Vol.672 映画監督 山岸聖太(映画『傷だらけの悪魔』)

OKWAVE Stars Vol.672は映画『傷だらけの悪魔』にて長編監督デビューを果たした山岸聖太監督へのインタビューならびにブルーレイ/DVD発売記念トークショーの模様をお送りします。

■インタビュー

Q 監督はMVを多数手がけていますが、『傷だらけの悪魔』にて長編監督デビューとなったその時のお気持ちをお聞かせください。

A山岸聖太もともと映画を撮ってみたいとは思っていました。ですのでお話をいただいた時は嬉しかったです。撮影までの準備期間は短かったのでなかなか大変でした。

Q イジメがテーマの作品ですが、どのように描こうと思いましたか。

A山岸聖太この企画をいただいた際に、原作者の澄川ボルボックス先生が書かれていた設定集の中に“イジメは楽しい”と書かれていて、これだったら映画にできるなと思いました。これが、イジメを根絶するためのメッセージ映画だとしたら、もちろんイジメは無くなればいいと思っていますが、ふだんからそういったことを考えているわけではないので僕がやるべき映画ではないのだろうなと。この設定集に書いてあった“イジメは楽しい”ということを描けば、イジメが良くないことも伝えられるだろうし、過去にイジメをしていた人たちがなぜイジメをしていたのかを振り返ったら、良くないことは楽しい、ということに行き着くだろうと思いました。この映画は学生を描いていますが、イジメは学生だけの話ではないので、そういうところでもハッとさせられるんじゃないかと思いました。

Q 映像表現として、イジメのシーンにもポップな表現をされていたのもそういった意図なのですね。

A山岸聖太そうですね。学生が楽しんでいることはバンドやダンスなどたくさんありますが、それと同じようにイジメをしていることが楽しい人がいる、ということを狙いました。
誰かをいじめている人たちが楽しそうである、ということが大事かなと思いました。相手のことを歯を食いしばっていじめるのではなく、ただ快楽でやっている人たちを描こうと思いました。

Q キャストの方々にはどのようなところを期待しましたか。

A山岸聖太学生役には演技経験の無い人も何人かいたので、撮影前に全員集まれるタイミングで3日間の稽古をしました。そこで全員の芝居のバランスを見極めました。
足立梨花さんは経験豊富なので、稽古の時は足立さんがずば抜けていました。でも、いじめられる役の足立さんが演技として一番強いのは問題があると感じました。役者の経験のある人はこの稽古に向けて準備していましたが、そのまま演じてしまうと負けっぱなしになってしまうので、それを崩していくところから始めました。演技経験の無い人には「このままだとまずいよ」ということを遠回しに感じてもらって、本番に向けて心を作ってきてもらうようにしました。

Q 撮影が始まってからはスムーズに進んだのでしょうか。

A山岸聖太スムーズには進まなかったですね。というのは、撮影部と照明部には僕がMVで一緒にやっているメンバーに参加してもらっていて、彼らも僕も普段映画を撮っているわけではないので映画の撮り方というものをよくは知らないわけです。僕らはカメラアングルを変えて別テイクを撮る時も結構長めに撮るので、映画の現場ではどこからどこまでを撮るのかを予めはっきりと決めなければいけないということを学びました。役者にとっても本来は長回しでやった方がいいと思いますが、現場的には時間がないということでなかなかスムーズには進みませんでした。
2日目の朝に撮影部と照明部のスタッフだけ集めた極秘ミーティングを行って(笑)「いつも通りやろう」と決めました。僕らも初日は普段とは違う仕事をしているという意識がありましたが、そこからは普段通り、時にはちょっと不安になるようなカメラアングルであるとか(笑)、自分たちらしい撮り方に徹しました。

Q キャラクター全員がイジメに何らか関わっていますが、どのキャラクターも良い面と悪い面を描いているように見受けられました。

A山岸聖太どちらかというと、全員悪い、ということを着地点にしようとしました。いじめている人も周りにいるイジメに関わらないでいようとする人も悪いのではないかと。映画を観た人が自分にもそういうところがあるのかもしれないと思ってもらえたらいいなと思いました。

Q この作品に関わって、新しい気づきなどはありましたか。

A山岸聖太僕が撮るMVは物語の要素を持った作品が多いので、短編映画のような気持ちで撮ってきましたが、それと長編映画を撮るのはまるで違うのだと思いました。今回は反省しか無いのでまた長編映画にリベンジしたいと思います。

