OKWAVE Stars Vol.552はディズニーアニメーション映画最新作『ズートピア』(2016年4月23日公開)来日記者会見をお送りします。
■登壇者(敬称略)
バイロン・ハワード、リッチ・ムーア、クラーク・スペンサー、上戸彩、高橋茂雄(サバンナ)、ズーラシアンブラス
>Vol.552 『ズートピア』クラーク・スペンサー プロデューサーへのインタビュー
Q まずはご挨拶をお願いします。
Aバイロン・ハワード(にんじんの形のマイクを見て)今までで一番栄養価値が高いマイクですね。こうしてまた日本に帰ってくることができ、嬉しいです。
リッチ・ムーア前回は『シュガー・ラッシュ』を隣りにいるクラークと共に作って日本に来ました。今回『ズートピア』を日本の皆さんに紹介できて本当に嬉しいです。
クラーク・スペンサーこうやって私たちが日本に来ることが大好きな理由は、日本には長いアニメーションの歴史があるからです。日本が送り出すアニメーションからインスピレーションを受け続けています。こうして逆にアメリカからのアニメーションを日本の皆さんと分かち合えるのは非常に嬉しく思います。
Q バイロン監督、独創的でユニークな『ズートピア』の世界観をどのように思いついたのでしょう。
Aバイロン・ハワード5年ほど前に『塔の上のラプンツェル』を仕上げて、次回作の構想を練っていた時に、ジョン・ラセターに言葉を話す動物の物語を作りたいと伝えました。ただ動物が話すだけではなく、二本足で立つ動物の物語にしたいと言うとジョン・ラセターはすごく興奮しました。「ディズニーでは長いこと動物モノを扱っていなかった」と言いながら興奮しすぎたのか、私をハグして持ち上げるくらいでした(笑)。『ライオン・キング』のシンバになった気分でしたね。ジョン・ラセターはそれだけ力持ちだということです(笑)。それで1年ほどリサーチをして、その一環でケニアにも訪問しました。私たちのキャンプの近くには動物たちの水飲み場があって、ライオンやシマウマ、カバやガゼルらが一緒に水を飲んでいました。そこからアイディアが浮かんできて、肉食動物と草食動物が一緒にいる世界はどんなものなのだろうかと考えました。そして700人ものスタッフと共にこの作品を作り上げ、今彼らの代表として作品を紹介させていただいています。
Q リッチ監督、本作では動物の大きさが実在の動物と同じでリアリティを持って作られました。どのように進められたのでしょう。
Aリッチ・ムーアバイロンとクラークと私の3人はアニメーションの世界の最高のクリエイターたちに恵まれました。全く誰も見たことがないような、動物たちが人間の言葉を話す世界を作ろうとみんなで力を合わせました。バイロンも言いましたが、徹底的なリサーチを行いました。人間が動物たちのコスチュームを着ているようにはしたくなかったので、リアルな動物として描こうとしました。実在の動物をケニアなどにも行って観察して、リアルな動きを取り入れました。ですので、動物の大小に関わらず、動物たちの見た目や習性、動き、仕草をきっちりと作り出していきました。人間のような感情を持った動物であると同時に、自然界に実在する動物の動きをリアルに再現したその二つを融合させたという点でもとてもユニークな作品になっていると思います。
Q 『ズートピア』は全米では『アナと雪の女王』を上回るオープニング記録や、各国でも大ヒットを記録しています。世界的ヒットの要因は何だと思いますか。
Aクラーク・スペンサー700人からなるアーティストたちの代表としてここにいますが、我々の持てる情熱と魂を込めて映画の全ての側面を観てほしいと力を込めました。とはいえ、まさかここまでたくさんの人の心に響くとは夢にも思ってはいませんでした。ヒットの理由は3つあると思います。まず世界観です。このスケールの大きさはディズニーアニメーションの中で一番の規模だと思います。2つ目の理由はやはり見ていて楽しいということだと思います。ただ楽しいだけではなく、ジュディとニックの関係性にはコメディとしての要素や感動的な要素両方が備わっていると思います。そしてこの作品は多層構造になっています。事件があり、捜査していくミステリーの要素があリます。そして3つ目には作品のテーマも響いていると思います。自分に何ができるのか、何をしたいのかは誰かに押し付けられるものではなく自分で定義するものだというメッセージを込めています。
Q どのようにジュディやニックのキャラクターを作っていきましたか。
Aバイロン・ハワードジュディとニックの関係がまさにこの作品のテーマを表しています。この2人から感情やユーモアが出てきますので、デザインなども人を惹きつけるものでなければならないと思いました。ジュディは純真さや正義感を表しました。一方で、力強さや運動神経の良さも表現しなければなりませんでした。ニックは皮肉屋ですがカリスマもなければなりませんでした。詐欺師ならではのずる賢さもありながら、どこか魅力的でなければなりませんし、ジュディにとっていいペアにならなければなりません。こういったキャラクターの設定を元に作り上げていくとともに、声優さんたちの声の演技がアニメーターたちにも大きな影響を及ぼしました。
