Vol.640 俳優/演出家 宅間孝行(タクフェス 春のコメディ祭!「わらいのまち」インタビュー)

OKWAVE Stars Vol.640はタクフェス 春のコメディ祭!「わらいのまち」の作・演出の宅間孝行さんへのインタビューをお送りします。

Q タクフェス 春のコメディ祭!について企画意図をお聞かせください。

A宅間孝行僕が劇団を始めたのが1997年なので今年で20周年を迎えます。この世界でずっと続けられるのはお客さんが来てくれているからですので感謝の気持ちしかないです。例年、秋に公演をしてきましたが、もっとお客さんと接する機会を作りたいなと思いました。それで今回、関西テレビ放送さんと組めることになったので、春のコメディ祭を開催します。

Q 「わらいのまち」はどのように生み出したのでしょう。

A宅間孝行初演(タイトル:JOKER)は2001年です。2011年に「わらいのまち」にタイトルを改めて再演しています。当時、僕が書いていたのは、せつない作品が多かったのですが、2時間暗転無しのシチュエーション・コメディを作ろうという試みで書きました。その後も何本かコメディ作品を書きましたが、その原点となる作品です。当時の自分としてはチャレンジングな試みでした。今こういう作品を作ろうとしても「できない」と思うくらい自分でもうまく書けたと思います。

Q 物語の設定として、温泉宿を舞台にした背景をお聞かせください。

A宅間孝行僕らは基本的にはワンセットで舞台を見せていく、という手法を取っています。いつもどの場所を使うかに悩みますが、旅館のロビーは、いろんな人たちが出入りしますのでパブリックな空間ですし、旅館を切り盛りする家族が会話する空間にもなるのでいいなと思いました。元々、この「わらいのまち」は寅さん(「男はつらいよ」)のような話をやってみたいというところから始まっています。僕らがやっているエンタテインメントもそうですが、タイトルにも入っている「笑い」は無形物です。特産品や景色、お金のかかるものではなく無形物を使って町おこしをする、ということが素敵だなと思いました。エンタテインメントの市場が拡大するともっと豊かな世界になるんじゃないかと思っています。そんな考えにも根ざしているところがあります。

Q コメディを描く上で、笑いを生む台本や芝居に対する生みの苦労はありましたか。

A宅間孝行コメディに限らず、台本を書くのは本当に大変です。実は今、4年ぶりの新作を書いていますが本当につらいです。この「わらいのまち」を書く時も相当苦労した覚えがあります。コメディ作品はそれ以外のジャンルよりも頭を使う感覚があります。

Q 台本の面白さと、生の舞台ならではのその場で起きる面白さとがありますが、どのくらいの比率で考えていらっしゃるのでしょう。

A宅間孝行稽古場で生まれてくるものも結構ありますが、基本的な構造は2時間全部がつながっているので、1つ何かが変わると全体に影響が及びます。ですので中心にあるものはあまり変わりません。今回の公演台本も、初演のものとあまり変わっていないです。稽古場での足し引きはありますが、緻密に作っている部分の方が多いです。

Q キャストは宅間さんと柴田理恵さん以外は一新されました。今回の主要キャストを選ばれたポイントは?

A宅間孝行柴田さんはこの作品が大好きで「もしまたやるならぜひこの役で参加したい」と仰っていました。柴田さん自身、とても素敵な女優さんですので今回もお願いしました。鈴木杏樹さんは僕らの劇団の作品をずっと観に来ていただいていまいた。杏樹さんは舞台をやらない方だと僕は思っていたのでこれまでオファーしなかったのですが、2015年に初舞台に立たれたので「でしたらぜひ」とお声がけしました。杏樹さんとは役者の世界で一番付き合いの長い方でもあるので、遂にこの時が来た、という感覚です。もしかすると世間からは杏樹さんにはコメディのイメージがないのではと思います。ですので今回、新しい杏樹さんの姿も見せられたらいいなと思います。永井大さんに関しては彼の初舞台がうちの劇団だったのと、連ドラでもガッツリ共演しています。その時に彼の役者としての素質がとても高いと感じていたので、機会があればまたやりたいと思っていました。柄本時生くんは初めての共演ですが、彼に関しては顔で選んで声をかけました(笑)。

Q キャストに期待しているところなどお聞かせください。

A宅間孝行今話した4人以外のキャストはオーディションを経て来てくれた方たちです。本当に素晴らしかった方たちが残っているので、逆に言えば、モチベーションがすごく高い方たちが集まっています。ですので、ひとりひとりのポテンシャルの高さに期待しています。