Q 今後はどんな映画を撮りたいですか。

A山岸聖太楽しい気持ちになれる作品を撮りたいと思います。今回はイジメを扱った作品ですのでどうしても楽しい気持ちにはなれなかったので(笑)、観て楽しかったなと思ってもらえるような作品がいいですね。何でもないことを楽しく描くようなものを撮りたいです。そういう意味ではこの1本目は、難しい題材でしたので勉強になりましたし、いい機会になりました。

Q OKWAVEユーザーメッセージをお願いします。

A山岸聖太イジメという重たいテーマを描いた作品ですが、映画なので楽しめるようにできないかと考えながら作りました。これからDVDなどで手に取られる方は、そんなに構えずに観てもらいたいなと思います。

Q山岸聖太監督からOKWAVEユーザーに質問!

山岸聖太皆さんの映画を観る基準は何ですか?役者なのかジャンルなのか何でしょう。この映画を観た方は何がきっかけだったのか気になっています(笑)。

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■DVD発売記念トークショー・レポート

『傷だらけの悪魔』ブルーレイ/DVD発売を記念して山岸聖太監督と竹田直樹プロデューサーによるトークショーが開催された。
キャスティングに関して、乃木坂46の伊藤万理華さんの起用は山岸監督からの提案だったとのこと。主人公・舞の東京の友だちとしてワンシーンの登場ながら物語の転換点となる重要な役どころであったが、そもそも台本にはなかったことが明かされた。竹田プロデューサーからは、同時期に公開された学園映画とキャストがかぶらないようにしたとのこと。その中でタレントとして活躍している岡田結実さんの役者デビュー作ともなった。モデルとして活躍する江野沢愛美さんも演技はほとんど初めてだったものの、稽古を経て、本番では気持ちの上で大きく変わっていたとのこと。
撮影では、江野沢さんが顔を水につけられるシーンで水槽に実際に顔をつけられて「長い!」と叫ぶ一幕もあったとか。セットではなくロケ地の廃校の実際のトイレで全身で床に倒れるなど、身体を張った演技には監督からも「良かった」との言葉があった。
現場では山岸監督はほとんどキャストとは関わらなかったため、キャスト同士がどう監督とコミュニケーションを取るか相談していたということも暴露された。編集も山岸監督が行ったが、竹田プロデューサーはシーンの長さに合わせて音楽がジャストタイミングになるようにさせるなど、監督の粘り強さを賞賛していた。


■Information

『傷だらけの悪魔』

『傷だらけの悪魔』ブルーレイブルーレイ/DVD発売中
発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
・ブルーレイ:4,743円+税
・DVD:3,800円+税

親の都合で田舎の高校に転校してきた葛西舞。ダッサイクラスメイトとどこまでも続く田園風景にうんざりしながらも、そこそこ楽しんでいこうと決めた舞の前に現れたのは、中学時代に同級生だった小田切詩乃。舞は詩乃のことを覚えてないものの、舞のグループから酷いイジメに遭っていた詩乃は復讐を決意。詩乃の策略によって逆にイジメの標的とされた舞のスクールライフは、地獄と化していく。でもいつまでも泣いているわけにはいかない。孤立無援のなか、ついに舞が反撃を開始する!!

足立梨花 江野沢愛美 加弥乃 岡田結実 藤田富 小南光司 伊藤万理華(乃木坂46)※友情出演

原作:澄川ボルボックス(comico)
監督・編集:山岸聖太

(C)2017 KIZUAKUフィルムパートナーズ


■Profile

山岸聖太

1978年生まれ。エンターブレイン映像企画部を経て、08年よりフリーランスで映像ディレクターとして活躍。主にバラエティDVDやMVなどの演出を手掛ける。また映像制作ユニット“山田一郎”のメンバーでもあり、星野源、デザイナーの大原大次郎と共にインストバンド“SAKEROCK”のMV、DVDなどの構成・演出・編集を担当、「ホニャララ」のMVが「広告批評」が選ぶ2008年ミュージックビデオベストテンの第2位に選出。さらに<SPACE SHOWER Music Video Awards>にてベスト・オブ・コンセプチュアル賞を受賞。ここ最近の演出作品はKANA-BOON「ないものねだり」、乃木坂46「サヨナラの意味」、シンリズム「彼女のカメラ」など。
https://twitter.com/santa_yamagishi