OKWAVE Stars Vol.564は『クリーピー 偽りの隣人』(2016年6月18日(土)公開)に出演の藤野涼子さんへのインタビューをお送りします。
Q 本作で演じた澪のキャラクターについてお聞かせください。
A藤野涼子以前に出演した『ソロモンの偽証』の藤野涼子は優等生で外に向けて発言する役でしたが、今回の澪は気持ちを内側に溜めて、感情をあまり表に出さずセリフも少ない役です。『ソロモンの偽証』の時に「セリフから感情を読み取らなければならない」と教わったので、今回はそのヒントが何もなくて、台本を一度読んだだけでは内容は理解できても澪の心情はよく分からないと思いました。それでいろんな本を読んだり、映画の中で起きることと似た写真を見て自分が感じたことを基にして役作りをしました。
Q 演じている間は、澪の心情の部分をどう考えていましたか。
A藤野涼子澪は香川照之さん演じる西野からの受けの芝居が中心でした。澪は日常生活を普通に過ごして学校にも通っています。けれども西野に心を掴まれているので、どう心を掴まれているのか澪の気持ちをたどっていきました。私自身は心を掴まれているという部分は無意識なところなのかなと思いました。しかし演じているうちに香川さんの芝居に惹きこまれていったので、この二人の関係にもそういう積み重なりと似たものがあるのだと思います。
Q 実際に演じてみていかがでしたか。
A藤野涼子私が澪に近づけたなと思うのは、西野から澪が初めて暴力を受けるシーンです。香川さんにはリハーサルの時は手加減して優しくやっていただいたのですが、本番では本当に首が絞まるんじゃないかというくらい首を絞められて、私自身、香川さんの役に対する恐怖心が生まれ、実際に体験して役の気持ちにたどり着けた部分もあります。また、自分だけで役を演じているわけではないという発見もありました。香川さんからはそのシーンを手加減無しでされた後に、「女性であっても手加減しないし、手加減して演技の質が落ちてしまったり、相手との間に起こる障がいが弱まってしまったらお客さんも楽しめないだろうから、リハーサルでも本番でも全力でやりなさい」とアドバイスをいただきました。それを聞いて本当にその通りだと思いました。
また、『ソロモンの偽証』の時は役柄の心情を完璧に分かっていないといけないと監督から言われていましたが、黒沢監督は私たちが考えてきたものをそのままやるという形で、何回もやり直さない現場でした。これでいいのかと不安になることもありましたが、1回の勝負なんだと思うと、やはりリハーサルから全力でやらないと、とも思いました。それで全力で演じたので、自分の思うものは出せたかなと思います。
Q 現場での共演者の皆さんの様子はいかがでしたか。
A藤野涼子周りはみんな大人で高校生は私一人でした。『ソロモンの偽証』の時は同じ年頃のみんなと藤野涼子という役を作り上げたのが、今回の澪は私ひとりでやらなければならなかったです。そんな気持ちで休憩時間はどうしようかと最初は一人でいましたが、竹内結子さんが声をかけてくださったり、それを西島秀俊さんが温かい目で見守ってくださったり、犬のマックスくんと戯れたりして過ごしていました。衝撃的な映像も多い作品ですが現場は温かくて楽しかったです。撮影に入る前に監督から「現場は楽しくいこうね」と言われていました。香川さんもカメラが回っている時以外はフレンドリーに接して下さいました。
でも、休憩中はみんなで笑顔で過ごしていたのが、用意の声がかかると、今まで笑っていたのが芝居なんじゃないかと思うほどガラッと雰囲気が変わって、役者は切り替えが大事だなと思いました。ラストシーンの西島さんと竹内さんの撮影の時も直前にセミ事件というのがあって、セミを追い払ったりして和気あいあいとしていたのが、いざ用意の声がかかるとお二人ともすごい集中力で演じられていたので、役者って改めてすごいなと感じました。
Q 今回の撮影で得たことや学んだことは?
