Vol.618 俳優 ルイス・ホフマン(『ヒトラーの忘れもの』)

OKWAVE Stars Vol.618は『ヒトラーの忘れもの』(2016年12月17日公開)主演のルイス・ホフマンさんへのインタビューをお送りします。

Q 本作出演が決まった時の感想をお聞かせください。

Aルイス・ホフマン出演の連絡を受けたのは、別の作品への出演のためにベルリンのホテルに滞在している時でした。オーディションを受けた翌日の朝10時に合格の知らせが来たんです。そのくらいマーチン・サントフリート監督がメインキャストのひとりとして僕のことを評価してくれたことが嬉しかったです。この映画に出たい気持ちがすごく大きかったので、知らせを聞いて爆発する気分でした。僕にとって大きな話でしたし、すごくハッピーな気持ちでした。あまりの嬉しさに、スーパーマーケットに朝ごはんを買いに行った時にホームレスの方が買い物をしていてお金を懐からかき集めていたので、「それは僕が払うよ」と払ってしまうくらい嬉しかったです。

Q 第二次世界大戦という、まだ記憶に残っている方もいる時代を扱った作品に、どんな気持ちでセバスチャンという少年兵役と向き合いましたか。

Aルイス・ホフマン残念ながらこの歴史の出来事はほとんど記録されていません。唯一触れている本の中でも数行しか触れられていません。ですので、これまでみんなの話題に上ったこともほとんどないんです。地雷除去に携わった元ドイツ兵の方も残念ながら見つからなかったそうです。逆に、デンマーク軍曹を演じたローラン・ムラさんは実際にドイツ兵たちの地雷除去を指揮していた方にお会いできたそうです。僕らはそういった元ドイツ兵士の方とお会いすることは叶わなかったので、監督と共に役を作り上げました。監督は脚本も手がけていますのでキャラクターのことは誰よりも知り尽くしています。実際にお会いしなくても役に近づくことはできたかなと思います。また、軍事の専門家の方がいらっしゃったので、軍人の歩き方や立ち方、休み方全てを教えてもらえました。兵士だったらこういう状況だったらどうするか、ということも教わりましたので、普段知ることのできない役を演じることができたと思います。

Q 地雷除去シーンは非常に緊張感のある映像となりました。

A『ヒトラーの忘れもの』ルイス・ホフマン撮影前は、海岸でのロケに緊張感を感じるとは思っていませんでした。実際の兵士たちが感じた緊張感と同じか分かりませんが、僕はそれに近いものだったと思います。それは、実際に砂の上で地雷除去をするシーンで特に感じました。実は撮影に入る1週間前に本物の地雷が見つかる、という出来事があって、フィクションとリアルライフが突然一緒になってしまったので、撮影中の物事全てがリアルに感じられたということもあります。そして、それほどまでに監督がそこで感じられるものを映画に落とし込んでいたからだとも思います。海岸線での撮影は、砂に足跡を残してはいけないので、カメラが回っていない時も歩き回れるところが決まっていました。そのくらい厳格な現場だったこともあって、ある種の緊張感がずっとあって、映像にも生きているのだと思います。

Q ローランさん演じるラスムスン軍曹との芝居はいかがだったでしょうか。

A『ヒトラーの忘れもの』ルイス・ホフマンローランさん演じる軍曹と少年兵たちのシーンは映像にある通りの非常に激しい空気感でした。僕もローランさんも演技の学校に通っていたわけではないので、演じる時は自分を追い詰めて自分の中にある全てを出さないといけないタイプなんです。ローランさんはまさに叫びっぱなしで、時には監督に「もう叫べません」と言う一幕もありましたが、そのくらい僕もローランさんもギリギリまで役を引き出していただいたので、ある意味最高のコラボレーションだったと思います。セバスチャンと軍曹のふたりの共演シーンは、ある種リアルで、親密なものでもあったので、映像でもうまく表現できただろうし、ローランさんとの共演は素晴らしいものでした。

Q ドイツ兵役同士の芝居はいかがだったでしょう。

A『ヒトラーの忘れもの』ルイス・ホフマンヘルムート役のジョエル・バズマンさんとはよくディスカッションしました。最終的にはカットされていますが、セバスチャンとヘルムートが肉体的にも心理的にもぶつかりあう激しいシーンがあるんです。撮影中は少年兵役は2、3人ずつが同じ宿舎に滞在していましたが、僕とジョエルさんは最初に一緒になって、いろいろ話し合ってやっていこうと決めたので、その後も僕らはずっと同じ宿舎にいました。お互いにちょっと違った見方をしていたので、お互いの考え方に興味があったし、キャラクターがどう考えて行動するのか、役者同士もっと話したかったので、そうしていました。

