Vol.664 鼓童 前田剛史、鶴見龍馬(鼓童「若い夏」日本ツアー)

OKWAVE Stars Vol.664は鼓童のメンバー前田剛史さん、鶴見龍馬さんへの鼓童「若い夏」日本ツアーについてのインタビューをお送りします。

Q 「若い夏」公演のコンセプトについてお聞かせください。

A前田剛史昨年に続いて2度目の公演です。前回は僕が演出を務めさせていただいて、タイトルも自分で決めました。鼓童は今年36年目になりますが、2012年に歌舞伎役者の坂東玉三郎さんが芸術監督に就任されてから4年間、鼓童の殻を破るような活動をしてきました。今まで培ってきたものをいったん脇に置いて、玉三郎さんの力を借りて新しい試みに挑戦しました。
玉三郎さんが芸術監督に就任されてから浅草公会堂での公演も始まり、3年間は玉三郎さんの演出による公演をやってきました。そして昨年、僕が演出を任されました。玉三郎さんが芸術監督になられてからメンバーが演出を任されるのは初めて、自分はキャリアも若いし、演出経験も少ないのでプレッシャーはものすごかったです。しかも浅草公会堂という敷居の高い、目の肥えた方々に向けての公演です。それで若い自分には何ができるのだろうかと考えました。玉三郎さんではなく僕がやるのなら何なのかと。
僕らは鼓童を名乗っていますが、何を以て鼓童なのか、考え続けていました。先輩が鼓童を立ち上げて、その時に作り上げたものや熱量がお客さんに受け入れられてここまで来たので、今の僕たちはレールに乗っているだけという様な悔しい気持ちになることもありました。そして、鼓童として未来に進もうとした時に、先輩たちがやってきたことをきちんとできるようにしてから進みたいと思い、そこで今、原点を見つめ直すことにしようと思い至ったのです。
先輩たちのやって来た演目を、玉三郎さんからいただいた感性を持った僕たちが原点を見つめ直したら、同じ演目でも何か違うことができるだろうと思いまして。荒削りかもしれませんが、若いからこそ出る力のようなものを見せられたらという気持ちを込めて、タイトルも「若い夏」としました。

Q 前回の公演に参加していかがでしたか。

A鶴見龍馬僕ら若い世代が原点を見つめ直すということで、僕自身は玉三郎さんが芸術監督になってから入ったメンバーなので、それ以前の鼓童を知らずに苦しんだ面もあります。自分たちで考えたり、先輩に稽古をつけてもらいながら、原点とは何だろうと考えせられました。

Q 前回の公演での手応えはいかがでしたか。

A前田剛史久しぶりに“ザ・鼓童”というテイストの公演でしたので、お客さんの反応には安心感のようなものを感じました。玉三郎さんの演出は新しいものをやるのだろうという期待感を感じるので、そういう違いがありましたね。

鶴見龍馬歴史ある曲を演奏して、原点を見つめて必死にもがき苦しんでやってきたので、自分の中では成長を感じられました。

Q 今回の公演について意気込みなどお聞かせください。

A前田剛史今回、僕は演出はせず、先輩がリーダーとして一緒に出演しますが、若いメンバー全員でテーマに向かって作り上げていく形になっています。メンバーそれぞれが原点に立ち返る気持ちで考えながら向かっていく公演なので、前回とはまた違うものになると思います。僕たちが向かっている過程の姿をお見せするものだと思っています。

鶴見龍馬心持ちとしては違いはありませんが、2回目ですし、後輩も入ってきましたのでそういう変化はあります。僕よりも下の世代が増えて僕も少し先輩になったので、剛史さんも言っていますが、前回から成長していく過程や姿を楽しんでほしいし、変わっていくいまのエネルギーを感じていただきたいです。

Q 今回ならではの演目としての見どころはいかがでしょうか。

A前田剛史単純に和太鼓を打ち込む姿です。頭で考えるというよりも、心でぶつかっていく様子が観られると思います。この公演のために若いメンバーが作った新曲もあります。

鶴見龍馬僕としては、若い世代が先輩を追い求めて頑張っている姿を楽しんでもらいたいです。それと僕らも玉三郎さんの演出した舞台に立ってきましたので、そこで僕らなりに培ってきたものがあると思います。原点に帰るけれども、今のメンバーがやる原点はまた違うというところも楽しめると思います。

