OKWAVE Stars Vol.576はディズニー/ピクサー最新作『ファインディング・ドリー』(2016年7月16日公開)のアンガス・マクレーン共同監督へのインタビューをお送りします。
Q 『ファインディング・ドリー』の共同監督として参加することになった時のお気持ちをお聞かせください。
Aアンガス・マクレーン『ファインディング・ニモ』を手掛けたアンドリュー・スタントン監督とは長年一緒に作業してきたので、わりと彼のことを知った仲です。ですので今回自分が共同監督として参加することが決まった時はとても嬉しかったです。クリエイティブな感性がアンドリューと僕とはとても似ているんです。お互いに補完し合えるような強みを持っていると感じられましたので、自分にとっては光栄な機会を与えてもらったなと思います。また、アンドリューのことを師のようにも思ってきました。とても寛大な方ですし、これまで支えてもらってきましたので、そういう意味でも嬉しかったですね。
Q 共同監督ということで、どのような役割分担だったのでしょう。
Aアンガス・マクレーン全体的には極力ふたり一緒に作業するということでやっていましたが、僕の仕事としてはアンドリューのビジョンを理解してそれを伝える役目もありました。制作が佳境に入ると彼が全てを見きれなくもなりましたので、その時には僕が彼に代わってビジョンを伝えたり、僕自身がスタッフとミーティングをして方向性を伝えたりもしました。
Q 『ファインディング・ニモ』にも登場した忘れんぼうのドリーという特殊なキャラクターが主人公ですが、どんな物語を見せていこうと思いましたか。
Aアンガス・マクレーン本作はドリーの物語を伝えたい、というアンドリューのアイディアが基になっています。ドリーの物語を伝える上では、彼女の感情の変化を伝えるのは容易ではなかったです。なぜなら彼女は忘れんぼうだからですね。彼女が何を考えているのか、また自分を振り返るということができないので、どう描くかが課題でした。それでドリーがその時々にどう感じて行動していくかという道筋を見せていこうと思いました。
Q 問題を抱えた生き物を治して海に還す海洋研究所という施設が舞台であることと、そこにいるタコのハンクやジンベエザメのデスティニーといった新しいキャラクターたちにはどんなことを託しましたか。
A
アンガス・マクレーン今回はドリーが自分の欠点を理解してそこから独立心を持って成長していく物語です。そういう見方をすると、他のキャラクターたちにも似たような欠点があって、それを異なる視点で伝えることができればと思いました。また、前作から引き続き登場のニモに関しては、すでに自分の欠点を克服した存在ですし、ドリーのことを全く疑ってもいません。ドリーならできると信じているので、そういった周りの要素をうまくドリーの物語に組み入れていきました。
Q 前作『ファインディング・ニモ』の公開が2003年ということで、本作に至るまでのビジュアル面での技術の進化や変化についてお聞かせください。
Aアンガス・マクレーン13年経ちましたが全てを再構築する必要がありました。当時のキャラクターを参考にはしていますが、肌などの質感の表現などはすべて新しく作り変えています。表情のレンダリングや動かし方も全て新しくなっています。もちろん海水等の水の扱い方や表現力も新しくなっています。技術面での進歩もありますし、僕たちのクリエイティブ面のスキルも培ってきたものがあります。ただ、そうやって培ってきたものがあっても課題はいつも同じです。それはいつもどうすれば最高の物語を作り上げることができるかです。幸い、技術の進歩もあって美しく仕上げることができましたが、僕たちは毎回同じ課題にぶつかっているんです。
Q アンガス・マクレーン共同監督からOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。
Aアンガス・マクレーン僕たちはベストを求めて苦労しながら作品を作ってきました。とはいえ、その工程は苦労はありながらもやはり楽しいものでした。そうやって作り上げた作品をみなさんと共有できるのはとても嬉しいことです。『ファインディング・ニモ』が日本のみなさんにこれだけ愛された作品ということで、今回の『ファインディング・ドリー』もぜひ楽しんでいただけたらと思います。
Qアンガス・マクレーン共同監督からOKWAVEユーザーに質問!
アンガス・マクレーン僕は日本映画がとても好きなのですがアメリカにいるとすべてが観られるわけではありません。皆さんがお薦めする日本の映画を教えてください。
■Information
『ファインディング・ドリー』
『ファインディング・ニモ』の奇跡の冒険から1年。カクレクマノミのニモの親友で、何でもすぐに忘れてしまう、忘れんぼうのドリーがただひとつ忘れなかったのは「家族の思い出」。
「今度は僕がドリーを助けてあげる」ニモと父マーリン、そしてカメのクラッシュや個性豊かな新しい仲間たちも加わり、ドリーの家族を探す感動の冒険が始まる。
その秘密を解く鍵は、海の生き物にとっての禁断の場所=人間の世界に隠されていた…。
監督:アンドリュー・スタントン
共同監督:アンガス・マクレーン
製作総指揮:ジョン・ラセター
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
日本語版声優:木梨憲武(マーリン役)、室井滋(ドリー役) 他
http://www.disney.co.jp/movie/dory.html
©2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
■Profile
アンガス・マクレーン
1975年生まれ、米国オレゴン州出身。
ロード・アイランド・スクール・オブ・デザインで学び、97年ピクサーに入社。アニメーターとして『バグズ・ライフ』(98)から『トイ・ストーリー3』(10)まで、ピクサーの長編作品に携わってきた。『Mr.インクレディブル』(04)でアニー賞キャラクター・アニメーション賞を受賞。『ウォーリー』(08)ではアニメーション監督を務め、そのスピンオフとなる短編『バーニー』(08)で監督と脚本を担当。短編『ニセものバズがやって来た!』(11)でも監督と脚本を手がけ、TVスペシャル「トイ・ストーリー・オブ・テラー!」(13)ではアニー賞監督賞(TV部門)に輝いた。本作ではアンドリュー・スタントンと共同で、初の長編監督を務めている。熱心なレゴ愛好家としても知られ、彼の作ったレゴのウォーリーが、公式セットとして発売されたこともある。