OKWAVE Stars Vol.637は、Netflixにて好評配信中の『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』主役・島村ジョー役の河本啓佑さんへのインタビューをお送りします。
Q まず、この「サイボーグ009」という有名な作品に参加することについてどう感じましたか。
A河本啓佑石ノ森章太郎先生の作品というと、僕の中では「仮面ライダー」と「サイボーグ009」というのはすごく大きいです。「仮面ライダー」の方を先に知っていましたが、「仮面ライダー」も「サイボーグ009」も改造された人間がヒーローとして戦っていくものなので、作品の世界に入りやすかったです。とくにこの「サイボーグ009」は世界各国からいろんな境遇の仲間が集って、本当は戦いたくないのだろうけど、そういう力があるのなら苦しんでいる人を助けようとする優しい人たちです。傍から見ればヒーローですけれど、自分たちにしてみれば葛藤もある、そういう深みがあるからこそ、ここまで長く続いている魅力的な作品なのかなと思います。ですので、プレッシャーは大きかったです。偉大な先輩方が演じてこられた役を僕が引き継ぐということで、より自分の能力を高めていかねばなと思いました。
Q 009・島村ジョーを演じる上で、キャラクターの印象はいかがでしたか。
A河本啓佑これまでの作品を通じて島村ジョーという人間像が出来上がっているものが僕の中にあったので、最初はジョーという存在を演じようと思っていたのが、演じているうちに、ジョーになりきれているな、という感覚に自然と馴染んでいきました。ジョー役に選ばれたのが、テープオーディションの冒頭で「島村ジョー役の河本啓佑です」とフラットな感じで話した声をジョーだと思っていただけたから、とのことでしたので、普段の僕の声がジョーのイメージに近いのかなと思います。僕自身は、ジョーのような立場には置かれていませんが、「みんなで仲良くしていようよ」と思うタイプなので似ているところはあります。でも、ジョーほど僕は鈍感ではないです(笑)。演じていて、もうちょっとフランソワーズのことを気遣ってあげようよと思いました。ですので、収録現場ではフランソワーズ役の種田梨沙さんに「ジョーがすみません」と謝っていました(笑)。ジョーは新たな女性キャラクターが現れると、恋愛感情が無くても優しくしてしまいますが、そうした時に自分に好意を持ってくれている相手がどう感じるかまで頭がまわっていないので、そこは自分とは違うと思うところです(笑)。
Q 収録現場はどんな様子でしたか。
A河本啓佑僕と種田さんとピュンマ役の石谷春貴さんの3人が若い世代で、先輩方ばかりの現場でした。皆さんに温かく迎え入れていただいたので、僕が引っ張っていくというよりも、自然と一体になるような感じでした。張々湖役の真殿光昭さんが話題を振っていただくことが多かったです。この作品ならではのSF用語がたくさん出てくるのですが、博士が解説するときのセリフがさらに難しいSF用語で分からなくて(笑)、キャストみんなで謎解きをするように話し合って演じました。ある程度の絵のガイドはありましたがプレスコ(prescoring)でしたので、シーンがどういう動きになるのか共通の認識を持つ必要がありました。それと、キャラクターと同じように、敵役のブレスドとはどんな存在なんだろうということもよく話していました。
ハインリヒはこれまでも女性キャラクターとの恋模様が描かれることが多かったので、今回は日野聡さんの声色からハインリヒのルーシーへの思い入れの強さを感じたり、キャスト同士そういうところを想像して楽しみつつ収録をしました。とにかく作品のことを話し合うことが多い現場でしたね。
Q 今回のストーリーについてはどう受け取められましたか。
A河本啓佑この『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』から観る人にも入りやすいストーリーだと感じました。各キャラクターをしっかりとピックアップしてひとりひとりの活躍も描かれています。これまでの経緯も回想シーンとして入っています。櫻井孝宏さんが演じていた『サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER』のシチュエーションがそのまま再現されていたので、演じるときにはプレッシャーがありました。これまでの宿敵だった組織ブラック・ゴーストと対決しているので、過去の作品を知っている人に受け入れてもらえるかというドキドキ感がありました。とはいえ、これまでの作品を知らなくても楽しめる作品になっています。楽しんでいただいた方は以前に何があったのか、「サイボーグ009」という作品によりハマっていただけると思います。
作品はフル3DCGで作られているので、スタイリッシュなアクションシーンが目を引きつけますし、そこに少し重いストーリーと、これまでの戦いの背景がありますので、いいバランスだと思います。ジョーを中心に物語は進みますが、それぞれのキャラクターも掘り下げられていますので、分かりやすい作品になっていると思います。
敵役のエンペラーは人類に絶望していて、人類を自分たちのレベルまで引き上げることが人類のためだと考えています。ジョーたちのように人類を救ってきたけれど脅威として排除されようとしていて、そういう結論に至ったのだと思います。人のためにやっているということでは正義と悪の対立ということではない、勧善懲悪ではないところが、この作品の魅力なのかなとも思います。
Q 河本さん自身の気持ちが盛り上がったシーンは?
