Vol.684 映画監督 マルティン・ギギ(映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』)

OKWAVE Stars Vol.684は9.11を題材とした映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』(2017年9月9日公開)マルティン・ギギ監督へのインタビューをお送りします。

Q 9.11という題材を映画化したねらいをお聞かせください。

Aマルティン・ギギ16年経った今となっては、若い世代は私たちのようにあの日を経験していません。あの事件に敬意を払い風化させないことが大事なことだと思います。そこから学んで、ああいった出来事が二度と起こらないようにしたい、ということがこの映画を作った意義です。

Q 映画はワールドトレードセンター(WTC)のエレベーターの中で起こる人間模様が興味深いですが、その限られたシチュエーションを映画化する上では、どんなところを重視しましたか。

Aマルティン・ギギ映画の成否を分ける大事な要素として2つこだわった点があります。一つ目はそれぞれのキャラクターが独特であること、そしてキャラクター間に軋轢や対立を生じさせることです。もう一つはカメラの動きです。カメラが証人とならなければならない上に、それなりの動きをもって撮らないと、観客は寝てしまいます(笑)。その二点をうまく掛け合わせてこの映画の型にしました。

Q チャーリー・シーンの起用についてのねらいや、彼への期待についてお聞かせください。

A映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』マルティン・ギギチャーリーは、映画の歴史をよく知っています。映画をたくさん観ていますし、いろんな役者の芝居を研究しています。直感も冴えています。彼が現場に来ると良いエネルギーをもたらしてくれます。彼とはとても働きやすかったですね。オープンなので、新しいアイデアを取り込んだり、即興で演じるのも上手です。この映画を経て親しい友達にもなりました。

Q チャーリー・シーンをはじめ、エレベーターの中の5人の役者にはどんな指示や演出をしましたか。

A映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』マルティン・ギギ毎日、その日撮影するシーンの台詞の読み合わせをしました。5人と膝を突き合わせるように毎朝アイデアを語り合ったんです。その話し合いの中でみんながキャラクターやストーリーが軌道に乗せられているかを確認しながら進めていきました。一方で、技術的にはスタッフと事細かにカメラアングルやどんなレンズを使うのか、といった指示を出して現場を整えました。そうやって準備をしていたので、芝居はリハ無しでカメラを回しました。そうした方が新鮮な芝居を見せてもらえるので、ほとんどのシーンを1、2テイクで撮りました。時には役者から「もう一回演じさせて」と言われてテイクを重ねましたが、役者に指示したのはテンションをどのくらいにするかということだけで、それ以外のことはほとんど役者任せでした。
また、エフェクトのチームとはかなり話し合いを重ねました。この映画ではほとんどCGを使わず、通常では特殊効果を使用する部分もカメラで撮っていますので、危険も大きいからです。

Q ウーピー・ゴールドバーグが演じるオペレーターのメッツィーは、エレベーターの中の5人とはどうテンションを合わせたのでしょうか。

A映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』マルティン・ギギ実は同時に撮っているんです。セットは別々ですが、エレベーターのセットの中にウーピーの声が届くようにスピーカーを設置し、ウーピーがいる保安室には5人の声が届くようにして、同時に撮影しました。

Q それぞれの家族の物語を大事に描かれていましたが、その点についてお聞かせください。

A映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』マルティン・ギギキャラクターの背景ですが、この映画の基になっている舞台作品には入っていないものもあります。脚色する上で、共同脚本のスティーヴン・ゴルビオスキとチャーリーの兄のエミリオ・エステベスと3人で人物のバックグラウンドを書き込んでいきました。役者にはリアルに演じてほしかったので、彼らからのアイデアも取り入れました。つまり、原作の戯曲があって、脚色があり、撮影に入ってからみんなでアイデアを出し合った3段階の深掘りによって、有機的にキャラクターを作っていったんです。

Q 9.11当日の実際の映像も使用されています。当時のブッシュ大統領が「テロとは戦わなければならない」と演説しているシーンを使ったのには何かねらいがあったからでしょうか。

Aマルティン・ギギ9.11当日をリアルタイムになぞるように撮っているので、映画の中の時計が8:46の時に一機目がWTCに衝突し、事実通りに15分後に二機目が衝突するような展開になっています。サウスタワーが崩れるのも実際の経過時間と同じです。だからブッシュ大統領の演説も当日のものを使っているんです。当日の出来事をほぼ忠実に再現した結果ですね。

Q 実際の消防士の方がコンサルタントを務めたほか、消防士役としても出演されています。

Aマルティン・ギギ最後に登場する消防士はコンサルタントとしていろいろな相談もしました。彼の父親も9.11の際には消防士として活動したそうです。
最後のシーンは元々の戯曲にはないシーンで、チャーリーとエミリオのアイデアで書き足しました。9.11の英雄たちへ敬意を表明したかったので、いろいろなアイデアがある中でチャーリーのアイデアを使うことにしました。僕自身、ラストシーンで思うのは、最後は自分よりも大きな力に委ねる、ということです。自分では選択できないこともある中で生きていくことを受け入れる、その勇気を描こうとしました。

Qマルティン・ギギ監督からOKWAVEユーザーに質問!