Q コメディならではの演出や演じ方はあるのでしょうか。

A宅間孝行僕らはテンポ感を大事にしているところももちろんありますが、この2時間の舞台のために、1ヶ月みっちり稽古をします。細かいところまで、ひとつひとつの芝居の意味を追求していきますので、そこまで突き詰めればこの作品としての芝居が身につきます。それと舞台はお客さんが作ってくれる部分が大きいです。お客さんの前で演じて、お客さんから大きな笑い声をもらえると、みんなのテンションが一気に変わります。稽古場で「もっとテンションを上げてくれ」といくら言っても上がってこなかったものがお客さんに笑いをもらった瞬間に一気に上がって、今度はみんなが笑いをもっと欲しがるようになります。一度舞台に立てば、お客さんと作り上げていくものになるので、そこがコメディの楽しいところですね。

Q 今回ならではの見どころはいかがでしょうか。

A宅間孝行ひとりひとりの役が粒立っているので、舞台の中央から端々に至るまで、みんな何かしらやらかしてくれるだろうという期待感が大きいです。それと、東京公演の会場の東京グローブ座はコンパクトでとても観やすいので、お客さんにしてみると間近で観られるようなお得感があると思います。

Q 宅間さんが演じる三兄弟の長男・富雄の役どころをお聞かせください。

A宅間孝行まさに寅さんのような男ですね。僕自身、寅さんが大好きなのであんな風になれたらいいなと思って演じています。ちょっと迷った時には渥美清さんだったらどう演じるだろうと考えながら役を作ってきました。

Q 勘違いや行き違いがエスカレートして大騒動になる物語ですが、宅間さん自身は何かそんな経験はありますか。

A宅間孝行この作品は極端に描いてはいますが、聞き間違えてとんでもないところに行ってしまうようなことは現実にも起こりえると思います。意外と身近な出来事だと思ってもらえるとより作品が楽しめると思います。

Q 宅間孝行さんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

A宅間孝行舞台と聞くと敷居の高さを感じたり難しいのではないかと感じる方もいらっしゃると思います。僕らはエンタテインメントをどうみんなに親しんでもらうかを考えている集団です。特に今回はコメディですので、舞台が初めての人でもより楽しめると思います。ぜひ生のライブを楽しんでもらえたらと思います。上演前には役者が日替わりでサービスをするイベント的な要素もありますので、笑いに、遊びに来ていただけたらと思います。

Q宅間孝行さんからOKWAVEユーザーに質問!

宅間孝行演劇とカテゴライズされているお芝居を一度も観に行ったことがない人の興味を引くために一番大切なことは何だと思いますか。

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■Information

タクフェス 春のコメディ祭!「わらいのまち」

【東京公演】2017年3月30日(木)~4月12日(水)東京グローブ座
【名古屋公演】2017年4月14日(金)~16日(日)中日劇場
【兵庫公演】2017年4月18日(火)~23日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

寂れた田舎町の寂れた温泉旅館「まつばら」に国会議員の大関代議士が急遽、泊りに来ることになった。
明日から始まる町の未来をかけた町おこしイベントの視察にやって来るのだ。町おこしの実行委員長を務める「まつばら」の次男の信雄をはじめ、三男の将雄、仲居のくにゑ、真知子も大喜び。
好印象を与えようと張り切る面々だったが、そこに不吉な知らせが舞い込む。長年音信不通だった疫病神とあだ名される長男の富雄が町に帰ってきているらしいというのだ。
とにかく問題なく無事視察が終わるよう奔走する「まつばら」の面々。しかし、話は行き違いの連続、勘違いの交錯でとんでもない方向に転がっていく…。

作・演出:宅間孝行
出演:宅間孝行 永井 大 柄本時生/辻󠄀 本祐樹 尾関伸嗣 佐藤祐基 松本若菜 橋本真実
岡本 玲 土平ドンペイ 冨永 竜 ブル えまおゆう/柴田理恵 鈴木杏樹

チケット料金:
・東京公演:S席8,000円/A席6,000円/B席5,000円(全席指定・税込)
・名古屋公演:1F席8,000円/2F席7,500円(全席指定・税込)
・兵庫公演:8,000円(全席指定・税込)

協力:テイクオフ
企画:タクフェス
制作:関西テレビ放送

公式HP:http://takufes.jp/warainomachi/


■Profile

宅間孝行

1970年7月17日生まれ、東京都出身。
97年、劇団「東京セレソン」を旗揚げ。01年に「東京セレゾンデラックス」と改名するのを機に、主宰・作・演出・主演として活動。12年12月に劇団を解散。13年に「タクフェス」を立ち上げる。
役者としては近年では「出入り禁止の女」(15/EX)、「花燃ゆ」(15/NHK)、「嵐の涙-私たちには明日はある-」(16/THK)などに出演。映画では『予告犯』『ライアの祈り』『海難1890』(以上、15)『団地』『嫌な女』(16)などに出演。ドラマ脚本では、劇団の舞台をドラマ化し、ギャラクシー賞マイベストTV賞グランプリ受賞作品となった「歌姫」(07/TBS)など多数。映画『くちづけ』(13)も劇団作品の映像化。映画『全員、片想い』内の短編「サムシングブルー」(16)にて監督、脚本を務めた。