Vol.683 女優 前田亜季(こまつ座公演『円生と志ん生』)

前田亜季(こまつ座「円生と志ん生」)

OKWAVE Stars Vol.683はこまつ座公演『円生と志ん生』出演の前田亜季さんへのインタビューをお送りします。

Q 台本を読まれた印象をお聞かせください。

A前田亜季旧・満州を舞台にしたお話で、私自身よくは知らないことも多く、「こんな時代に、こんな人たちが生きてたんだ」と思いましたし、もっと知りたいなと思いました。満州国があった頃の大連は「夢の都」と言われていたそうです。それは日本人から見た一方的なものかもしれませんが、それが日本の敗戦後には地獄の町へとガラッと姿を変えてしまいます。当時満州にいたみんなが逃げ込んできて、混乱に巻き込まれる人たちが描かれます。つらい状態である中でも、円生師匠と志ん生師匠の周りには笑いがあって、みんなが救われていくので、とても温かくて、面白い話だと思いました。
井上ひさしさんの台本は日本語が美しいです。独特のリズムもあるし、出て来る言葉が後になって意味を持ってくることもあります。こんな美しい言葉を使っていたんだなあと思いますし、自分が普段使っている言葉を反省して、私もこういう言葉を使いたいなと思います。

Q 出演についての意気込みをお聞かせください。

A前田亜季今回、5役を演じますが、これまで舞台で何役も演じ分ける経験はなかったので、最初はどうなるかなと思っていました。ですが、演出の鵜山仁さんをはじめ、みんなで作っている感覚があり、楽しんで稽古をできています。
稽古に入る前には満州の開拓移民を扱ったドラマやドキュメンタリー映像などを見ましたが、この時代を生きた人たちがいて、それでいま私たちがいるんだ、という流れのようなものも感じています。身が引き締まる気持ちになりますし、井上ひさしさんが書いた言葉の一つ一つが重いなとも感じます。言葉を大事に演じたいと思います。

Q 終戦当時の話でありながら、現代に通じる内容ですね。

A前田亜季ここ最近の出来事には怖さを感じることもあります。劇中には、人々が戦争に巻き込まれていつのまにか地獄の世界にいる、という内容の歌があります。私たち、一人一人が見極めて判断していかないと、と思いますので、いまこの作品を演じる意味があると感じます。井上ひさしさんがこの『円生と志ん生』を書かれたのは2005年ですが、本当にいまの時代に通じていると思います。日本がかつてどんなことをしていたのか、どんなことが起きていたのか、この作品が知るきっかけになればいいなと思います。

Q 何役も演じることについてお聞かせください。

A前田亜季お芝居をひとりで作っているわけではなくみんなで作っているので、相手との関係性が変われば役も話し方も変わってきます。ですので、ひとりでキャラクターを作るというより、関係性の中で自分の個性が出てくればいいなと思います。演じる役はそれぞれ生きる意思の強い女性ばかりなので、そんな芯の部分を大事に演じたいと思います。いろいろな人を演じますので、この時代にいた人たちの声を届ける役目なんだと、しみじみと思っています。

Q 劇中には歌がたくさん出てきますが、どんなメロディが乗るのか興味深いです。

A前田亜季歌っていて楽しいですし、それがお客さんにも伝わるといいなと思います。言葉も素敵ですし、宇野誠一郎さんの音楽も素敵です。ベートーベンの曲にメロディを乗せたりもするので、最初に聴いた時にはびっくりしました。きっとこんなメロディがつくんだと驚いていただけると思います。

Q 松尾(円生師匠)と孝蔵(志ん生師匠)の二人の生き方について思うところをお聞かせください。

A前田亜季(こまつ座「円生と志ん生」)前田亜季二人ともすごく素敵です。真面目な松尾さんと自由な孝蔵さんという二人のバランスが最高です。関わる人たちもどんどん巻き込まれていきますが、きっと二人に救われたのだろうなと思います。大変な時に笑いで癒やしてくれたり元気づけてくれる存在なので、この時代の女性たちが二人のことを好きだったように、私たちも二人のことが好きで、4人の女性キャストが二人のことをずっと見ている、物語の内容と同じような稽古場です(笑)。稽古場の雰囲気がすごく良いんです。やらなければならないことはたくさんあって大変ですが、それ以上にみんないいものを届けたいという共通の思いがしっかりあって。それは演出の鵜山さんが作り出している空気なのかもしれません。普段はおっとりされていますが時折鋭いご指摘をされるので、鵜山さんに引っ張られて、いい雰囲気で取り組んでいます。

