OKWAVE Stars Vol.528は2ndアルバム『Sing and Sparkle~たびだちの歌』を2016年2月17日にリリースする正山陽子さんへのインタビューをお送りします。
Q 1stアルバム『Yoko Masayama』リリースから本作、『Sing and Sparkle~たびだちの歌』に至るまでの約3年、どんなことを考えていたでしょうか。
A正山陽子本当は1年後くらいにはリリースできればいいなとは思っていました。それが2013年9月のリリースからプロモーションとライブを1年続けていたから、自分自身レコーディング・モードにならなかったんです。東京と関西で月1~2本のペースでライブをやっていたから、気づいたら2015年になっていて(笑)。その頃になるとラジオで曲を聴いてくれたリスナーの方からも「次のアルバムはいつですか」と聞かれるようになり(笑)。それで、そろそろ作らないと、という危機感が出てきました。それで2015年のはじめくらいから曲作りを始めました。作りたくなかったわけではないけれど、ゆっくりしたペースで2ndアルバムまで3年かかってしまいました。
Q 曲想やコンセプトなどはありましたか。
A正山陽子『Yoko Masayama』は1stアルバムだったので名刺代わりのようなものなので自分のルーツのスイング・ジャズにまとめてしまったところがあります。なので次作では次のステップに進みたいという気持ちがありました。『Yoko Masayama』を完成させた後は、次回はブラジルテイストの曲を増やしたいと思いましたけれど、実際に作曲を始めると作りたい曲が変わっていきました。4曲目の「TekuTekuTokyo」のようなボサノバの曲もありますが、ラテンのイメージよりは、言葉の響きや聞こえ方、歌詞そのものにメッセージ性が先にあって、それに対して曲がどう反応するか考えていくと、あんまりブラジルテイストにはなりませんでした。でも意図してそうしたわけではないんです。たとえば11曲目の「旅立ちの歌」は友だちを想って作った曲で、歌詞や頭の中のイメージに忠実に作っていった結果、わりとポップな仕上がりになったと思います。他にも、3曲目「春の夢が僕に囁く」はモダン・ジャズの色が強いし、1曲ごとに異なる色彩があって、1曲ずつが完結しています。なのでアルバムを通して聴くと単独の物語がつながっているように仕上がりました。1stアルバムでは最初から最後まで一つの形に仕上がっていたけど、今回は1曲ごとに完成されている作品になったかなと思います。とはいえ、私の歌詞で私が歌っているので、聴いていただくとトータルで正山陽子の世界だと思ってもらえるなと。聴く人がその日の気分でどの曲をチョイスするかという楽しみが前作よりも強くあるかなと思います。
Q 歌詞はどんなところから作っていきましたか。
A正山陽子全体というよりも1曲ごとに作っていました。たとえば「TekuTekuTokyo」はアメ横を歩いている時に思い浮かびました。最近は外国人の方が多いし、逆に自分も海外旅行に行きたいなと思いながら作りました。そんな感じで他の曲も作っていったので、各曲の関連性はないですね。
Q 難産だった曲はありますか?
A正山陽子10曲目の「サイレントミュージック」はウッドベースのヤマトヤスオくんありきで作った曲で、彼には弓でコントラバスを弾いてほしくて、コントラバスと歌がせめぎあう即興ぽい曲を作りたいという考えが最初からありました。それを軸に作ったので、歌とコントラバスを合わせて即興的に一発で録っていくような難しさはありました。弓で弾くソロの部分は彼も悩みながらやっていたので、これはミュージシャン全員に当てはまりますが、自由な分、より表現の選択肢が増えて各ミュージシャンが苦悩したんじゃないでしょうかね(笑)。
Q バンドメンバーは『Yoko Masayama』から引き続きのミュージシャンが多いですね。
A正山陽子『Yoko Masayama』を作る時に出会って、一緒に作って、ライブも一緒にやってきたメンバーなので、その中で培われてきた信頼や、彼らの演奏の素晴らしさを最大限引き出せるアルバムを作りたいと思っていました。そこに新たにギタリストとして小川翔くんに加わってもらいました。彼は幅広いジャンルで活躍していますけど、元々ブルースも大好きで、私の中にあるブルースやロックな部分も嗅ぎとってくれました。それでギターのアレンジやギターソロなど、前作よりもギターの比重が上がっています。彼が入ったことでウッドベースのヤマトくんやドラムスの田中教順さんにも良い影響が起きて、みんなでいい演奏ができたり、一気に曲を作り上げられるような良いエネルギーが生まれました。私だけでなく、ミュージシャンみんなにとってもいい刺激になったと思います。
Q 前作はアナログレコーディングにこだわったとのことでしたが、今回はいかがだったでしょうか。
A正山陽子前回はよりクラシカルな音にこだわろうと思ってアナログで録りました。でも時代はデジタルですし、みんなPCに取り込んだりMP3とかで聴くので、今回はデジタルな中でどれだけバンドサウンドの持つアナログさのようなものを出せるのかという実験精神で取り組もうと思いました。その時にEGO-WRAPPIN’やキリンジといった方々の作品に関わっているエンジニアの池田新治郎くんのことを思い出して、彼に依頼しました。彼は歌ものとアコースティックな音への理解がとても深いので、バンドの呼吸が伝わってくるような音を録りたいと伝えて快諾していただき、レコーディングからミックスまでやってもらいました。それがうまくいったので、デジタルだけれども生の音の臨場感が表れている素晴らしいサウンドになったと思います。
