Vol.569 ガーデンデザイナー メアリー・レイノルズ(映画『フラワーショウ!』)

OKWAVE Stars Vol.569はガーデニング世界大会チェルシー・フラワーショーに雑草で挑むヒロインを描いた『フラワーショウ!』(2016年7月2日公開)のモデルになったランドスケープ・デザイナー、メアリー・レイノルズさんへのインタビューをお送りします。

Q ヴィヴィアン・デ・コルシィ監督との出会いについてお聞かせください。

Aメアリー・レイノルズ元々は彼女がガーデンをデザインしてほしい、という依頼があってお会いしました。最初は彼女に対して、自然とのつながりはあまりない方かなと間違った印象を持ってしまっていました。実際には自然に対して大きな情熱を持った方でした。弁護士をされているということでしたが、初の長編作品を撮るにあたって資金を集めたり、自分が監督をするということを周囲に対して説得できることからも、パワフルさを持ち合わせた女性だと思いました。

Q 今のお話を聞くと、監督はメアリーさんとは似た方ですか?

Aメアリー・レイノルズ確かに映画の中で描かれている私の物語と、彼女がこの映画を撮るまでの道のりは似ているところがあると思います。私がチェルシーフラワーショーに挑むのを誰も信じてくれなかったように、彼女は弁護士というバックグラウンドを乗り越えて作品を作り上げていったので、その信念を尊敬しています。ジョーゼフ・キャンベルというアメリカの神話学者は「すべての人は円を描くような人生の物語を持っている」と言っています。そういった意味でも、私も彼女も同じような物語を持っているのかもしれません。

Q ご自分が主役の映画、ということを聞いて、どう思いましたか。

Aメアリー・レイノルズ一言で言えば、とても奇妙な感覚でしたね。

Q メアリーさんを演じたエマ・グリーンウェルの印象はいかがでしたか。

A映画『フラワーショウ!』メアリー・レイノルズ素敵な人でした。彼女の演じた役柄には監督の要素も入っていましたね。私と監督の要素がミックスされた素晴らしいキャラクターを作ってくれたと思います。イギリス人の女の子ですが、役作りのため、私の住んでいるアイルランドにしばらく滞在していました。歩き方や話し方を研究して撮影に臨んでいましたが、アクセントはちょっと違いますね、ダブリン寄りなのですが違いは分かるでしょうか(笑)。

Q 映画の中にはスピリチュアルなエピソードがいくつか出てきますが、そのような神聖な体験をされたことについてお聞かせください。

A映画『フラワーショウ!』メアリー・レイノルズ映画の中にも出てくる少女時代に初めてそういう体験をしました。アイルランドの農家の6人兄弟姉妹の一番下だったので、農地の周りでひとりでよく遊んでいました。5、6歳の時にひとりで石の立ち並んだところに入り込んで出られなくなってしまったことがあるんです。最初はどうしようかと思いましたが、降りそそぐ日差しは素敵で、蜂や蝶が自分の気を引こうとしている感覚になって、ずっとそこにいました。それが自然とのつながりに気づく最初の体験でした。これは私に限ったことではなく、誰でも自然とのつながりを感じられることだと思っています。ただ、私にとってはそこが世界で一番安全な場所のように感じられました。
それから、エチオピアで感じた出来事も、ドラマチックに描かれてはいますが本当のことです。あのように自然から感じたことがきっかけになって、物事が急に動いていくようなことを何度も体験しています。眠る前には理解できなかったことを夢の中で理解したり現実を知った経験もあります。でも、これも私だけのことではなく、誰でも経験のあることだと思っています。

Q 映画が製作されていく中で驚きだったことはありますか。

Aメアリー・レイノルズ庭を最初に作りあげてから時系列の逆に撮っていくということに驚きました。たくさんのカットを撮らなければならないことにも驚きました。

Q メアリーさんはあえて華やかな花を使わず、雑草とサンザシの木だけという型破りなアプローチでショーに挑みました。新しいことをやるには大きなエネルギーが要ると思いますが、メアリーさんのエネルギーの源は何でしょうか。

A映画『フラワーショウ!』メアリー・レイノルズ源になるのはやはり自然です。足元から大地のエネルギーを受けていることを感じます。ですので人間は本当は裸足で歩かないといけないんだと思います。これは大気の上層部がプラスで大地がマイナス、人間がその電極という科学的にも説明できることです。ゴムのソールの靴で歩いていると地面とのつながりがなくなりますので、意識的にそういうところにも気をつけています。ただ、ロンドンやN.Y.は地下鉄や地下街が発達しているので、裸足で歩いても地面からの気をあまり感じられないですね。でもさっき裸足で歩いたら東京はまだ感じられました。本当は旅もあまり好きではないのでなるべくアイルランドにいたいです。質問に戻ると、自分に正直に、自分の心に耳を傾けて、自然を守ろうという気持ちでいることだと思います。母性に近い責任感だと思いますし、自分の心臓は地球のミニチュアのようなものだと思います。地球をちゃんとケアすること、そしてそれを忘れてしまっている人たちに対して、人間は地球のガーディアンであるべきだということを思い出させる、それが自分の役割だと思っています。