Q 今回の出演者について教えてください。

A前田剛史山口幹文、齊藤栄一両名は長年に渡る大先輩です。僕が11年目で、段々若い世代になっていきますが一番下の山脇千栄は準メンバーです。ここ数年で若いメンバーがどんどん入ってきたので、名前の並びでは僕も上の方になりますが、キャリアで言うと上の世代から比べると僕もまだまだ若手です。

Q 前田さんから見て、若い世代が自分たちと違うなと感じるところはいかがでしょう。

A前田剛史玉三郎さんの舞台になってから、どんどん新曲を作るようになりました。ある公演では全曲新曲、ということもありました。そうなると、新しいものを全員で作るので、「今までこうやってきたから、こうしなくてはならない」という考え方がそのプロダクションの中には生まれなくなります。僕らが鼓童に入った頃は、先輩10人くらいの中に新人が1人入って、「その演奏は違う」と言われることもありました。自分の演奏や技術を直され、その中には鼓童らしさや大事なことがあるので、今にしてみれば良かったと思えます。
ただ、若いメンバーはそういう経験がゼロなので、フレキシブルで頭が柔らかいです。発想や発言も自由でうらやましい面もあります。自分たちには言えないことも言えてしまいますし(笑)、開放的な心でいるので、新しいものを生み出すには大事なことだと感じています。

Q 昔の演目を取り組む時は気持ちの違いはありますか。

A鶴見龍馬昔からある演目を演奏する時はすごく緊張します。いざ原点に戻り先輩と同じ舞台に立つと、明らかに培ってきたものの違いが分かってしまうと思います。僕らは下積み時代があるわけでもなく、早い段階から舞台に立たせてもらっていますし、先輩と立った時に少しでも見劣りしないように、エネルギーだけは負けないようにという気持ちになります。

Q 和太鼓との出会いと鼓童に入ったきっかけをお聞かせください。

A前田剛史阪神淡路大震災がきっかけです。僕は当時小学校2年生でした。僕の住んでいた地域はそこまで被害が大きくなくて、その地域の空き地に仮設住宅が立てられていました。震災後に、神戸を元気づけたいという人たちの後押しで子どもたちの和太鼓のグループができました。僕は友だちに誘われてそのグループができてから1年後くらいに入りました。いろいろな仮設住宅を訪問して演奏しましたが、僕らは発表会くらいの気持ちで行っているのですが、演奏後には毎回涙を流して喜んでくださるので子ども心にも印象的でしたし、喜んでいただけるのが嬉しくずっと続けていました。その後、高学年の時にたまたま鼓童の神戸公演を観に行く機会があって、太鼓を叩いている人たちを初めて客観的に観ました。その時のメンバーの姿に衝撃を受けて「ここしかない」と思いました。鼓童に入ろうと決めて、高校を卒業して鼓童の研修所に入りました。

鶴見龍馬僕は兄が和太鼓をやっていたので物心がついた頃には和太鼓がある環境でした。小学校に入学して兄もやっていた地元のグループで和太鼓を始めました。中学校まではそのグループで、高校も和太鼓部のある学校に進学して3年間続けました。太鼓自体は好きでしたが、プロの和太鼓奏者になることを当時は考えていませんでした。進路選択で自分がやりたいことは何だろうと悩んでいた時、たまたま鼓童の演奏映像を観ました。その時に演奏しているメンバーが輝いて見えて「これだ」と思いました。自分も和太鼓をやりたいんだと思って、大学進学を取りやめて研修所に入りました。

Q OKWAVEユーザーにメッセージをお願いします。

A前田剛史昨年に引き続き2回目の「若い夏」です。思いは変わらず、なぜ太鼓をやっているのか、なぜ鼓童に入っているのか、という当時の素朴な気持ちを自分は追い求めているので、太鼓に向かう姿勢やエネルギーを観てもらいたいです。

鶴見龍馬技術的には大先輩方には及びませんが、いまできる最大限の自分を観ていただきたいです。気持ちで先輩たちに食らいついていく、内にあるエネルギーを感じていただけたらと思います。

Q鼓童 前田剛史さん、鶴見龍馬さんからOKWAVEユーザーに質問!

