Vol.632 女優 佐藤みゆき(映画『真白の恋』インタビュー)

OKWAVE Stars Vol.632は映画『真白の恋』(2017年2月25日公開)主演の佐藤みゆきさんへのインタビューをお送りします。

Q 『真白の恋』オファーを受けた時のご感想をお聞かせください。

A佐藤みゆき最初にお話をいただいたときは台本もまだなかったんです。坂本欣弘監督が「富山で撮りたい」「立山で撮りたい」ということだけ決まっていました。監督とは10年来の友人の北川亜矢子さんの脚本で、ご自身の弟さんを題材に、知的障害の女性の映画にすることになっていたそうです。主演女優を決める会議で北川さんから、会ったことも芝居を観たこともない私の名前が出て、「富山にいそうなビジュアル」「美人過ぎない」(苦笑)という条件がにぴったりだったようです。後日お二人とお会いして、この映画の骨子をうかがいました。
それが夏頃で、撮影は冬に行うとのことでしたが、本決まりになったという連絡がなく、段々と「本当にこの映画に出られるのだろうか」と思い始めた頃に台本が届きました。北川さんのご自宅で、真白と、劇中では岩井堂聖子さんが演じた従姉妹の雪菜とのシーンの本読みをすることになって、赤いニット帽をかぶって行ったら「真白が来た!」と言っていただきました。その帽子は映画でも採用されました。本読み後に車で送ってもらう帰り道の車中で「僕の中では前から決まっていましたよ」と監督が仰っていて、それでやっと真白役ができるんだという気持ちになれました。

Q 撮影はいかがだったでしょうか。

A佐藤みゆきメインの撮影は11日間のぎゅっと詰まった期間で、撮影初日に真白の部屋での雪菜とのシーンを全部撮りました。そのスケジュールを見たときは、「これは人だと思われていない」と思いました(笑)。でもやるしかないと、岩井堂さんとふたりで乗り越えていきました。芝居自体は監督から何の注文もないくらいスムーズに演じることができました。真白が恋をする油井に初めて電話をする場面では、台本を読んだ時にはどうやったら成立するか想像できなかったのですが、リハーサルの中で出てきた動きを本番でも採用して、すごく素敵なものになりました。雪菜のお陰で真白のキャラクターもできあがったので、その後も真白のキャラクターがブレることなく演じられました。
家族役の皆さんは撮影の日程に合わせて順番に現場に入られましたが、撮影期間中、みんなが私のことを真白として扱ってくれたので、今思い返すと、それもあってとても楽に演じることができました。

Q 真白のキャラクターはどのように受け止めていましたか。

A佐藤みゆき本読みの時に北川さんに誰をイメージすればよいかうかがったところ、弟さんのイメージがあったからか「小学5年生の男の子のようなイメージで」と言われました。真白は女性ですが男の子のイメージなんだと思って、それを念頭に置きました。「障がい者と聞くと、みんなきれいな心の人だと思うけど、実際にはイジワルもするし、普通の人だから。天使のようには描いていない」と仰っていました。
私は撮影前に知的障害の方が働いている作業所などに訪問させていただいて、皆さんとお話をして、みんな素直で人間らしい人たちだと感じました。それで、ご家族の方がこの映画を観て、納得できたり共感できるものになればと思いました。

Q 富山で撮影された作品ですが、これまでに富山との関わりはありましたか。

A佐藤みゆきこの撮影で初めて行きました。「日本で一番行きたい県は富山県です」とずっと言っていたので、それが叶って良かったです。私は福島出身で、いまは東京に住んでいるので、日本海側に行ったことがほとんどないんです。富山県は日本酒もお米も美味しくて、かつ日本海側、ということで、いつか行ってみたいとずっと言っていたら、この映画の話がきて、すごく嬉しかったです。
富山の人はみんな温かくて、壁を感じないです。撮影後、映画のPRと監督の結婚式への出席のため富山に行った際には、なぜか一人で居酒屋でチラシを配ることになったのですが、お店の方はカウンターのお客さんが3回くらい入れ替わる間中、次々と紹介してくださり、居合わせた何人かの方にはごちそうになってしまって、そんな温かさと優しさに触れました。「また会いましょう」と言えば、本当に会えそうな、いつでも行きたい場所になっています。

Q 真白が住む射水市は景色も素敵な場所ですね。

A佐藤みゆき監督は富山市の出身なので知らなかったそうです。真白のお兄さんが結婚式を挙げる神社(放生津八幡宮)に行く機会があって、内川のことを知って、ここをロケ地にしようと決めたそうです。美しい街並みですし、映画の中に出てくる自転車屋さんや写真屋さんなどのお店や赤い東橋などは全て歩いて回れるところにあります。