A河本啓佑まずは、「加速装置」の一言目ですね。ドキドキもしましたし、言えた時は感無量でした。オーディションの時はあの島村ジョーのセリフが言えるんだというワクワク感の方が大きかったですが、いざ自分がジョーとしてそのセリフを収録現場で収録した時は「これは夢じゃないよね」という気持ちでした。
それと、中盤でジョーがある決意をすることで、加速装置の進化につながっていくキーになるシーンです。サイボーグになって以来、戦うことへの葛藤を抱えていたジョーが、一時は人間の感覚を取り戻しますが、フランソワーズに危機が迫ることで、たとえ自分が戦うことを放棄しても、自分のために巻き込まれる人がいるのなら、望まない力であってもそれを使って救わなければならない、という決意をするシーンが僕の中で思い入れが強いです。その決意が固まることで、その後のエンペラーとの戦いでもブレずに戦っていくことにつながっていくので、そこは演じる上でも大事でした。
Q 演じる上で過去作品のジョーの声を意識はされましたか。
A河本啓佑ジョー役に決まった後、入手できる映像は観させていただきました。とはいえ、大先輩方の演じてきたものを真似することは正しいことではないと思いました。島村ジョーというキャラクターの心の部分、ナイーブなところや、戦う決意をしたらブレずに戦うところ、そういう感情や心情の部分を参考にさせていただきました。それはどの作品のジョーにも共通している部分でしたので、そこを僕も受け継いで、その上で河本啓佑が演じるジョーにしようと思いました。ですので、お芝居の部分というよりは気持ちの部分で意識しました。
『CYBORG009 CALL Of JUSTICE』はこれまでの作品から連なっています。ジョーはこれまでも「加速装置!」と何度も言っていることになるので、セリフは全力で言わせていただいていますし、作品としての見せ場であることも意識しましたが、ジョーの気持ちとしてはあまり必殺技のような言い方になりすぎないようにしました。
Q プレスコとアフレコで演技の違いはありましたか。
A河本啓佑演じる上で、映像があるとセリフの尺が決まってきますので、その中での演技が求められます。プレスコでもある程度の映像のガイドはありましたが、尺は気にしなくていいと言われていました。ジョーが決意を固めた後、カタリーナと語り合うシーンは、尺を気にせずジョーの気持ちだけを考えて演じることができたのでありがたいなと思いました。その反面、映像がないので、キャスト同士でそのシーンがどういうシーンなのか話し合ったり、監督にお聞きして、どういう空間で戦っているのか、というような意識のすり合わせは大変でした。でも、それをやった分、ゼロゼロナンバーたちのチームワークがより出たのではと思います。
それと、尺を気にしなくていいということは、それだけ自由に演じられますので、エンペラー役の井上和彦さんとの力量の差も分かってしまいます。本番の緊張感の中で喰らいついていこうと思いながら演じることができたので、かけがえのない経験になったと思います。
Q 神山健治総監督や柿本監督からの指示や言われたことは何かありますか。
A河本啓佑ジョーやゼロゼロナンバーサイボーグたちの陰の部分についてです。これまでの敵だったブラック・ゴーストがいなくなって、平和が訪れたと思ったら、今度は自分たちが脅威だとされてしまって、戦いの第一線から身を引いたところからこの物語は始まります。一時は平穏な生活を送っていますが、人間たちからそのように思われている哀しさもあります。元の人間には戻れないという哀しさは、サイボーグにされて以来、ずっとゼロゼロナンバーサイボーグたちが想っていることだと思います。自分たちは年を取ることもないサイボーグだからこそ感じるであろう絶望感が滲み出る陰のようなバックボーンですね。セリフの中にそういうものがあるわけではないので、普通のことを話しているけれど、どこか陰があると思わせるようにしてほしい、というディレクションを受けました。
