Vol.633 女優 朝海ひかる(こまつ座公演『私はだれでしょう』インタビュー)

OKWAVE Stars Vol.633はこまつ座公演「私はだれでしょう」主演の朝海ひかるさんへのインタビューをお送りします。

Q 本作について、どんな印象を受けましたでしょうか。

A朝海ひかる井上ひさし先生独特のユーモアと人間の素朴な温かみ、楽しい歌、そして最後には観ている人に問題提起をしていく、まさに井上先生らしい作品だと思いました。最初に台本を読んだ時は考えさせられる言葉が多くて、なかなか進まなかったですね。

Q 演じる川北京子の役柄についてはどのように捉えましたか。

A朝海ひかる第一印象はとにかく強い女性だと思いました。責任感も強いです。京子は作品の中で弱音を吐くような場面もなく、自分の使命を全うしていく姿が描かれています。ですので、本当に強い女性だと思います。
京子は戦争で弟を亡くした人物ですが、そこは自分の想像力に頼るしかないです。
ラジオ番組を担当する室長ということで、一つの何かを作る、という点では、私も宝塚で主演をつとめさせてもらい一つの団体を引っ張ってきましたので、そういう時の責任感のようなものは、環境は違っても共通項としてあります。でも、それ以外は自分とはなかなか共通点がみつからない人物ですね。とはいえ、お寿司やビールが好きなところとかは一緒です(笑)。

Q 稽古に入るにあたって、どんな準備をされますか。

A朝海ひかる終戦時のお話ですので、京子の年齢から逆算して、当時の映像や写真を見るようにしています。いまはそういう資料が見つけやすくなって本当にありがたいですね。それらの資料から想像を膨らましたり、アナウンサー役なので、動画サイトに載っている講座を観て練習したりもしました(笑)。

Q 歌うシーンがたくさん出てきますが、印象はいかがですか。

A朝海ひかる井上先生の作品はいつも歌が流れていて、歌で先生の言わんとしていることが漠然と客席に押し寄せていく感覚があります。今回もそういう歌がありますし、その場を盛り上げるのに絶好調な歌もたくさんありますので、観ている方を飽きさせることなく楽しんでもらえると思います。歌っていて自分でも楽しいですね。普通のミュージカルでの歌の入り方とは違って、登場人物が楽しくなって歌い出す歌なので、より身近なものとして歌が使われています。ほとんどがみんなで大合唱となるので、楽しい雰囲気になると思います。
作品のテーマは重く感じられるかもしれませんが、蓋を開けてみると私たちの日常がそこにあるというか、今の時代でも通用する人間ならではの素朴な幸せのようなものが描かれています。物語の8割くらいは笑って観られると思います。私自身、台本の文字を読んでいるだけでこんなに笑ったのは久しぶりです。「ステーキの歌」なんていうのも出てきて笑ってしまいましたが、そういうところも愛おしいですね。ごちそうの前ではみんなただの人、という人間の本質が描かれていると思います。

Q 共演の方々についてお聞かせください。

A朝海ひかる吉田栄作さんとは「ローマの休日」という舞台作品で共演させていただいています。他の役者さんとは初めての共演ですが、出演されている作品を観に行くと、必ず印象に残る方々ばかりですのでこの中にいてもいいのかな、という気持ちになるくらいです。

Q ラジオ局を舞台にした物語ですが、ラジオにまつわるエピソードなどはありますか。

A朝海ひかる小さな頃のことを思い出します。母が家事をする間や朝はラジオを付けていたので、生活に根付いていました。それに以前はタクシーに乗ると必ずラジオが流れていましたよね。私の中ではノスタルジックな思いの方が強いですが、友人の中にはTVは観ないでラジオしか聞いていない、という人もいます。想像力を掻き立てられるし、何かしながら聞けるのがいいと薦められます。

Q 主題の“私はだれでしょう”ということについて、ご自身のことをどう考えますか。

A朝海ひかる私は、“私はだれでしょう”と思うより“私はどこに向かうんでしょう”という感覚の方があります。私はこれから何をやって、どうなりたいんだろう、と自問自答することはあります。過去を振り返るよりも、今何をすべきかとか、未来に向けて何をするべきか、を考えるタイプですね。

Q どういう部分を大事に演じていきますか。

A朝海ひかる戦争を経験してきた登場人物が、その時の日本をどう思い、どうしていくべきかを考えながら物事に立ち向かっていく、その姿がお客さんに映ればいいなと思っています。前を向いている登場人物とその後ろ姿が描かれている今回の公演チラシのデザインが好きなのですが、この後ろ姿には、その後に続く観客の皆さんがいる、という感覚があります。この人たちが築いてきた日本にいま自分たちがいる、そういう感覚をお客さんにも味わっていただけたらと思います。

