OKWAVE Stars Vol.653はFacebookから生まれた実話ラブストーリーの映画化、『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』(2017年5月27日公開)主演の中野裕太さんへのインタビューをお送りします。
Q Facebookから生まれたリンちゃんとモギさんのこの実話そのものをどう受け止めましたか。
A中野裕太素敵な話だなと。僕が本人たちと初めて会った時も、2人を見ていてこちらも楽しくなる感じで「なるほどな」と思いました。Facebookでみんなから支持されたのがただの偶然ではなく、リンちゃんとモギさんが起こすケミカルには人を動かす説得力があるんだと、納得しました。
Q 実際のエピソードも織り込んで、実在の人物を演じるのはいかがだったでしょうか。
A中野裕太最初はこれが映画になるとどうなっていくのかなという疑問もありました。映画は、映画的な脚色はありますが、基本的には原作ファンの期待を裏切らない形です。でも、映画がノンフィクションになってしまうのも変ですし、映画が映画として特別なものになるにはちょっとしたおとぎ話になるようなフィクション性があるといいなと思いました。モギさんを演じる上でも、茂木洋路という実在の人物というよりも“モギさん”という映画の中のおとぎ話のような1人として存在できるように抽象化していく作業をしていきました。
Q 演じる上でどんなことを大事にしましたか。
A中野裕太モギさんと接して受けた「あんまりしゃべらなくて、何を考えているかは分からないけれど、中身がちゃんとありそうで、楽しいことが好きそう」というエッセンスを基にしたり、見た目も似せていったりはしました。それ以上に、撮影の現場で起きることに忠実であることがこのおとぎ話には一番重要だと思いました。モギさんを演じるのは茂木洋路さんではなく僕ですし、相手もリンちゃん本人ではなくジェン・マンシューさんです。マンシューが演じるリンちゃんが出してくる芝居を受け止めて忠実に演じることが一番大事でした。モギさんの台詞が少ない分、そういった受けの芝居の細やかさには気を配りました。
Q 日本と台湾の合同作品として、台湾の役者との共演はいかがだったでしょうか。
A中野裕太台湾の方は人懐っこくて、「この人は小学校のときからこういう風に笑っていたんだろうな」と思えるような人たちが多くて、すごく素敵だなと思いました。撮影の最初からスムーズに入っていけました。元々、異文化交流はそんなに大したことではないと考えています。相手も人間で、未確認生物と対峙しているわけではないので、笑うところ、恋に落ちるところ、怒ったりするところはだいたい一緒です。よく映画で「全世界が涙した」なんて言いますが、恋愛をしたり、家族とのことなどは、ちょっとした癖が違うだけです。そういう気持ちで入っていきましたので、自分から壁を作ることもなく、すぐ分かり合えたかなと思います。
Q 言葉の面ではいかがだったでしょうか。
A中野裕太撮影当初、僕は中国語を話せなかったので、英語と付け焼き刃の中国語で会話をしていました。でも、最後の方には中国語で簡単なジョークを言うくらいにはなっていました。そういうものも通して、人として心が通い合うような瞬間を共有できた現場でした。
Q 台湾のスタッフの方もいる現場で日本の現場との違いはありましたか。
A中野裕太みんなプロフェッショナルなので僕はとくに感じなかったです。芝居をする上では本当に気持ちよく演じさせてもらいました。
Q ジェン・マンシューさんとの共演ではどのようにコミュニケーションをとりましたか。
A中野裕太打ち合わせのようなものはなく、現場でアドリブのように作っていきました。実際のリンちゃんとモギさんの関係と同じように、役どころとしてもマンシューがまず投げて、僕がキャッチして返す、というやり取りが多かったです。ですので、僕は取りこぼさないようにする、ということを気をつけていました。
Q 他の台湾のキャストの方との共演はいかがでしたか。
A中野裕太リンちゃんのお母さん役のワン・サイファーさんは面白い方でした。自分で「私は台湾の浜崎あゆみ」と言ってるくらいで、すごく芯のあるプロフェッショナルでした。自分のことを120%理解していて、それを利用するのが上手だと思いました。クライマックスのシーンでのお母さんの演技にはグッと来ましたし、面白いなと思いました。
日本でのシーンに出てくるアケミ役のリン・メイシューさんは化物感がありました。アドリブの瞬発力と引き出しの多さがとんでもなかったです。何をやっても返してくれるので、演じていても面白かったし、そのシーンを見るといつも爆笑してしまいます。
Q 台湾のロケ全般で印象深かったことはいかがでしょう。
A中野裕太僕は現場ではいつも短パンにサンダル姿が多かったので、休憩中に路地裏で休んでいたりすると、遠目には現地の人にしか見えないとマンシューに言われました(笑)。僕も親しみを持って台北の町で過ごしていました。休憩中に屋台でタピオカミルクティーを買って路地を歩くだけでも楽しかったですし、思い出深いです。生活感があふれているのが台北の好きなところですね。
観光地では九份にも行きましたが、そこよりも海水浴のシーンを撮った福隆(フーロン)が楽しかったですね。波が高くてマンシューが怖がっていたり、カメラが壊れるトラブルもありましたが、南国に来たような気持ちで楽しめました。
Q 大阪や広島など日本の名所をあちこちを巡っていくシーンはいかがだったでしょうか。
A中野裕太まさに駆け足でした。台湾での撮影から帰国して、朝イチの浅草から撮影をスタートして、ここから一気に全国を行くのかと、ちょっと不思議な感覚でした。浅草、江ノ島、サービスエリアから全く見えなかった爆笑ものの富士山を望むシーンを撮って、奈良、大阪。そして広島、福岡、最後には長崎まで行きました。走破距離は1,600kmですし、広島から福岡への移動は僕も運転しましたよ(笑)。関門海峡を渡った時には感動しましたね。普通の撮影ではありえないくらいの駆け足具合でした。
短期間で東京から西の端まで行きましたが、これは監督からの「台湾から来たクルーの方になるべく多く日本を見せてあげたい」というサービス精神だったそうです。でも、台湾のクルーにしてみれば日本の撮影はこんなにハードなのかという、ありがた迷惑ですよね(笑)。
Q 恋愛映画としての、この2人の見どころはいかがでしょうか。
A中野裕太SNSで知り合って、SNSで会話をする2人の物語です。日本と台湾のコンビニにそれぞれ2人がいて、SNS上で会話するシーンは面白いですよね。メッセージのリアルタイムのやり取りを覗き見しているようなカメラワークですし、嫉妬心やちょっとした一言に嬉しくなるような気持ちはクラシックでオーソドックスな感情ですが、それをSNSでやり取りしているモダンな感じがこの映画の独自性かなと思います。描いている感情は普遍的なところが一番面白いところだと思います。
Q 撮影全般を通じて印象的だったことは?
