Vol.625 女優 中西美帆(映画『東京ウィンドオーケストラ』インタビュー)

OKWAVE Stars Vol.625は映画『東京ウィンドオーケストラ』(2017年1月21日公開)にて映画初主演を務めた中西美帆さんへのインタビューをお送りします。

Q 出演のきっかけについてお聞かせください。

A中西美帆プロデューサーの松岡周作さんにお声がけいただいて、松岡さんと企画の深田誠剛さん、坂下雄一郎監督と面談をして選んでいただきました。その後も候補の方とお会いする予定だったそうですが深田さんは私でいいのではと他の人には会わなかったそうで、2日後には主演のご連絡をいただいて、嬉しかったです。

Q 映画初主演についてはいかがですか。

A中西美帆撮影中は自分が主演だという感覚よりも、みんなで作り上げているという感覚の方が強かったです。沖田修一監督から「登場人物たちが、大人なのに、まるで子供のようでした。」という推薦コメントをいただきましたが、私も完成した作品を観て何てかわいらしい作品なんだろうと思いました。演じた樋口詩織のことを何てふてぶてしい役だと思っていましたが、初号試写を観て詩織のことも愛おしくて涙がポロポロ出てしまいました。初主演映画が素敵なキャスト、監督と、屋久島というロケーションで撮影できて、すごく幸せだと思いました。

Q 台本を読まれた印象はいかがだったでしょうか。

A中西美帆最初にお話をいただいた時は、詩織は天真爛漫な、朝ドラヒロインのような元気のいい女の子の役だと聞いていたんです。そのイメージで読みましたが、お話自体はとても面白かったです。詩織とアマチュア楽団の1対10の対立構造も面白おかしくて、演じるのが楽しみでした。

Q 屋久島でのオールロケはいかがだったでしょうか。

A中西美帆屋久島に着いた日は私だけ撮影がお休みだったので、車をお借りして島中をドライブしました。
撮影中は町役場とアマチュア楽団が演奏したホール(屋久島離島総合開発センター)と宮之浦港くらいで他を見る余裕はなかったです。
完成後、屋久島での完成披露試写会に行った時にみんなで縄文杉に登りました。人生で一度は登ってみたい場所でしたし、屋久杉のすごさに圧倒されました。入口の雰囲気も選ばれた人しか入れないような聖地のようで、屋久杉が生き物のようで語りかけてくるような感覚になって、忘れられない思い出になりました。

Q 屋久島でのロケならではの撮影エピソードや、ご自身への影響はありましたか。

A中西美帆どのシーンも思い出深いですが、詩織が町役場の屋上に佇むシーンは、屋上から眺める景色が素敵でした。映画の始まりと終わりに詩織が屋上に佇んでモノローグが入る構成ですが、詩織としても私自身も屋上から見える風景からもらうインスピレーションは大きかったです。
最初の本読みで、監督から「元気な女の子でやってみて」と言われてやってみたら、監督的にはあまりハマっていなかったようで「中西さんがそれをやっても、あまり面白みがないので、180度変えて、無感情な感じでやってみてください」と言われて、監督と一緒に作っていった役なので、撮影前には戸惑いもありました。だけど、屋久島に着いてから役がグッと下りてくる感覚がありました。

Q 坂下監督のオリジナル脚本で劇場用映画デビュー作品とのことでしたが、監督とのやり取りはいかがでしたか。

A中西美帆監督からは当初から180度変わった詩織について「感情を入れないで棒読みで」「早口で」と言われました。感情を入れる方が簡単なので、棒読みのセリフはむしろ難しかったです。監督はシャイな方で、話しかけても一言返事が返ってきて会話が続かなかったりするのですが(笑)、そのシーンでの感情などを聞くといつも的確に説明していただけました。監督の中ではどのシーンも明確だったので、ベテランの小市慢太郎さんをはじめ、みんな監督のことを信頼して演技に集中してできていました。「早口で」と言われた時はテンポ感を大事にされているからなのかなと思いましたが、完成した作品を観ると、早口にすることで詩織の楽団員たちに接する時の面倒くさそうな感じがより出ていていいなと思いました。詩織のキャラクターをパッと切り替えたこともそうですし、楽団のみんなは身体の大きな人ほど楽器が小さくて、身体の小さい人の方が大きな楽器を吹いていたりするので、そういういろんな計算が監督の中にはできているんだなと思いました。