Q どんな期待感を持って観に来てほしいですか。

A朝海ひかる何か難しいものを観る、というよりは人間のユーモアや温かさを感じてもらえたらと思います。歌あり、笑いあり、そして涙ありという、いろんな感情を体験できる作品になっているので、そういう部分を期待して観にいらしていただけたらと思います。観客の皆さんも自分にこんな感情があったんだ、とかこういう感覚があったんだと気づける部分もあるので、そういったところにも期待していただけたらと思います。

Q いまの時代にこの作品を上演する意義のようなものは感じていらっしゃいますか。

A朝海ひかるNHKに関する問題は何年か前にもありましたが、この戦後の時期に同じことがすでに始まっているんだということに気づいていただけると思います。何も解決していないという問題提起がこの作品を通して分かると思います。20年後、30年後になってもこの作品は日本に問題提起をし続ける作品だと思いますので、こまつ座さんにはずっと再演し続けていただきたいですね(笑)。終戦という土台の上にいろいろ決まってしまったものがあって、その上に私たちが立っていますが、それをこういう楽しい作品で描いているところが、井上先生のすごいところですね。いろんなものが包まれた作品です。

Q 朝海ひかるさんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

A朝海ひかるこの作品はきっと今後も日本に生き続ける作品だと思います。本作の初演は幻の作品と言われ、ご覧になられた方も少ないと思います。それがこうして再演されるので、見逃さず、ぜひ目撃者になっていただきたいです。ぜひ劇場まで足をお運びください。

Q朝海ひかるさんからOKWAVEユーザーに質問!

朝海ひかる皆さんはどのような舞台の作品を鑑賞したいですか。

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■Information

2017都民芸術フェスティバル参加公演
こまつ座第116回公演『私はだれでしょう』

東京公演:2017年3月5日(日)~26日(日)紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

戦後行方不明の肉親や知人を探す「尋ね人」というラジオ番組があった。
番組を制作する脚本班分室には、室長の川北京子を筆頭に個性豊かな人物が揃っている。
アナウンス原稿を書くのが早い山本三枝子、しっかり者の脇村圭子、言葉の生き字引である佐久間岩雄さん、組合書記の高梨勝介…そしてそんな彼らを監視するために、日系二世のフランク馬場が担当官として着任したばかり。
そこへ“自分が誰か探して欲しい”と謎の男(山田太郎?)が訪ねてくる。
歌・踊り・タップ・武術・錠前破り…となんでもできる男の正体は一体だれなのか?

作: 井上ひさし
演出: 栗山民也
出演: 朝海ひかる 枝元萌 大鷹明良 尾上寛之
平埜生成 八幡みゆき 吉田栄作
ピアノ奏者/朴勝哲

入場料: 6,600円、学生割引3,300円(全席指定・税込み)
お問い合わせ: こまつ座 03-3862-5941

スペシャルアフタートークショー:
3月10日(金)13:30公演後、朝海ひかる・枝元萌・大鷹明良・吉田栄作
3月13日(月)13:30公演後、大沢悠里(ラジオパーソナリティー)「ラジオの魅力」
3月14日(火)13:30公演後、松元ヒロ(スタンダップコメディアン)「日本人と『憲法くん』」
3月19日(日)13:30公演後、朝海ひかる・尾上寛之・平埜生成・吉田栄作
※開催日以外の公演チケットをお持ちの方も、アフタートークショーへの入場可能。ただし、満席になり次第、入場を締め切り。
※出演者は都合により変更の場合あり。

来場者全員プレゼント:
3月18日(土)13:30/18:30の回にて、「夜中の電話」(こまつ座代表・井上麻矢 著作本)が韓国にて上演されることを記念して、来場者全員に特製クリアファイルをプレゼント!

こまつ座:http://www.komatsuza.co.jp


■Profile

朝海ひかる

女優、元雪組トップスター。91年から06年、宝塚歌劇団に在団。花組・宙組・雪組で活躍。02年雪組男役トップスターに就任。06年「ベルサイユのばら」主演(オスカル役)。同年、宝塚歌劇団を退団。退団後も、ミュージカル、ストレートプレイ、映像等で活動中。主な出演作品にTVドラマ「派遣のオスカル~少女漫画に愛をこめて」、「螻蛄」、舞台『蜘蛛女のキス』(演出:荻田浩一)、『ローマの休日』(演出:マキノノゾミ)、『エリザベート』(演出:小池修一郎)、『しみじみ日本・乃木大将』(演出:蜷川幸雄)、『幽霊』(演出:鵜山仁)、『おもひでぽろぽろ』『アドルフに告ぐ』 『國語元年』(演出:栗山民也)などがある。

プロフィール:http://www.umegei.com/system/productions/detail/3
オフィシャルファンクラブ:http://www.asamihikaru.jp/