OKWAVE Stars Vol.646は映画『いのちあるかぎり 木田俊之物語』主演の武田知大さんへのインタビューをお送りします。
Q 木田俊之さんについてはご存知でしたか。
A武田知大僕はみちのくレコードからCDデビューしていて、木田さんはみちのくレコードの第一号歌手の大先輩なので4、5年前から知ってはいました。お話しするととても朗らかで、それでいていろんなことを乗り越えてきたんだろうな、という印象を受けました。
木田さんの歌は、映像で観るのと生で歌声を聞くのとでは全く違います。歌は力強くて男らしくて、お人柄に芯があって、それが歌に全面に出ていて、僕は大好きです。
Q そんな木田さんを演じるということについてどう感じましたか。
A武田知大最初はびっくりしました。歌の先輩でもありますが、人生の大先輩として人間的に大好きな方ですので、ものすごく光栄ですし、その分、演じるプレッシャーも大きかったです。嬉しい半面、当初は筋ジストロフィーという病気のこともあまり知らなかったので、しっかり演じられるのだろうかと、緊張感と半々の気持ちでした。
映画は脚色されているところもありますが、木田さんの半生がしっかり描かれていて、客観的に見てもいい作品になるなと思いました。
Q 演じる上でどんな準備をしましたか。
A武田知大木田さんの動画はそれこそ何万回というくらい繰り返し見ました。歌の部分ももちろんですが、指の動き、足の動きひとつとっても、筋ジストロフィーという病気のことをしっかりと表現したいと思いました。木田さんの日常や、木田さんを支える智恵子さんの想像を超えるようなご苦労があるので、そのことを頭と体に入れて、そこから役作りをしようと思いました。20歳から59歳までを演じましたが、身体が動かなくなっていく分、表情を変えていくような芝居が大事だと思いました。
Q 智恵子さん役を結婚当初までは鈴木まりやさん、その後を植野葉子さんが演じましたが、それぞれ共演シーンについてお聞かせください。
A武田知大鈴木さんとは以前にも共演したことがあってその時も相手役だったので、すんなりと役柄のコミュニケーションが取れました。植野さんとは初共演でしたし先輩なのでどういう風に木田さんと智恵子さんの距離感を作っていこうかと考えていましたが、植野さん自身が智恵子さん本人と見た目も性格もリンクするところがありました。僕は木田さんと同時に智恵子さんのことも知っていましたので、そこを植野さんとリンクさせて役に入っていけました。
Q 車に乗せてもらうような演技なども大変でしたね。
A武田知大病気の部分ではリアリティを追求しました。僕自身、木田さんの車の乗り降りを見て知っていたので、植野さんとも智恵子さんともお話をしながら、手をつく順番や身体の向きなどにもこだわって演じました。
Q ステージに立つシーンはいかがでしたか。
A武田知大今の木田さんのステージの姿は、共演させていただいたり、客席から観ているのでイメージしやすかったです。若い頃の姿は写真や映像でしか分からなかったので、逆算のお芝居でした。でも、木田さんとはたくさんお話をさせていただいて、当時の写真から再現するなど、リアリティにこだわりました。
Q パラグライダーで飛ぶシーンはいかがだったでしょうか。
A武田知大木田さんの夢が「空を飛ぶこと」と「紅白歌合戦出場」の2つで、映画ではパラグライダーで僕が車椅子に乗ったまま空を飛びました。でも、僕自身は高所恐怖症なので、普段だったら飛べなかったと思います。木田さんになっていたからこそ飛べたんだと思います。撮影した山形県南陽市はパラグライダーの町として有名で、車椅子に乗った方を飛ばしたことがあるそうです。木田さん本人が飛んだらどうかという話もあったそうですが、飛んだ時にかかるGが大きいということで僕がやりました。実はこの撮影で3回飛んだのですが、2回目はうまく飛べなくて怖い経験もしましたが、木田さんが「空を飛びたい」と言っているのを聞いていたので、その後の撮影でもちゃんと飛べたのかなと思います。
Q この撮影を通じて武田さん自身が得た気づきについてお聞かせください。
A武田知大クランクインは1年前の桜の季節でした。南陽市から始まって、岩手県宮古市、青森県青森市、それから東京や富山県の射水市でも撮影しました。映画は必ずしも順番に撮っていくわけではないので、木田さんの年齢によって病気の進行具合で身体がどこまで動くかが異なるのでそれを考えながら演じました。そうすることで演じ方についての発見がたくさんあって、演技の幅も広がったと思います。1日の中でも午前中は20歳で、午後は50代を演じる時もあって、最初は追いつきませんでしたが、日を追うごとに段々すんなり演じられるようになって、段々と木田さんになれたかなと思います。
Q 木田さんは撮影の様子をご覧になっていたのでしょうか。
A武田知大青森のご自宅や、公園を子どもと手をつないで散歩するシーンなど、撮影の様子をご覧になられて、「結構、似ているね」と言ってもらえました。撮影当初は不安が大きかったので、そう言ってもらえてとても安心しました。木田さんの言葉にはとても支えられましたが、そんな木田さんは智恵子さんと話し出すと止まらなくなるので、そういうポジティブなところを見せられればと思いました。
