時間後にイラン上空を飛行するすべての飛行機を無差別攻撃すると宣言。日本大使・野村は救援機を要請するが、日本では迅速な対応が難しい状況にあった。徐々に日本国民だけが取り残されていく。春海は野村にトルコに救援機を頼むように進言。野村の要請を受けたトルコのオザル首相は、救援機を飛ばすことを承諾する。ところがテヘランの国際空港には日本人の他に、救援機を待つトルコ人たちで溢れていた。ムラトはトルコ人に対して、かつて日本人から自分たちが受けた真心の歴史を語り始めた…。
内野聖陽 ケナン・エジェ 忽那汐里 アリジャン・ユジェソイ
小澤征悦 宅間孝行 大東駿介 渡部豪太 徳井優 小林綾子 蛍雪次郎 かたせ梨乃 川野直輝 三輪ひとみ 斉藤とも子 池谷のぶえ みのすけ 辻本祐樹 金子昇 高田敏江 上田耕一
夏川結衣 永島敏行 竹中直人 笹野高史
脚本:小松江里子
音楽:大島ミチル
企画・監督:田中光敏
配給:東映
http://www.kainan1890.jp/
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■Profile
大東駿介
1986年3月13日生まれ、大阪府出身。
05年にドラマ「野ブタ。をプロデュース」(NTV)でデビュー。主な映画出演作に『クローズZERO』シリーズ(07、09)、『リアル鬼ごっこ』(08)、『逆転裁判』(12)、『自分のことばかりで情けなくなるよ』(13)、『TOKYO TRIBE』(14)、『ガールズ・ステップ』(15)。ドラマでは「ウェルかめ」(09/NHK)、「タンブリング」(10/TBS)、「平清盛」(12/NHK)、「ハッピー・リタイアメント」(15/EX)など。映画「グッドモーニングショー」が16年公開予定。
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