Vol.579 映画監督 フランソワ・ファヴラ、俳優 ローラン・ラフィット(『ミモザの島に消えた母』)

OKWAVE Stars Vol.579はある家族の秘密を描いた映画『ミモザの島に消えた母』(2016年7月23日公開)のフランソワ・ファヴラ監督と主演のローラン・ラフィットさんへのインタビューをお送りします。

Q タチアナ・ド・ロネの原作小説から今回の映画化をする上で一番大事にしたことは何でしょうか。

A『ミモザの島に消えた母』フランソワ・ファヴラ原作のある作品を映画化するのは私にとって初めての試みでした。この作品を作ったのは個人的な理由もありますが家族の秘密というテーマにも非常に興味を持っていて、たまたまタチアナの原作「ブーメラン」を手にとったら、家族のタブーについて書かれた本でした。フランスには「真実を語らないことで大変なことになっていく」という意味の諺があります。大変なことになっても沈黙を破って前に進むことが時に求められるということと、これからどうなっていくのだろうというヒッチコックの「レベッカ」を思わせるようなスリラーがあったことが大きいです。それで、なかなか家族の秘密に辿りつけないことで、一体何があるのかを観客の皆さんにドキドキさせながら観ていただけるような作品を作りました。
原作と違うところとしては、舞台となるノアールムーティエ島と本土を結ぶ海道パサージュ・デュ・ゴワを象徴的な場所にしようとしたところです。母親を巡るこの物語を考えた時に、話さないことが時に悲劇を生む、ということをそこで伝えたいと思いました。

Q オリジナル作品と原作作品とでは、シナリオ作りの進め方は異なりましたか。

A『ミモザの島に消えた母』フランソワ・ファヴラいまオリジナルの次回作の脚本を執筆中です。そうなるとゼロからすべてを考えなければなりませんので大変です。タチアナの本を読んだ後も、いろんな作家の本を読みましたが、タチアナの本ほどに映像化したいという作品はなかったので、大変なのは分かっているけれども、今度の作品は自分でゼロから書くことを選びました。ただ、いったんリズムができてしまえば原作がある作品もオリジナルも同じように書いていくことはできます。

Q アントワーヌは心にいろいろなことを抱えたキャラクターですがどのように演じていきましたか。

Aローラン・ラフィット今回は僕自身とは全く違うタイプの人物でしたが、話し方や仕草というような見た目の役作りではなく、状況を誠実に思い浮かべた時にどうなるかを考えながら演じていきました。

Q 家族役の共演者との芝居はどのように取り組まれましたか。

A『ミモザの島に消えた母』ローラン・ラフィット俳優としては実際の家族と演じるわけではないのでむしろ言いたいことが言えました。実際の家族だったらこういうことを言ってはいけないだろうと思ってしまう台詞でも共演者相手なので言うことができました。その上で、監督の演出のもと、共演者とは話し合いながら演じましたが、何をすべきかが明確な現場だったので演じる側としてはやりやすかったですね。

フランソワ・ファヴラ原作があったので、原作に書かれた要素を演出面では参考にしました。重要だったのはキャスティングです。ローランとメラニー・ロランの兄妹だけではなくいろんな人物が出てきますし、とくに家族役がきちんと家族に見えるかどうかを重視しました。家族が醸し出す雰囲気は、単に会話を交わすだけではなく、視線を交わすなど、いろいろな要素があります。父親は子どもたちに対して権威的ですがそれは今に始まったことではなく小さな頃から権威的だったと感じさせるような演技指導もしましたし、その点は自分の家族からインスピレーションを得た部分もあります。家族間で言ってはいけないだろうとためこんでいると結局は爆発してしまうということを自分自身経験しているので、メラニーが演じる妹が父を擁護するものの結局は爆発してしまうというシーンは、原作にもありましたし、自分が経験したことでもあるので本能的に入れました。

Q 家族をテーマにした映画がしばしば映画化されますが、監督はこのテーマについてどうお考えでしょうか。

A『ミモザの島に消えた母』フランソワ・ファヴラ家族という概念は普遍的なものだと思います。映画にかぎらずあらゆる文学や芝居でも扱われる、人間の本質を表す上で非常に豊かなテーマとして選ばれるのだと思います。家族とはこうあるべきという体面を追求する人と、ものの真実を追求する人が同じ家族の中にいれば葛藤や争いになりますし、それがドラマになりやすいという面も題材に選ばれる理由ではないでしょうか。私も自分の家族のことや、他の人の家族のことも気にしていますので、今回の題材に選びました。

Q 本作を通じて気づいたことや再発見したことは?