Q 悪い人物が出てこないところも特徴的ですね。

A前田亜季そうなんです。私が演じる山田先生と森先生がお弁当箱を巡って対立する場面がありますが、この二人は以前は仲良かったはずだし、一緒にお弁当を食べていただろうなと思うと、そんな二人が言葉で傷つけ合うのは悲しいですし、そういう時代だったんだと思うと切なくなります。でも、嫌な人物ではなくて、必死に生きていく中でそういうことが起きているし、みんな一生懸命な人たちなんです。

Q 個人的には、終盤の修道院でのやり取りがとくに面白いなと思います。

A前田亜季笑いの大切さを発見する場面ですよね。当初、この修道院の屋上だけで話を進めていくという設定もあったそうです。この場面は人間が言葉や笑いを作り出したのだから、それが通じる世界であってほしいという井上ひさしさんの願いがあると思います。後半は演じるみんなのテンションが高くなっていきますし、しっかり稽古をして、楽しんでいただける場面にしたいです。

Q 稽古の様子についてお聞かせください。

A前田亜季実は私が初めてこまつ座の舞台に出演した「私はだれでしょう」の時は井上先生の台本が間に合わなくて初日がずれてしまったんです。今回は再演で台本がある状態からですので、通し稽古がたくさんできているので、ありがたいです。

Q 本作に関わる中で新しい発見などはありましたか。

A前田亜季これまで落語のこともあまり知らなかったので、寄席にも行ってみました。肩の力を抜いて観られる素敵な場所だという発見がありました。それもあってか、今回の芝居ではあまり力を入れすぎずに演じたいと思っています。生の舞台は緊張もしますし、勉強させていただく気持ちもあるからか稽古場でもつい力が入ってしまうんです。今回は “笑い”を大切にしているお話でもあるし、肩の力を抜いてみんなとコミュニケーションを取りながら、参加したいなと今回の作品と出会って思いました。

Q 前田亜季さんからOKWAVEユーザーにメッセージ!

A前田亜季あまり劇場に足を運んだことがない方もいると思います。私の周りにも「舞台は難しそう」と思っている人もいますが、とても入りやすい舞台だと思います。満州のことを知らなくても、そこに生きていた身近な人たちのことを観に来ていただけたらと思います。私自身がいろいろなことが拓けて、興味を持つきっかけになった作品ですので、皆さんも何かのきっかけになる舞台になればいいなと思います。とっても面白い作品です!

Q前田亜季さんからOKWAVEユーザーに質問!

前田亜季最近、記憶力を改善する薬が何種類も発売されていて、稽古場でも女優陣で話題になっています(笑)。どうすれば記憶力が上がるのか、維持できるのか、皆さんが実践している方法を教えてください。

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■Information

こまつ座 第119回公演『円生と志ん生』

2017年9月8日(金)~24日(日)紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
※地方公演あり

平和は言葉を作り、「笑」を生む。
戦時中の人生体験は独特の日本の話芸を生んだ。
戦争の苦労はなんのその、
落語三昧に生きた話芸の天才二人の生き様とは?

演出:鵜山仁
出演:大森博史 大空ゆうひ 前田亜季 太田緑ロランス 池谷のぶえ ラサール石井
演奏:朴勝哲

入場料:9,000円
学生割引:5,000円(中学、高校、大学、各種専門学校、演劇養成所の学生の方対象)

☆スペシャルトークショー:
9月11日(月)13:30公演後 樋口陽一(比較憲法学者)「井上ひさしにとっての笑い」
9月14日(木)13:30公演後 大空ゆうひ、前田亜季、太田緑ロランス、池谷のぶえ
9月17日(日)13:30公演後 大森博史、ラサール石井
9月21日(木)13:30公演後 雲田はるこ(漫画家)「『昭和元禄落語心中』ができるまで」
※アフタートークショーは開催日以外の『円生と志ん生』チケットを持っている方も入場可能。
※出演者は都合により変更の場合あり。

こまつ座 03-3862-5941
こまつ座オンラインチケット:http://www.komatsuza.co.jp/


■Profile

前田亜季

前田亜季(こまつ座「円生と志ん生」)1985年7月11日生まれ
女優としてTVドラマ、映画、舞台、CMに幅広く活躍中。
スーパープレミアム スペシャル時代劇「荒神」(2018年1~2月、BSプレミアム)出演予定。

http://www.alpha-agency.com/artist/post-1.html