OKWAVE Stars Vol.648は映画『空(カラ)の味』主演の堀春菜さんへのインタビューをお送りします。
Q 本作は摂食障害を題材にしていますが、ご自身ではどのように感じましたか。
A堀春菜塚田万理奈監督との出会いはこの映画の撮影に入るよりもずっと前でした。その後『空(カラ)の味』への出演のお話をいただいた際に、99%が監督自身のことを書いた作品だと言われました。本人の話を私が演じて超えられるのか、摂食障害の役を演じられるのか正直、不安でした。監督からは「この話を読んで、汚いとか、気持ち悪いと思ったら引き受けなくてもいいよ」というお手紙もいただきました。それを読んで、監督が魂を削って書いた作品なら、私も魂を削って演じたいと思いました。
Q 監督の体験を基にした作品とのことですが、演じた聡子の役作りはどのように進めましたか。
A堀春菜監督からは「私の話だけど私の真似はしないでほしい」と言われました。ですので、私は聡子という役と向き合って、あまり摂食障害ということにもとらわれなりようにしました。撮影はほぼ順撮りだったので、普通の高校生の女の子として、その場で起きることに対して素直に反応しよう、ということを意識しました。
Q 映画前半では摂食障害に陥ってしまう様子が描かれますが、そんな聡子の学校生活のシーンを振り返るといかがでしたか。
A堀春菜聡子の友達のかなえ役の笠松七海さんは、私の実際の幼なじみなんです。私がお願いして出演してもらったので、それだけで安心感がありました。聡子がかなえに「助けて」と電話をかけるシーンまでは、実際にはあまり連絡を取らないようにしていました。聡子と家族の関係が段々と悪くなっていって、電話をかけるシーンで声を聞いたら、私自身がすごく安心できたので、周りの人たちに作ってもらえた部分が大きかったです。
学校の他の友だち役には、撮影で使った高校のダンス部の子たちが出演しています。みんな楽しく優しく接してくれて、ダンスの振付も現場で教えてもらったので、みんなで作り上げている感覚が大きかったです。
Q 些細なことのズレから聡子は摂食障害へと追い込まれてしまいますが、演じていて役柄に引きずられてしまうようなことはありましたか。
A堀春菜撮影は3ヶ月くらいかけて行われました。充実していた日々だと思いますが、撮影中は監督も泣いているし、私も泣いているし、カメラマンもたまに泣いている(笑)、みんなすごい状況になりながら撮っている現場でした。今振り返るとすごい現場だったなあと思います。
撮影2日目に聡子が初めて吐いてしまうシーンを撮るのにあたって、前日に監督が実際の様子を再現してくれて、私も他のキャストも、スタッフのみんなもスイッチが入って決意が固まったように思います。
聡子が追い込まれていくまで、食べるシーンが多かったのですが、演じている時は役の気持ちに入っていました。監督が「ごめんね」と泣きながら演出されていたので、私自身がどう感じていたかというよりも、役の気持ちの方が大きかったです。
Q 実体験を基にされた塚田監督の演出はいかがだったのでしょう。
A堀春菜監督自身に起きたことや言われたことをそのまま書いた脚本だったので、シーンの撮影に入る前には「この時、私はこう思っていて、多分、お母さんはこう思っていた」と、その時の感情も教えていただきましたが「この映画は私の話ではないので、聡子として演じてくれたらいいよ」とも仰っていました。こうしてほしい、というよりも、私に委ねてくれていたので、その分、自分で考えることが多かったです。
Q 芝居面で悩んだり苦心したところはありますか。
A堀春菜私は技術の面ではまだまだなので撮影を迎えるまではどうなるのだろう、とずっと不安でした。事前のリハーサルは、ほとんどしなかったのですが、私がどうなってもちゃんと撮れるようにと、監督やスタッフの方たちは万全な体制で準備をして撮っていました。私自身は本当にずっと不安でした。
Q 物語後半、マキさんという女性との出会いから違った展開になっていきます。
A堀春菜マキさん役の林田沙希絵さんとは、家族とのシーン、学校の友だちとのシーンを撮り終えてから、病院で初めて出会うシーンを撮ったので、本当に初めて会うような感覚でした。林田さん自身が普段からマキさんのようにたくさん喋る方なので、私がとくに考えなくてもマキさんが笑わせてくれて、聡子を救ってくれたので、自然に聡子がホッとしていく感じになれました。