Aフランソワ・ファヴラフランスで上映した時に観客の皆さんと話をする機会がありました。子どもと観に来た方からは「家族間ではこういった視点で話し合えないので良いきっかけになりました」と言われ、お一人で来られた方からは「今度は家族と観に来ます」と言われたのが新しい発見でしたね。

ローラン・ラフィット家族の問題をみんなが抱えているということが改めて分かって、安心した部分はあります。ひとりで問題を抱えているとなかなか解決しないこともそうです。でも、家族の問題はみんなが抱えているものなので複雑ではあるけれど、けっして異常なものではない、ということです。

Q ローラン・ラフィットさん、フランソワ・ファヴラ監督からOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

Aローラン・ラフィット今回が初来日です。僕は日本文化にそれほど詳しいわけではないですが日本の文化には惹かれるところがあります。日本とフランスの文化は根本的に違うのに感性がすごく似通っているところがあるので、それが何なのか、東京の街中を散策して知りたいと思います。

フランソワ・ファヴラ日本に来るのは2回目です。最初は横浜で行われたフランス映画祭2004で『彼女の人生の役割』という長編1作目を紹介しましたが残念ながら日本では劇場公開されませんでした。本作品が日本での初公開作品になります。僕からはこう観てほしい、というようなことは言えませんが、ひとりでも多くの日本の方がこの映画を観て、フランス人が作った映画だけど日本人の自分にも当てはまると思ってもらえるといいなと思います。

Qフランソワ・ファヴラ監督とローラン・ラフィットさんからOKWAVEユーザーに質問!

フランソワ・ファヴラこの作品は「ノアールムーティエ島」という場所が舞台になっています。日本の映画やドラマの舞台になっている有名な「島」といえば、どこを思い浮かべますか?

ローラン・ラフィット家族は互いに隠し事をせずすべてを打ち明けるべきだと思いますか?それとも相手を傷つけないための嘘は必要だと思いますか?

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■Information

『ミモザの島に消えた母』

『ミモザの島に消えた母』2016年7月23日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

「ミモザの島」と呼ばれる風光明媚な避暑地で、謎の溺死を遂げた美しい母親。10歳のアントワーヌは心に大きな傷を負い、妹のアガットは母の思い出を記憶の中から消し去った。それから30年、家族の中で母の話はタブーとなり、再婚して新しい家庭を築いた父は過去を完全に封印した。しかし、そんな生き方に疑問を抱いたアントワーヌは、母の死の真相を追い始める。やがて浮かび上がってくる母のもうひとつの顔。頑なに口を閉ざす父や祖母と対立を深めながらも真実を追い求めるアントワーヌは、母の死の背景に渦巻く禁断の家族の秘密をつきとめる……。

監督・脚本:フランソワ・ファヴラ
原作:タチアナ・ド・ロネ著「ブーメラン」
出演:ローラン・ラフィット、メラニー・ロラン、オドレイ・ダナ、ウラディミール・ヨルダノフ、ビュル・オジエ
配給:ファントム・フィルム

公式サイト:mimosa-movie.com

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■Profile

フランソワ・ファヴラ

助監督、共同脚本として、多くの長編映画制作に参加。2001年に短編『MON MEILLEUR AMOUR』を初監督。同作品は20以上のフランスや海外の映画祭に選ばれ、クレルモン=フェラン国際短編映画祭での3賞をはじめ5つの賞を受賞した。長編の初監督作『彼女は人生の役割』(04)は70万人を動員し、主演のカリン・ヴィアールは2005年のセザール賞最優秀女優賞にノミネートされた。2009年の長編2作目『LA SAINTE VICTOIRE』には、クリスチャン・クラヴィエとクロヴィス・コルニアックが出演。『ミモザの島に消えた母』は長編3作目になる。

ローラン・ラフィット

1973年8月22日生まれ、フランス出身。
主な代表作に、ファニー・アルダン主演作『麗しき日々』(13・未)、ピアース・ブロスナン主演作『ラブ・パンチ』(13)、ミシェル・ゴンドリー監督作『ムード・インディゴ うたかたの日々』(13)、オマール・シー主演の『アンタッチャブルズ』(12)、ギョーム・カネ監督作『君のいないサマーデイズ』(10・未)、クロード・ミレール監督の『ある秘密』(06)、セザール賞で4部門を受賞した『唇を閉ざせ』(05)、ジャン・レノ主演作『クリムゾン・リバー』(00)などがある。
2013年にはフランス政府より芸術文学勲爵士を授与されている。