A藤野涼子サスペンス・スリラーというジャンルは、観ている人に途中で結末が分からなくなるような芝居の細工も必要だということです。西野に何かされた時に澪は嫌な顔をしますが、西島さんの演じる高倉にはよくある家族のような仕草に見せなければなりません。なので、心情だけではなく、客観的なところで芝居の工夫もしなければならないということも学びました。
Q 撮影中、大変だったことは?
A藤野涼子いつも真面目にやることも大事ですが、現場を和やかにされている竹内さんを見て、ピリピリするのではなく、そういう雰囲気を作るのも役者の仕事だなと思いました。それで仕事と学生生活の切り替えも、もっと素早くできたらいいなと思いました。撮影前は、澪の役作りと、学校での普段の自分とを両立させることは大変でした。撮影は夏休み中でしたが、撮影途中に部活の用事で学校に行った時も澪役を引きずっていたようで先輩に心配されることもありました。澪を演じている時は私自身、役に引きずられてマイナス思考になっていたので、ちょっとつらかったですね。撮影から半年くらい経ってようやく抜けてきたかなと思います(笑)。
Q 完成した作品を観てご自分ではいかがでしたか。
A藤野涼子試写を観た時は、全体よりも自分の出演シーンに目が向いて、どうしても反省点ばかりでした。ただ、演じて感じたことよりも、映像として音楽なども入って編集された形で観た時の違いをすごく感じました。演じている時は一人ですが、映画を作るのは一人ではないんだと感じました。これから演技をもっと上達させて、編集している方がこれは落としたくないなとか切るのがもったいないなと思ってもらえるような演技をしたいと思いました。
Q 作品の見どころや面白さについてご紹介をお願いします。
A藤野涼子私自身、自分で演じて結末も分かっているのに、次はどうなるのだろうとワクワクドキドキするところが多かったです。初めて観る方はびっくりするだろうし、香川さんの不思議な役どころに驚くことも多いと思います。この作品は大人の方はもちろんですが、自分としては高校生に観てほしいなと思います。私自身、撮影の頃に引っ越ししたばかりで近所にどんな方が住んでいるのか分からなかったので、西島さんみたいな人が近所にいたらいいなと想像していました(笑)。
Q藤野涼子さんからOKWAVEユーザーに質問!
藤野涼子この映画ポスターの大人のキャストの皆さんで、「隣人だったら嬉しい方」と「隣人だったらちょっと不思議な人かも」という方を教えてください。
■Information
『クリーピー 偽りの隣人』
犯罪心理学者の高倉は、刑事・野上から6年前に起きた一家失踪事件の分析を頼まれる。しかし事件唯一の生き残りである長女・早紀の記憶をたどるも、核心にはたどりつけずにいた。一方、高倉が愛する妻・康子と共に最近引っ越した新居の隣人は、どこか奇妙な家族だった。病弱な妻と中学生の娘・澪をもつ主人・西野との何気ない会話に翻弄され、困惑する高倉夫妻。そしてある日、澪が告げた言葉に、高倉は驚愕する。
「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。」
未解決の一家失踪事件と、隣人一家の不可解な関係。2つの繋がりに高倉が気付いた時、康子の身に【深い闇】が迫っていた…。
西島秀俊 竹内結子 川口春奈 東出昌大 香川照之
藤野涼子 戸田昌宏 馬場 徹 最所美咲 池田道枝 佐藤直子 笹野高史
監督:黒沢清
原作:前川裕「クリーピー」(光文社文庫刊)
脚本:黒沢清 池田千尋
配給:松竹、アスミック・エース
公式サイト:creepy-movie.com
(C)2016「クリーピー」製作委員会
■Profile
藤野涼子
2000年2月2日生まれ、神奈川県出身。
本格的な演技は初挑戦でありながら、映画『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(15/成島出監督)への主演をきっかけに、役名でデビュー。同作にて第40回報知映画賞・新人賞、第37回ヨコハマ映画祭・最優秀新人賞などを受賞。
ワンピース/Tシャツ/シューズ:Abel(アベル) TEL:03-6407-0414
ヘアメイク:宇佐美浩子
スタイリスト:宮本茉莉(STAN-S)