Vol.556 映画監督 金子修介(『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』)

OKWAVE Stars Vol.556は『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』(2016年4月29日公開)の金子修介監督へのインタビューをお送りします。

Q オリジナル脚本の作品ということで、どのように準備を進めていったのでしょう。

A金子修介野村萬斎さんが初めての現代劇での主演ということで古沢良太さんの書かれたプロットを基に、プロデューサーの須藤泰司さんと僕の3人でストーリーについてのアイディアを出しながら、古沢さんの方で脚本をまとめていきました。本来の映画のあり方というか、僕はずっとそのようにやってきましたので、そういう意味でもこの作品は王道の娯楽映画だと思います。

Q 映像にする上では、どんなところを大事にしようと思いましたか。

A金子修介それぞれの俳優さんの演じる個性のぶつかり合いや想いが物語を運んでいきますが、そこにはいない人間の記憶や想いという葛藤が加わって、普通のドラマとは異なる形になっていきます。ずっと昔に死んでしまった人の記憶などが物語を動かしていくのがこの作品の新しいところなので、そこを無理なく描いていこうと思いました。

Q 野村萬斎さん演じる仙石が思念を読み取る手の動きなどはどのように決めていったのでしょう。

A『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』金子修介撮影前に萬斎さんから「現代モノの映画だとCGIを使って表現されるんですか」という質問があったので「特殊効果を使うつもりはないですよ」と答えました。萬斎さんは狂言師ですので身体の動きや使い方が素晴らしいです。「手の動きで残留思念を読むのをリアルに感じさせる表現をしていただきたいです」と伝えました。実際、現場で任せると自分でポーズを作って演じられていて、撮っている僕らにも残留思念を読んでいるように見えたので、やっていただいて良かったなと思いました。

Q モノに思念が宿る、というような発想は日本人に馴染みやすい部分でもあると思いますが、監督自身はどう思いますか。

A金子修介日本は言霊の国と言われますので、言葉に想いが宿るということはあると思います。普通のモノはともかく、先祖代々伝わってきたモノなどにはそういうものがあると思うこともあるので、この物語のヒントにもなっています。幽霊も残留思念なんだろうねという話を現場でもしていました。

Q キャスト皆さんがハマり役でした。

A『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』金子修介その通りですね。萬斎さんは初めから予定されていましたが、丸山役の宮迫博之さんは後から決定していますし、他のキャストの役も当て書きしていたわけではないので、本当にぴったりになるような芝居ができる俳優さんを用意してもらえました。彼らの演技があって、思念を読み取る、というこの映画を信じて観てもらえるかなと思います。
木村文乃さんの役はきれいですけど、美人を美人に撮るというのは実際にはそんなに簡単ではないです。僕は得意分野ではあるけど、それでも木村さんの演技があって、ああいう美人に撮ることができたと思います。現場で集中して美のオーラを発散してくれたので嬉しかったです。杉咲花さんは天才的というか、大して指示をしないうちから自分で動きを考えて演じてそれがハマっていました。もって生まれたものもあるだろうし、勉強家でもあるので、これから日本を代表する女優さんになっていくんじゃないかと思います。その発端の部分を撮ることができて本当に良かったです。安田章大さんは初日に撮影を終えて帰る時には車の中で起立してお辞儀をするくらい礼儀正しくて、こんなに真剣な若手俳優が他にいるだろうかと思うくらい役に対して真摯に取り組んでいました。彼は現場が好きで、撮影を終わりたくない感じでずっといたので、彼のクランクアップの時には僕ももらい泣きをしてしまいました。

Q 監督としてはどんなところを楽しんでほしいですか。

A『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』金子修介まず萬斎さんと宮迫さんのコンビネーションがあって、そこに物語が転がっていくことで記憶や想いというものが見えてきます。僕は子どもの頃のことをよく覚えているのですが、同窓会で友人と当時の話をすると、記憶の中で美化されていたり、違う話になっていたりもするので、この話で描かれる記憶や想いについては誰にでもあることと思って観てもらえる作品です。特殊な能力や人より優れた力があると、それがその人の人生を狂わすということもあると思います。そういう力を使うと悪い方向に行ってしまうこともあるだろうし、困ったことが起きてしまうかもしれませんが、それでも部屋にこもっていないで外に出ようよというメッセージも込めました。観た後に自分の人生を振り返ってもらえるような作品になっています。若い人はもちろん、大人の方も楽しめるミステリ作品に仕上がっていますので最後まで楽しめると思います。

Q金子修介監督からOKWAVEユーザーに質問!

