OKWAVE Stars Vol.655は<シルクと光のダンス>で一世を風靡した伝説のダンサー、ロイ・フラーを描いた映画『ザ・ダンサー』(2017年6月3日公開)主演のソーコさんへのインタビューをお送りします。
Q ロイ・フラーについてはご存知だったでしょうか。
Aソーコこの映画のオファーをいただくまで知りませんでした。ステファニー・ディ・ジュースト監督は、それまで誰もロイ・フラーのことを知らなかったので、いわば彼女を紹介するためにこの映画を作ったのだと思います。
Q ロイ・フラー役のオファーについてはどう受け止めましたか。
Aソーコ監督のことは10年くらい前から知っていました。映画を作る前の監督は写真を撮ったりミュージックビデオを作っていました。8年くらい前に監督自身から「私が映画を撮ることになったら協力してほしい」と言われました。その時は彼女がどんな映画を撮ろうとしているのか何も聞かされませんでしたが「あなたが撮るなら何でもやるわ」と答えました。監督とは趣味も合うし、音楽の好みも同じです。とても波長が合うので、彼女のためだったら何でもやろうと思っていました。とはいえ、それが主演だとは思っていなかったので、びっくりはしましたが、すぐに引き受けました。監督は、ロイ・フラーみたいな女性なんです。自分は映画監督ではない、と思っていたのが、段々と自分で努力して映画監督になっていったんです。ロイ・フラーも最初は何もなかったのに努力と情熱だけでダンサーとなり、演出をはじめいろいろなことに取り組んでいったので、どちらも力強い女性ですね。
Q ソーコさん自身はロイ・フラーと似ていますか。
Aソーコどんなアーティストもロイ・フラーとは何かしら相通じるものを感じるのではないでしょうか。ロイ・フラーのように何かを作り上げることには集中力はもちろん、ある種の孤独であることも必要です。何かに情熱を傾けるのは私もそうですし、何より、自己破壊的なところはそっくりです。私も音楽を作る時は誰とも会わずに自分の世界に閉じこもって集中して曲を作ります。なるべく自分の気持ちや感性に純粋な形となって作品に表れるように、あえて自分の周りをシャットダウンするんです。ステファニーもロイ・フラーと同じように映画に集中し情熱を傾けています。そしてやはりクリエイターとして孤独なところもあります。実はこの映画の完成後に、マドンナから私のところに連絡があって「あなたは私とすごく似ている」と言われました。きっとロイ・フラーのような女性はアーティストやクリエイターにとって普遍的なんだと思います。
Q 演じていて難しかったことは?
Aソーコロイ・フラーと私は共通項がたくさんありますが、そうは言っても私の世界とロイ・フラーのダンサーという世界は全く違うので、彼女になりきるのは非常に厳しい鍛錬が必要でした。とくに肉体的には、それまでの私にはなかった筋肉をつけるところから始まって、大きなドレスを着て踊るために2ヶ月に渡って、どこか病的なほどのハードなトレーニングを行いました。それこそドレスが自分の皮膚のように感じられるくらいになるまでトレーニングを積んだんです。厳しいトレーニングを行うことで、ロイ・フラーが感じてきた苦しみや身体的な痛みにも共感できるようになりました。
Q 共演者についてお聞かせください。
Aソーコロイ・フラーは1人のダンサーとしての活動以外にも、ドレスを作ったり、演出をしたり、ダンサーの学校を作るなど様々なことに取り組んでいました。メラニー・ティエリーが演じたガブリエルはそんなロイ・フラーを最後まで見守っていた人物です。そしてメラニーもガブリエルのように私のことを見守っていてくれました。私が監督にいろいろ指示されて、水の中に飛び込んだり何でもやっているのを、彼女はいつもハラハラ・ドキドキしながら見守っていてくれました。「そんなにやり続けて大丈夫?」「ちゃんと睡眠を取れている?」と本当にガブリエルのように気遣ってくれました。
Q ソーコさんは今回初来日とのことですが、日本の印象をお聞かせください。
Aソーコ映画の中にも出てきますが、ロイ・フラーはヨーロッパにジャポニスムを紹介した最初の一人なんです。ロイ・フラーが日本の感性に共感していたように、私も日本のことは大好きです。いま私はアメリカに住んでいますが、アメリカの私のファンの中には日本人も多いです。日本人の友達も多いですし、ショーン・レノンとも友達です。今回の来日の際にはそんな私の周りの日本人の方から勧められたり教えていただいたりして、沖縄や京都にも行くことができました。