それと今回はハイレゾにも対応しています。ハイレゾにはジャズやアイドルの作品が多いようですが、音響にこだわりのある人たちに対して、自分の作品がどのくらい受け入れられるか、そういう新しい領域でどれだけ聴いてもらえるかというチャレンジとして取り組みました。
Q 『Sing and Sparkle~たびだちの歌』はどんなふうに聴いてもらいたいですか。
A正山陽子ウキウキする曲、ホッとする曲などいろいろ入っているので、朝起きて会社行くのがしんどいなと思ったら1曲目「Silly Love」を聴くとか(笑)、ホッとしたいなら「TekuTekuTokyo」とか、用途に合わせて聴いてほしいなと思います。前回はアルバム通して聴いてほしいと思っていましたけど、今回はいろんな場所で自由に聴いてほしいなと思います。
Q 今後のライブ活動についてはいかがでしょう。
A正山陽子前回はレコーディングメンバーでのライブを優先しましたけど今回はそうでもないです。近いところでは、2月27日にライブがありますが、パーカッションの豊田稔さんに入ってもらって、ウッドベースとピアノとサックスの4人で演奏するイレギュラーな形だったり、3月6日のライブでは斉藤アリアさんという女性キーボーディストの方と私だけでやるとか、ひとつの形にとらわれずに、正山陽子の世界をいろんな形で表現していこうと思っています。もちろんどこかでレコーディングメンバー全員とアルバムを再現するような形もやりたいと思いますけれど、それだけをあちこちでやるというよりも、大阪に行ったら、大阪のメンバーとやるなど、いろんな形で正山陽子の良さや歌の面白さを見せていきたいと思います。CDとは違うものとして歌やバンドの面白さをライブで感じてもらえればと思います。
Q ライブでは唱歌も歌っていますよね。
A正山陽子ライブ会場限定で唱歌のCDを500円で販売しています。私は基本的には日本語歌詞を大事に歌う、ということをやっているので、明治から昭和初期くらいまでの童謡や唱歌を取り上げています。子どもの頃に私が聴いた唱歌のCDはオペラ歌手のような方がビブラートきかせて歌っていて、逆に歌詞があまり聞き取れなかったので(笑)、歌詞カードを読んで初めていい歌詞だと気づきました。もったいないなと思ったので、せっかくの言葉の良さをみんなにも知ってもらおうと、今の時代に共感してもらえるようなアレンジで歌い継ごうと思って始めました。私なりにブルージーにしたり、ジャズっぽくしながら、唱歌の歌詞で謳われる四季折々の美しさや日本語の美しさが全面に出るアレンジで聴いてもらっています。ライブで初めて聴いたという方からも好評なので、いつか唱歌だけをまとめるようなこともしたいと思っています。
Q 正山陽子さんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。
A正山陽子『Sing and Sparkle~たびだちの歌』は1曲目の「Silly Love」から11曲目の「旅立ちの歌」まで、アルバムタイトルの“Sparkle”する要素が各曲独立してあって、ピカピカ輝いているようなアルバムです。「今日はこの曲を聴きたい」と選びながら、長くアルバムを聴いてほしいと思います。バンドの生音が心地よいので、いろんなところで楽しんでもらえたらと思います。
■Information
2ndアルバム『Sing and Sparkle~たびだちの歌』(PCD-25194)
1. Silly Love
2. 魔法をかけて
3. 春の夢が僕に囁く
4. TekuTekuTokyo
5. グッバイマリー
6. 大人の情景
7. 恋の駅馬車
8. 悲しみの果て
9. 泣いてるきみの横顔みてると
10. サイレントミュージック
11. 旅立ちの歌
12. Sunny (studio live ver.) (Bonus track)
http://p-vine.jp/music/pcd-25194
■Profile
正山陽子
7月24日生まれ。兵庫県宝塚市出身。現在東京在住。
オーガニックソウルユニット「BardSyrup」として、ジャズパーカッショニスト、ジェフリー・ヘインズとの演奏を含めた1st アルバム『Syrup No.1』(universal IMS)を2001 年にリリース。次のマキシシングル『好きなひとよ』は、表題曲を聴いた廣木隆一監督の強い要望により、映画『恋する日曜日』(廣木隆一監督)の挿入歌に抜擢。
2010年、ソロ活動を開始。オルタナティヴ・ジャズのエッセンスを取り入れたサウンド、親しみやすいメロディー。しかし決して甘くない、パンクやソウルの精神を感じさせる独特のボーカルワークは、幅広い年齢層に支持されている。またライブパフォーマンスでは強烈な個性を放ち、Jill-decoy association、Dorlis、竹本健一、奇妙礼太郎、コトリンゴ等様々なジャンルのアーティストと共演し好評価を得ている。また、総合エンタメアプリ「UULA」配信の映画『透明ポーラーベア』(廣木隆一監督、戸田恵梨香主演)では、ジャズシンガー役で出演するなど、活動範囲を広げている。
そして、2013年9月にソロデビューアルバム『Yoko Masayama』をリリース。パット・メセニーやカサンドラウィルソンのサポートで有名なパーカッショニスト、ジェフ・ヘインズをゲストに、田中教順(dCprG)や小林岳五郎ら気鋭の音楽家達と作り上げた独自のスイング・ポップな世界で好評を博す。
http://yokomasayama2013.sakura.ne.jp/