お母さんとのシーンはそれまではギスギスしたものだったのがマキさんとの出会いの後は変わっていきます。お母さんが新しい靴を買ったと聡子が気づくシーンは、監督の実際の体験で「お母さんが初めて自分のために時間を使ったのが嬉しかった」と仰っていたので、聡子がそこに気付いたということも、聡子の変化として良かったなと思います。
Q 撮影を通して、堀さん自身が気づいたことはありましたか。
A堀春菜私は周りの人に支えられて聡子になっていったので、無理に演じなくても聡子になれることに気づきました。周りの人が私のことを聡子として扱ってくれたので自然にそうなれたので、いい方たちに恵まれたなと思います。監督と私が泣くのはともかく、カメラマンの方も泣く現場は初めてだったので、すごく良いメンバーなんだと思いました。
Q どんなところに注目してほしいですか。
A堀春菜摂食障害というテーマに目が向いてしまいがちですが、家族との関係や友だちとの関係を丁寧に描いているので、難しそうだと思わずに、普通に観ていただけたら嬉しいなと思います。
家族のシーンは監督の実家で撮っていたので、監督のご両親も撮影の様子を見ていらっしゃいました。撮影前に監督はどんな内容なのか伝えていなかったそうですが、先日観てもらったそうで、監督もまた一歩進んでいるようで良かったなと思いました。
Q 堀さんご自身は今後どのようになっていきたいですか。
A堀春菜技術もそうですが、演じる役にしっかり向き合って、その役を生きていきたいなと思います。今までは他の方のことは真似をしてしまいそうだったので見ないようにしてきましたが、最近はどんな風に役作りをしているのか少しずつ研究するようにしています。
Q 役者の道を志したきっかけは何だったのでしょう。
A堀春菜母がミュージカルや映画が好きで子どもの頃から連れられて観に行っていた影響が大きいです。それと通っていた幼稚園の先生が市民ミュージカルに出演していたので、それを観に行っていたことも、私自身が演じることに興味を持つきっかけになりました。観ている側から私もスクリーンに入りたいと思うようになって、母にずっと役者になりたいと言っていました。最初は母の勧めで市民ミュージカルに出演して、それで母が認めてくれたので、役者の活動を始めました。
Q 堀春菜さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!
A堀春菜この映画は125分の長い作品で、レイトショーで公開されますが、みんなで魂を込めて作った作品なので、体調が良い時に(笑)観に来ていただけたら嬉しいです。
Q堀春菜さんからOKWAVEユーザーに質問!
堀春菜『空(カラ)の味』で演じた聡子は、ポッキー1本分のカロリーをノートに書いているような、体重を気にしている女の子です。私自身も聞きたい質問ですが、皆さんのダイエットの成功例、失敗例を参考にお聞きしたいです。
■Information
『空(カラ)の味』
2017年5月1日、4日、11日、13~19日にテアトル新宿にてレイトショー上映
家族や友人達に囲まれ、何不自由なく暮らしていた女子高生、聡子。
彼女の人生に、ほんの少しの違和感が生まれ始める。
言い様のない不安と、止めることのできない衝動。
聡子はいつしか、自分が摂食障害に陥っている事に気付く。
理由は分からないまま、穏やかな不安に呑まれていく聡子は、ある日、危うげな女性マキと出逢う。
マキとの交流に、開放されていく聡子だったのだが・・・
堀春菜
松井薫平、南久松真奈、井上智之、イワゴウサトシ
柴田瑠歌、松本恭子、笠松七海
林田沙希絵
監督・脚本:塚田万理奈
撮影:芳賀俊
© 2016「空(カラ)の味」
■Profile
堀春菜
1997年3月17日生まれ、神奈川県出身。A型。
2014年、映画『ガンバレとかうるせぇ』(佐藤快磨監督)主演で映画デビュー。釜山国際映画祭での上映をはじめ、国内外の映画祭で賞を受賞。その後も『time』(中川駿監督)、『ぼくらのさいご』(石橋夕帆監督)に立て続けに主演として出演。
2016年は主演映画『空(カラ)の味』(塚田万理奈監督)が第10回田辺・弁慶映画祭で弁慶グランプリ含む4冠に輝き、女優賞も受賞。
その他にも、舞台『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』(演出:冨樫森)や2017年初夏放送予定のYBSスペシャルドラマ『セブンティーン、夏 北杜』(冨樫森監督)に出演を果たす。
今後も映画を軸に活動の幅を拡げていく。