Q ソーコさんからOKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。
Aソーコこの映画は半年ほど前にフランスでの公開を終えましたが、私はその後、3枚目の音楽アルバムの製作に取り掛かっていました。集中して音楽のことだけに取り組んでいたので、ちょっとこの映画のことが頭から離れかけていましたが、またこうして思い入れのあるロイ・フラーのことをいろんな方に紹介できるのは嬉しいです。この作品で主演女優賞をいただくこともできました。私はこれまでも役を演じることもありましたが主にミュージシャンとして活動してきたので、人前で自分のことを女優だと言うのはためらいもありました。でも、これで映画もやっているミュージシャンではなく、ミュージシャンでもあり、女優でもある、と言える自信がつきました。そんな自信を持って日本の皆さんにこの映画を紹介できるのはとても嬉しいことです。ぜひご覧ください。
■Information
『ザ・ダンサー』
2017年6月3日(土)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほか全国公開
女優になることを目指していたロイは、ある時偶然舞台で踊り、初めて喝采を浴びる。ロイの才能を見抜いたドルセー伯爵の力を借り、パリ・オペラ座で踊る夢を叶えるために、ひとりアメリカから海を渡る。ロイのダンスを見たパリの観客は初めての体験に驚き、瞬く間にスターに。そして遂にパリ・オペラ座から出演オファーが舞い込む。無名だが輝くばかりの才能を放つイサドラを共演者に抜擢し、彼女への羨望と嫉妬に苦しみながらも舞台の準備を進めるロイ。しかし、そんな彼女に思わぬ試練と裏切りが待っていた。
第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品/第42回セザール賞6部門ノミネート
監督:ステファニー・ディ・ジュースト
出演:ソーコ(『博士と私の危険な関係』)、リリー=ローズ・デップ(『Mr.タスク』)、ギャスパー・ウリエル(『たかが世界の終わり』)
配給:コムストック・グループ
配給協力:キノフィルムズ/
© 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR – WILD BUNCH – ORANGE STUDIO – LES FILMS DU FLEUVE – SIRENA FILM
■Profile
ソーコ(Soko)
1985年10月26日、フランス・ボルドー生まれ。
本名はステファニー・ソコリンスキ。16歳のときにパリに出て、演劇学校を皮切りにいくつかの学校に通うが興味がもてずに途中放棄してしまったという。その後、自宅で楽曲を制作してはスタジオにもち込み、ミュージシャンに聴いてもらいながら経験を積む。
2007年、自主制作したミニアルバム『Not SoKute』中の1曲「I’ll Kill Her」がデンマークで火がつき、北ヨーロッパを中心にヒット。ステラ・マッカートニーのショーにも使用され、一気に頭角を現す。さらに2014年、彼女の「We Might Be Dead by Tomorrow」をフィーチャーしたファッション・ブランドwren(レン)のプロモーション短編映画『First Kiss』がYouTubeにアップされたのをきっかけに、全米ビルボードのシングル・チャートでいきなり9位にランクインし、話題騒然となる。その一方、映画にも端役出演を続けていて、2012年、ヴィルジニー・デパントの『嫉妬』で小さな注目を集め、アリス・ヴィノクールの『博士と私の危険な関係』では主役のオーギュスティーヌを演じて話題になった。
『ザ・ダンサー』にてセザール賞最優秀女優賞、リュミエール賞女優賞ノミネート。また、2016年には国際女性デー(International Women’s Day)にあわせて公開されたマドンナのショートフィルム「Her Story」にも出演。マドンナも認めた、さらなるブレイクが期待される才能の持ち主。
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