前田剛史公演のコンセプトを考えているうちに、僕は日本が好きなんだと思いました。とくに日本の自然や祭の風景のような奥ゆかしさや情緒のような内に秘めた格好良さのようなものがいいなと思っています。僕のように思う人はあまりいないのかもしれませんが、皆さんが好きな日本とはどういうものか聞きたいです。その価値観のようなものが僕らの舞台にもつながってくるのかなと思います。もしかしたら初音ミクやアニメのようなものかもしれませんし、どういう価値観が好きなのか知りたいです。

鶴見龍馬皆さんはどういう「瞬間」が好きですか。僕は日常の中で、時々心奪われる瞬間があるので、特別な時間ではなく、当たり前のように過ごしている中での「好きな瞬間」を教えてください。

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■Information

鼓童「若い夏」日本ツアー

照りつける太陽
爽やかな風
青く広がる海

突然の夕立

真っ赤に染める夕焼け
暗闇に揺れる提灯
遠くに聞こえる祭囃子…

鼓童と迎える夏。

鼓童発足当時から
律した生活に努め、
稽古に明け暮れてきた。

舞台には太鼓を叩く姿から
その人の生き様が表出し、
感動は閃光のように広がった。

若者たちは、その背中に憧れた。

今、先人たちが歩んできた歴史を見つめながら、
若い力が新しい鼓童の姿を描いていく。

出演:山口幹文、齊藤栄一、前田剛史、草洋介、蓑輪真弥、安藤明子、三浦康暉、鶴見龍馬、渡辺健吾、三浦友恵、前田順康、吉田航大、山脇千栄

2017年7月2日(日)京都府京都市 京都芸術劇場春秋座(京都造形芸術大学内)
2017年7月6日(木)~9日(日)東京都台東区 台東区立浅草公会堂
2017年7月11日(火)三重県伊勢市 シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)
2017年7月15日(土)愛知県みよし市 みよし市文化センターサンアート(みよし市勤労文化会館)
2017年7月17日(月)富山県黒部市 黒部市国際文化センター コラーレ<カーターホール>
2017年7月19日(水)岐阜県各務原市 各務原市民会館
2017年7月22日(土)岡山県倉敷市 倉敷市芸文館
2017年7月23日(日)愛媛県松山市 松山市民会館
2017年7月26日(水)福岡県久留米市 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
2017年7月29日(土)宮崎県宮崎市 メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)
2017年7月30日(日)鹿児島県鹿児島市 宝山ホール(鹿児島県文化センター)

料金:東京公演7,000円
その他会場詳細は公演情報ページを参照。
http://www.kodo.or.jp/performance/performance_kodo/1038


■Profile

前田剛史

1986年8月28日生まれ、兵庫県神戸市出身。
2005年研修所入所。2008年よりメンバーとして活動。舞台では太鼓、鳴り物、笛、箏など幅広く担当するオールラウンドプレイヤー。これまでに交流学校公演や国際芸術祭「アース・セレブレーション」城山コンサートなどの演出を担当。「神秘」公演では郷愁をかきたてる旋律が魅力の「夜道」や、「永遠」公演では「夜霧」「朝焼け雲」「カタライ」など作曲にも力を注ぐ。

鶴見龍馬

1993年9月26日生まれ、愛知県東海市出身。
小学1年より地元の和太鼓チームに入り、高校でも和太鼓部で活動。2012年研修所へ入所。2014年、準メンバーながら「打男」フランス、スペイン公演で平胴大太鼓の演目「巴」に抜擢。2015年よりメンバー。舞台では主に、太鼓、鳴り物を担当する。2016年「神秘」海外ツアー、「交流学校公演」「若い夏」「螺旋」など様々な作品に参加。舞台映えする目力の持ち主。

鼓童
http://www.kodo.or.jp/