Q AIの発達など世の中が「サイボーグ009」の作品世界に近づいてきているところもありますが、演じてみて、今の自分たちの世界とのリンクなど考える部分はありましたか。
A河本啓佑科学が発達して便利になったり医学が発展していくことはいいことですよね。でもAIが人間の感情をすべて表現してくれるわけではないので、最後は使う側の問題だと思います。最終的には人と人とのやり取りが大事になってくるのかなと思います。
Q 河本啓佑さんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。
A河本啓佑『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』はフル3DCGで作られていますので、これまでの「サイボーグ009」を知らなくても、映像やキャラクターの魅力から楽しめる作品になっています。Netflixで全12話を一気見ができますので、最後まで観てドキドキ・ワクワクしていただき、ではこれまでの作品はどうだったのだろう、原作はどうなんだろう、と全てを楽しんでいただけたら嬉しいです。まずは全12話、最後まで楽しんでください。
■Information
『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』
人智を超えた異能を持ち、太古より人類の歴史を操ってきた存在、「ブレスド」。彼らが再び、不穏な胎動を始めた。戦いの暗雲が、世界を覆い始めようとしていた。
ブレスドの存在に勘づいたジャーナリストのルーシー・ダベンポート。彼女は009こと島村ジョーをはじめとするゼロゼロナンバーサイボーグたちのもとを訪ねる。
冷戦下で幾度も平和の危機を救ってきたサイボーグ戦士たちだったが、国連軍ガーディアンズ設立以来、その使命から離れ、今はアメリカ・テキサス州で静かな隠遁生活を送っていた。
ルーシーがサイボーグたちに渡したのは、亡き父から託された謎のキューブ。ブレスドの鍵を握るそのキューブを開けたとき、突如、ブレスドのメンバー“カウボーイ”の襲撃を受ける。そして、もう一人のメンバー“ティーチャー”も009たちを狙ってテキサスへ向かっていた。
そんな中、国連軍ガーディアンズもまた、サイボーグたちの行動を問題視し始めていた。サイボーグたちが失地回復のために自作自演の事件を起こしているという疑惑の目を向けたのだ。四面楚歌の中、009たちは安息の地を捨て再び新たな戦乱の中へと身を投じる事となる。
人は戦いを忘れることはできないのか。人類の未来はどこへ向かうのか。
原作者:石ノ森章太郎
総監督:神山健治
監督:柿本広大
CAST:河本啓佑 種田梨沙 福圓美里 佐藤拓也 日野聡 乃村健次 真殿光昭 佐藤せつじ 石谷春貴
http://www.cyborg009.jp/
Netflix:https://www.netflix.com/jp/
■Profile
河本啓佑
11月18日生まれ、岡山県出身。
声優として数多くの作品に出演。
『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』島村ジョー、『美男高校地球防衛部LOVE!LOVE!』別府月彦、『私がモテてどうすんだ』七島希、『ALL OUT!! 』客人考助、『ISUCA』浅野真一郎、『東京ESP』東京太郎、『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』ラウル・チェイサーなど。
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