Q 本作を通じて伝えたいことをお聞かせください。
A武田知大筋ジストロフィーの方は全国に約2万5千人いらっしゃいます(※)。筋ジストロフィーの方を周りで支えている方はそれ以上いらっしゃいます。筋ジストロフィーは心臓から遠いところの筋肉から段々と衰えていくという、自分たちからすると想像できないくらい残酷な病気です。木田さんはその病気を患って約30年になりますが、僕が初めてお会いした頃よりも今の方がむしろ元気なように思います。医学的にはありえない不思議な力、それは歌の力や周りの力があるのだろうと思います。本人を支える周りの力や苦労、表面からは見えないことがこの映画ではしっかりと描かれています。ベッドの寝返りのシーンでは木田さんのご自宅の、普段は他人に見せることのない木田さんの寝室を使わせていただきました。そういうところにもこだわっています。木田さん自身は病気になったことで2つ良かったことがあると仰っています。1つは歌手になれたことと、いろいろな方に出会えたこと。それと、映画にも出てくる当時の4階にある自宅まで毎日階段を昇り降りしていた時、木田さんの息子さんが肩を支えてくれた時、病気になって良かったと思えたそうです。精神的にもすごい方だとつくづく思います。木田さん本人や周りの方の支えということをこの映画でしっかりと伝えたいです。
※難病情報センター:http://www.nanbyou.or.jp/entry/4523
Q 武田さんは本作に出演して、ご自身の今後の歩みに何か影響を感じますか。
A武田知大ご存命の方を演じるのは初めてだったので、撮影前は悩みました。木田さんを知っている方が見たらどう思うのだろうかというプレッシャーも大きかったです。病気を持つ方を演じる上で、一歩気が緩めば、ふざけているようにしか見えないという怖さもありました。映画はこれから公開されますが、木田さんの周りの方からは温かく受け入れられたので、自分にとってはかなりの挑戦の役でしたが、ひとつの作品をやり通せたということは、今後の自分の役者人生にとって、役の引き出しを広げられたので良かったなと思います。
Q武田知大さんからOKWAVEユーザーに質問!
武田知大僕はこの作品に関わるまでは筋ジストロフィーのことは名前しか知りませんでした。
日本には難病の方が数十万人いらっしゃるそうです。この映画を通じて、難病への関心が高まればという思いを持って取り組みました。
質問は、皆さんは難病への関心はどのくらいあるでしょうか。
■Information
『いのちあるかぎり 木田俊之物語』
渋谷アップリンク(4月24日イベント上映)、大阪・シアターセブン(5月6日~)他全国順次公開
☆4月24日(月)渋谷アップリンクにてトークショー付き上映
料金:前売・当日券1,800円(1ドリンク込)
開場18:30、舞台挨拶19:00~19:15、上映19:15
登壇予定:武田知大、鈴木まりや(AKB48)、植野葉子、武智大輔、若井久美子、畠山智行、渡邊豊監督、木田俊之
詳細:www.uplink.co.jp/
木田は1982年、智恵子と出会い結婚。子供も生まれて幸せな日々を送っていた。その木田を、突然「筋ジストロフィー」が襲う。自暴自棄になる本田を智恵子は支え続け、ボランティア歌仲間との交流を通じ、難病と戦いながら『紅白歌合戦』への出場を夢みて、「いのちあるかぎり」歌い続ける。木田俊之の半生を描いた一組の夫婦の物語。
☆木田俊之プロフィール
1957年2月2日生まれ、青森県大鰐町出身。上京後、働きながら趣味で音楽活動を行う。結婚し青森に帰省後、筋ジストロフィーを発症。ある日、ステージで倒れたことをきっかけに、歌うことをやめてしまう。仕事を続けることが不可能なほど病は進行し、先の見えない人生に一時は死ぬことも考えたが、家族の支えや、同じ病気と闘いながらも懸命に生きている人と出会い、前向きさを取り戻す。「歌うことは座っていてもできる」ということに気づき、大好きな歌で生きていくことを決意。その後、リハビリを行いながら様々なコンテストに出場し優勝、念願のプロデビューを果たす。発症30年後の現在も、筋ジストロフィーと闘いながら、車椅子に着席のまま笑顔で歌う姿とパワフルな歌唱力で多くの人に感動と勇気を与えている。
出演:武田知大 鈴木まりや(AKB48) 植野葉子 武智大輔 大林素子 聖川湧 岬坊真明 古川孝 松田純一 松田えりか 鈴木ゆか 小島久人 保井寛敬 赤松ひろき 若井久美子 橋本トオル 滋野由之 西村知美 本田理沙 晃(元フィンガー5) / あべ静江 / 渡辺裕之
監督・脚本:渡邊豊
配給:ベストブレーン
配給協力:渋谷プロダクション
http://www.movie-kidatoshiyuki.com
(c) 2016 映画「いのちあるかぎり 木田俊之物語」
■Profile
武田知大
1986年9月17日生まれ。
俳優として舞台、映画、TVドラマにて活躍中。また歌手としてみちのくレコードからデビューしている。