Q この映画への出演を通じて得たことを教えてください。

Aルイス・ホフマン役者をここまで正確な方法で演出してくれる監督は初めてです。そこから得たものが大きいです。毎シーン、そのキャクターの核心にしっかり手が届くような演技をする、という意味で、今までの出演作よりも強烈な体験になりました。
先ほども話しましたが、実際にはカットされているのですが、ヘルムートとセバスチャンが喧嘩をするシーンで、セバスチャンが感じている激しい怒りや自尊心を表現する必要がありました。僕自身は普段の生活で喧嘩をしたことがないので、そこまでの怒りを感じたことがなかったんです。それで監督がギリギリまで僕を追い詰めて、怒りを感じたところで撮影開始になりました。小屋の中での撮影でしたが、撮影後に外に出たら、突然涙が溢れ出てきました。監督は「君が今まで到達したことのない気持ちに達したからだよ」と言ってくれました。それは僕にとって計り知れないくらい価値のあるものでした。自分自身が分からなくなるくらい演技に没頭して普段の生活では経験できないようなことを経験できるのが役者の仕事ですが、まさにそこまで連れて行ってくれた監督には本当に感謝しています。

Q ルイス・ホフマンさんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

Aルイス・ホフマンこの映画をぜひ観てもらいたいです。なぜならそこに素晴らしい旅が待っているからです。初めの1分で心がとらわれて、時に強烈な状況の中、ずっと引っ張られるような映画だと思います。また、キャラクターへ感情移入をしていただける作品です。僕ら全員が大切にしていかなければならない人間性を描いた作品でもあります。社会がある人たちにレッテルを貼った時に、その裏にある本当の人物像を知ることで、関係を築いていくことができることが描かれた映画です。ぜひ日本の観客の皆さんにも観ていただきたいです。

Qルイス・ホフマンさんからOKWAVEユーザーに質問!

ルイス・ホフマン皆さんが最も恐怖心を感じた状況を乗り越えられたエピソードを教えてください。
セバスチャンも地雷除去という死と隣合わせの状況の中で、自分の心の声に耳を傾けて、恐怖心を受け入れて、できることをやっていきました。彼は恐怖心を乗り越えることができましたが、もし恐怖心に基づいて行動していたら違う結末が待っていたと思います。その顛末はぜひ映画を観ていただくとして、ぜひ回答をお願いします。

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■Information

『ヒトラーの忘れもの』

『ヒトラーの忘れもの』2017年12月17日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

1945年5月、ナチス・ドイツによる5年間の占領から解放されたデンマーク。ドイツ軍が海岸線に埋めた無数の地雷を除去するため、捕虜のドイツ兵たちが駆り出された。セバスチャン、双子のヴェルナーとエルンストらを含む11名は、地雷を扱った経験がほとんどない。彼らを監督するデンマーク軍のラスムスン軍曹は、全員があどけない少年であることに驚くが、初対面の彼らに容赦ない暴力と罵声を浴びせる。
広大な浜辺に這いつくばりながら地雷を見つけ、信管を抜き取る作業は死と背中合わせだった。少年たちは祖国に帰る日を夢見て苛酷な任務に取り組むが、飢えや体調不良に苦しみ、地雷の暴発によってひとりまたひとりと命を落としていく。そんな様子を見て、ナチを激しく憎んでいたラスムスンも、彼らにその罪を償わせることに疑問を抱くようになる。とりわけ純粋な心を持つセバスチャンと打ち解け、二人の間には信頼関係や絆が芽生え始めていた。

やがてラスムスンは、残された任務をやり遂げて帰郷を願う少年たちの切なる思いを叶えてやろうと胸に誓うようになる。しかしその先には思いがけない新たな苦難が待ち受け、ラスムスンは重大な決断を迫られるのだった……。

出演:ローラン・ムラ、ミゲル・ボー・フルスゴー、ルイス・ホフマン、ジョエル・バズマン、エーミール・ベルトン、オスカー・ベルトンほか
脚本・監督:マーチン・サントフリート
配給:キノフィルムズ

http://hitler-wasuremono.jp/

© 2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S & AMUSEMENT PARK FILM GMBH & ZDF


■Profile

ルイス・ホフマン

ルイス・ホフマン(『ヒトラーの忘れもの』)1997年生まれ、ドイツ・メンヒェングラートバッハ出身。
09年に俳優としてのキャリアをスタートし、出演第2作となる『Tom Sawyer(原題)』(11/ヘルミーネ・フントゥゲボールト)でトム・ソーヤを演じた。その後、『Freistatt(原題)』(15/マーク・ブルムント)で、ババリア映画賞最優秀新人賞を受賞。本作にて第28回東京国際映画祭最優秀男優賞を受賞。
その他の出演作に、ヴァンサン・ペレーズが監督を務めた『Alone in Berlin(原題)』(15)などがある。、Netflixドイツ版のオリジナルドラマ「Dark」(17)にも出演予定。今後が期待される若手俳優の一人。