Q 共演者の方々についてはいかがでしたか。

A佐藤みゆき油井役の福地祐介さんはとても個性的な方でしたね。私と北川さんが女子的ロマンスを理解しているとするなら、監督と福地さんは「それはないでしょ」という観点でこの台本に取り組んでいたのかな、という印象です。シーンを作る時には、いろいろ話し合いをして、当初からは変更になったシーンも多いです。展望台のシーンでの真白と油井の別れる際のやり取りは最終的にはセリフを変えることになりましたが、現場に北川さんがいないこともあって、私は台本をなるべく守ろうという気持ちでいました。電車の中でのやり取りでの福地さんはセリフを彼自身が発するように変えていたので、すごくスリリングな芝居でした。そういうところは真白と油井の“好きなんだけど圧倒的に違う生き物”という関係性そのままでした(笑)。良い作品を作りたいという気持ちは一緒ですが、若干緊張感のある関係性でしたね。
油井に対して、雪菜役の岩井堂さんはずっと寄り添うようにいてくださりました。
家族役の皆さんとは、2年前の11日間だけの撮影でしたけど、その時からずっと私は真白と呼ばれ続けています。撮影中は、真白の家のこたつのある居間が控室で、待ち時間はみんなでずっと過ごしていました。

Q 本作出演を経て得た気づきは何でしょうか。

A佐藤みゆき監督は初監督で私は初主演です。私も監督も手探りでしたけど、大事なことは譲らなかったです。なら国際映画祭2016では観客賞をいただきましたが、その滞在期間中に監督とは積もり積もったものが爆発して大喧嘩をしました(笑)。それがあって改めてしっかりと向き合うことができ、この映画が皆さんに届くまで頑張っていこうと約束をしました。私はこの作品が大切ですし、監督の今後もとっても楽しみです。そういうこともあって、この作品に成長させられたと改めて感じました。監督は作品を通してメキメキと力をつけられたと感じています。私も映画のイロハのようなものをこの作品から学べたと思います。
それと、私は素直に演じることを大切にしていて、真白役でもそうしてきました。最近は自分の出演した作品を見返すようになって、その時に自分がどう感じていたのかを当時の台本に書きこんだメモなどから思い出すと、その時にできることを出し切るしかないんだと思いました。これからも演じる時には素直に出し切ろうと思います。

Q 今後の抱負をお聞かせください。

A佐藤みゆきこれからも映画はもちろん、演劇もドラマもCMも、私がやりたいと思うもの、私の身近な人に観てほしいと思える作品とたくさん出会って、誠心誠意作っていきたいなと思います。

Q 佐藤みゆきさんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

A佐藤みゆきどなたに観ていただいても、心のどこかが震わされるような作品になっていると思います。ぜひ劇場で観てください。どこかに共感できる素直な映画になったと思います。
射水市の市長さんは真白のお父さんに共感されたそうです。知的障がいのある方にも観ていただいたそうで「お父さんが怖かった」「真白は格好良かった」という感想があったそうです。ぜひ皆さんのご感想などを聞かせていただけたらと思います。

Q佐藤みゆきさんからOKWAVEユーザーに質問!

佐藤みゆき『真白の恋』は、真白が初めての恋を通して、葛藤をしながら成長する物語です。
皆さんへの質問は、皆さんが最近感じた葛藤と、それに対してどんな決断をしてどんな結果になったかをお聞かせください。
ちなみに私は、公務員をしていた20歳の時に結核を罹って、病床で「このままでいいのか」という葛藤を抱えて、3年後に役者の道を選びました。今のところは良かったと思っていますので、後悔していません(笑)。

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■Information

『真白の恋』

2017年2月25日(土)アップリンク渋谷ほか、全国順次公開

渋谷真白は、生まれてからこれまで、家族と共に富山で暮らしている。
見た目にはそれとわからないが、真白には、ごく軽度の知的障がいがある。
日常生活に支障はなく、現在は父の営む自転車店の店番をしたり、飼い犬の世話をしたりと、元気に暮らしている。
ある日、兄の結婚式で神社を訪れた真白は、東京からやって来たフリーカメラマン、油井景一に出会う。
真白の、生まれて初めての恋。
応援する人、心配する家族。
その中で真白は何を感じ、どう成長していくのか…。

佐藤みゆき 岩井堂聖子 福地祐介
山口詩史 杉浦文紀 及川奈央 村上剛基 深川格 内田もも香
長谷川初範

監督:坂本欣弘
原作・脚本:北川亜矢子
配給:エレファントハウス

http://mashironokoi.com/

©2016『真白の恋』制作委員会


■Profile

佐藤みゆき

1984年7月5日生まれ、福島県出身、B型。
学生時代に知り合ったメンバーと劇団「こゆび侍」にて活動。上京後、学校栄養士の職に就くが、女優業を選択し3年で退職。観る者の心に届く声質と、繊細かつ厚みのある表現力で、本格始動から数公演で多くの観客の支持を獲得。
劇団のカラーや作品のジャンルにとらわれず、役を生き、存在感を見せ続け、プロデュース公演へ進出。大きな劇場での活躍もめざましい。近年は、ドラマ、映画、CMと活動の場を広げつつある、ブレイク必至の本格派女優。
また、2013年より故郷である福島の【今】を10年間記録するドキュメンタリーを製作し、県外へ伝えていくプロジェクト「1/10 Fukushimaをきいてみる」をスタートさせている。

http://fosecon.com/talent/sato/