Q 共演者の方々とはいかがでしたか。

A中西美帆監督からは「楽団員10人とは対立する立場なのであまり仲良くしないでください」と言われていました。でも、オールロケですし、放っておいてもどんどん仲良くなるので、それは無理だと思いました(笑)。詩織は楽団員から睨まれる立場ですが、私自身は笑いのツボがすごく浅くて、普段にこやかにしている皆さんに睨まれるのが却って面白くて吹き出しそうになってしまったりもしました。
学んだ部分では、詩織が上司の田辺課長に「別れましょう」と言うセリフが出てくるのですが、私にはどういう感情なのか腑に落ちていないところがあって、隣にいた小市慢太郎さんに相談したら「それでええねん」と言われました。「監督は才能があるし、脚本もしっかりしているから、腑に落ちていなくても、台本を信じて言えば、作品が完成した時に絶対につながっているし、ちゃんと分かるから」と背中を押してもらった感じがしました。役者の先輩からそんな貴重なアドバイスがいただけたことも素晴らしい経験でした。
今回の撮影は雨が多くて、撮影スケジュールがどんどん変わっていったのは大変でしたが、晴れ間を見て予定になかった外での撮影が急に始まったりもしたので、鍛えられた気持ちにもなりましたし、それもいい思い出になりました。

Q 撮影を通じて、ご自分に変化や、何か気づきはありましたか。

A中西美帆ヒロインを演じるにあたって、ふてぶてしいキャラクターを演じるのには勇気が要りました。みんなイライラしないかなとか、こんなキャラクターを愛してくれるんだろうかと余計なことも考えてしまいました。演じている時は自分でも気づきませんでしたが、現場で深田さんから「役に入っている中西さんが怖い」とも言われたので(笑)、正直、怖さもあったのですが、完成した作品を試写で観ていただいた方からは「詩織の逆ギレぶりが良かった」という声をいただきました。私自身、役者として普段の自分のイメージとは違ったキャラクターを演じることがこんなに楽しいことなんだと気づかされました。この撮影に入る前は役者として悩んでいる時期でもあったので、きっとこの作品がターニングポイントになるんだろうなと思います。今回、ようやくスタート地点に立てた気がします。

Q 今後の抱負をお聞かせください。

A中西美帆デビュー以降は舞台に出演していないので、いい作品に巡り合って舞台に立ちたいなと思っています。舞台以外にもたくさん現場に出たい気持ちです。23歳でデビューして5年経ちましたが、ひとりの人間としての生き方が役に出てしまうものだと思います。役をいただくという時は、自分がやりたい役よりも、日頃の生き方を周りの人が見ていてその役に選んでいただくことだと思いますので、そのためにも日々自分を磨いていくしかないと思っています。

Q 中西美帆さんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

A中西美帆この『東京ウィンドオーケストラ』の魅力は難しいことを考えずに楽しめるところです。観終わった後に温かい気持ちになれるので、若い方から大人まで、全ての世代の方に観ていただきたいなと思います。詩織も大きく変化するわけではありませんが、日常のささやかな可笑しみを描いているので、いろんな方に観て楽しんでいただけたらと思います。

Q中西美帆さんからOKWAVEユーザーに質問!

中西美帆詩織は、著名楽団とよく似た名前のアマチュア楽団を呼んでしまい、「このまま本物ってことでいきましょう。」とバレるまで嘘をつき通そうとします。
もし皆さんが同じ立場だったらどうしますか。

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■Information

『東京ウィンドオーケストラ』

2017年1月21日(土)よりロードショー

屋久島で日本有数の吹奏楽団を招いたコンサートが開催されることになった。担当の役場職員・樋口が港に迎えに行くと、そこにいたのは観光気分の10人の楽団員たち。だが島をあげての大歓迎と不審に思った彼らは、自分たちが有名オーケストラと間違えられていることに感づき、島から逃亡しようとする。同じ頃、彼らが偽物だと気づいた樋口は自分のミスを隠すため、彼らを“本物”としてだまし通すことを決意する。刻一刻と迫る開演時間。果たして樋口と素人同然のアマチュア楽団員たちは、このピンチを乗り切ることができるのか!?

中西美帆 小市慢太郎
松木大輔 星野恵亮 遠藤隆太 及川莉乃 水野小論 嘉瀬興一郎
川瀬絵梨 近藤フク 松本行央 青柳信孝 武田祐一 稲葉年哉

監督・脚本:坂下雄一郎
配給:松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ

http://tokyowo.jp/

(C)松竹ブロードキャスティング


■Profile

中西美帆

1988年12月5日神戸市生まれ。
子供の頃から女優に憧れ、20歳のときに演技の道に進むことを決意。毎日、映画を1本観るノルマを自らに課すなどの勉強を重ね、2009年「奇跡の人」で初舞台を踏む。2011年、NHKドラマ「神様の女房」で本格的にデビュー後、NHK大河ドラマ「八重の桜」(13)、映画『永遠の0』(13/山崎貴監督)などの話題作に出演。2014年公開の『喰女-クイメ-』(14/三池崇史監督)では市川海老蔵の相手役を熱演した。本作と同日公開の映画『惑う After the Rain』(17/林弘樹監督)で準主役を務め、『東京ウィンドオーケストラ』が記念すべき初主演作となる。
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