リッチ・ムーアこういった質問を受けると、自分がジュディとニックの好きなところはどこだろうと考えるんです。まずはバイロンが言ったように一見正反対のふたりです。自然界でのキツネとウサギは天敵同士です。肉食動物と草食動物ですし、皮肉屋と楽観主義という間逆な性格です。表面的にはそう見えますが、物語が進んでいくと、お互いが本質的な部分に気づいていきます。そこで自分たちはお互いに夢や希望を持っていて、世の中をもっといいところにしていきたいという共通点に気づくというところが興味深いと思います。そしてこの二人の関係性の美しいところは、そういった違いを乗り越えて関係性を築き上げていくところだと思います。
Q 動物に物語を託した意義をお聞かせください。
Aバイロン・ハワード動物たちを通して私たちを反映させています。それは愉快で面白いものをです。例えば免許センターのナマケモノたちがそうです。ジュディを通して感動を描写することもそうです。
リッチ・ムーア本作のクリエーターには日本人も多く関わっていて、その中にサイトウチカさんという方がいます。彼女は宮崎県出身で小さな頃からディズニー・スタジオでアニメーターとして働きたいという夢を抱いていました。全くジュディと一緒で周りからは「何を言ってるんだ、叶うわけがない」と反対されてきたそうですが、アメリカに来てディズニーに入社してこの作品に関わっているので、まさにジュディを地で行く話でもあります。こうした作品の素晴らしさは作品を通して自分を投影していただいて、ウサギやキツネ、ガゼルなど誰でもいいですが、自分のようだと思ってキャラクターに共感していただけると私たちも嬉しいです。
Q 動物たちの都市ズートピアは人間界の縮図のように見えましたが、この世界観を作り上げる上で苦労したことをお聞かせください。
Aバイロン・ハワードまさしくこの動物たちの世界と私たち人間の世界は似ていると思います。ズートピアの町並みは世界各国の都市からインスピレーションを受けて作り上げていきました。ストーリーに関しては普遍的なテーマを取り上げています。そのひとつには、ジュディは一見、典型的なディズニー・アニメーションのヒロインのように見えるかもしれません。夢を持ち、諦めずに取り組んでいく姿は、今までのディズニー・アニメーションの伝統だと思います。この春という季節はとくに日本では新入学や新生活といった始まりの季節で、まさにジュディのように夢への第一歩を踏み出すことだと思います。親元や故郷を離れて上京される時期で僕にも経験がありますが、いざそうやって世の中に出てみると、そんなに甘いものでもなくすぐに現実というものに直面すると思います。ジュディはそれで簡単に夢を諦めるようなキャラクターではありませんが、そこから、この物語では、一見、楽園に見えるこのズートピアの背後に隠された大きな秘密を発見することになります。それは同時に大きな自己発見にもつながっていきます。気づいていなかった自分の完璧ではなかった部分や欠点と向き合っていくことになるんです。そうした自分のネガティブな部分を避けずに向き合うことで彼女は成長していきます。出会った瞬間からジュディのことを好きになっていただけると思いますが、物語が進むともっと魅力的になっていくと思います。夢が叶わないことは決して無いです。しかし、最初に思っていた方法では叶うとは限らないということを伝える作品になっています。そこは人間社会と一緒で白と黒で分けられているわけではなく、グレーのような曖昧なものがたくさんあるのです。
ここで、日本版キャストの上戸彩さんとサバンナの高橋茂雄さんが登壇しました。
Q ご挨拶をお願いします。
A上戸彩ジュディの声を担当させていただきました。1日も早く皆さんに観ていただきたいです。このお話をいただいたのが昨年の夏頃で、ちょうど私に新しい家族が生まれた頃でした。家族に自慢できると思ってありがたさを感じながらお受けしました。
高橋茂雄ズートピアの警察官クロウハウザーを演じさせていただきました。作品を観させていただいて、最高に楽しくて、関わることができて嬉しく思っています。「ディズニーの映画に決まった」と聞かされた時は、職業柄、ドッキリに違いないと思って、いつネタばらしされてもいいように準備していましたが、スタジオに入って声を録ったら本当に実感が湧いて嬉しかったです。出演については僕の姪っ子や甥っ子、相方はすごく喜んでくれました。コンビ名もサバンナなので縁があるなと思いましたし、相方も出られるんじゃないかと期待してました。「出られないよ」言ったら鑑賞券2枚であっさり引き下がりました(笑)。
Q ジュディにちなんで、いま叶えたい夢は?