金子修介観ていただいた方への質問になりますが、あなたは犯人には「いつ」気づきましたか?
※誰が犯人かはネタバレ厳禁でお願いします!

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■Information

『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』

『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』2016年4月29日(金)全国ロードショー

「シャルロット。ダメじゃないか。アンドリューのぶんを食べちゃ。ミケランジェロ、またステファニーに頭突きをしたな? どうしてお前は…」
そんな会話をたった1人薄暗い部屋で、熱帯魚相手に日ごと繰り返す男=仙石和彦は残留思念(物や場所に残った人間の記憶や感情)を読み取ることができる特殊な能力を持っていた。その能力を芸能事務所=峠プロダクションの社長・峠久美子に見込まれ、お笑い芸人としてくすぶっていた丸山竜司と“マイティーズ”というお笑いコンビを組まされる。丸山のトーク力と、仙石の能力のおかげで一時はかなりの人気を博したマイティーズ。だが人のダークサイドまでをも見通してしまうこの能力のせいで、仙石の人間不信は進行。ついにはコンビは解散となった過去があった。以来、仙石はマンションの管理人として極力、人と会わないですむ生活を選び、丸山はマイティ丸山として売れない芸人に逆戻りしていた。
突然、峠プロダクションを訪ねてきた女子高生・秋山亜美。亜美の依頼は、長年慕ってきたピアノ教師・沢村雪絵を探し出してほしいというもの。クビ寸前の丸山は渋々亜美と共に仙石を訪ねるが、予想通り仙石は取り付く島もない。
だがその夜、亜美が忘れていった雪絵の爪やすりを思いがけず触ってしまった瞬間、美しい雪絵の映像を読み取ってしまう仙石。一晩、悶々とうなされた仙石はついに丸山に電話をかけるのだった。
こうして3人の雪絵探しが始まった。なんとか雪絵が失踪した現場の思念を読み取った仙石は、犯人と思しき女の姿をとらえる。仙石の証言をもとに作成した女の似顔絵を、「残留思念を読み取ったんです」と高らかに宣言し、警察に持ち込む亜美だったが当然のごとく相手にされない。仕方なく「一番優秀な刑事が揃っている」という漠然とした理由で、似顔絵を警視庁捜査一課に送りつける。偶然それを開封したのは、若きエリート刑事・佐々部悟。この似顔絵の女は、外部には漏れていないはずの連続殺人事件の犯人像に酷似していた。すぐに任意同行されてしまう仙石と丸山。ベテラン警部補・野田直哉のキツイ取り調べを受けるはめになり、警察もあてにならないと踏んだ2人は、独自に捜査を開始することを決意する。

野村萬斎 宮迫博之
安田章大 杉咲 花・木村文乃・ちすん 梶原 善
福本愛菜 岩田さゆり 北島美香 峯村リエ 嶋田久作
風間杜夫 高畑淳子

脚本:古沢良太
音楽:池 頼広
監督:金子修介
配給:東映

公式サイト:scanner-movie.jp

(C)2016「スキャナー」製作委員会


■Profile

金子修介

金子修介(『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』)1955年6月8日生まれ、東京都出身。
78年日活に入社。『宇能鴻一郎の濡れて打つ』(84)で監督デビューし同年に、第6回ヨコハマ映画祭新人監督賞を受賞。『ガメラ 大怪獣空中決戦』(95)で第38回ブルーリボン賞監督賞を受賞。主な作品に『毎日が夏休み』(94)、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』(01)、『デスノート』前・後編(06)、『プライド』(09)、『ばかもの』(10)、『百年の時計』(12)、TVドラマ「おそろし~三島屋変調百物語」(14/NHK BSプレミアム)、『少女は異世界で戦った』(14)等。