A中野裕太大阪で撮影した時、アドリブで屋台でたこ焼きを買って食べたのですが、そのたこ焼きがすごく美味しかったです。その撮影後、みんなはすぐに広島へ移動した方がいいんじゃないかと思う中、大阪出身の監督が「超美味いたこ焼き屋を知っている」と言ってわざわざ買ってきてくれました。監督としては自分の地元で美味しいものを食べさせたいという気持ちだったのでしょうけど、それが全然美味しくなくて(笑)、「僕が撮影中にアドリブで買ったたこ焼きの方が美味い」とみんなで爆笑したのがいい思い出です。マンシューも監督にツッコミを入れたり、この映画の雰囲気と同じような和気藹々とした良い現場でした。
そんな監督の演出は細やかで、僕もそういうのが好きなのですぐに同じ方向に行けました。モギさんとリンちゃんが初めて会うシーンはスローモーションで描かれますが、いろんな気持ちが走馬灯のように巡るような感じに撮りたいと、その時のモギさんの表情や仕草のひとつひとつに込められた感情をひとつもこぼさずに演じました。そういう演出は僕も大好きなので、そういったものを一緒に作っていけたのは本当に楽しくて充実していました。モギさんは台詞が少ないのでなおさら表情や仕草が大事でした。
Q 中野さん自身が今回の撮影を通じて得た気づきなどお聞かせください。
A中野裕太この映画は僕が29歳の時に撮影をしました。撮影は9月までで、撮影後の10月に30歳を迎えました。その時に何となく、映画人として生んでもらった感覚になりました。映画人として歩んでいっていいよと言われたような気がして、それはこの映画のおかげのような感覚です。そういう意味でメモリアルな作品になりました。逆に今観ると何だかそこにいるのは自分ではないような感覚にもなります。
Q 中野裕太さんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。
A中野裕太僕は「映画を観に行こうよ」というのがデートに誘うキラーメッセージであってほしいと思っています。その目的地としてふさわしい映画を作りたいと思ってこの映画を作りました。「ママダメ」を観て、「恋っていいな」とか「今日は手をつないで帰ろうかな」と思えるようなきっかけになればと思います。難しい作品でもアーティスティックな作品でもないので気負わずにポップコーンを食べながら爽やかに2人の様子を追っていただけたらと思います。
Q中野裕太さんからOKWAVEユーザーに質問!
中野裕太皆さんは国際結婚についてどう思いますか。
僕は異文化交流は構えるようなことではないと思いますし、福岡出身の僕が東京に出てくるのも同じようなことだと思っています。
■Information
『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』
台湾に住む日本のドラマやアニメが大好きで、大学でも日本語を専攻する女の子リンちゃん。日本が震災に襲われた直後、リンちゃんのFacebookに日本人青年モギさんからメッセージが届く。 モギさんは震災で復興支援に協力的な台湾の国民性や親日感情に興味を持ちメッセージを送ったのだった。そうして始まったリンちゃんとモギさんのFacebookでのやり取り。内容はたわいもないお互いの悩みや日々の出来事。そしてゴールデンウィーク、実際に台湾で出会った二人。縮まる二人の距離。そしてその日から、ただのチャットのやり取りが、2人にとってのデートになっていく。やがてリンちゃんの淡い気持ちは日本へ、そしてモギさんの恋心は台湾の彼方へ飛んで行くのだった。
ジェン・マンシュー(簡嫚書) 中野裕太
ワン・サイファー(王彩華) 蛭子能収 リン・メイシュー(林美秀)
原作:モギさん・モギさん奥さん著「ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。」(新潮社)
監督:谷内田彰久
脚本:野村伸一
音楽:常田大希
共同配給:朝日新聞社/アティカス
(C)mamadame production committee
■Profile
中野裕太
1985年10月9日生まれ、福岡県出身。
演技を、今井純氏に師事。
2013年にGAS LAWを結成。
映画「遠くでずっとそばにいる」などに出演。
粗野で繊細。聡明で阿呆。太陽と一緒になった海。蕾。非常に矛盾しているが、それでいて素直な人。