A上戸彩今はこの映画がヒットすることですね。高橋さん、もっといいこと言ってくださいね(笑)。
高橋茂雄ちょっと待ってよ!(笑)でも、自分も『ズートピア』を観て、小学校から中学校に上がる時や初めて東京に出てきた時のような、環境が変わる時のことを思い出しました。初心を忘れずにいたいなと思いました。クロウハウザーは周りの人たちに愛されていて、みんなからドーナツをもらってみんなに愛でられているので、僕もそういう風にずっと周りから愛されていたいです。
Q バイロン監督、上戸さんと高橋さんの声の演技はいかがでしたか。
Aバイロン・ハワードお二人が役を引き受けてくれると聞いて大変嬉しかったです。アニメーション作品では声は非常に重要な要素です。ジュディにはコメディの要素など幅広い演技がありますが、今回、上戸さんという素晴らしい女優さんに演じていただけて、声を聞くだけでよかったです。
リッチ・ムーアクロウハウザーはとても重要な役です。なぜならジュディがズートピアに出てきて、最初に友達になるからです。さらに、ズートピア警察署の看板として、やってきた方がまずクロウハウザーを見るからです。そして何よりも、ドーナツが大好きです。高橋さんが大のドーナツ好きだという裏情報を聞きましたのが決定的でしたね。
高橋茂雄何の裏情報!?僕がドーナツ食べてる姿なんて見せたことないですけど、それは内緒でお願いします。
Q 「トライ・エヴリシング」を聴いたご感想をお願いします。
A上戸彩嬉しかったです。前向きな挑戦や夢に向かって一歩踏み出す時に、背中を押してくれるような歌だと思うので、何度聴いても元気になれる、ハッピーな歌だと思います。
ここでズーラシアンブラスによる「トライ・エヴリシング」の演奏が披露されました。
Q コメントをお願いします。
Aリッチ・ムーア最高です。こういう音楽を聴いて育ったので、ついノリノリになってしまいました。
>Vol.552 『ズートピア』クラーク・スペンサー プロデューサーへのインタビュー
■Information
『ズートピア』
動物が人間のように暮らす大都会、ズートピア。誰もが夢を叶えられる人間も顔負けの超ハイテク文明社会に、史上最大の危機が訪れていた。立ち上がったのは、立派な警察官になることを夢見るウサギのジュディ。夢を忘れた詐欺師のニックを相棒に、彼女は奇跡を起こすことができるのか…?
「アナと雪の女王」「ベイマックス」のディズニーが“夢を信じる勇気”にエールを贈る、感動のファンタジー・アドベンチャー。
製作総指揮:ジョン・ラセター
製作:クラーク・スペンサー
監督:バイロン・ハワード(『塔の上のラプンツェル』)/リッチ・ムーア(『シュガー・ラッシュ』)
キャスト:
ジュディ・ホップス:ジニファー・グッドウィン/上戸 彩
ニック・ワイルド:ジャイソン・ベイトマン/森川智之
チーフ・ボゴ:イドリス・エルバ/三宅健太
クロウハウザー:ネイト・トランス/サバンナ 高橋茂雄
ライオンハート市長:J. K. シモンズ/玄田哲章
ベルウェザー副市長:ジェニー・スレイト/竹内順子
ガゼル:シャキーラ/Dream Ami
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
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