OKWAVE Stars Vol.622は映画『14の夜』(2016年12月24日公開)にて初監督となる足立紳監督へのインタビューをお送りします。
Q 初監督作品として、この題材を選んだきっかけを教えてください。
A足立紳この映画のプロット自体は8年くらい前には書いていました。僕が中学生の時に、近くのレンタルビデオ屋にAV女優がサイン会にやってきて、夜12時をすぎると裸を見せてくれる、という噂話がありました。実際に見に行ったらもちろん何もなかったのですが(笑)、その噂話自体が面白くて自分の中にずっと残っていたので、いつかその話を映画なりドラマなりにできないかなと思っていました。
こういう噂話自体が現代では成立しないし、インターネットで検索すれば解決してしまうので、今の中学生はわざわざ確かめに行かないだろうなと思って、自分が中学生だった頃の1987年を舞台にしています。その噂話を軸に、当時の自分や友だちの実体験も入れながら、それを一晩に起きた出来事としてまとめました。
Q 初監督をされる上で、大事にしようと思ったことは?
A足立紳もともと監督志望だったので、撮る喜びはすごくありました。今回のメインキャストは子どもたちなので、大人の役者のように台本を渡せば上手く演じてくれるとは思っていませんでした。ですので主演の犬飼直紀くんらとはクランクイン前に過ごす時間をできるだけ長く取りたいと思いました。リハーサルにかぎらず、たとえ無駄話をするだけであっても、できるだけ長く一緒にいられるように時間を取ってもらいました。
映像的なこだわりはそんなに持ってはいませんでしたが、子どもたちがイキイキとしているように映ればいいなと思いました。あまりカットも割らずに自由に演じさせて、それを撮ってもらうようにしました。
Q 中学生役のキャストたちはオーディションで選ばれたそうですが、決め手は何だったのでしょうか。
A足立紳オーディションに来てくれた子たちの演技力にはそれほど差はありませんでした。ですので、雰囲気や人間的な素直さから主要な4人を選びました。
Q 中学生役のキャストたちとの撮影はスムーズに進みましたか。
A足立紳僕も初めてでしたので、最初は手探りでした。彼らも役を掴めてはいなかったので、台本を読んでもらいながら僕も一緒になって役がどういうものなのかを作り上げていきました。今の子たちは僕らが中学生の頃ほど女性の裸に執着はしていないので、そういったズレはありましたが、主人公のタカシたちが感じている自分への不甲斐なさやいらだちといったものはどの年代でも普遍的なものだと思いました。
Q 大人のキャストの方々についてはいかがでしたか。
A足立紳皆さん上手な方ばかりでした。門脇麦さん演じるタカシの姉・春子が婚約者を連れて家に帰ってきて、家族全員が揃うシーンは、事前に見ておきたくて一度リハーサルをしました。その時からすでに映像にあるような雰囲気ができていて、僕自身、面白く見ていました。光石研さんが演じたお父さんにも僕自身が反映されています。中学生の頃は40歳をすぎるとすっかり大人だろうと思っていても、いざその年頃になると、実際は中学生くらいと中身は大して変わっていないですよね。そんなところがあのお父さんには反映されています。
Q 撮影全般はいかがだったでしょうか。
A足立紳あるシーンがどうしてもうまくいかない、というような大変さはとくにありませんでした。中学生くらいの子たちは夜に家を抜け出したらワクワクするような気持ちになると思いますが、夜の撮影では犬飼くんたち自身も同じような気持ちだったと思います。
中学生たちが主役の映画ですが、家族が集まるシーンは撮っていて自分でも面白かったです。基本的に僕は人が大勢集まっていることが好きなので、家族が揃った夕食のシーンは面白かったです。それと、ラストシーンはリハーサルをせずに撮りました。ここでは犬飼くんがどんな芝居をしてくるかなと思いながらでしたが、一発OKでした。どうなるか分からなかったので、ワクワクとドキドキでしたが、いいシーンになりました。
Q 初監督をされて気づいたことや再発見したことは?
A足立紳普段脚本を書いている時は一人ですが、今回は大勢でワイワイガヤガヤと映画を作り上げてみて、そういうものが自分は好きなんだなということにあらためて気づきました。映画作りの面では、大人は台本を渡せばその通りに演じられますが、このくらいの年代の子たちだと、俳優としての技術もないので、その分、脚本もドンドン変わっていきました。セリフはリハーサルをしながらだいぶ変えましたので、そういう発見はありました。
Q 足立監督自身は映画監督や脚本家にはいつから目指されていましたか。
A足立紳この映画に出てくるレンタルビデオ屋さんは、実際に営業しているVHS中心のレンタルビデオ屋さんで撮らせていただきましたが、僕はこの年頃にはよく映画を観ていてレンタルビデオ屋さんに通っていました。その当時から映画に関わる仕事をしたいと思っていました。脚本を書き始めたのは映画学校に入ってからです。脚本は日常生活の延長線にあるようなものを取り上げています。普段、生活している中で起きる出来事から、ここは映画の題材に使えるんじゃないか、という部分を膨らましていっています。ですので何か思いつく秘策があるということではないですね。
Q 足立紳監督からOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。
A足立紳僕は笑いと涙と汗が入っている映画が大好きですが、これはまさにその通りの映画です。ぜひ笑い泣きに劇場にお越しいただければと思います。もちろんどなたでもいいですが、今の自分に自信がなかったり、変わりたいなと思っている人たちは、中学生に限らずに大人の方たちにも観てほしいなと思います。
■Information
『14の夜』
1987年の田舎町。中学生のタカシは、ずっと家でうじうじしている父親がカッコ悪くて嫌いだ。今日も婚約者を連れて帰ってきた姉に対して情けない態度で見ていられない。町を歩いているとすぐ絡んでくるヤンキーたちも鬱陶しいし、隣に住む幼なじみで巨乳のメグミがちょっと気になっている。そんなどうにもならない悶々とした日々を送っているタカシが柔道部の仲間たちと入り浸っている、町に一軒だけあるレンタルビデオ屋があった。そしてそこにAV女優のよくしまる今日子がサイン会にやって来るという噂が聞こえてきて…。予期せぬ自体、大騒動の果てにタカシはよくしまる今日子に会えるのか?
犬飼直紀 濱田マリ 門脇麦 和田正人
浅川梨奈(SUPER☆GiRLS) 健太郎 青木柚 中島来星 河口瑛将
稲川実代子 後藤ユウミ 駒木根隆介 内田慈 坂田聡 宇野祥平
ガダルカナル・タカ/光石研
脚本・監督:足立紳
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)2016『14の夜』製作委員会
■Profile
足立紳
1972年、鳥取県生まれ。
日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。その後、映画の助監督などを経て、シナリオを書き始める。オリジナル脚本『百円の恋』が2014年公開され、異例のロングヒット。第17回菊島隆三賞、第39回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞。「第38回創作テレビドラマ大賞」にて、脚本「佐知とマユ」が大賞を受賞し、ドラマ化後には第4回市川森一脚本賞を受賞。2016年2月、幻冬舎より「乳房に蚊」を上梓し小説家デビュー。『14の夜』の小説版も発売中。