Q 映画では困難にぶつかってもポジティブに乗り越えていく姿が描かれますが、メアリーさん自身は気弱になったりすることはないですか。

A映画『フラワーショウ!』メアリー・レイノルズ先ほどのジョーゼフ・キャンベルの言葉を借りると「みんなの人生の物語は同じような円環を描いている」そうです。己が行く道で壁に当たることも「洞穴に入って、ドラゴンを乗り越えて進まなければならない」ことです。恐怖心を乗り越えなければならないし、そもそもその「諦めそうになる瞬間」というものはその道を歩いていれば必ずぶつかるものです。乗り越えてこそ円環を閉じることができるので、自分が頑張ったことを思い浮かべてみると、その裏にはもうちょっとで諦めそうだったということを思い出せると思います。この考え方は1年前くらいにジョーゼフ・キャンベルの本を読んで知ったことですが、自分の道を歩いている時に起きることについて明快に解説してくれるものでしたし、真実はとてもシンプルなことだとも気づかされました。

Q OKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

Aメアリー・レイノルズ私たちの多くが自然とのつながりを断ってしまった理由は自分の食物を自分で作らなくなったことだと思います。そうなると大地に価値を感じなくなります。そこから人は道を踏み外していったのだと思います。今できることはベランダでも窓の桟でも、自分が食べるものを栽培したり、地元の農家の支援して、地産地消の仕組みをサポートするといいと思います。多国籍企業が牛耳っている食のシステムは環境にとっても人間にとっても有益なものではありません。干ばつや砂漠化や飢饉を引き起こしていることに触れる人もほとんどいません。そういったものを変えていくためにもなるべく自給自足や地元の農家を支えていただくと良いと思います。

Qメアリー・レイノルズさんからOKWAVEユーザーに質問!

メアリー・レイノルズみなさんが地球のためにできること、やっていることは何ですか?

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■Information

『フラワーショウ!』

映画『フラワーショウ!』2016年7月2日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー!

アイルランドの田舎で育ったメアリーは、「自分のデザインした庭で世界を変えたい!」という夢を叶えるため有名なガーデンデザイナー、シャーロットのアシスタントに応募。晴れて採用されるも、高慢で貪欲な彼女にコキ使われた挙句、長年書き溜めていたデザインノートまで盗まれクビに…。どん底のメアリーがひらめいたのは世界中から注目される「チェルシー・フラワーショーで金メダルを獲る」ということ。コネもお金も経験もないメアリーだが、わずか8枠に殺到した2,000人の応募者の中から見事合格し、一路チェルシー・フラワーショーへ。ライバルはデザイン泥棒シャーロットになんとチャールズ皇太子!?夢の金メダルを目指し、メアリーの挑戦が始まる!!

監督・脚本:ヴィヴィアン・デ・コルシィ
出演:エマ・グリーンウェル、トム・ヒューズ、クリスティン・マルツァーノ
配給:クロックワークス

公式サイト:flowershow.jp

© 2014 Crow’s Nest Productions


■Profile

メアリー・レイノルズ

メアリー・レイノルズ(映画『フラワーショウ!』)1974年2月25日生まれ、アイルランド出身。
ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンにてランドスケープ・デザインの優等学位を取得。同年ランドスケープ・デザインの会社を設立。アイルランドの個人宅のガーデン・。デザインやアイルランドのテレビ局(RTE)でデザインのアドバイスを行う。
2002年にチェルシー・フラワーショーのショー・ガーデン部門に初エントリーで金賞を受賞。アイルランド人として初めての受賞であり、当時の歴代最年少記録を樹立。翌年、英国政府の依頼を受け、ロンドンのキュー王立植物園(世界遺産)の野生庭園の設計を手掛ける。その庭園はサマーフェスティバルのための数ヶ月の予定だったが、人気を博し、5年もの間維持された。
2011年にはBBCのガーデニング番組の司会を務め、絶大な人気を博すランドスケープ・デザイナーのダーマッド・ギャビンが選出する「世界で最も偉大なランドスケープ・デザイナー10人」に選ばれた。2016年4月、初めての著書「THE GARDEN AWAKENING」が出版された。