マルティン・ギギ今まであなたが観た映画でお気に入りのシーンを教えてください。

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■Information

『ナインイレヴン 運命を分けた日』

映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』2017年9月9日(土)新宿武蔵野館、丸の内TOEIほか全国ロードショー

2001年9月11日、早朝。ニューヨークのワールドトレードセンタービル・ノースタワー内。二人の男女が、とある弁護士事務所で離婚調停中だ。夫のジェフリーは、ウォール街の億万長者。家庭より仕事優先で世界中を飛び回っていた。17年連れ添った妻イヴは、そんな身勝手な夫に失望し、離婚を決意。離婚したくないジェフリーは必死で妻を説得しようとするが結局は口論になるばかり。
バイクメッセンジャーのマイケル、美しく着飾ったティナ、ビルの保全技術者のエディ、そしてジェフリーとイヴの5人は偶然同じエレベーターに乗り合わせる。
突如、ビルに正体不明の飛行機が激突し、彼らは北棟の38階辺りに閉じ込められてしまう。外部との唯一の通信手段はインターコムを通じて話せるエディの同僚でオペレーターのメッツィーだけ。彼女からアドバイスを受けながら脱出の方法を探るエディたち。
彼らは、外の状況やいつ落下するか分からない恐怖と闘いながら脱出方法を探す。やがて5人は極限状態の中、それぞれの人生を振り返る。
そんな彼らが最後に下した決断とは。

監督:マルティン・ギギ
出演:チャーリー・シーン(『プラトーン』)、ウーピー・ゴールドバーグ(『天使にラブ・ソングを…』)、ジーナ・ガーション(『フェイス/オフ』)
ルイス・ガスマン、ウッド・ハリス、オルガ・フォンダ、ジャクリーン・ビセット、ブルース・デイヴィソン
配給:シンカ
協力:松竹

公式サイト:nineveleven.jp

© 2017 Nine Eleven Movie, LLC


■Profile

マルティン・ギギ

映画監督 マルティン・ギギ(映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』)1965年、アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれ。
映画監督、ピアニスト、作曲家、音楽監督、音楽プロデューサー。
幼少の頃から合計12年間、ニューヨークで暮らす。アルゼンチンのブエノスアイレスで著名な交響楽団の指揮者を務めるエフレイン・ギギを父に持ち、ニューヨークやプエルトリコ、バーモントで多岐にわたる英才教育を受けた。4歳でヴァイオリンを弾く天才児として知られるようになり、12歳の時にプエルトリコ交響楽団と共に、ニ長調でヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲を演奏しデビューを飾った。映画監督として『アイ・ソウ・ザ・デビル~目撃者~』(未)など9つの長編映画と数本のドキュメンタリー映画を監督、さらに16本の脚本や十数本の製作総指揮、20本を超える映画やテレビ音楽、30枚の音楽アルバムを手掛ける。インディペンデント映画や子供向けのテレビ番組の優れた作曲家でもあり、グラミー賞ノミネート、さらにビルボード賞、ASCAP(米国作曲家作詞家出版者協会)パフォーマンス賞、セザール賞、ゴールデンスピリット賞、コンキスタドール賞、エスタブルック賞等で数々の作曲賞を受賞し、多くの音楽祭では監督賞を受賞、更に、ロサンゼルス市より2度も音楽教育における芸術貢献で表彰された。ZZトップのビリー・ギボンズや、ダリル・ホール、シーラ・E、スティーブ・アール、ジェイムズ・コットン、ジミー・ヴォーン、テデスキ・トラックス・バンド、ウォーレン・ヘインズ、ルシンダ・ウィリアムズ、グレイス・ポッター、ジョン・ポッパー、ロバート・ランドルフ、フィッシュ、ホセ・フェリシアーノ、スモーキー・ロビンソン、デヴィッド・バーン等という一流のアーティストたちと仕事をした。サンセット・ピクチャーズの共同創設者兼社長、パシフィック・レコードのA&R代表を務める傍ら、児童虐待防止に従事する組織や「陽のあたる教室」財団法人、ウォールストリート・ロック、州兵財団法人のため、定期的にチャリティーコンサートを催す。